【クロッカスの育て方】水耕栽培や分球の方法・注意が必要な病害虫は?

【クロッカスの育て方】水耕栽培や分球の方法・注意が必要な病害虫は?

早春の庭やプランターを彩るクロッカスは、春の訪れの代名詞といえる花のひとつです。育て方が簡単で小さなスペースでも栽培できるので、初心者の方も挑戦しやすい花といえるでしょう。

今回はクロッカスの育て方を中心に、基礎知識や育て方のポイント、トラブルと対処法などについてご紹介いたします。

クロッカスの基礎知識

クロッカスの基礎知識

はじめに、クロッカスの基礎知識を深めましょう。

クロッカスとは

クロッカスはアヤメ科サフラン属(クロッカス属)の多年草で、園芸上は球根に分類されます。一般的な品種の開花期は2~4月で、黄色や白、紫などの花が楽しめます。高さ5~10cmと小型で可憐(かれん)なイメージがありますが、丈夫で耐寒性が強く、雪や霜にも負けません。原産地は地中海沿岸や北アフリカ、西アジアなどです。

料理に使用される「サフラン」もクロッカスの仲間で、紀元前から薬用などの目的で栽培されていました。サフランは8世紀ごろにヨーロッパに伝わり、14~18世紀ごろのイギリスでは産業として発展します。19~20世紀には、オランダを中心とするヨーロッパで多くの品種が作られました。

日本には江戸時代に伝来、主に婦人病の治療薬として用いられました。明治19年に神奈川県国府(こくふ)村(現在の大磯町)の添田辰五郎(そえだたつごろう)氏が球根を輸入し、栽培と研究に取り組んで販売用の品種を生産します。明治36年には大分県竹田市に伝わり、後に国内の一大産地として発展しました。

クロッカスの種類

クロッカスの原種はおよそ80種で、春咲きと秋咲きに大別できます。主に流通しているものは春咲きのクロッカスで、花サフランとも呼ばれます。春咲きのクロッカスは、黄色の「chrysanthus(クリサンサス)種」と白や紫の「vernus(ベルナス)種」から改良されたものです。

一方、サフランと呼ばれるタイプは、秋咲きの品種の「sativus(サティバス)種」です。近年では、秋咲きのクロッカスの種類も豊富になりました。ただし、雌(め)しべをスパイスとして使用するときは、「サフラン」と表記されているものを購入して栽培してください。なお、サフランに似たユリ科(イヌサフラン科)の「イヌサフラン」は別の植物で、花や葉に毒性があるので注意が必要です。

【参考】
厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル:高等植物:イヌサフラン」

クロッカスの育て方のポイント3つ

クロッカスの育て方のポイント3つ

クロッカスの育て方のポイントは、次の3点です。

① 寒さに当てる

よい花を咲かせるには、寒さに当てることが大切です。気温が下がらないうちに植えたり、鉢を室内に置いたりするとよい花が咲きません。水耕栽培の場合も、発根までは屋外で管理しましょう。

② 花がら摘み

咲き終わった花(花がら)はそのままにせず、花がついている茎の根元を切り取ってください。花を残すとタネができて、株が衰弱してしまいます。

③ 開花期の後

開花期が過ぎたら、球根に栄養を蓄えるために葉を残して光合成させます。少々見栄えは悪くなりますが、葉が枯れるまで待ちましょう。

クロッカスの栽培に必要なもの

クロッカスの栽培に必要なもの

クロッカスを栽培するときは、シャベルなどの基本的なツールのほかに次のものを用意してください。

花だんまたはプランターなど

花だんは、日当たりと水はけのよい場所が適しています。クロッカスは生育不良などの連作障害が出ることもあるので、前年に同じアヤメ科を栽培した場所は避けましょう。鉢植えは4号鉢に4~5球が目安で、ネットに入れた鉢底石(はちぞこいし)があると便利です。寄せ植えにするときは、大きめの鉢やプランターを選んでください。

連作障害については、「連作障害とは?連作障害を防いで野菜を育てる方法や予防策を紹介」の記事を参考にしてください。

球根または芽出し球根

クロッカスに限らず、大きくて重さもあり、硬い球根を選びましょう。とくにクロッカスは、球根が小さいと開花しないケースもあるので、なるべく大きいものを選んでください。表面に傷や凹凸、病斑(はん)などがないか、チェックしてから購入しましょう。

すぐに観賞したいときや寄せ植えにするときは、すでに芽が出ている「芽出し球根」を選ぶ方法もあります。芽出し球根は、しっかりと根の張った葉の色がよいものを選びましょう。

球根については、「おすすめの秋植え球根9選」「【春にきれいに咲かせたい!】秋植え球根の植え方を紹介」の記事で詳しくご紹介しています。

土と肥料など

花だんの下準備には、石灰やたい肥、腐葉土(ふようど)を用意してください。水はけが悪い場合は、軽石やパーライトなどを加えます。肥料は粒状の化成肥料が便利ですが、追加で与える場合は液体肥料でも構いません。鉢やプランターで栽培するときは、市販の球根用または草花用の培養土を用意すると簡単です。

保管用のネット

球根を掘り上げて保管する際は、通気性のよいネットを使用します。市販の果物などが入っていたネットは、球根の保管用としても使えて便利です。

水耕栽培の場合

水耕栽培するときは、専用の容器を用意します。クロッカスの球根は小さめなので、入れ口の直径が小さいもの、またはホルダーがついているものなどがよいでしょう。

【初心者におすすめ】クロッカスの育て方

【初心者におすすめ】クロッカスの育て方

それでは、一般的な春咲きクロッカスの育て方を順にご紹介いたします。

土の下準備

花だんの場所を決め、土の下準備をしてから植えつけましょう。土を下から深く掘り返し、小石や古い根、枝などを取り除きます。日光に当てて消毒した後、石灰を加えて酸性の土壌を中和してください。たい肥や腐葉土を混ぜ、水はけが悪い場合は軽石やパーライトも加えます。

植えつける1週間くらい前には、元肥(もとごえ)として化成肥料を混ぜ込みます。鉢やプランターの古い土を使うときも、同様に準備してから植えつけてください。

植えつけの方法

春咲きのクロッカスの球根は、10~11月に植えつけます。花だんは球根の間隔が5~7cmくらい、深さは5cmくらい、鉢植えは間隔が3~5cmくらい、深さは3cmくらいを目安にしましょう。「球根2個分の間隔と深さ」と覚えてもよいかもしれません。上から土をかぶせたら、たっぷりと水を与えます。ただし、芽出し球根は購入時に植えてあった深さと同じくらいに植えつけてください。

異なる種類の球根を寄せ植えにするときは、チューリップやスイセンなどの深めに植える球根を先に植えて土をかぶせ、クロッカスやムスカリなどのやや浅く植える球根を植える「ダブルデッカー」と呼ばれる方法があります。

寄せ植えについては「寄せ植えの基本と作り方。初心者でもおしゃれに仕上げるコツも解説!」、チューリップについては「【チューリップの育て方】植え付け時期は?球根の植え方や肥料・水やりも紹介」、スイセンについては「スイセン(水仙)の育て方・栽培方法。注意すべき病害虫は?」の記事をご覧ください。

日々の手入れ

花だんに植えたクロッカスの根が張るまでは、土の表面が乾いたら午前中に水やりをしましょう。その後は雨水だけで水分の補給ができますが、極端に乾燥したときは水を与えてください。鉢植えは、土の表面が乾いたら同様に水やりをします。開花後は花びらが傷まないよう、水は株元に注ぎましょう。

育て方のポイントでお伝えしたように、品種によっては花がらをつけたままにするとタネがついて弱るため、こまめに茎の根元から切り取りましょう。クロッカスは寒さに強いので、雪の日や霜が降りる日でもとくに保温などの必要はありません。

肥料の与え方

鉢植えは、開花したら早めに追加の肥料を与えてください。液体肥料は説明のとおりに薄めて2週間ごとを目安に数回与え、化成肥料は鉢の内側に沿って土の上に置きます。開花期が過ぎたら、お礼肥(おれいごえ)として同様に肥料を与え、球根を肥大させましょう。

開花期が終わったら

開花期が終わったら、葉を残して光合成させます。鉢植えの場合は、葉が枯れるまで水やりを続けてください。葉が枯れたら取り除き、水やりをいったんやめて休眠させましょう。夏が過ぎて涼しくなったら、水やりを再開してください。

クロッカスの球根は、数年~4年ほど植えたままでも構いません。徐々に球根が小さくなるので、5年目には掘り上げて保管しましょう。葉が枯れたら掘り上げ、葉や根を取り除いて数日~1ヵ月くらい日陰に置いて乾燥させます。クロッカスは自然に分球しますが、新しい球根ができていたら手で分けてもよいでしょう。大きめの球根を選んでネットに入れ、風通しのよい日陰につるして保管してください。

水耕栽培の育て方

大きめの球根を選び、10~11月から栽培をはじめます。専用の容器にセットして、球根の底が少しだけ浸かるくらいまで水を入れます。発根するまでは室内の冷暗所または屋外の日陰に置き、寒さに当てて花芽の形成を促します。根に光が当たるときは、容器の周囲をアルミ箔(はく)などで覆うとよいでしょう。

屋外に置いた容器は、1月半ばごろに室内に取り込んでください。発根したら日光の当たる場所に置き、根の先が触れるくらいの水を入れて管理します。容器の水は1週間に1度を目安に入れ替え、清潔を保ってください。状況に応じて、腐敗を防止する薬剤を使用しても構いません。

クロッカスのトラブルと対処法

クロッカスのトラブルと対処法

最後に、クロッカスに起こりやすいトラブルと対処法についてご紹介いたします。

小動物による被害

冬から早春にかけて、ネズミやモグラ、野鳥などに球根を食べられることがあります。ネズミやモグラには忌避剤や振動を与えるグッズなどを用意し、野鳥はネットをかけるなどして対策しましょう。

クロッカスの病気

多湿の環境が続くと、葉がしおれて球根が腐敗する軟腐(なんぷ)病にかかる場合があります。細菌が原因の軟腐病は薬剤が効かないため、病気と思われる株を見つけたら抜き取って処分してください。また、葉の色があせて枯れ、株元などに灰色のかびが発生する灰色かび病にも注意してください。灰色かび病も、見つけ次第すぐに取り除いてまん延を防ぎましょう。

灰色かび病については、「【被害が広がる前に対処しよう!】灰色かび病の症状と対策について」の記事をご覧ください。

クロッカスの害虫

春になると、アブラムシやヨトウムシの被害に遭いやすいので気をつけましょう。とくにアブラムシは、モザイク病の原因となるウイルスを媒介するおそれがあるため、繁殖させないことがポイントです。

元気なクロッカスを育てるには、フマキラーの「カダン アミノパワー (草花用)」がおすすめです。14種類の天然アミノ酸を配合した植物用サプリメントで、葉にスプレーするだけで花つきがよくなり、花も鮮やかに発色します。

育て方が簡単なクロッカスを栽培しよう

育て方が簡単なクロッカスを栽培しよう

今回は、クロッカスの基礎知識や育て方のポイント、具体的な育て方、トラブルと対処法などについてご紹介いたしました。クロッカスは寒さに強く育て方が簡単なため、ポイントを押さえれば初心者の方も気軽に栽培できます。春の開花を心待ちにしながら、この秋はクロッカスを植えてみませんか。

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