スイセン(水仙)の育て方・栽培方法。注意すべき病害虫は?

スイセン(水仙)の育て方・栽培方法。注意すべき病害虫は?

冬から早春にかけて、寒い季節を明るく彩るスイセン。清楚(せいそ)なたたずまいとほのかに漂う香りは、古くから多くの人々に愛されてきました。秋植え球根の中でも寒さに強く育てやすいため、初心者の方も気軽に栽培できる花です。

今回は、スイセンの基礎知識と育て方のポイント、具体的な育て方やトラブルと対処法などについてご紹介いたします。

スイセンの基礎知識

スイセンの基礎知識

はじめに、スイセンの基礎知識を深めましょう。

スイセンの概要

スイセンはヒガンバナ科スイセン属(ナルキッスス属)の多年草で、園芸上は球根類として扱われます。開花期は11~4月で、淡い香りとともに白や黄、オレンジなどの可憐(かれん)な花を咲かせます。スイセンの呼び名は、中国語で水の精を意味する「水仙」をそのまま用いたもので、「雪中花(せっちゅうか)」の別名もあります。

原産地はスペインやポルトガルなど地中海沿岸で、栽培の歴史は長く、古代ギリシャの詩人であるホメロスの詩にも登場します。後に、「フサザキスイセン」と呼ばれる品種がシルクロードを経て中国に渡りました。

日本に伝来した歴史は不明ですが、室町時代の文献にはじめて登場することから、15世紀初頭に持ち込まれたと考えられます。国内では淡路島と越前海岸、南房総の鋸南(きょなん)町がスイセンの三大自生地といわれ、ほかの地域でも多くが海岸沿いに群生しています。

スイセンの種類

スイセンの原種は60種以上あり、現在の園芸用品種は2を超えますが、秋に房状の花が咲くニホンスイセンと、春に1本の茎に1つの花が咲くラッパスイセンの2つの系統に分かれます。また、花が小さく香りが強めのニホンスイセン、高さも花も小さい原種系スイセン、形や色が多彩で花の大きい洋種スイセンに分ける方法もあります。

さらに、イギリスの王立園芸協会(Royal Horticultural Society:RHS)はスイセンを13の系統に分類しています。スイセンの花は花びら(花弁:かべん)と中心部の副花冠(ふくかかん)からなるため、群と花弁の色、副花冠の根元、中心、先端の色を「1W-YWW」といった記号で表します。

スイセンの育て方のポイント2つ

スイセンの育て方のポイント2つ

スイセンの育て方は、次の2点がポイントです。

① 花がら摘み

咲き終わった花(花がら)をこまめに摘み取り、株の衰弱や病気を予防しましょう。スイセンの場合は、花がついている茎の根元から切り取ります。

② 開花期の後

開花期が過ぎたら、光合成および栄養貯蓄を目的として葉を残します。花だんでは数年ほど植えておけますが、鉢植えのスイセンは毎年掘り上げるとよいでしょう。

スイセンの栽培に必要なもの

スイセンの栽培に必要なもの

スイセンを栽培するときには、シャベルやジョウロなどのほかに次のものが必要です。

花だんまたはプランターなど

栽培には、日当たりと水はけのよい場所が適しています。スイセンは病気や生育不良などの連作障害が出にくい植物ですが、なるべく同じ場所での栽培は避けてください。鉢やプランターで栽培するときは、通気性のよい素焼きなどのタイプがおすすめです。

連作障害については、「連作障害とは?連作障害を防いで野菜を育てる方法や予防策を紹介」の記事で詳しくご紹介しています。

球根または芽出し球根

丸い電球のような形で、しっかりと締まって重さがあり、表面に凹凸がなくきれいな球根を選びましょう。ネットにたくさん入っている場合も、外側から触って硬さなどを確認してください。

すでに芽が出ている芽出し球根を購入するときは、葉の色がよく根が張ってグラグラしないものを選びましょう。インターネットなどで購入するときは、信頼のおける店を選ぶと安心です。

球根については、「おすすめの秋植え球根9選」「【春にきれいに咲かせたい!】秋植え球根の植え方を紹介」の記事も参考にしてください。

土と肥料など

花だんの土づくりには、石灰やたい肥、腐葉土(ふようど)、粒状の化成肥料を用意します。水はけが悪いときは、軽石やパーライトを加えてください。鉢やプランターで栽培するときは、市販の草花用または球根用の培養土と、ネットに入れた鉢底石(はちぞこいし)を用意します。追加の肥料は、液体肥料を使用しても構いません。

保管用のネット

球根を掘り上げた後は、通気性のよいネットに入れて保管します。市販の果物や野菜などが入っていたネットを活用してもよいでしょう。

【初心者必見!】スイセンの育て方

【初心者必見!】スイセンの育て方

それでは、スイセンの育て方を順にご紹介いたします。

土の下準備

花だんの土を深く掘り返し、石や古い根などを取り除いて日光消毒します。石灰を混ぜて酸性の土を中和し、たい肥や腐葉土を加えてなじませます。先述のとおり、水はけが悪い土には軽石やパーライトを加えましょう。

植えつける1週間ほど前に、化成肥料を混ぜて準備してください。鉢やプランターの土を再利用する際も、同様に準備してから植えつけます。

植えつけのポイント

スイセンの球根は、一般的に10~11月に植えつけます。ただし、ニホンスイセンは花芽の分化するタイミングが早いため、9~10月上旬までに植えつけましょう。花だんに植えつける間隔は、大きい球根が20cmくらい、中~小の球根は10~15cmくらいで、深さは6~10cmくらいが目安です。

鉢植えの場合は間隔が約5~6cm、深さは4~5cmを目安に植えつけてください。なお、芽出し球根は芽や根を傷めないように丁寧に取り出し、購入した状態と同じくらいの深さに植えましょう。植えた後は、たっぷりと水を与えてください。

日々の手入れ

花だんには基本的に水やりをしませんが、乾燥が続いて土が乾いたときは午前中に水を与えましょう。大雨の後で根元に水がたまったときは、溝を掘って排水させます。鉢植えは土の表面を観察し、乾いていたら午前中に水やりをしてください。なお、鉢植えのスイセンは花が終わっても、葉が黄色く変わるまで水やりをしてください。

ニホンスイセン以外の種類は、花をそのまま残すと種子がついて株が弱ってしまいます。育て方のポイントでお伝えしたように、花がらを見つけたらこまめに茎の根元から切り取りましょう。

肥料の与え方

鉢植えには、発芽後に追加の肥料を与えてもよいでしょう。液体肥料は月に2回くらい、化成肥料は月に1回くらいのペースが目安です。開花期が過ぎたら、花だんにも鉢植えにもお礼肥(おれいごえ)として肥料を与えると、翌年よい開花が期待できます。

開花期が過ぎたら

花だんのスイセンは毎年掘り上げる必要がなく、3年くらいは植えたままで構いません。葉は枯れるまで残し、光合成で栄養分を蓄えさせましょう。葉が枯れたら切り取って夏を越してください。4年目は、葉が黄色くなる6月ごろに葉ごと球根を掘り上げ、1ヵ月ほど陰干しします。葉を取り除いて大きい球根を手で分球し、ネットに入れて風通しのよい日陰につるして保管します。

鉢植えのスイセンは、葉が黄色くなったら毎年掘り上げてください。陰干し・分球作業の後、球根をネットに入れて保管しましょう。

寄せ植えにするときは

スイセンは、寄せ植えにしても楽しめます。2段階の深さに植えつける「ダブルデッカー」と呼ばれる方法では、スイセンの球根を深い位置に植え、ムスカリやクロッカスなどの球根を浅い位置に植えます。ほかの草花と寄せ植えにするときは、全体のバランスが予測しやすくすぐに観賞できる芽出し球根がおすすめです。芽出し球根は、芽や根が傷まないように先に植えるのが一般的です。

また、草花の苗を先に植えて、球根を苗の間に埋め込む「隠し球根」という方法もあります。球根の芽と苗がぶつからないように、位置を考えながら植えつけましょう。

寄せ植えについては、「寄せ植えの基本と作り方。初心者でもおしゃれに仕上げるコツも解説!」「【寒さに負けない!】冬の寄せ植えにおすすめの植物12選」の記事をご覧ください。

スイセンのトラブルと対処法

スイセンのトラブルと対処法

最後に、スイセンの栽培で気をつけたいトラブルと対処法についてご紹介いたします。

スイセンの毒性

スイセンは球根や葉、茎にアルカロイドなどの毒性を含むため、特に小さいお子さんやペットがいる家庭では扱いに気をつけましょう。ニラやノビル、タマネギなどとスイセンを混同するケースが多く、食用にすると食中毒などの症状が出ることもあります。万が一、間違えて食べたときは早急に医療機関を受診してください。

【参考】
厚生労働省「自然毒のリスクプロファイル:高等植物:スイセン類」

軟腐病(なんぷびょう)

スイセンを水はけの悪い場所で栽培すると、軟腐病にかかる場合があります。細菌の繁殖が原因の病気で、長雨の時期などに葉がしおれたり黄色く変色したりした後、腐敗して悪臭を放ちます。軟腐病と思われる株を発見したら、抜き取って処分してください。

モザイク病

アブラムシによってウイルスが媒介される病気で、葉に黄色い縞(しま)のようなモザイク状の模様が出ます。ウイルスの種類によっては、生育不良を起こすこともあります。発病した球根にはウイルスが残るので、株を抜き取って処分しましょう。また、アブラムシを見つけたときも早急に駆除してください。

病害虫対策と育成サポートに『カダンセーフ』

スイセンの栽培には、フマキラーの「カダンセーフ」をおすすめします。スイセンにつくアブラムシやハダニのほか、うどんこ病にも効果があります。食品成分由来の膜が病害虫を包んで退治。害虫は呼吸ができずに窒息死し、病原菌も栄養を得られず死滅します。

家庭菜園や、お子様・ペットのいるご家庭でも安心してご使用いただけます。また活力成分の天然アミノ酸とAO(アルギン酸オリゴ糖)を配合していますので、病害虫対策だけでなく植物の生育もサポートする優れものです。

育て方が簡単なスイセンを栽培しよう

育て方が簡単なスイセンを栽培しよう

今回は、スイセンの育て方を中心に、基礎知識と育て方のポイント、トラブルと対処法などについてご紹介いたしました。スイセンの栽培は、花がら摘みと開花期後の作業に気を配ればそれほど難しくありません。この冬は、雪の中でも健気に咲きほこるスイセンを栽培してみませんか。

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