2020年5月10日 | 園芸・ガーデニング
【初心者でも挑戦できる!】盆栽の育て方や手入れ方法を紹介
盆栽と聞くと、「シニアの趣味」「手入れが難しそう」などのイメージが浮かぶかもしれません。しかし、近年では若い世代に魅力が広まり、海外でも「BONSAI」と呼ばれ人気が急上昇していることから、もはや盆栽は敷居が高い趣味ではなくなりました。
今回は、初心者の方に向けて盆栽の基礎知識を紹介し、手入れのポイントと育て方、トラブルと対処法について解説します。
初心者でも大丈夫!盆栽の基礎知識
はじめに、盆栽の基礎知識を簡単にご紹介します。
盆栽の概要と歴史
盆栽は大自然の美しさや厳しさを小さな鉢に凝縮して表現したもので、植物と鉢を総合的に観賞する芸術作品と言えます。小さな空間に美しさを見いだす日本古来の文化と融合し、個人のセンスで理想の形を追求しながら育てる点が一般的な植木と異なります。
盆栽の歴史は2000年以上前の中国にさかのぼり、「盆景(ぼんけい)」と呼ばれる小さな鉢に植えた植物を観賞した文化が起源と言われます。国内には平安から鎌倉時代の頃に伝わり、足利義政や徳川家光、伊藤博文などの著名人も盆栽を大切に育てました。
盆栽は、最も見栄えがよい「表(おもて)」を見て立ち、鉢を見上げながら観賞する作法があります。はじめに根や株元、次に幹や枝の太さや曲がり方、葉の様子や鉢とのバランス、鉢によっては枯れた幹や枝などを順に評価します。
盆栽の産地は香川県や愛知県、千葉県、栃木県などがありますが、特に埼玉県さいたま市にある「大宮盆栽村」は世界中から愛好家が訪れる聖地として知られ、数々のイベントが開催されています。
盆栽の種類~樹種別
盆栽を樹種で分類する場合は、下記の通りです。
代表格の「松柏(しょうはく)」
盆栽の代表格と言える松の仲間とヒノキ科の真柏(しんぱく)のほか、杉やヒノキなどの針葉樹を指します。一年中緑を楽しめる常緑樹で丈夫なため、初心者にもおすすめの樹種です。
季節を楽しむ「雑木(ぞうき)」
松柏に対し、季節の移り変わりを観賞できる樹種を雑木と呼びます。種類が豊富で冬に葉が落ちる落葉樹が多く、秋の紅葉や春の新芽などを楽しめます。雑木には、花を観賞する「花もの」や実を観賞する「実もの」、野草や山草を観賞する「草もの」があります。
その他
現代では形式にとらわれない盆栽も多く、複数の植物を同じ鉢に植える「寄せ植え盆栽」や、華やかで写実的な寄せ植えを楽しむ「彩花(さいか)盆栽」、フィギュアや小物を配置して独特の世界を作り出す「マン盆栽」などがあります。
そのほか、枯れた状態で仕上げた手入れがいらない「ドライ盆栽」や、土の周りを苔(こけ)で包んだ「苔玉盆栽」、観葉植物のガジュマルなどを盆栽風に植えたタイプなどは、初心者の方も気軽に取り組めます。
なお、苔については「自宅でできる苔(コケ)栽培。コケの育て方、増やし方について」の記事もご覧ください。
盆栽の種類~樹形別
樹形による分類は種類が多いため、主なものをご紹介します。
基本の樹形
最も代表的な樹形は、幹がまっすぐに伸びた「直幹(ちょっかん)」と、幹がゆるい曲線を描く「模様木(もようぎ)」です。初心者の方は、基本の樹形から挑戦するとよいでしょう。
幹の形を楽しむ
幹が下に垂れ下がる「懸崖(けんがい)」、幹が片側に傾いた「斜幹(しゃかん)」、片側に傾いて枝も同じ方向に伸びる「吹き流し(ふきながし)」などは、幹の動きを楽しめます。
そのほかの樹形
幹が細く高く伸びたゆるやかな「文人木(ぶんじんぎ)」、数本の幹が根を共有する「株立ち(かぶだち)」、同じ根から大小の幹が伸びる「双幹(そうかん)」のほか、幹が石にしがみつくような「石付き」、根が土から露出した「根上がり」などがあります。
盆栽の種類~大きさ別
盆栽を高さで分類するときは、鉢の縁(ふち)の上面から樹木の最上部までを計測します。
- 大品(だいひん)盆栽 ・・・ 50cmまたは60cm以上
- 中品(ちゅうひん)盆栽 ・・・ 20~50cmまたは60cm
- 小品(しょうひん)盆栽 ・・・ 20cm以下
- ミニ盆栽 ・・・ 10cm
- プチ盆栽 ・・・ 5cm以下
- 豆盆栽 ・・・ 3~4cm以下
大きいものほど高額で専門的な手入れが必要ですが、小さすぎても水や土の管理の難易度が上がります。したがって、初心者の方は中品からミニのサイズをおすすめします。
手入れは難しい?盆栽の育て方のポイント3つ
盆栽の手入れは難しいと思われがちですが、育て方で大切な点は次の3つです。
① 日当たりのよい屋外で
盆栽は日光を好む植物を植えるので、基本的には屋外で管理します。1日に3~4時間ほど日光の当たる場所が理想的です。
② 水やりを欠かさない
盆栽の育て方で最も大切なことは、水やりと言えるでしょう。後の項目でご紹介するタイミングを参考にして、適切な水やりをおこなってください。
③定期的な消毒
盆栽は、定期的な消毒で病害虫の発症を防ぎます。管理が心配なときは、盆栽の専門店や園芸店のプロに相談しましょう。
盆栽を育てる際に必要な道具
盆栽の手入れをするときには、下記のものを用意してください。
じょうろ・霧吹き
シャワーのように水が出るタイプで、注ぎ口が取り外せるものが便利です。霧吹きは、こまかい枝の部分や苔へ水やりをする際に使用します。
はさみ
せん定をするときに使用しますが、必ずしも盆栽用ではなく、一般的なガーデニング用のはさみで問題ありません。
ピンセット
持ち手の側に「へら」やレーキがついているタイプで、つまみやすいように先端が曲がっているものもあります。はじめはシンプルなタイプを選び、少しずつ使いやすいものをそろえるとよいでしょう。
竹ぐし
土が硬くなり水を通しにくくなったときには、竹ぐしを軽く刺して水の通りをよくする作業を行います。
肥料
液体ではなく、有機質を使用した固形の盆栽用の肥料がおすすめです。鉢が小さいときや土の斜面が多いとき、苔や石があって肥料を置けないときなどは、専用のホルダーを使用してください。
園芸用の薬剤
盆栽につく害虫の駆除や病気の予防として、薬剤を用意しましょう。複数の薬剤をローテーションさせて使うと、病害虫に耐性がつきにくくなります。
植え替え時のツール
数年に1度のタイミングで植え替えをするときは、ペンチや鉢底用のネット、アルミワイヤー、割りばしなどが必要です。
初心者でもOK!盆栽の育て方
それでは、盆栽の育て方と手入れについて順にご紹介します。
盆栽の置き場所
先述したように、盆栽は基本的に日当たりと風通しのよい屋外で管理し、木製の台や棚の上に置きましょう。石やコンクリートの上は日光の反射で熱くなり、冬は冷たくなり過ぎるため適しません。
室内で観賞する場合は、夏は数日、冬は1週間を限度にし、エアコンやストーブの風が当たらない場所に置きます。観賞後は、屋外に戻して十分に日光を当ててください。
水やりのタイミング
植物の大きさに対して鉢が小さい盆栽は、水やりが欠かせません。一般的には春と秋は1日1回、夏は朝と夕に1回ずつ、冬は数日に1回を目安に、土の表面が乾いたタイミングで水を与えましょう。
じょうろの先をシャワーにして、高い場所から樹木の全体にかけます。土の部分にもていねいに与え、小石や砂があるものは流れないように気をつけましょう。枝が込み入った部分や苔は、霧吹きで湿らせます。底から排水を確かめた後、受け皿がある場合は残った水を処分してください。
肥料の与え方
盆栽は土が少なく水やりで養分が流れやすいため、肥料で栄養を補う必要があります。盆栽用の有機質の固形肥料を用意し、梅雨時や真夏を避けた4~11月に与えましょう。説明書に従って、適切な量を株の根元から離れた位置に置いてください。肥料は1~2カ月ほどで溶けるので、その都度追加をしましょう。
せん定と芽摘みなど
盆栽は、せん定や「芽摘み(春先から伸び出す新芽を摘むこと)」といった作業で樹木の形を整え、より観賞価値を高める手入れをしますが、初心者の方はプロのアドバイスを受けるとよいでしょう。せん定は伸びすぎた枝や必要がない枝をカットする作業で、樹木の種類によって時期や方法が異なります。
また、新芽の先端をピンセットで摘み取る芽摘み、伸びた芽をはさみでカットする「芽切り」、不要な芽を取り除く「芽かき」、咲き終わった花を摘み取る「花がら摘み」などのほか、状況によっては針金で形を整える作業も行います。
定期的に消毒を
盆栽の病害虫を防ぐには、植物が休眠する冬の間や、新芽が出る時期、梅雨入り前など定期的に薬剤の散布をします。薬剤は、複数をローテーションして使用することが基本です。
植え替えは数年に1度
根が生長して鉢の中がいっぱいになると、水が浸透せずに水分や栄養を吸収できなくなります。樹木の種類にもよりますが、数年に1度、春や秋に植え替えをして状況を改善しましょう。
ひと回り大きいサイズの鉢を用意し、鉢底のネットに木を固定するためのワイヤーを通して設置します。樹木をていねいに取り出し、土を落として古い根をカットしましょう。新しい鉢に土を入れて好みの角度に樹木を置き、ワイヤーで軽く留めます。すき間に土を入れながら、割りばしで優しく押し込みます。最後に、ワイヤーをしっかり締めて完成です。
盆栽の植え替えの方法は、インターネット上で画像や動画などが公開されているので参考にしてみるのもよいでしょう。
夏の手入れのポイント
夏の手入れとしては、水やりと日差しの対応がポイントです。先述したように、夏の間は朝と夕の2回、小さい鉢は3回与えるケースもあります。旅行などで留守にするときは、家族などに水やりを頼むかタイマーつきの散水機を使用してください。
昼間の強い日差しや西日が当たるときは、置く場所を移動するか遮光ネットをかぶせて保護します。また、夏の間はこまめな観察で病害虫の早期発見に努めましょう。
冬の手入れのポイント
柑橘(かんきつ)類や南国が原産の樹木は、気温が下がったら室内に取り込んで管理してください。鉢は暖房の風が直接当たらない場所に置き、昼間は窓辺で日光浴をさせます。丈夫な松柏類や、寒さに当たることでよい花が咲く梅や桜は屋外に置いたままで構いません。
ただし、雪が降るときは枝が折れないように場所を移動するなどの対処が必要です。冬の水やりは数日に1回を目安に与え、樹木の消毒をして病害虫の予防を心がけましょう。
冬の植物の管理は、「冬のガーデニングで気をつけるポイント」の記事もご覧ください。
盆栽のトラブルと対処法
最後に、盆栽の管理で起こりやすいトラブルと対処法についてご紹介します。
被害に遭いやすい病害虫
樹木の種類にもよりますが、盆栽には白い粉のようなはん点がつくうどんこ病や、褐色のはん点がつく褐斑(かっぱん)病、モザイクのような模様が出るモザイク病、黒いすすのようなカビがつくすす病などが発症することがあります。
また、害虫はアブラムシ、ハダニ、カイガラムシ、ナメクジなどがつきやすいので注意しましょう。病害虫を発見したときはすぐに取り除き、薬剤を散布してまん延を防いでください。
うどんこ病については、「【園芸の大敵!】うどんこ病とは?うどんこ病が発生する原因と対策について」の記事も参考にしてください。
盆栽が枯れる
盆栽が枯れる原因としては、水の与え過ぎや、受け皿に残った水を吸い上げて過湿状態になり、鉢の中で根が腐るといったことが考えられます。反対に、夏の暑さや乾燥などで水分が不足する場合もあり、室内での冷暖房なども枯れる原因に挙げられます。特に小さいサイズの盆栽は、乾燥しやすいので気をつけましょう。
盆栽の葉が落ちる
盆栽の種類によっては、水分が足りない際に蒸発を抑える目的で葉を落とすことがあります。真夏の強い日差しに長く当たると水切れを起こすので、遮光ネットを使用するか場所を移動するなどして対応しましょう。真夏の水やりは昼間を避け、早朝や午前中の早い時間、夕方に与えるのが基本です。
育て方と手入れを覚えて盆栽を身近に
今回は、盆栽についての基礎知識と手入れのポイント、具体的な育て方、トラブルと対処法をご紹介しました。初心者の方は中くらいのサイズの盆栽を選び、育て方のポイントとして置き場所、水やり、消毒の3点を心がけましょう。せん定などに関しては、プロのアドバイスを受けると安心です。この機会に、世界中で愛される盆栽を生活の中に取り入れてみませんか?