2019年7月15日 | 園芸・ガーデニング
グリーンカーテンにおすすめの植物12選
2011年の東日本大震災以降、エコ活動の一環として「グリーンカーテン」が注目を浴び、国内各地でさまざまな取り組みが行われるようになりました。グリーンカーテンは省エネだけでなく、美しい葉や花などを楽しめる点もメリットです。
今回は、グリーンカーテンにおすすめの植物12種類をピックアップし、特徴や育て方のほか、設置の方法も簡単にご紹介します。これからグリーンカーテンの植物を選ぶ方は、ぜひ参考にしてください。
エコ活動につながるグリーンカーテン
グリーンカーテンとは、つる性の植物の特性を生かしてネットに絡ませ、茂った葉で日陰を作る方法です。グリーンカーテンの効果は全国各地で実証されており、設置したときとしないときでは室内の温度に大きな差が出ます。
グリーンカーテンは従来の「すだれ」や「よしず」よりも日射の熱エネルギーを遮断し、面積が広いほど効果が大きくなります。室内の温度が下がればエアコンの消費電力を抑えられるため、省エネにつながります。さらに、グリーンカーテンは美しい葉や花を観賞でき、種類によっては収穫が楽しめる点も大きな魅力です。
グリーンカーテンにおすすめの植物12選
それでは、グリーンカーテンに適した植物を「きれいな花が咲くタイプ」「実の収穫ができるタイプ」「かわいい実を鑑賞するタイプ」「シンプルな緑を楽しむタイプ」の4つに分けてご紹介します。
きれいな花が咲くタイプ
グリーンカーテンできれいな花を楽しむには、次の植物がおすすめです。
① アサガオの仲間
- 概要
アサガオはヒルガオ科サツマイモ属に分類され、世界中でおよそ1,600種類があります。花がやや小さめの「ヒルガオ」や、夜に開花する「ヨルガオ」などもアサガオの仲間です。ウリ科の「ユウガオ」は花が似ているため、ヨルガオと混同して流通することがあります。
- 育て方
化成肥料などを「元肥(もとごえ)」として植え付け、追肥は1週間~10日に1回行いますが、開花後は中止します。タネから育てるときは、5月中旬から準備します。毎朝の水やりを欠かさず、猛暑でしおれる日は夕方以降も与えます。
こまめにつるを誘引し、大輪の花を咲かせるときはメインの「親づる」だけを残します。グリーンカーテンでは脇に出る「子づる」を数本伸ばしてもかまいませんが、花は小さめに咲きます。咲き終わった花は毎日摘み取り、タネを収穫する場合は晩夏の花を残します。
アサガオはハダニなどの害虫が付くことがあるので、異変を発見したら早急に取り除きましょう。
② クレマチス
- 概要
クレマチスはキンポウゲ科センニンソウ属の多年草で、およそ300の原種のうち3分の1は中国で自生します。大輪のあでやかな花は「テッセン」や「カザグルマ」の名でも知られ、イギリスでは「つる性植物の女王」と呼ばれています。
クレマチスは、花芽(はなめ・かが)の付き方から「新枝咲き(しんえだざき)」「旧枝咲き(きゅうえだざき)」「新旧両枝咲き(しんきゅうりょうえだざき)」に分類され、その中で春だけに咲く「一季咲き(いっきざき)」と、春から秋に数回咲く「四季咲き」に分けられます。初心者の方は、新枝咲きの四季咲きを育ててみましょう。
- 育て方
植え付け時は元肥を施し、真夏を除いて定期的に追肥します。水を切らさないように育て、適宜つるを誘引しましょう。終わった花は摘み取り、品種によってはせん定をして次の開花に備えます。
開花の時期が終わったら、地植えにしてつるを楽しめます。庭がない場合はひと回り大きな鉢に植え替え、株元から10センチ程度に切り戻します。完全に乾かない程度に水やりし、暖地では屋外で越冬します。クレマチスは立枯病やうどんこ病、アブラムシなどの被害が出ることがあります。
③ ルコウソウ
- 概要
ヒルガオ科のルコウソウはかつてルコウソウ属でしたが、現在はサツマイモ属に分類する場合もあります。赤や白、ピンク、オレンジと花色が多いので、色違いの株を植えても楽しめます。暑さに強く手入れも簡単なため、グリーンカーテンにおすすめの植物です。
- 育て方
元肥を施した土に植え付けて定期的に追肥をしますが、肥料が多すぎると花が咲きにくくなります。水が切れないように管理し、随時つるを誘引しましょう。混み合う部分はカットしても生育に支障は出ません。
咲き終わった花は摘み取りますが、晩夏の花を残せばタネが収穫できます。ルコウソウは、アブラムシやハダニが付くことがあるので注意しましょう。
実の収穫ができるタイプ
続いて、グリーンカーテンで実の収穫も楽しめる植物をご紹介します。
④ キュウリ
- 概要
ウリ科キュウリ属のキュウリは、世界中でおよそ500種類が栽培されています。店先で見るキュウリのほとんどは「白イボキュウリ」ですが、園芸店ではさまざまな品種の苗が流通しています。品種改良によって、早くからたくさん結実するものや病気にかかりにくいものが次々と開発されています。
- 育て方
野菜を育てるときは、油かすや草木灰(そうもくばい)などの有機質肥料を元肥にして植え付けます。キュウリは結実し始めたら追肥を行い、収穫の期間は2週間に1回のペースで与えます。
特にキュウリは多くの水分を必要とするので、朝夕の水やりは欠かせません。つるは常に誘引し、葉が付く部分の「節(ふし)」が4~5つまで伸びたら、下にある葉や芽などは摘み取ります。それ以降の子づるは伸ばして本葉が2枚のときに「摘芯(てきしん)」を行い、親づるも2メートルくらいで摘芯すると実が大きくなります。
最初と2番目の実を10センチくらいで収穫すれば、後もよく結実します。キュウリはどんどん実が成るので、栄養分が凝縮した早朝に収穫しましょう。またキュウリはうどんこ病やべと病などが多く発症し、アブラムシやハダニなどの被害に遭うこともあります。
なお、連作(れんさく)障害を避けるため、毎年同じ土でキュウリを育てないようにしてください。
キュウリの育て方については「家庭菜園でのきゅうりの育て方やコツをご紹介【初心者でも安心】」で詳しくご紹介しています。
⑤ ゴーヤ
- 概要
ゴーヤはウリ科ツルレイシ属に分類され、「ニガウリ」や「ツルレイシ」とも呼ばれます。実はビタミンCやミネラルのほか、食欲を増進させる苦み成分を含みます。淡い緑や白い実が成る品種もあり、近年では品種改良で苦みを抑えたものも流通しています。
- 育て方
植え付け時に有機質肥料を施し、その後は3週間ごとに追肥をしますが、与えすぎると葉が茂って実が付かなくなります。毎朝の水やりを欠かさず、つるを誘引して親づるの本葉が4~5枚になったら摘芯をします。
実を充実させたいときは、数本の子づるを残してカットします。ゴーヤは暑いほどよく結実して大きい実が育つので、イボが盛り上がってつやのある実はどんどん収穫しましょう。葉が茂って通気性が悪い場所は、せん定しましょう。
ゴーヤは比較的丈夫な植物ですが、うどんこ病や炭疽(たんそ)病、アブラムシやヨトウムシの仲間などの被害に遭う場合もあります。またキュウリ同様、ゴーヤも連作(れんさく)障害を起こす可能性がありますので、毎年同じ土でゴーヤを育てないようにしてください。
⑥ パッションフルーツ
- 概要
トケイソウ科トケイソウ属のパッションフルーツは、濃厚で甘酸っぱい果実が成ります。別名「クダモノトケイソウ」とも呼ばれ、時計の文字盤を思わせる鮮やかで大きな花が咲きます。トケイソウの仲間は500種類を超え、観賞用と食用があります。
- 育て方
元肥を施した土に植え付け、その後は2カ月に1回くらいで追肥します。特に結実の時期は水切れに注意しますが、加湿になると根腐れを起こします。根元から30センチほどまでは脇の芽を取り除き、親づるが1~1.5メートルの間は横向きに誘引します。
芽が付く子づるは上向きに誘引して、収穫までせん定せずに伸ばしましょう。開花の2カ月後に結実し始め、軽く持って取れる頃に収穫します。季節が終わったら弱った部分をカットし、つるを1メートル以内に切り戻して室内で越冬します。パッションフルーツは立枯病やアブラムシ、カイガラムシの被害に遭いやすいので気を付けましょう。
⑦ ミニカボチャ
- 概要
ウリ科カボチャ属のカボチャは、店頭で見るものの大半が「西洋カボチャ」です。ホクホクで食感のよいミニカボチャは、西洋カボチャを小型に品種改良したものです。ハロウィン用の「オモチャカボチャ」は「ペポカボチャ」に属し、食用には向きません。
- 育て方
ミニカボチャは、大きめのプランターに1つの苗を植え付けましょう。少なめの有機質肥料を元肥にして植え付け、結実したら追肥します。毎朝の水やりを欠かさず、親づるの葉が5~10枚のときに摘芯します。
その後に伸びた子づるは2~4本残し、適宜誘引しましょう。脇の芽を取り除いて管理すると結実するので、実がつながる部分が固くなったら収穫します。食用のミニカボチャは、収穫後に1週間ほど置くと甘みが増します。
実を期待しないときは、子づるを摘み取らずに伸ばしてもかまいません。カボチャは病害虫が少ない植物ですが、うどんこ病にかかることがあるので気を付けましょう。
かわいい実を観賞するタイプ
次は、グリーンカーテンでかわいい実が楽しめるタイプをご紹介します。
⑧ フウセンカズラ
- 概要
フウセンカズラはムクロジ科フウセンカズラ属に分類され、管理が簡単なことからグリーンカーテンにおすすめの植物です。白い小花が咲いた後に、風船のような実がたくさん付きます。黒地にハートの模様が付いた愛らしいタネも人気があります。
- 育て方
植え付け時には元肥を施し、真夏を除いて定期的に追肥します。毎朝の水やりを欠かさず、つるのひげが絡まないように誘引します。本葉が5~6枚になったら摘芯を行い、伸びた子づるを横に誘引するとどんどん葉が茂ります。
生長が速いフウセンカズラは、次々とかわいらしい実が成ります。タネは3粒収穫できるので、保管をして翌年はタネから育ててみましょう。フウセンカズラはハダニが発生することがあるため、葉の裏から霧吹きで水をかけると予防ができます。
⑨ オキナワスズメウリ
- 概要
ウリ科オキナワスズメウリ属のオキナワスズメウリは「琉球オモチャウリ」の名でも流通し、「ヤマゴーヤ」「ちゅらウリ」とも呼ばれます。緑地に白いストライプが入った2~3センチの実は、熟すと黄色から赤に変わりますが、有毒のため食用にはできません。
- 育て方
元肥を施した土に植え付け、リンを含んだ肥料を定期的に与えます。暑さに強い植物ですが、水が切れやすいので注意しましょう。生長の速いつるは、毎日誘引をして形を整えます。ゴーヤに比べるとやや葉が小さいため、ほかの植物と混ぜてグリーンカーテンにするのもおすすめです。
環境がよければ、ひと夏で100個ほどの実が収穫できます。色の異なる実を段階的に収穫すれば、インテリアとしても楽しめます。オキナワスズメウリは病気になりにくい植物ですが、アシビロヘリカメムシが付くことがあります。
シンプルな緑を楽しむタイプ
緑のグリーンカーテンを観賞するには、次の植物がおすすめです。
⑩ アイビーの仲間
- 概要
ウコギ科キヅタ属に分類されるアイビーは、学名の「ヘデラ」で呼ばれることもあります。よく見かける「セイヨウキヅタ(ヘデラ・へリックス)」は「イングリッシュ・アイビー」とも呼ばれ、園芸用だけでも500種を超えます。葉の大きな「オカメヅタ(ヘデラ・カナリエンシス)」なども育てやすい品種です。
- 育て方
植え付け時は元肥を施しますが、追肥はほとんど必要ありません。水が切れないように管理し、つるは適宜誘引します。ゴーヤに比べるとやや生長が遅いため、グリーンカーテンにするときは壁際などで数年かけて育てましょう。
常緑のアイビーは、伸びすぎたつるをせん定すれば1年中観賞でき、挿し木にして増やすことも可能です。基本的に丈夫で育てやすい植物ですが、すす病や炭疽病、アブラムシやカイガラムシの被害に遭う場合もあります。
⑪ ワイヤープランツ
- 概要
タデ科ミューレンベッキア属のワイヤープランツは、細いワイヤーのような茎に小さな葉がたくさん付く植物で、寄せ植えやグラウンドカバーなどにも向きます。葉は丸いタイプとスペード型のタイプがあり、ごく小さい花が付きます。常緑の低木で丈夫な上、挿し芽で増やすことも可能です。
- 育て方
元肥を施して植え付け、夏と冬を除いて時折追肥を行います。随時つるを誘引しますが、ゴーヤと比べると生育は遅めです。水切れを起こすと葉がチリチリになるので気を付けましょう。また、日光が強すぎると葉が焼けることがあるため、西側などの日照時間が短い場所への設置がおすすめです。
葉が茂りすぎた場所は、適宜せん定して整えましょう。霜に当たると葉が落ちますが、根が元気であれば春に新芽が出ます。ハダニやアブラムシが付かないように、葉水を与えて予防してください。
⑫ ツルムラサキ
- 概要
ツルムラサキ科ツルムラサキ属に分類され、ビタミンB2やC、カロテン、鉄分などの栄養が豊富でお浸しや和え物にして食べられます。食用には緑色の苗が販売されていますが、タネからも育てられます。ツルムラサキは葉だけでなく、茎やつぼみ、花も食用にできます。
- 育て方
深型の大きなプランターに有機質肥料を混ぜ込んだ土を用意し、3~5株を植え付けて1カ月に1度のペースで追肥します。乾燥防止に敷きわらを施して、毎朝水やりを行いましょう。高さが20~30センチほどになったら摘芯し、脇から伸びる子づるを誘引します。
つぼみの時期に、子づるを15~20センチくらいずつ摘み取ると株が弱りません。ツルムラサキは丈夫で育てやすい植物ですが、アブラムシやヨトウムシが付くことがあります。
初心者にもできる!グリーンカーテンの作り方
最後に、グリーンカーテンを設置する際に準備するものと手順をご紹介します。
【準備するもの】
- プランター
- 土と肥料
- ネットやトレリスなど
- フックなどの金具
- 植物の苗
- ビニタイやひもなど
【設置の手順】
- ① 安全な場所を選択
集合住宅では、設置ができないところや許可が必要なところがあります。
- ② 苗の植え付け
栄養が豊かな土を用意し、元気な苗を植え付けましょう。
- ③ ネットやトレリスなどを設置
フックや金具などを用いてしっかりと設置し、台風の対策も行います。
- ④ 植物の誘引・管理・収穫
毎朝の水やりを欠かさず、育て方に沿って管理をしましょう。
- ⑤ 片付けと植え替えなど
季節が終わったら片づけを行い、冬越しをする植物は切り戻しや植え替えを行います。グリーンカーテンの詳しい作り方については、「初心者でもできる美しいグリーンカーテンの作り方」をご覧ください。
グリーンカーテンでお気に入りの植物を育てよう
今回は、グリーンカーテンにおすすめの植物を12種類ご紹介しました。グリーンカーテンに向いている植物は比較的育てやすいので、目的に合わせて種類を選びましょう。グリーンカーテンの設置と管理に慣れてきたら、連作を避けるためにも毎年異なる種類を育ててみてください。
植物の効果を最大限に利用しながら、夏はグリーンカーテンで省エネに貢献しませんか?