【サツマイモの育て方】栽培方法から病害虫対策・収穫まで詳しく解説

【サツマイモの育て方】栽培方法から病害虫対策・収穫まで詳しく解説

秋の味覚といえば、ホクホクとした食感と甘さが魅力のサツマイモをイメージする方が多いでしょう。サツマイモは育て方が簡単なため、家庭菜園でも収穫できます。

今回はサツマイモの育て方を中心に、基礎知識と育て方のポイント、栽培時のトラブルと対処法などについてご紹介いたします。

サツマイモの基礎知識

サツマイモの基礎知識

はじめに、サツマイモの基礎知識を深めましょう。

サツマイモとは

サツマイモはヒルガオ科サツマイモ属の一年草で、「甘藷(かんしょ)」「唐(から)いも」などの別名もあります。主な産地は鹿児島県や茨城県、千葉県などの温暖な地域です。旬は9~11月ですが、収穫後に適切な温度で保管しているため、季節を問わず店頭に並びます。

原産はメキシコを中心とした熱帯アメリカで、紀元前800~1000年ごろから栽培されていました。15世紀にコロンブスがアメリカからヨーロッパへ持ち帰りますが、冷涼な気候では思うように育たず、やがて気温の高いアフリカやインドなどを経て東南アジアや中国に広まりました。

国内では、1600年代にかつての琉球(現在の沖縄)から薩摩(さつま:現在の鹿児島県)へ伝わり、「サツマイモ」と呼ばれるようになりました。江戸時代に、蘭学者(らんがくしゃ)の青木昆陽(あおきこんよう)が栽培方法を研究して書物をまとめると、徳川吉宗の指示によって全国に広まります。

栄養の少ないやせた土でも育ち、根と茎を食用にできるサツマイモは、江戸時代の飢饉(ききん)や戦時中などには多くの人々を救いました。

サツマイモの種類

一般的に、ホクホクした「粉質(こなしつ)タイプ」としっとりした「粘質(ねんしつ)タイプ」に分かれます。粉質には主に「紅あずま」や「高系(こうけい)14号」、粘質には「安納芋(あんのういも)」や「べにはるか」などがあります。

サツマイモの多くは紡錘(ぼうすい)形で、細長いものや短い円筒(えんとう)形のものも流通します。果肉の色はベージュを中心に黄金色や紫、オレンジなどで、皮が白い品種もあります。

サツマイモの栄養

サツマイモは炭水化物が豊富で、ビタミンB6やC、β-カロテン、カリウムやカルシウム、食物繊維などを含みます。自然な甘みを生かして、おかずやデザートまで幅広く利用できる点がメリットです。

なお、切り口から出る白い液は「ヤラピン(ヤラピン酸エステル結合)」と呼ばれるヤニ成分で、整腸作用が期待できます。

【参考】
文部科学省 日本食品標準成分表
日本農学アカデミー 資料「食と健康に貢献するサツマイモ育種の現状と未来」

サツマイモの育て方のポイント2つ

サツマイモの育て方のポイント2つ

サツマイモの育て方は、次の2点がポイントです。

① 植えつけ

サツマイモは、葉が伸びている「節(ふし)」の下にイモがつきます。複数の節をしっかりと土の中に埋め、葉は土の上に出して植えつけてください。植えつけは、地面の温度が15℃以上になる5月以降から入梅前に作業します。

② つる返し

植えつけから2ヵ月を過ぎるとつるが伸び、地面に根を下ろす部分が出てきます。そのままでは栄養が分散してつるにイモがついてしまうため、根づいた部分を引き抜いて根を切り、つるを畝(うね)の上に乗せる「つる返し」をおこないます。

サツマイモの栽培に必要なもの

サツマイモの栽培に必要なもの

サツマイモを栽培するときは、シャベルなどのツールのほかに以下のものを用意してください。

畑またはプランター

栽培する畑は、日当たりがよくやや乾燥した場所を選びましょう。サツマイモは病気などの連作障害(れんさくしょうがい)が出にくい野菜ですが、なるべく前年にヒルガオ科の植物を植えた場所を避けて栽培してください。

プランターは幅65cmくらい、高さ38cmくらいの根菜用が適しています。プランター栽培では、つるを支柱やネットなどにビニタイで留めながら管理しても構いません。

土と肥料など

畑にはたい肥と腐葉土(ふようど)を用意し、後にご紹介する方法で準備してください。サツマイモは酸性の土壌でも育つため、酸度計で計測してph5.0~7.0の間であれば、石灰で中和する必要はありません。プランターで栽培する場合は、野菜用の培養土を用意しましょう。

栄養の少ない環境でも育つサツマイモは、チッソ分が多いとつるが茂ってイモが小さい「つるぼけ」の症状が出るので注意しましょう。毎年のように野菜を栽培する畑は植えつけ前の元肥(もとごえ)が不要で、追加の肥料もほとんど与えません。

サツマイモの苗

サツマイモの苗は、茎と葉だけの「挿し穂(さしほ)」と呼ばれる状態で販売されることが一般的です。苗は長さ20~30cmくらいで、茎が太く節の間が間延びしていないものを選びましょう。色がよく、厚みのある葉が5~6枚ついているものがおすすめです。

購入してすぐに植えつけるのが理想ですが、翌日以降に作業するときは水を入れた容器に挿すか、プランターなどに仮植えしましょう。

黒色のマルチシートなど

畑では、黒のポリエチレンフィルムで土をマルチングしながら栽培します。マルチシートには、雑草対策や寒冷地の保温などの役割があります。シートは穴のないタイプを選び、カッターなどで穴を開けてから植えつけます。マルチングを押さえるときは、専用のピンなどを使用してもよいでしょう。

マルチングについては、「園芸におけるマルチングとは?効果や使用方法、注意点をわかりやすく解説」の記事をご覧ください。

コンパニオンプランツ

コンパニオンプランツとは、生育するうえでよい影響を与え合う植物のことです。近くに植えると害虫の忌避などが期待できるため、経験者の方は取り入れてもよいでしょう。サツマイモのコンパニオンプランツとしては、ゴマやエダマメ、赤ジソなどが知られます。

コンパニオンプランツについては、「コンパニオンプランツを活用し野菜を栽培しよう!植え方や組み合わせ一覧」の記事で詳しくご紹介しています。

【初心者におすすめ】サツマイモの育て方

【初心者におすすめ】サツマイモの育て方

それでは、サツマイモの育て方を順にご紹介いたします。

植えつけ前の下準備

畑の土を深く掘り返し、石や古い根などを取り除いて日光に当てます。よく耕してからたい肥や腐葉土を加え、必要であれば植えつける1週間ほど前にイモ用の有機質肥料を混ぜます。続いて、幅45~50cm、高さ20~30cmの畝(うね)を作りましょう。

植える数日前までに畝に黒いマルチシートを敷き、カッターなどで30~35cm間隔に横長の穴を開けておきます。

苗の植えつけ

サツマイモの苗は、次の4つの方法から選んで植えつけます。どの方法も、葉を土の上に出して植えてください。

斜め植え

斜め植え
短い苗に適した方法で、3~4つほどの節を土の表面に対して斜めに埋めます。土の上から茎を押し込むか、棒などで斜めに掘った溝に植えます。少量の土をかぶせ、しっかりと押さえてから水を与えましょう。

水平植え

水平植え

長い苗に適した方法で、土の表面に対して平行に節を3~4つほど埋めます。棒などで深さが5~10cmほどの溝を作ると簡単です。深過ぎると地温が下がって、イモがつきにくいので注意しましょう。同様に少量の土をかぶせ、しっかりと押さえてから水を与えてください。

垂直植え

垂直植え

苗の根元または数本の節を垂直に植える方法です。場所を取らず小さい苗でも植えられる点がメリットで、比較的早く収穫できます。土の中にある節が少ないため収穫量は減りますが、イモ1個あたりの重量は増えて丸い形に育ちます。

船底植え

船底植え

土を船の底のような形に掘って節を3~4つほど植える方法で、家庭菜園におすすめです。節がしっかりと土の中に埋まるので、少ないスペースでも収穫量が期待できます。同様に少量の土をかぶせ、しっかりと押さえてから水を与えてください。

日々の手入れ

畑のサツマイモは、植えてから3~4日は毎朝水を与え、その後はほとんど水やりをしません。プランターに植えた後は10日ほど毎朝水を与え、その後は土の表面が乾いたときに水やりをします。土の乾燥が早い夏の間は、早朝と夕方の2回水を与えましょう。つるを支柱などに誘引するときは、絡まないように気をつけてください。

畑は植えつけから1ヵ月ほど過ぎると雑草が生えてくるため、つるに絡まないうちに抜き取ります。また、育て方のポイントでお伝えしたとおり、畑に植えて2ヵ月ほど過ぎたら定期的に「つる返し」をおこないます。土に根づいたつるの部分を引き抜き、根を切ってからつるを畝の中央に乗せておきましょう。

サツマイモは基本的に追加の肥料を与えませんが、葉の色が薄いときやつるが伸びないときだけ、有機質肥料を少量施してください。

収穫と保管

サツマイモの収穫期は9~11月で、一般的には植えつけから4~5ヵ月後です。9月を過ぎて葉が枯れてきたら、晴れた日の朝に大きめのイモから順に収穫します。つるを株元で切り取り、マルチシートをめくってシャベルでイモを掘り出しましょう。

収穫したイモを屋外に並べ、外側が乾いたら夕方に取り込んでください。通気性のよい段ボールなどに入れ、12~14℃くらいの冷暗所で保管します。収穫して数週間くらい置くと、デンプンが糖に変わって甘みが増します。霜が降りるとイモが傷むので、秋の間に収穫を済ませましょう。

サツマイモ栽培のトラブルと対処法

サツマイモ栽培のトラブルと対処法

最後に、サツマイモの栽培で起きやすいトラブルとその対処法についてご紹介いたします。

サツマイモの病気

葉が変色してつるが伸びない「立枯病(たちがれびょう)」や、落葉してつるが裂ける「つる割(われ)病」などにかかることがあります。どちらも病原菌が繁殖するため、病気が疑われる部分を見つけたらすぐに取り除いてまん延を防ぎましょう。

サツマイモの害虫

サツマイモを連作したときには、根にネコブセンチュウが発生しやすいので気をつけてください。また、コガネムシの幼虫やハスモンヨトウ、アブラムシなどがつくこともあります。とくに、病気のウイルスを媒介するアブラムシは早急に駆除しましょう。

サツマイモの栽培には、フマキラーの「カダンセーフ」がおすすめです。野菜類に発症したうどんこ病や灰色かび病のほか、アブラムシやハダニにも効果があります。食品成分由来の膜が病害虫を包んで退治。害虫は呼吸ができずに窒息死し、病原菌も栄養を得られず死滅します。

サツマイモなどを栽培する家庭菜園や、お子様・ペットのいるご家庭でも安心してご使用いただけます。また活力成分の天然アミノ酸とAO(アルギン酸オリゴ糖)を配合していますので、病害虫対策だけでなく植物の生育もサポートする優れものです。

サツマイモの育て方は想像するよりも簡単!

サツマイモの育て方は想像するよりも簡単!

今回は、秋の味覚「サツマイモ」の育て方を中心に、基礎知識と育て方のポイント、トラブルと対処法などについてご紹介いたしました。育て方のポイントである「植えつけ」と「つる返し」を心得れば、サツマイモの栽培はそれほど難しくありません。新鮮でおいしいサツマイモを、家庭菜園で収穫しませんか。

「For your LIFE」で紹介する記事は、フマキラー株式会社または執筆業務委託先が信頼に足ると判断した情報源に基づき作成しておりますが、完全性、正確性、または適時性等を保証するものではありません。

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