2021年12月17日 | 園芸・ガーデニング
【クリスマスローズの育て方】栽培方法や注意すべき病害虫を紹介
寒々とした冬の庭に、ひっそりと咲くクリスマスローズ。その楚々(そそ)としたたたずまいは、多くの人々の心を惹きつけます。今回は、「冬の貴婦人」の別名をもつクリスマスローズの概要と歴史、育て方のポイントと具体的な育て方、トラブルと対処法などについてご紹介いたします。
クリスマスローズの基礎知識
はじめに、クリスマスローズの基礎知識からご覧ください。
クリスマスローズとは
クリスマスローズはキンポウゲ科クリスマスローズ属(ヘレボルス属)に分類される多年草で、多くは常緑ですが一部の品種は落葉します。耐寒性があり、日照時間が短い場所でも生育します。開花期は12~3月で、花の色は白やピンク、紫、緑、黒などで、一重(ひとえ)・八重(やえ)・中間の半八重(はんやえ)咲きが楽しめます。
茎がなく根元から葉柄(ようへい)と花柄(かへい)が伸びる「無茎種(むけいしゅ)」と、茎がある「有茎種(ゆうけいしゅ)」があります。クリスマスローズの名前は、原種の「ヘレボルス・ニゲル(Helleborus niger)」が12月末にバラのような花を咲かせることに由来します。
原産と歴史
原産地は東西ヨーロッパや中東、中国などで、国内にも自生します。5~15世紀ごろのヨーロッパでは、クリスマスローズを主に薬草として栽培していました。19世紀後半には品種改良がはじまり、20世紀後半にイギリスが本格的な改良に乗り出しました。
国内には江戸時代の末期に伝わり、当初は薬用として輸入していました。後に「初雪おこし」や「寒芍薬(かんしゃくやく)」の和名がつき、茶席に飾られた時代もあります。栽培園を営む野口氏が1990年代にイギリスの新種を紹介すると、クリスマスローズのブームが到来。現在も品種改良が盛んにおこなわれ、多くの新種が作出されています。
クリスマスローズの種類
ヨーロッパでは原種のニゲルのみをクリスマスローズと呼び、かけ合わせたものは「ガーデンハイブリッド」などの名前で区別しています。しかし国内では、原種とかけ合わせを含めたヘレボルス属の全体をクリスマスローズと呼んでいます。
クリスマスローズの原種は20種ほどで、多くは一重のシンプルな花を咲かせます。国内で流通するクリスマスローズは、主にオリエンタリス系ハイブリッドと呼ばれるものです。原種に近いシンプルなもののほか、花びらに点や縁(ふち)取り、2色が入るもの、フリル状に咲くものや小さい花がたくさん咲くものなど、さまざまな品種があります。
クリスマスローズの育て方のポイント2つ
クリスマスローズの育て方のポイントは、次の2点です。
① 花がらと古い葉を取る
咲き終わった花(花がら)を花がらの根元から切り取り、株の衰弱と病気を予防しましょう。また、2年目以降のクリスマスローズは古い葉を取り除いて翌年の開花に備えます。
② 夏の暑さに注意
クリスマスローズは冬に開花して、夏は休眠期に入ります。強い日差しや蒸れに注意し、風通しのよい場所で夏越しさせましょう。
クリスマスローズの栽培に必要なもの
クリスマスローズを栽培するときは、シャベルなどの基本的なツールのほかに次のものを用意してください。
花だんまたはプランターなど
花だんで栽培するときは、水はけがよく数時間ほど日が当たる半日陰(はんひかげ)の環境を選びましょう。落葉樹の根元などは、夏は木陰で秋から春に日が当たるおすすめの場所です。鉢植えで栽培するときは、通気性のよい素焼きなどの素材を用意してください。鉢底石(はちぞこいし)は、ネットに入れて使用すると便利です。
クリスマスローズの苗
タネからの栽培は時間がかかるうえ管理も難しいので、初心者の方は苗を購入することをおすすめします。クリスマスローズの苗には、タネから育てた「実生(みしょう)苗」と組織から培養した「メリクロン苗(バイオ苗など)」があります。初心者の方は、生育が速くイメージどおりの花が多く咲くメリクロン苗を選ぶとよいでしょう。
なかには、開花までに1年以上必要な苗もあります。シーズン中に花を楽しむには、12月ごろから店頭に並ぶ「開花株」を購入してください。なお、苗は葉や茎の色がよくイキイキとしたものを選び、葉や茎に黒いスジがあるもの、葉に斑(はん)が入っているものは避けてください。
土と肥料など
花だんで栽培するときは、石灰やたい肥、腐葉土(ふようど)を用意します。水はけをよくするときは、軽石や赤玉土(あかだまつち)などを加えましょう。鉢植えの栽培には、クリスマスローズ用の土を用意すると便利です。
クリスマスローズには粒状の化成肥料を与えますが、生育期には液体肥料でも構いません。また、夏の日差しが強すぎるときは遮光ネットで保護してください。
【冬の貴婦人】クリスマスローズの育て方
それでは、クリスマスローズの育て方を順にご紹介いたします。
土の下準備
花だんで栽培するときは、土を50cmくらいの深さまで掘り返し、古い根や小石などを取り除いておきます。日光に当てて消毒し、石灰をまいて土壌を中和させましょう。たい肥と腐葉土のほか、水はけが悪いときは軽石や赤玉土を加えます。植えつける1週間ほど前に、化成肥料を混ぜてください。プランターの土を再利用するときも、同様に作業しましょう。
植えつけと寄せ植え
植えつけの作業は、10~12月が目安です。根がよく張るクリスマスローズは、株の間を40~50cmくらい空けて植えつけます。水はけをよくするために、土を盛り上げた畝(うね)に植えるか、苗土の表面が植える場所の土より少し出る深さに植えましょう。植えつけた後は、たっぷりと水を与えてください。
なお、クリスマスローズは根の刺激を嫌うこと、ほかの草花との性質が異なることなどから、基本的に寄せ植えには向きません。ただし、ムスカリやクロッカスなどの球根類であれば植え替えをしないので、株の間に植えられます。
ビオラなどの草花と寄せ植えにするときは、大きめの鉢の内側をアクリル板などで仕切って植えつけ、根の絡まりや肥料の流出を防いでください。春が過ぎたら咲き終わった草花を抜き取り、夏の間は半日陰でも育つツルニチニチソウなどを植えるとよいでしょう。
寄せ植えについては「寄せ植えの基本と作り方。初心者でもおしゃれに仕上げるコツも解説!」の記事で詳しくご紹介しています。
日々の手入れ~冬から春
花だんに植えつけた後の1ヵ月くらいは、土の表面が乾いたら水やりをします。その後は基本的に雨水だけで構いません。鉢植えは半日陰に置き、土の表面が乾いたら午前中から昼間に水を与えてください。
クリスマスローズは耐寒性があるため、保温の必要はありません。ただし、冷たい北風が強く当たるとき、霜が降りる日や雪の降る日は軒下(のきした)などに移動しましょう。育て方のポイントでお伝えしたとおり、花がらは根元から切り取ってください。弱った葉や枯れた葉も、見つけ次第取り除きます。
追加の肥料は、花だんには10月ごろに1回、鉢植えには10~4月の間に月に1度くらいのペースで与えてください。液体肥料は、既定のとおりに薄めて数週間に1度を目安に与えましょう。
日々の手入れ~春から秋
花が終わると、冬の開花に向けて光合成をしながら新しい葉が生長します。開花期が過ぎても、鉢植えは同様に水やりを続けてください。6~8月は、クリスマスローズの生育が止まる時期です。鉢植えや花だんで寄せ植えをしているときは、ほかの植物に与えた肥料がクリスマスローズに流出しないように注意しましょう。
夏の間の鉢植えは、風通しがよく木もれ日の当たるような場所、明るい日陰などに置きます。加湿を避け、枯れない程度にやや乾燥気味に管理してください。梅雨の期間や台風などの荒天時は、鉢植えを軒下などに移動します。日当たりのよい花だんには、遮光ネットなどで日陰を作るとよいでしょう。
9月を過ぎて暑さが落ち着いたら、冬~春と同様に管理します。11~12月ごろは全体的に葉が倒れてくるので、育て方のポイントでお伝えしたように新芽を残して古い葉を取り除き、翌冬の開花に備えてください。
植え替えと株分け
クリスマスローズを何年も同じ鉢に植えていると、根詰まり(ねづまり)を起こして生育に支障をきたします。とくにクリスマスローズは根がよく張るため、1~2年ごとを目安に1~2回り大きい鉢に植え替えましょう。植え替えの作業は10~12月が適しており、遅くても3月までにおこないます。
植え替える株は前日と当日の水やりを控え、あらかじめ植えつける土を湿らせておきます。鉢から株を取り出し、根の周囲と底を3~4割くらいほぐしてから新しい鉢に植え替えましょう。植え替えの直後は水やりをせず、翌朝にたっぷりと与えてください。植え替え後の1週間は半日陰に置いて様子を見ましょう。
春に植え替えるときは、なるべく根に刺激を与えないようにして作業します。なお、大きい株であれば、秋に株分けをして植え替えることも可能です。2本のガーデンフォークの背を互い違いに合わせ、株に挿して広げると簡単に分けられます。1つの株には、3つ以上の芽をつけて分けてください。
また、春にはこぼれ種から出た芽が顔を出すことがあります。本葉が見えはじめたころに深く掘り上げ、園芸用のポットで大きくなるまで栽培してもよいでしょう。
根詰まりについては、「根詰まりとは?根詰まりサインや失敗しない植え替え方法を解説」の記事をご覧ください。
クリスマスローズのトラブルと対処法
最後に、クリスマスローズに起こりやすいトラブルと対処法についてご紹介いたします。
クリスマスローズの病気
開花後に落ちた雄しべなどに菌が発生する「灰色かび病」、葉がべとついて色があせたり変色したりする「べと病」、葉にモザイクのような模様が出る「モザイク病」、葉や茎に黒いスジが出て葉がよれる「ブラックデス」などにかかることがあります。
病気と思われる部分はすぐに取り除き、まん延を防いでください。ウイルスが原因とされるモザイク病やブラックデスなどには薬剤が効かないので、発症の状況によっては株ごと抜き取る場合もあります。
灰色かび病は「【被害が広がる前に対処しよう!】灰色かび病の症状と対策について」、べと病は「べと病とは?べと病が発生する原因と対策について」、モザイク病は「モザイク病とは?モザイク病が発生する原因と対策について」の記事で詳しくご紹介しています。
クリスマスローズの害虫
アブラムシやハダニ、アザミウマ、ヨトウムシなどがつくことがあります。害虫も見つけ次第すぐに駆除して、被害の拡大を防ぎましょう。
クリスマスローズの栽培には、フマキラーの「カダンセーフ」をおすすめします。
食品成分由来の膜が病害虫を包んで退治。害虫は呼吸ができずに窒息死し、病原菌も栄養を得られず死滅します。屋内での使用や、お子様・ペットのいるご家庭でも安心してご使用いただけます。また活力成分の天然アミノ酸とAO(アルギン酸オリゴ糖)を配合していますので、病害虫対策だけでなく植物の生育もサポートする優れものです。
クリスマスローズの育て方をマスターしよう
今回は、世界中の人々に愛されるクリスマスローズの概要と歴史、育て方のポイントと具体的な育て方、トラブルと対処法などについてご紹介いたしました。クリスマスローズの育て方のポイントは、花がらと古い葉の除去、夏越しです。クリスマスローズに適切な手入れを施して、冬の開花を楽しみに待ちましょう。