植物に発生するさまざまな病気。予防法と対処法とは?

植物に発生するさまざまな病気。予防法と対処法とは?

ガーデニングを楽しむ際に、避けて通れないのが植物の病気。生育する環境によって、植物にはさまざまな病気が発症します。今回は、植物に病気が発症する理由をはじめ、ガーデニングでよく見られる病気を症状別に解説し、対策と予防のポイントについてもご紹介します。

植物に病気が発症する理由

植物に病気が発症する理由

はじめに、植物に病気が発症する理由をご紹介します。

病気の原因である微生物

地球上には膨大な数の微生物が生息しており、分類されているものだけでも約10万種に上ります。そのうち、植物の病気に関わる微生物は国内で約7,000種が確認されています。

菌類

菌類は「真菌(しんきん)類」と「粘菌類」に分かれ、真菌類に属する「糸状菌(しじょうきん)」は俗に「かび」と呼ばれます。植物の病気の7~8割は糸状菌によるもので、主にうどんこ病や灰色かび病、さび病などがあります。

細菌

「バクテリア」とも呼ばれ、1つの細胞から成る「単細胞」の微生物の仲間です。植物の病気は、棒状や円筒の形をした「桿菌(かんきん)」に属する細菌によるものがほとんどで、軟腐(なんぷ)病や青枯(あおがれ)病などがあります。

ウイルス

ごく小さい粒状で、「核酸(かくさん)」と呼ばれる物質をタンパク質で囲んだ微生物を指します。ウイルスは、動物や植物などの細胞内に侵入して増殖します。ウイルスによる植物の病気はモザイク病などがあります。

微生物に感染する経緯

植物の病気は、上記の微生物が付着したり細胞内に侵入したりして発症しますが、それぞれの植物によってかかりやすい病気は異なります。微生物に感染する要因は、風による飛来、虫による運搬のほか、タネや土壌内で繁殖していたことなどが挙げられます。

なお、強風で植物同士がぶつかり、傷が付くと微生物が侵入する確率が高まります。また、激しい雨が降るときは微生物を含む土がはねて葉に付着し、感染することもあります。

生育に適さない環境

植物の病気の多くは、温度と湿度が高い環境で発症しやすいため、春から秋の雨が続く時期は注意しましょう。また、日照不足や冷涼な気候のときは植物が元気に育たないので、病気が発症しやすくなります。

さらに、葉や枝が混み合う、肥料が多すぎる、土壌の酸性度が適さないなどのほか、過去の根や枝などに菌が残っているときは病気になる可能性が高まります。さらに、同じ場所で毎年同じ植物を育てる連作(れんさく)も病気の原因につながります。

植物の主な症状と病気

植物の主な症状と病気

それでは、ガーデニングで発症しやすい植物の病気を症状別に分けてご紹介します。病気を放置すると植物が枯れる可能性があるので、早めに見つけて対処しましょう。

白いはん点が出る

植物に白いはん点が付いているのを見たことはないでしょうか?

うどんこ病

糸状菌が原因の病気で、草花や野菜、樹木などのあらゆる植物に発症します。5ミリほどの小さな白い点が付いた後、全体に広がって白く粉をふいたような状態になります。菌が活発になる気温は24~32℃で、日陰で風通しが悪い環境や、晴れと雨が繰り返すとき、春~初夏の気温が高めで雨が少ないときなどに多発します。

うどんこ病については、「【園芸の大敵!】うどんこ病とは?うどんこ病が発生する原因と対策について」の記事で詳しくご紹介しています。

白さび病

糸状菌が原因の病気で、ダイコンやカブ、小松菜、白菜などのアブラナ科の野菜に発症します。葉の裏に不規則な大きさでふくらむ白いはん点が出た後、表面が破れて白い粉が広がります。白さび病の菌が活発になる気温は10℃くらいで、春と秋の気温が低く雨が多い環境で多発します。

黒や褐色(かっしょく)のはん点が出る

植物は、黒や褐色のはん点が出る病気も少なくありません。

褐斑(かっぱん)病

糸状菌が原因の病気で種類が多く、草花や野菜、樹木などのあらゆる植物に発症します。葉に小さな褐色のはん点が出た後、黒い褐色の円または多角形になり、年輪のような模様や黒いかびが出現することがあります。活発になる気温は菌によって異なりますが、一般的に春から秋の気温が高めで雨やくもりの日が続くときに多発します。

褐斑病については、「褐斑(かっぱん)病とは?褐斑病が発生する原因と対策について」の記事で詳しくご紹介しています。

黒星(くろぼし)病

黒星(くろぼし)病

糸状菌が原因で、バラやバラ科のナシやリンゴなどに発症する病気です。バラに発症したときは黒点(こくてん)病と呼ぶこともあります。葉や果実に黒い小さなはん点が出た後、点が大きくなって黒いかびが生じますが、若い葉には発症しません。菌が活発になる気温は20~25℃で、梅雨や長雨の時期に多発します。

黒斑(こくはん)病

糸状菌が原因の病気で種類が多く、ネギやキャベツ、白菜、トマト、オクラ、キクなどに発症します。葉の表面や果実に褐色のはん点が出た後、黒く変わって大きくなり、かびが生じることもあります。活発になる温度は菌によって異なり、梅雨や長雨などの時期に多く発症します。

炭疽(たんそ)病

糸状菌が原因であらゆる植物に発症し、葉や果実に灰色~黒の褐色で丸いはん点、茎や枝には同色のだ円形などのはん点が出ます。その後、中心が灰色になったり小さな黒い粒が生じたりし、湿度が高いときはサーモンピンクの物質が出現することもあります。炭疽病の菌が活発になる気温は28℃前後で、多湿の環境で多く発症します。

そのほかの色や模様が出る

続いて、そのほかの色や模様が出る病気をご紹介します。

さび病

糸状菌が原因で種類が多く、草花や野菜、樹木などのあらゆる植物に発症しますが、白さび病とは別の菌に分類されます。初めは葉の裏にクリーム色のはん点が出てふくらみ、変形してオレンジ色や褐色、黒などに変わります。活発になる気温は菌によって異なり、春と秋の雨が続く時期に多発します。

さび病については、「さび病とは?さび病が発生する原因と対策について」の記事で詳しくご紹介しています。

モザイク病

ウイルスが原因の病気で、主にアブラムシなどの害虫によって運ばれます。草花や野菜、樹木などのあらゆる植物に発症します。初めは葉の葉脈に沿って色が薄くなり、やがてモザイク状の濃淡が出現します。ウイルスが活発になる気温は25~30℃で、春から秋の雨が少ない環境で多発します。

モザイク病については、「モザイク病とは?モザイク病が発生する原因と対策について」の記事で詳しくご紹介しています。

べと病

べと病

糸状菌が原因の病気で種類が多く、ウリ科やアブラナ科の野菜やネギなどに発症します。キュウリなどの葉には、葉脈に囲まれた薄い黄色の特徴的な模様が出ます。ネギの葉には、薄い黄色の病斑が出現します。活発なる気温は菌によって異なり、春と秋の多湿の環境で多く発症します。

べと病については、「べと病とは?べと病が発生する原因と対策について」の記事で詳しくご紹介しています。

すす病

糸状菌が原因の病気で、果樹や庭木などに付いたアブラムシやカイガラムシなどの排せつ物にかびが生えて発症します。葉や茎、果実などに黒いすす状の粉が付き、やがて全体が黒くおおわれます。害虫が繁殖する春から秋に多発し、日当たりや風通しの悪さ、多湿の環境なども影響します。

すす病については、「すす病とは?すす病が発生する原因と対策について」の記事で詳しくご紹介しています。

かびが生える・腐る

植物の葉や果実などにかびが生えたり、腐ったりする病気もあります。

灰色かび病

糸状菌が原因の病気で、ウリ科やナス科などの野菜や、イチゴなどの果樹、草花に発症します。開花後の花や実に灰色のかびが発生し、葉や茎に灰色の病斑が出ることもあります。灰色かび病は20℃くらいの多湿の環境で多く発症し、冬から春の温室内でまん延するケースも見られます。

灰色かび病については、「【被害が広がる前に対処しよう!】灰色かび病の症状と対策について」の記事も参考にしてください。

軟腐(なんぷ)病

細菌が原因の病気で、ネギやジャガイモ、白菜などの野菜のほか、洋ランやシクラメン、ユリなどにも発症します。土に近い部分から腐り、葉が溶けるように変化して異臭を放ちます。細菌が活発になる気温は25~30℃で、春から秋の雨やくもりが続いて湿度が高いときに多発します。

菌核(きんかく)病

糸状菌が原因の病気で、キュウリやトマト、キャベツなどの野菜のほか、ヒマワリ、キンギョソウ、キクなどにも発症します。茎や葉の傷口や、開花後の花びらなどにかびが発生した後、腐敗して灰色や黒の塊が出現します。菌が活発になる気温は20℃前後で、春や秋の長雨のときや、低温で多湿の夏に多く発症します。

しおれる・枯れる

元気な植物が急にしおれたり枯れたりするときは、次の病気を疑いましょう。

立枯(たちがれ)病

糸状菌が原因の病気で、豆類やアスパラガス、オクラなどの野菜のほか、コスモスやカーネーション、キク、観葉植物などに発症します。植物の根から菌が侵入して腐敗し、下部の葉が黄色くなった後に全体がしおれます。菌が活発になる気温は25~30℃で、春から秋の湿度が高いときに多く発症します。

青枯(あおがれ)病

細菌が原因の病気で根から感染し、トマトやナス、ピーマンなどの野菜や、イチゴ、ダリア、トルコギキョウなどに発症します。晴れた日の昼間に茎や葉の元気がなくなりますが、朝夕やくもりの日にいったん回復し、その後全体が緑色を保ったまましおれます。梅雨明けから夏にかけて、地面の温度が20℃以上、気温が25~30℃で多発します。

半身萎凋(はんしんいちょう)病

糸状菌が原因の病気で根から感染し、トマトやナス、ブロッコリーなどの野菜や、キクなどにも発症します。初めは下部の葉が黄色くなり、葉や株の片側がしおれた後に全体が枯れます。春から梅雨の時期や秋の地面の温度が22~26℃、気温が20~25℃でくもりや雨の日が続くときに発症します。

植物の病気の対処法と予防

植物の病気の対処法と予防

最後に、病気を発見したときの対応と予防法をまとめたのでご覧ください。

患部を取り除く

上記の症状を見つけたときはすぐに患部を取り除き、病気が広がらないようにしましょう。切った茎や葉などは放置せず、ビニールに入れてゴミに出すか、焼却処分をしてください。葉の裏も毎日観察し、病気だけでなく害虫も早期の発見がポイントです。

薬剤をまく

薬剤の散布も植物の病気には効果的です。一言に薬剤といっても病気に合わせたさまざまな種類がありますので、どんな病気に効果があるかしっかりと確認してから使用するようにしてください。

ここではフマキラーの「カダンプラスDX」をおすすめします。カダンプラスDXは草花や野菜、樹木などの植物に発症するうどんこ病や白さび病、褐斑病などの進行を防ぎ、予防する効果があるほか、害虫の駆除も可能です。

広い範囲にも簡単に散布でき、弱った植物をいたわる成分も配合されています。

生育環境を整える

ご紹介したように、ほとんどの病気は多湿の環境で多く発症します。茎や葉が混み合う場所はカットして整理し、枯れた葉などを処分して日々の観察を続けましょう。反対に、猛暑などで極端に乾燥したときは、霧吹きで水を与えると適度な湿度を保って害虫も防げます。虫による媒介が原因の病気もあるので、見つけたときは早めに駆除してください。

雨による泥はねを防ぐには、敷きわらなどで土の表面をおおうマルチングが有効です。そのほか、放線菌が増えるカニ殻をまいて土壌内の糸状菌を抑制したり、ネギ科の植物を近くに植えて病原菌の活動を抑えたりする方法もあります。冒頭でご紹介したように、過去の栽培で残った葉などは処分し、連作を避けることも大切です。

植物の病気は早期発見と対応を

植物の病気は早期発見と対応を

今回は、植物に病気が発症する理由とガーデニングでよく見られる病気を症状別に解説し、対策と予防のポイントもご紹介しました。病気が発症する原因を理解し、環境を改善すれば予防につながります。

もし病気や害虫を発見したときは、早急に対処してまん延を防ぎましょう。栽培環境を整え、日々の観察を続けながらガーデニングをお楽しみください!

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