2024年12月11日 | 園芸・ガーデニング
エゴマの育て方!植え付けや手入れ方法、注意点を解説
「エゴマ」は、国内で古くから栽培されている野菜の1つで、栄養価が高いことから近年では生活習慣病の予防などの効果が期待されています。エゴマは育て方が簡単なため、初心者の方も気軽に栽培できます。
今回は、エゴマの基礎知識と育て方、栽培のトラブルと対処法などについてご紹介します。
エゴマの基礎知識
はじめに、エゴマの基礎知識をご覧ください。
エゴマの概要
エゴマはシソ科シソ属の一年草で、原産はインド・中国・東南アジアなどの地域です。9~10月に白い小さな花を咲かせた後は、油を豊富に含んだ種をつくります。エゴマは漢字で「荏胡麻」と書きます。エゴマを食べれば、10年は寿命が延びるという古い言い伝えから「ジュウネン」という別名をもつ植物です。
エゴマの種類は、種の色から白種(しろだね)・黒種(くろだね)・茶色に分かれます。また、成熟の違いによって、早生(わせ)・中生(なかて)・晩生(おくて)に分類されます。エゴマの葉の独特な香りは「ペリラケトン」「エゴマケトン」といった成分によるものです。
なお、エゴマとシソはよく似た野菜ですが、香りや葉の縁のギザギザとした形状、葉の硬さなどが異なります。エゴマとシソは間違いやすいため、店頭では表記をよく見ながら購入しましょう。
エゴマの栄養
エゴマの葉には、抗酸化作用が高いβ–カロテンやビタミンCのほか、カルシウムなどのミネラルを多く含みます。また、種からつくられるエゴマ油には、不飽和脂肪酸であるα-リノレン酸が含まれるため、生活習慣病予防の効果が期待されます。
栄養を摂取するには、加熱せずに生で食べる方法がおすすめです。エゴマの葉は、サラダや和え物、焼き肉を巻くなどして食べることが一般的です。家庭菜園で収穫した種を炒ってすりつぶせば、ふりかけやタレの風味付けなどに使えます。市販のエゴマ油は、サラダにかけるなどして使用します。
エゴマの歴史
エゴマは、東南アジアを中心に古くから食用や薬用、油用の目的で栽培されてきました。日本には縄文時代に伝わり、土器の製作に使用したことが判明しています。エゴマは平安時代の法律書である「延喜式(えんぎしき)」などにも登場し、朝廷に納める薬用の植物として大切に扱われました。
9世紀にはエゴマ油を生産する技術が生まれ、灯り用の燈油(とうゆ)に使用したと考えられています。かつてエゴマは「荏(え)」「荏油(えあぶら)」などと呼ばれました。江戸時代に入ってエゴマの名が広まったとされます。現在の主な産地は北海道や福島県、島根県などで、防水効果があるエゴマ油を伝統工芸に使用する地域もあります。
エゴマの育て方のポイント2つ
エゴマの葉を多く収穫する育て方のポイントは、次の2点です。
① 葉の整理
生育が旺盛なエゴマは、葉がすくすくと成長して茂る傾向があります。摘み取りや剪定(せんてい)を兼ねて定期的に葉を整理し、株の通気性を確保してください。
② 花の摘み取り
エゴマは、小さな花が連なる「花穂(かすい)」の形状で花を咲かせます。開花後は種をつくって株が衰弱するため、花穂の段階で摘み取る作業が必要です。
エゴマの栽培に必要なもの
エゴマを栽培するときは、基本のツールであるシャベル・ジョウロ・園芸ハサミなどのほかに、次のものを用意してください。
土と肥料など
エゴマを畑や花壇(かだん)で栽培するときは、苦土石灰(くどせっかい)や堆肥(たいひ)、化成肥料などを使用して準備します。鉢やプランターで栽培するときは、市販の野菜用の培養土で構いません。鉢やプランターは大きめのサイズを選び、水はけをよくするためにネットに入れた鉢底石(はちぞこいし)を底に敷きましょう。
種または苗
エゴマを種から栽培するときは、種類の中から好みに合わせて選んでください。
園芸用のポットに種をまく場合は、育苗(いくびょう)用のポットまたはトレイ、種まき用の土、霧吹きなども必要です。エゴマの苗は4~6月ごろに店頭に並びます。濃い緑の葉が多くついて、茎がしっかりと育った苗を購入しましょう。
マルチング資材
エゴマは初夏から秋にかけて栽培するため、猛暑による土の乾燥の対策が必要です。梅雨が明けたら、土の上に敷きわらや腐葉土などのマルチングをほどこして乾燥を防ぎましょう。
マルチングについては「園芸におけるマルチングとは?効果や使用方法、注意点をわかりやすく解説」の記事を参考にしてください。
【初心者も安心!】エゴマの育て方
基本的に、エゴマは栄養が少ない土や日当たりがよくない場所でも栽培できますが、多くの葉を収穫するには以下の育て方を参考にしてください。
土の準備
エゴマを畑や花壇で栽培するときは、土を深く掘り返して耕し、古い根などを取り除いて日光に当てます。苦土石灰を混ぜて酸性の土壌を中和させ、植え付ける1週間ほど前に堆肥と少なめの化成肥料を混ぜ込んでください。水はけをよくするには、高さが10~15cmくらいの畝(うね)をつくって植え付けます。
種まき
エゴマの種まきは、5~6月が適期です。種をまく前日の夜から種を水につけておくと、発芽しやすくなります。畑や花壇に種をまくときは、深さが1cmくらいの溝を掘って筋(すじ)状に均一にまく方法と、20~30cmくらいの間隔で数粒をまく方法があります。
育苗用のポットにまくときは、種まき用の土を入れて浅い穴を掘り、5~6粒をまきます。エゴマの種は明るい場所で発芽する「好光性種子(こうこうせいしゅし)」であるため、種をまいた後は土をごく薄くかぶせて水を静かに与えてください。
畑や花壇で筋状にまいたときは、発芽して高さが7~8cmになり、本葉が4枚くらいになったら元気な芽を残してほかを抜き取ります。最終的に、20~30cmくらいの間隔で育つように管理してください。ポットにまいたときは最終的に1本を残し、10~20cmくらいの高さに伸びたころに植え付けます。
植え付け
エゴマの苗は梅雨に入る前に植え付けて、しっかりと根を張らせてください。くもりの日または夕方に作業し、20~30cmくらいの間隔で植えてからたっぷりと水を与えましょう。鉢やプランターには、2~3株を目安にして植えてください。
なお、同じシソ科シソ属のシソやサルビアなどの近くにエゴマを植えると、交雑(こうざつ)によって種類が混ざり、品質がよい葉を収穫できないことがあります。エゴマを育てるときは、シソ属の植物と離して栽培してください。
シソ属の植物については「【薬味の代表格】シソの育て方やコツをご紹介」「【サルビアの育て方】種まきの方法から水やり・切り戻し剪定まで解説」、シソ科の植物については「【ラベンダーの育て方】毎日のお手入れ方法や植え替え・増やし方を解説」「【さわやかな香り】ミントの育て方やコツをご紹介」の記事で詳しくご紹介しています。
管理と摘心(てきしん)
畑や花壇は基本的に水やりの必要はありませんが、猛暑で土が乾き過ぎるときは早朝または夕方に水を与えてください。鉢やプランターの土は乾燥しやすいため、早朝に水やりをします。真夏の間は、夕方にも水を与えるとよいでしょう。株の根元にマルチングをほどこすと乾燥を抑えられます。
エゴマが30cmくらいの高さになったら、摘心として先端を切り取り、伸びてくる枝を増やしましょう。その後、50cmくらいになったら2回目の摘心をします。花穂を摘み取る作業も必要です。ただし、種を採るときは開花期が終わる10月ごろに花を残してください。
収穫と種の採取
葉が10枚以上ついたら、下の部分から順に収穫しましょう。葉が混み合っている部分は、剪定を兼ねて収穫しても構いません。種を採るときは、花を残した株の葉が黄色くなり、さやが茶色く変色したら茎の根元を切り取ります。数本を束にして風通しがよい場所に吊るし、1週間ほど乾燥させてください。新聞紙などを広げた上で枝をたたくと、種が落ちます。
エゴマのトラブルと対処法
最後に、エゴマの栽培時に起こりやすいトラブルと対処法をご紹介します。
エゴマの病気
エゴマは、全体がしおれて枯れる「青枯(あおがれ)病」に気を付けてください。青枯病は、排水性がよい場所の栽培で予防できます。また、エゴマは葉にオレンジ色の胞子がつく「さび病」が発症することがあります。株の通気性を確保し、肥料を控えめにして予防しましょう。いずれも病気が疑われる部分を見つけたら、すぐに取り除いてまん延を防いでください。
さび病については、「さび病とは?さび病が発生する原因と対策について」の記事で詳しくご紹介しています。
エゴマの害虫
エゴマには、ヨトウムシやアブラムシなどの害虫がつくことがあります。日当たりが悪い場所や、葉が茂りすぎた株などは害虫がつきやすいため要注意です。ヨトウムシやアブラムシなどの害虫も、見つけ次第すぐに駆除してください。
エゴマの栽培には、フマキラーの「カダンセーフ」をおすすめします。カダンセーフは、エゴマについたアブラムシに効果があります。食品成分由来の膜が害虫を包んで退治します。害虫は呼吸ができずに窒息死し、病原菌も栄養を得られず死滅するのです。
カダンセーフは、屋内やお子様・ペットのいるご家庭でも安心してご使用いただけます。また、活力成分の天然アミノ酸とAO(アルギン酸オリゴ糖)を配合しているため、病害虫対策だけでなく植物の生育もサポートする優れものです。
育て方が簡単なエゴマに挑戦!
今回は、栄養が豊富なエゴマを取り上げ、基礎知識と具体的な育て方、トラブルと対処法などについてご紹介しました。エゴマの葉を多く収穫するには、葉の整理と花の摘み取りがポイントです。
基本的に、エゴマは丈夫な植物で育て方が簡単なので、初心者の方も気軽に挑戦してください。