2024年9月30日 | 虫
日本にいるヤスデの種類は?特徴や生態、駆除方法を解説
ヤスデは普段あまり見かけませんが、突如出現してビックリしたり不快に感じたりした方もいるのではないでしょうか。
当記事では、日本にいる主なヤスデの特徴や生態を紹介したうえ、予防や駆除の仕方などの対策についても解説します。
ヤスデはどのような生き物?
ヤスデは節足動物の一種です。いくつもの節からなる細長い体を持ち、体の両側にはたくさんの脚があります。
落ち葉や倒木、石の下などを棲み家とし、主に腐った植物を食べています。
ヤスデとムカデやゲジはどう違う?
ヤスデは、細長い胴体とたくさんの脚を持つことから、同じ特徴のあるムカデやゲジ(ゲジゲジ)とよく混同されます。危険性などが違うため、あらかじめそれぞれの違いを知っておくと安心です。
日本で見かけるヤスデの多くは、体長10〜25mmほど。動くスピードは3種類の中で一番ゆっくりしています。ムカデは体長4mm程度の小さな種類もいますが、一般に見かける種類は40〜200mmほどで、ヤスデやゲジよりもかなり大きめです。動きはヤスデよりも早く、体をクネクネさせながら蛇行して移動する特徴があります。
ムカデはミミズや昆虫などを食べる肉食動物で、獲物を捕らえて毒を注入して麻痺させます。人間でも咬まれると腫れたり強い痛みを感じたりする可能性があるため、注意しなければなりません。
ゲジは大きな分類ではムカデと同じグループに属します。体長は20mm~40mm程度、足と触覚を入れると100mmを超えるものもいます。
見た目でほかの2種類ともっとも異なる点は、体の長さに比べて脚が非常に長い点です。動きもすばやく、3種類の中でもっとも敏捷に動きます。
ヤスデの特徴と生態
前項では、ヤスデとムカデ・ゲジの違いを説明しました。この項ではさらに詳しくヤスデの外見的特徴や生態について、もっとも頻繁に見かけるヤケヤスデを中心に解説します。
ヤスデの特徴
ヤスデの胴体は数十個の節に分かれていて、胴体中央部の節には、2対ずつ計4本の脚が生えているのが大きな特徴です。上から見るとよくわかりませんが、ひっくり返すとそれぞれの節から2本の脚が生えているのが確認できます。
一部の種類をのぞき、体の外側は硬い外骨格になっていて、外敵から身を守っています。
ヤスデの生態
ヤスデは夏から秋にかけて200~300個の卵を産み、10月の終わりころに孵化します。幼虫のまま越冬して成虫になるのは梅雨の時期です。主に雑木林などの土の中に生息し、落ち葉などの腐った植物をエサにしています。
人を積極的に襲うことはありませんが、触ったりすると身を守るために刺激の強いニオイや、中には青酸系の毒物質を放出するヤスデもいるため、注意しなければなりません。
日本にいる主なヤスデの種類
ヤスデは世界では1万種以上、日本では200種を超える種類が生息しています。その中でも、日本で特に問題になる種類を紹介します。
ヤケヤスデ
ヤケヤスデは日本でもっとも一般的に見られるヤスデで、成虫の体長は18〜20mm程度、体の幅は約3mmです。世界の熱帯〜温帯地域に生息していて、日本では全国各地に分布しています。体の色は、淡褐色から暗褐色。焼けたような色をしているため「ヤケヤスデ」と呼ばれています。脚の色は黄白色です。
卵から成虫になるまでの期間は約10カ月。幼虫は最初白っぽい色ですが、脱皮を繰り返すたびに色が濃くなっていきます。
日本でもっとも普通に見られる種類ですが、ヤスデの中では小さいほうの部類です。驚くと渦巻き状に丸くなる性質があります。
キシャヤスデ
キシャヤスデ(オビババヤスデ)は体長35~45mm、幅は7mm程度、ヤスデの中では比較的大型種です。体色に関しては、最初は薄いピンク色・オレンジ色、脱皮をするにつれて色が濃くなっていき、成虫の色は褐色です。分布域は、関東から九州。特に中部地方の山岳地帯に多く見られ、近縁種が北陸や近畿に生息しています。
幼虫は年1回脱皮して7年間土の中で過ごし、8年目の夏に成虫になって地表に現れます。したがって、生息する各地において8年周期で大量出現するのが特徴です。
冬の気温5℃以下、夏でも昼間25℃くらいの標高の高いところを好んで生息するため、山梨や長野の山間部を通る鉄道の線路に大量出現することがあります。線路を覆うほどの大量のキシャヤスデを列車の車輪が踏んでスリップ事故を起こすことから「キシャヤスデ」の名がつけられました。
ヤンバルトサカヤスデ
ヤンバルトサカヤスデは外来種です。本来は台湾に生息しますが、1983年に沖縄に侵入後九州各地に生息域を拡げ、静岡県や神奈川県、埼玉県などでも確認されています。体長は25~35mm程度。体の色は薄い褐色と濃い褐色の縞模様です。
鹿児島県奄美市などでは被害が大きいため、市が駆除剤の半額を補助する支援を行っています。
ヤスデはなぜ大量に出現するのか?
ヤスデは、ふだんは土中などのジメジメしたところで腐った植物を食べて生活しています。しかし、大量の雨が降って生活している場所が水没すると、危機回避のために地上に出てくることがよくあります。雨が降った翌日などによく見かけるのはそのためです。
集団で生活しているため、普段はほとんど見かけなくてもある日突然大量に現れる印象があります。ヤスデが大量に出現する可能性がもっとも高いのは梅雨時です。ヤスデはちょうど6月頃に成虫になり、雨が降ることにより大量に地表に現れます。夏場は暑いためあまり見かけません。しかし、秋雨の頃に再び大量に出現するようになります。
キシャヤスデは幼虫の時期の7年間は土の中で過ごし、成虫になると地上に出てきます。キシャヤスデの場合、大量に地面に出てくるのは危険回避行動ではなく、繁殖のためです。夏の終わりから秋にかけて大量に現れて交尾し、その後は土の中で越冬。翌年数百個の卵を産んで成虫は死んでしまいます。生まれた幼虫は8年後にまた大量に出現するというサイクルを繰り返しています。
ヤスデは害虫なのか?益虫なのか?
ヤスデには害虫の側面と益虫の側面の両方があります。
ヤスデには刺激臭と微量の毒がある
ヤスデは敵から身を守るために嫌なニオイを分泌します。微量の毒も持っているため注意が必要ですが、ムカデのように人を咬むことはありません。
また、大量に出現すると人家にまで侵入する可能性があります。日常生活に支障を与え、見た目もよくないことから典型的な不快害虫といえるでしょう。
ヤスデは線路に大量出現して列車を止める
前述したように、ヤスデの中でもキシャヤスデは線路を覆いつくすくらい大量出現して、列車のスリップ事故を何度も起こしています。
ヤスデは有機物を分解する
ヤスデは落ち葉などの腐った植物や腐葉土に含まれる真菌類を食べて分解しています。土壌の有機物のリサイクルになくてはならない働きをしているため、この観点からは益虫といえるでしょう。
【参考】ヤスデは益虫?害虫? 大量の理由と対策とは|ウェザーニュース
ヤスデを大量に出現させない方法
ヤスデが大量に出現しないようにするには、まずはヤスデの好むような環境をつくらないことが重要です。
ヤスデはジメジメとした土壌を好むため、家の周囲の枯葉や雑草は除去しましょう。ヤスデの隠れ家となるような場所もできるだけなくすように心がけなければなりません。使っていない植木鉢やブロック、大きな石などは撤去してください。庭の水はけをよくすることも重要です。
ヤスデが現れたときの対策
十分な予防策をとっていてもヤスデが大量に出現する可能性があります。大量に出現したときの対策を家屋への侵入を防ぐ方法と駆除する方法の2つに分けて解説します。
家屋への侵入を防ぐには
出現したヤスデが家屋へ侵入するのを防ぐには、侵入防止剤が有効です。フマキラーの「アリ・ムカデ粉剤」は玄関や窓などのヤスデの侵入経路を囲むように撒くだけで効果が期待できます。
殺虫成分を、水をはじくシリコーンオイルで特殊コーティングしているため、雨が降っても長期間、侵入防止効果が持続します。
殺虫成分のうち85%が除虫菊などからとった天然殺虫成分のため、ペットのいる家庭でも安心して使用可能です。
ヤスデを駆除するには
ヤスデは刺激を与えると青酸ガスを含む刺激臭を発するため、凍結スプレータイプの殺虫剤がおすすめです。
フマキラーの「凍殺ジェット」は、降下温度−85℃の冷却効果で、ヤスデの動きをすばやく止めて駆除します。広角噴射ノズルを採用しているため、大量に出現したヤスデもまとめて駆除できます。嫌なニオイやベタつきが残らず、野外だけでなく室内に侵入したヤスデにも有効です。
外壁や階段によじ登っているヤスデは、ほうきなどでたたき落としてください。たたくと体を丸めて動かなくなるため、集めて一気に処理しましょう。
ヤスデの大量出現に困ったら駆除と侵入防止のダブルで対策を
ヤスデは毒を持つムカデとよく間違われて嫌われる存在ですが、生態系にとって大事な役割を担っているため普段はそれほど気にする必要はありません。しかし見た目がよくなく不快臭を発するため、大量に出現すると駆除が必要です。まずは大量出現しないように家屋の周辺や庭をきれいに保つ必要があります。
もし大量に出現したときは、見つけたヤスデは殺虫剤で駆除し、さらに侵入防止剤を散布して家屋への侵入を防止する対策を講じましょう。