【ライラックの育て方】お手入れの方法や注意が必要な病害虫を解説

【ライラックの育て方】お手入れの方法や注意が必要な病害虫を解説

北海道では街路樹でおなじみのライラック。房状の小花がかわいらしい花木です。満開時にはあふれんばかりに咲き、その華やかさは世界中の人々に愛されています。香水の原料となる香りもハート形の葉もとてもすてきで、代表的なライラックの「紫色」は、色の名前のひとつになるほど親しまれています。

北国が原産で冷涼な気候を好むライラックですが、暖かい地方でも鉢植えや暑さ対策で育てることができます。そこで今回は、ライラックの基礎知識とお手入れの方法、気をつけたい病害虫についてご紹介いたします。

ライラックの基礎知識

ライラックの基礎知識

はじめに、ライラックとはどのような花木なのでしょうか。

ライラックとは

ライラックとは、4~5月の春に花の咲く落葉樹です。和名はムラサキハシドイ。ヨーロッパ原産で、フランス語からリラ(Lilas)ともいわれます。小花が房状に集まって咲き、満開時になると樹をおおいつくさんばかりにとても華やかです。花の色はホワイト、ヴァイオレット、ブルー、ライラック、ピンク、マジェンダ、パープルの7色です。

ライラックの花は甘く優しい香りがするのも特徴で、香料の原料にもなっています。その香りは香料の世界で、バラ、ジャスミン、スズランと並んで四大フローラルとも呼ばれています。

花弁は普通4枚ですが、まれに5枚のものがあります。5枚花弁のライラックの花は「ラッキーライラック」と呼ばれ、見つけた方には幸せが訪れるといわれています。

ライラックの花言葉

ライラックの花言葉は「友情」「思い出」「謙虚」です。紫色のライラックの花言葉は、「恋の芽生え」「初恋」。葉の形がハート型のためそういわれています。また、白いライラックの花言葉は「青春の喜び」「無邪気」です。フランスで、白いライラックは青春のシンボルとされていることが花言葉の由来です。

原産と歴史

ヨーロッパ南東部が原産といわれ、日本では1879年に函館市イギリス領事の妻が持ちこんだのが最古とされています。北海道の街路樹としても有名で、姫ライラックと呼ばれる樹高の低い種もあり、成長しても1.5mほどです。姫ライラックは中国原産のライラックの近種で、普通のライラックよりも耐暑性が高いのが特徴です。

北海道札幌市では、昭和35年にライラックがシンボルツリーとして選ばれ、それ以降毎年5月にライラックまつりが開催されています。

ライラックの南限

ライラックは寒さに強いのが特徴ですが、耐暑性はあまりありません。そのため、涼しい地域で栽培され、関東地方が南限とされていました。ただし、鉢植えにすると九州のような暖地でも栽培できます。また、姫ライラックならば耐暑性が高く、暖地でも地植えができます。

ライラックのお手入れポイント2つ

ライラックのお手入れポイント2つ

ライラックは比較的育てやすい花木ですが、重要なお手入れのポイントが2つあります。

①   剪定

剪定は、花の終わった直後が適期です。枝の形を整え、風通しを良くして病気を防ぎ、来年もたくさんの花を咲かせるために、1回剪定します。

ライラックの剪定は、混み合った枝を切る透かし剪定です。同時に花がらも摘みます。放っておくとそこに種ができ、来年の花付きが悪くなってしまうので、花が終わったら花がらを摘むようにしましょう。1.5mほどにしかならない小さなタイプの姫ライラックでも、透かし剪定と花がら摘みのお手入れが必要です。

②   夏越し

寒さには強いライラックですが、夏の暑さは苦手です。とくに西日が当たるところには、植えないようにしましょう。ライラックはほとんど水やりの必要がありません。しかし関東地方以南では、真夏の期間は早朝に水やりをするとよいでしょう。

ライラックの栽培に必要なもの

ライラックの栽培に必要なもの

ライラックの栽培に必要なものをまとめました。

庭、花だんまたは鉢など

ライラックは、水はけのよい日なたを好みます。ただし、西日にはとても弱いので注意してください。庭や花だんにライラックを植える場合、西日の当たらない涼しい場所を選びましょう。暖かい地域にお住まいなら、夏は涼しい場所に移動できる鉢植えがおすすめです。

ライラックを植木鉢で栽培する場合は、苗のポットよりひと回り大きめの鉢を用意します。ライラックは乾燥している方がよく育ちますので、通気性のよい素焼きなどがよいでしょう。鉢底石(はちぞこいし)は、ネットに入れて使用すると便利です。

ライラックの苗

ライラックは種や挿し木で増やしますが、成長するまでに時間もかかるため、苗を購入するのがおすすめです。苗は、病害虫に強い接ぎ木苗を選ぶとよいでしょう。

成長しても1.5mほどの姫ライラック(ドワーフライラック)と、4mほどに成長する普通のライラックがありますが、関東より南で地植えにするなら、耐暑性の高い姫ライラックを選びましょう。

土と肥料など

庭や花だんで地植えするときは、石灰や腐葉土を用意します。水はけをよくするために赤玉土を用意してもよいでしょう。鉢植えの栽培では、花木用の土を用意すると便利です。培養土を自作する場合は、赤玉土と腐葉土を7:3で混ぜ、化成肥料を少量加えた土を作ります。

剪定用のはさみなど

年に1回、花がら摘みと剪定が必要なライラック栽培には、剪定用はさみ、木ばさみを使用すると便利です。

【甘く優しい香り】ライラックの育て方

【甘く優しい香り】ライラックの育て方

それでは、ライラックの育て方を順にご紹介いたします。

土の下準備

庭や花だんで地植えするときは、苗を植え付ける2週間ほど前までに土を準備します。植え付ける場所を50cmくらい深く掘り、ごみや小石を取り除きます。日光に当てて消毒してから、石灰をまいて混ぜ土壌を中和させます。同時に腐葉土や赤玉土も混ぜます。植え付けの1週間前には、化成肥料を混ぜておきましょう。

植え付けの方法

植え付けの作業は、10~12月または3月が適期です。地植えの場合、直径・深さが根鉢の2倍くらいの穴を掘り、底をよく耕します。苗の上部の土を軽く落とし、鉢底の根を軽くほぐします。置いた苗木の土の表面と地面が同じ高さになるよう、土を入れて固定しましょう。最後にたっぷりと水やりをします。

鉢植えの場合は、鉢の底に鉢底石を敷き、土を3分の1ほど入れます。苗木を置いたら土の表面が鉢のふちより数cm低くなるよう、周りに土をかけて固定します。最後にたっぷり水を与えます。培養土を使うときは、最初の吸水性が低い場合もあるので、何回かに分けてたっぷり水やりをしてください。

日々の手入れ

ライラックの植え付け後、根付くまでは土壌が乾いたら水やりをします。根付いたらほとんど水やりは必要ありません。真夏の間は暑さ対策として早朝に水やりをします。鉢植えのライラックは土の表面が乾いてから、鉢底に流れるまでたっぷりと水を与えます。水分の蒸発しやすい夏は、朝にたっぷり水やりをしてください。

肥料の与え方

肥料は年1回、花が咲き終わったころ株もとに与えます。腐葉土や油かすなど、有機質のものを施肥してください。

ライラックはあまり肥料が必要な花木ではありません。植え付けのときに肥料を混ぜているなら、次回は花の咲き終わったころ、その後は毎年花が終わった時期に追肥します。肥料の与えすぎは樹勢が弱まる原因となり、病気や害虫がよってくる結果を招きますので注意してください。

剪定の方法

剪定のタイミングは、花が咲き終わった後です。木ばさみを使って花がらを摘み、剪定ばさみやのこぎりで混み合っている枝を透かします。ライラックは強い剪定には耐えられないので、枝を切り過ぎないように注意してください。また、枝の先端から来年の花が咲きますので、葉のついた枝の先端は切らないようにしましょう。

枝や花茎をはさみで切るときは、根元からきれいに切り取ります。枝や花茎の途中で切るとそこから水が入り、腐ってしまうことがあります。大きな枝を切った切り口には、剪定用の薬を塗りましょう。

ライラックの剪定方法は、次のとおりです。

  • 花茎の根元から花がらを摘む
  • 密集している枝は、二手に分かれている枝の片方を根元からとる
  • 枯れ枝を取り除く
  • 指より大きな切り口には剪定用の薬を塗る

夏越しの方法

日なたを好むライラックですが、夏の暑さは苦手です。寒冷な地方でない場合は注意が必要です。鉢植えは早朝に水を与え、風通しのよい半日陰に移動させます。地植えのライラックは、早朝にたっぷり水やりをして昼間の暑さに備えましょう。

冬越しの方法

雪が積もる地域に植えられたライラックは、冬越しのために「雪囲い(ゆきがこい)」をする必要があります。寒さに強いとはいえ、枝は弱く雪の重みに耐えられません。縄や竹、木材を使って周りを囲い、雪の重みから守りましょう。

ライラックのトラブルと対処法

最後に、ライラックのトラブルと対処法についてご紹介いたします。

ライラックの害虫

ライラックにつく害虫はアブラムシやカイガラムシ、カミキリムシなどです。

  • アブラムシ

春と秋によく見られ、ウィルス性の病気を媒介します。春、ライラックの新芽によってきます。また分泌物でアリを誘引します。繁殖が旺盛なため、長期間効果が持続する浸透移行性剤などを用いて防除しましょう。

  • カイガラムシ

カイガラムシは、排泄物から灰色かび病などの病気を引き起こすやっかいな害虫です。5~8月ごろから枝や幹に幼虫が見られます。成虫になると駆除が難しくなるので、幼虫のうちに薬剤で対処しましょう。成虫は歯ブラシなどでこそげ落として駆除します。

カイガラムシ対策には、フマキラーの「カダンK」がおすすめです。ダブルノズルの採用により、薬剤の舞い散りが減って植物への付着率が向上、効果も2倍にアップしました。※当社従来品比(さざんか:カイガラムシ、噴霧距離70cm)

マシン油とアレスリンの有効成分により、1年を通して予防効果も持続します。

ライラックのカイガラムシ対策は、「カイガラムシが発生する原因とは?カイガラムシの退治方法と予防対策」の記事もご覧ください。

  • カミキリムシ

ライラックの樹皮の内側に産卵し、幼虫は幹の芯を食害します。幹に穴をあけることからテッポウムシとも呼ばれます。カミキリムシの幼虫がいると幹に穴が開くため、注意して見るとすぐにわかります。穴の周りに木くずがあれば、カミキリムシの幼虫が生息しています。幼虫は、幹の穴から針金を通して駆除しましょう。

ライラックのカミキリムシ対策は、「カミキリムシの生態や種類を解説。予防・駆除する方法は?」の記事もご覧ください。

ライラックの病気

ライラックは、梅雨時期にうどんこ病にかかることがあります。葉の表面に白いカビが生える病気です。葉の表面に白い点を見つけたらすぐに取り除き、まん延を防ぎましょう。

うどんこ病については、「【園芸の大敵!】うどんこ病とは?うどんこ病が発生する原因と対策について」の記事をご覧ください。

ライラックの育て方を覚えて甘い香りに包まれたい!

今回は、ライラックの育て方、お手入れの方法や注意が必要な病害虫について解説いたしました。育て方のポイントは、剪定と夏越しです。寒い地方でないと育てられないとされてきたライラックですが、鉢植えにするなどポイントを押さえることで、暖かい地方でも育てることができます。

この機会に、甘い香りの華やかなライラック栽培に挑戦してみませんか。

「For your LIFE」で紹介する記事は、フマキラー株式会社または執筆業務委託先が信頼に足ると判断した情報源に基づき作成しておりますが、完全性、正確性、または適時性等を保証するものではありません。

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