【菊(キク)の育て方】植え替えや挿し木の仕方は?病気・害虫対策も解説

【菊(キク)の育て方】植え替えや挿し木の仕方は?病気・害虫対策も解説

古くから日本の生活に浸透し、格式の高い花として大切にされてきた菊。菊は種類が多く楽しみ方もさまざまですが、育て方には少しだけ知識が必要です。

今回は菊の育て方を中心に、基礎知識と育て方のポイント、栽培時に気をつけたいトラブルと対処法について解説いたします。

菊の基礎知識

菊の基礎知識

はじめに、菊の基礎知識からご覧ください。

菊の概要と歴史

菊はキク科キク属の多年草で、日照時間が短くなると花芽(はなめ)を形成して花を咲かせる「短日(たんじつ)植物」です。基本的に丈夫で寒さに強く、日持ちがして扱いやすいためさまざまなシーンで用いられます。

産地は主に愛知県や沖縄県、福岡県などで、露地栽培のほか施設内で電気の光を当てて開花を調整する「電照(でんしょう)栽培」がおこなわれています。また、刺身の飾りなどに使われる食用菊は、愛知県や山形県などが主な生産地です。

原産地の中国では、3000年以上も前から菊を栽培していました。日本には奈良から平安時代に伝わり、観賞だけでなく薬草としても利用したとされます。かつて9月9日の「重陽(ちょうよう)の節句」は菊の節句とも呼ばれ、邪気を祓(はら)うとされる菊の花びらを漬けた菊酒を飲むなどして健康や長寿を祈願しました。

菊を好んだ鎌倉時代の後鳥羽(ごとば)天皇が皇族の家紋としたことから、現在も高貴な花として扱われます。また、菊には清浄な力が宿るとされ、花期も長く花びらが散りにくいなどの理由から、国内では仏花として用いられます。近年では、海外で開発された「マム」と呼ばれる小型の洋菊も人気があります。

菊の分類

菊は種類が多く、主に以下のように分類されます。

特性による分類

夏菊 6~7月に開花する菊の総称で、昼間の長さに関わらず花芽を作るが、
日が短くなるほど促進する「量的短日植物」
夏秋菊 7~9月に開花する菊のうち、花芽の形成に必要な日の長さの
限界(限界日長)より日が短いときに形成をはじめる「質的短日植物」
秋菊 10~11月に開花する菊で、開花の限界日長が12~15時間のもの
寒菊 12月以降に開花する菊で、開花の限界日長が11時間以下のもの

形状による分類

一輪菊 1974年に導入され、1茎に多くの花がつくが頂点の花だけを残して
咲かせるもの
スプレー菊 1974年に導入され、茎がよく分岐して多くの花がつくもの
小菊 日本で作られたもので、1茎に多くの花がつき花の直径(花径)が
6cm以下のもの

用途などによる分類

大菊 花径が18cm以上の観賞菊などを指し、形状により「厚物(あつもの)」
「管物(くだもの)」「広物(ひろもの)」に分かれる。観賞菊はさらに
中菊(同9~18cm未満)・小菊(同9センチ未満)がある
古典菊 江戸時代に各地で保護され独自に発展した菊で「江戸菊」「伊勢菊」
などがある
小菊 「山菊(やまぎく)」とも呼ばれ盆栽仕立てなどで楽しむもの
洋菊 「ポットマム」「ガーデンマム」などの海外で開発されたもの
野生菊 山野草としての菊

盆栽については、「【初心者でも挑戦できる!】盆栽の育て方や手入れ方法を紹介」の記事をご覧ください。

菊の育て方のポイント2つ

菊の育て方のポイント2つ

菊の育て方は、次の2点がポイントです。

① 光が当たる時間

短日植物の菊は光の当たり方が開花に影響するため、10時間ほど日光の当たる場所で栽培しましょう。日に当たる時間が短いと、予想よりも早く開花することがあります。

② 摘み取りと摘芯(てきしん)

一輪だけを咲かせるときは頂点のつぼみを残し、複数の花を咲かせるときは頂点の芽を摘芯します。後にご紹介する方法で、適切につぼみや芽を摘み取りましょう。

菊の栽培に必要なもの

菊の栽培に必要なもの

菊を栽培するときは、シャベルやジョウロなどのほかに次のものが必要です。

花だんまたはプランターなど

菊の栽培には、日当たりと水はけのよい場所が適しています。また、生育不良などの連作障害(れんさくしょうがい)が出やすいので、花だんは前年にキク科の植物を栽培していない場所を選んでください。菊の種類にもよりますが、鉢やプランターは5~7号鉢に1本、8~10号鉢に2~3本を目安にしてサイズを選びましょう。

土と肥料など

花だんの土は、石灰やたい肥、腐葉土(ふようど)のほか、米の外皮を原料にした「もみ殻(がら)くん炭(たん)」を加えて下準備します。肥料は粒状の化成肥料か、食用菊には有機質肥料を用意してください。鉢やプランターで育てるときは、市販の草花用または菊用の培養土を使用すると便利です。

菊の苗

育てたい品種を選び、夏に咲く菊は春ごろ、秋咲きなら初夏、冬咲きは7月の上旬までに用意します。初心者の方は、ポピュラーな秋咲きの菊がおすすめです。苗は、葉の色が濃く茎がしっかりしているものを選びましょう。食用の菊を栽培するときは、「食用菊」として販売されている苗を購入してください。

食用の花については、「【食べられる花】エディブルフラワーの種類や家庭でできる栽培方法」の記事で詳しくご紹介しています。

支柱など

背が高く育つタイプの菊は、支柱を立ててビニタイやひもで留めながら管理します。また、挿し芽で増やす場合は、園芸用のポットまたはトレイと挿し芽用の土、霧吹きを用意してください。冬越しには、敷きわらまたは腐葉土、状況に合わせて不織布(ふしょくふ)などが必要です。

【初心者向け】菊の育て方

【初心者向け】菊の育て方

それでは、一般的な秋咲きの菊の育て方を順にご紹介いたします。

土の下準備

花だんの土は、苗を植えつける数週間前に下から深く掘り返して古い根や石などを取り除き、日光に当てて消毒します。石灰を混ぜて酸性の土を中和し、植えつける1週間くらい前にたい肥や腐葉土、肥料、もみ殻くん炭を加えてなじませます。

苗の植えつけ

菊は水はけのよい場所を好むため、花だんでは10~15cmの畝(うね)を作って植えましょう。一般的には、株の間を10~15cmくらい空けて植えつけてください。鉢やプランターへの植えつけは先述のとおり、5~7号鉢に1本、8~10号鉢に2~3本が目安です。植えつけた後は、たっぷりと水を与えましょう。

日々の管理

植えつけ後の花だんには水やりをしませんが、猛暑で土が乾き過ぎたときは早朝に水を与えてください。鉢植えは土の表面を観察して、乾いていたら午前中に水やりをします。基本的には夏の水やりも朝に1回ですが、日が暮れた後もしおれているときは夕方に与えることもあります。鉢植えの菊は、雨の日は軒下(のきした)などに移動して過湿を防ぎましょう。

背の高くなる品種は、倒れないように支柱で支えてください。なお、菊は夜間に光が当たると開花の時期がずれるため、近くに常夜灯や防犯灯があるときは段ボールなどで遮光しましょう。

摘み取りと摘芯

菊の目的に合わせて、つぼみや芽の摘み取り、摘芯をおこないます。

一輪仕立ての場合

1本の茎に一輪を咲かせるときは、頂点のつぼみだけを残します。つぼみの直径が5mmくらいのときに、頂点を除くすべてのつぼみを摘み取りましょう。

切り花用の場合

切り花用として1本の茎に複数の花を咲かせるときは、摘芯の作業が必要です。植えつけから2週間くらい過ぎて根づいたら、頂点の芽を手で摘み取ってください。その後、わき芽が伸びて高さが20~30cmくらいのころに、サイズがそろった芽を4~5本残してほかを摘み取ります。

マムなどの洋菊

洋菊は、摘み取りの作業をしません。全体を小さく育てるには、4~7月に摘芯や切り戻しをしましょう。バッサリと刈り込むと枝の数が減り、軽めに切ると枝の数が多めに育ちます。

肥料の与え方

花だんに植えた菊の生育がよくないときは、開花する2ヵ月前までに化成肥料または有機質肥料を与えます。肥料を与えた後は株元に土を寄せて倒れないように保護し、排水性を促しましょう。鉢植えの菊は、植えつけから1ヵ月くらい過ぎたら肥料を与え、同様に土を寄せておきます。

収穫と花がら摘み

一輪挿しなどに菊を生けるときは、開花して間もないものを朝または夕方に切って収穫します。スプレー菊や小菊などは、上部の花が6~7分咲き、周囲の花が3~5分咲きくらいのときに収穫します。マムなどの洋菊や花を収穫しない菊は、咲き終わった花(花がら)や枯れた葉を摘み取って管理してください。

一輪挿しについては、「【一輪挿しでお部屋を華やかに!】一輪挿しの魅力や楽しみ方を紹介します」の記事でご紹介しています。

越冬と植え替え

開花期が過ぎたら根元から10~15cmまで切り戻し、寒肥(かんごえ)として肥料を与えます。花だんの菊は、根元に敷きわらや腐葉土などでマルチングを施し、冷え込みが厳しいときは不織布や寒冷紗(かんれいしゃ)などをかぶせます。

鉢やプランターは日当たりのよい場所に置き、土の表面が乾いたら水やりをします。霜が降りる日は不織布などで周囲をおおい、軒下などに移動してください。鉢植えは春にひと回り大きな鉢に植え替えるか、土から複数の茎が出ているものは株分けをして新しい鉢に植え替えるとよい花が期待できます。

マルチングについては「園芸におけるマルチングとは?効果や使用方法、注意点をわかりやすく解説」の記事をご覧ください。

挿し芽の方法

菊の栽培に慣れたら、翌年は挿し芽に挑戦して増やしましょう。初夏に伸びたわき芽の先端を7~8cmほどの長さで摘み取り、根元の葉を取り除いてコップなどに入れた水に茎を数時間挿します。園芸用のポットまたはトレイなどに挿し芽用の土を入れ、全体を霧吹きで湿らせましょう。

摘んだ芽を土に挿して、発根するまで乾燥しないように管理してください。挿し芽をして4~5日は数時間だけ日の当たる半日陰に置き、徐々に日光に慣らします。10日から2週間くらいで発根し、根が5cmくらいまで伸びたら鉢などに植えつけましょう。一般的に、菊の挿し芽は6月中におこないます。

菊のトラブルと対処法

菊のトラブルと対処法

最後に、菊の栽培で起こりやすいトラブルと対処法についてご紹介いたします。

菊の病気

葉の裏に白いふくらみ・表に薄い黄色のはん点が出る「白さび病」や、しおれた花びらが変色して灰色のかびが生える「灰色かび病」などにかかることがあります。どちらも菌が繁殖するため、病気と思われる部分を見つけたら早急に取り除いて被害の拡大を防いでください。

菊の害虫

アブラムシやハダニ、アザミウマ(スリップス)などの害虫がつくことがあります。特にアブラムシは茎や葉から栄養を吸うだけでなく、病気のウイルスを媒介するおそれがあるのですぐに駆除しましょう。

菊の栽培には、フマキラーの「カダンセーフ」がおすすめです。草花に発症したうどんこ病のほか、アブラムシやハダニにも効果があります。食品成分由来の膜が病害虫を包んで退治。害虫は呼吸ができずに窒息死し、病原菌も栄養を得られず死滅します。

菊などを栽培する花だんや、お子様・ペットのいるご家庭でも安心してご使用いただけます。また活力成分の天然アミノ酸とAO(アルギン酸オリゴ糖)を配合していますので、病害虫対策だけでなく植物の生育もサポートする優れものです。

菊の育て方はポイントを押さえて

菊の育て方はポイントを押さえて

今回は菊の育て方を中心に、基礎知識と育て方のポイント、栽培時に気をつけたいトラブルと対処法についてご紹介いたしました。菊の育て方は、「光の当たる時間」「摘み取りと摘芯」がポイントです。初心者の方は、管理がしやすいマムなど秋咲きの菊から育ててみましょう。

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