2021年8月18日 | 園芸・ガーデニング
根詰まりとは?根詰まりサインや失敗しない植え替え方法を解説
鉢植えの植物に「元気がない」「下の葉が落ちる」などの変化が現れたら、根詰まり(ねづまり)を起こしているかもしれません。根詰まりした鉢植えは、早めに植え替えてトラブルを防ぎましょう。
今回は、根詰まりの概要と主な症状、植え替えに必要な基礎知識のほか、根詰まりへの具体的な対処法などについてご紹介いたします。
植物のトラブル「根詰まり」とは
はじめに、根詰まりの概要をご覧ください。
根詰まりとは
根詰まりとは、植木鉢の中に根が回っていっぱいになった状態を指します。根詰まりした植物は多くの問題を抱えているため、生育中にトラブルを起こします。後にご紹介する根詰まりのサインが見られたら、早めに植え替えましょう。
なお、似た言葉で「根腐れ(ねぐされ)」とは鉢の中で根が腐ることで、放置すると株元から腐敗して最終的に枯れてしまいます。鉢から嫌なにおいがする、土が湿っているのに葉がしおれるなどの場合は根腐れを疑いましょう。根詰まりが原因で根腐れを起こすこともあるので、早めの対応が必要です。
根詰まりが起こる原因
春から夏にかけての植物の生育期には、茎や葉だけでなく根もどんどん生長します。植物を何年も同じ鉢に植えたままにしていると、鉢の中で根が縦横無尽に伸びて根詰まりを起こします。生長の速い植物は根の伸び方も速いため、根詰まりに気をつけてください。複数の植物を1つの鉢に植えた寄せ植えも、根詰まりを起こすリスクを有します。植物に根詰まりのサインが出たときは、早めに植え替えましょう。
寄せ植えについては、「寄せ植えの基本と作り方。初心者でもおしゃれに仕上げるコツも解説!」「春の寄せ植えを楽しもう!おすすめの花や苗選びのポイントを解説」の記事で詳しくご紹介しています。
根詰まりのサインと症状
次のようなサインが出たら、根詰まりを疑いましょう。
底から根が見える・出る
植物の根は、先端の「根毛(こんもう)」が放射状に広がりながら土中の栄養分や水分を吸収しています。植木鉢の中の根は鉢の内側に沿って回りながら伸び、鉢の底面に到達すると、さらに広い場所を探して穴の外へ向かいます。底の穴から根が見える・出ている鉢は、根詰まりを起こしています。
水を吸収しない・水切れする
土は小さな粒が集まった「団粒構造(だんりゅうこうぞう)」から成り、その適度な隙間には、栄養分・水分の貯蔵や通気の役目があります。しかし、根詰まりを起こした鉢では土の隙間に根が入り込み、保水ができません。鉢植えの植物が水を吸収しない、水切れのスピードが速いなどのトラブルが現われたら、根詰まりと考えましょう。
葉の変化・生育の衰え
根詰まりした鉢の中は新しい根の伸びるスペースが足りないうえ、根が絡んで傷つくこともあります。根詰まりを起こすと根が正常に働かないため、下の葉が落ちる、黄色く変色する、全体的に葉の色が薄いなどのほか、今までと比べて生育が遅い、新芽や葉が小さい、花が咲かないなどのトラブルが発生することもあります。
鉢にヒビが入る・割れる
先述のとおり、生育が旺盛な植物の鉢植えは、ほかのものより早めに根詰まりを起こします。そのまま放置していると、内側からの根の圧力で、鉢にヒビが入ったり割れたりすることがあります。鉢が破損したときは早急に植え替えて、栽培の環境を整えてください。
根腐れ(ねぐされ)する
根詰まりによって土の中の酸素が減ると、酸素を必要としない「嫌気性(けんきせい)菌」が増殖して根の腐敗につながります。また、団粒構造が崩れて粘土状になった土が多くの水分を含むと、常に湿った状態が続いて新鮮な酸素が供給されず、根が窒息して腐敗することもあります。
根詰まりと植え替えの基礎知識
根詰まりの鉢を植え替える前に、次の知識を身につけましょう。
鉢の基礎知識
鉢のサイズは、1号ごとに直径が3cmずつ大きくなります。植え替えで「ひと回り大きな鉢」と指示されたときは、1つ上の号数を用意しましょう。なお、はじめから大きめの鉢に植えると、根が分岐しなかったり過湿になったりして植物が十分に育ちません。鉢植えの植物は、1号ずつ大きい鉢に植え替えるのが理想です。
植え替えの適期
植え替えは根に負担がかかるため、傷がついても回復しやすい生育期に作業してください。花が咲く植物の植え替えは、開花前か開花期の過ぎた頃が適期です。寄せ植えの鉢も根詰まりすることがあるので、状況に合わせて植え替えましょう。
多年草や樹木類は植えつけから数年が目安ですが、生長の速い植物は毎年おこないます。また、鉢に比べて植物が大きく育ち過ぎた場合も植え替えましょう。ただし、先述のとおり鉢の破損が起きたときは、時期や年数に関わらず早急に作業してください。
生長が速い植物
生育が旺盛な植物を鉢植えにするときは、こまめに様子を見て根詰まりを起こさないようにしましょう。
【ハーブ】
- サルビア・ガラニチカ:シソ科アキギリ属(サルビア属)、多年草
サルビアについては、「【サルビアの育て方】種まきの方法から水やり・切り戻し・施肥・冬越しの方法まで解説」の記事をご覧ください。
- ミント:シソ科ハッカ属、ほとんどが多年草
ミントについては、「【さわやかな香り】ミントの育て方やコツをご紹介」の記事でもご紹介しています。
- レモンバーム:シソ科コウスイハッカ属、多年草
- ローズマリー:シソ科マンネンロウ属(ロスマリヌス属)、常緑低木
ハーブについては、「ハーブ栽培は庭やベランダの虫除けにも最適!」「手軽に育てられるキッチンハーブの魅力」の記事も参考にしてください。
【観葉植物】
- ワイヤープランツ:タデ科ミューレンベッキア属、低木
- パキラ:パンヤ科(アオイ科)パキラ属、常緑低木
- モンステラ:サトイモ科ホウライショウ属(モンステラ属)、常緑多年草
- ストレリチア:ゴクラクチョウカ科(バショウ科)ゴクラクチョウカ属(ストレリチア属)、常緑多年草
観葉植物については、「インテリアグリーンで室内の雰囲気をおしゃれに!おすすめのインテリアグリーン12選」「観葉植物が枯れる原因とは?正しい対処方法を知り長く楽しもう!」の記事をご覧ください。
【低木】
- ハイビスカス:アオイ科フヨウ属(ヒビスクス、ハイビスカス属)、常緑低木
- ランタナ:クマツヅラ科シチヘンゲ属(ランタナ属)、常緑低木
- モッコウバラ:バラ科バラ属、常緑低木
- コデマリ:バラ科シモツケ属、低木
植物の根のタイプ
植え替えの際は、植物の性質を調べてから作業しましょう。
直根(ちょっこん)
太い「主根(しゅこん)」がまっすぐに伸び、周囲に細い根がつくタイプです。根に傷がつくと栄養分などを吸収できないため、なるべく土を崩さずに植え替えます。「植え替え(移植)を嫌う」とされるものは、ほとんどが直根の植物です。
ひげ根
細い根が放射状に広がるタイプで、植え替えるときは根を軽くほぐすのが一般的です。根詰まりを起こして固まっている場合は手でほぐすか、底にハサミで十字の切り込みを入れて丁寧に広げましょう。
株分けができるタイプ
株を根元から分ける「株分け(かぶわけ)」をしてから植え替える方法もあります。ただし株分けは、「叢生(そうせい:植物が密生した状態)」や「株立ち(かぶだ・ち:根元から複数の茎や枝が伸びて立ち上がった状態」」と呼ばれる植物に限られます。
根元が1本の幹や茎から成る植物は、ひと回り大きな鉢に植え替えましょう。大きくなりすぎたときは、「挿し木(さしき)」・「挿し芽(さしめ)」・「葉挿し(はさし)」、「茎伏せ(くきふせ)」などの方法で、新しく株を育てて栽培してください。
根詰まりの対処法~大きく育てる場合
それでは、根詰まりした植物を植え替える方法を順にご紹介いたします。
【用意するもの】
- ひと回り大きな鉢
- ネットに入れた鉢底石(はちぞこいし)
- 新しい土
- シャベル・ジョウロ・ハサミなどのツール
- 割りばしなどの細い棒
- 状況によっては支柱やビニタイなど
【植え替えの手順】
- 新しい鉢に鉢底石と土を少量入れておく
- 植物を鉢から丁寧に取り出す
- 根を軽くほぐす(直根の植物はそのまま)
- 弱った根や長すぎる根をハサミで切る(直根の植物はそのまま)
- 1.に株を置き、土の表面が鉢の縁から数cm下になるように底の土の量を調節する
- 株を置いて土を足し、細い棒を挿しながら隙間なく土を入れて株元を軽く押さえる
- 必要があれば、茎や枝を支柱で支える
- 水をたっぷりと与えて数日は日陰に置き、その後は徐々に日光に当てる
根詰まりの対処法~大きくしない場合
「これ以上大きくしたくない」というときは、2つの方法があります。
同じ鉢に植え替える方法
【用意するもの】
- 同じサイズの鉢(元の鉢を使うときはよく洗う)
- ネットに入れた鉢底石(はちぞこいし)
- 新しい土
- シャベル・ジョウロ・ハサミなどのツール
- 割りばしなどの細い棒
- 状況によっては支柱やビニタイなど
【植え替えの手順】
- 新しい鉢に鉢底石と土を少量入れておく
- 植物を鉢から丁寧に取り出す
- 根の部分を半分ほど崩して古い土を落とす(直根の植物は特に丁寧に)
- 弱った根や長すぎる根などを切って整理する(直根の植物は切らない)
- 根をカットしたときは、地上部の不要な茎もせん定してコンパクトにする
- 以下、植えつけの方法は同じ
株分けして植え替える方法
【用意するもの】
- 同じサイズの鉢(元の鉢を使うときはよく洗う)
- ネットに入れた鉢底石(はちぞこいし)
- 新しい土
- シャベル・ジョウロ・ハサミなどのツール
- (直根で株分けできる植物用)清潔なナイフ
- 割りばしなどの細い棒
- 状況によっては支柱やビニタイなど
【植え替えの手順】
- 新しい鉢に鉢底石と土を少量入れておく
- 植物を鉢から丁寧に取り出す
- 手やハサミを使って株を2~3つに分ける(直根の植物は株元にナイフを入れて切る)
- 弱った根や長すぎる根などを切る(直根の植物は切らない)
- 以下、植えつけの方法は同じ
根詰まりと植え替えのトラブル対処法
根詰まりした鉢を植え替える際に、起こりやすいトラブルをまとめました。
鉢から出ない
鉢から植物を取り出せない場合、プラスチックの鉢は横に倒して鉢の上から軽く力を加えてみましょう。素焼きの鉢は、ラバー製または布などでくるんだ金づちで、鉢の周囲や縁・底をやさしくたたきます。
鉢に刺激を与えたら、鉢の縁と土の間にシャベルまたはへら状のものを挿し込み、鉢からはがすようにして株を取り出します。土が乾いた状態で抜けない場合は、水やりをしてから作業しましょう。
根がほぐれない
植物を鉢から出したものの、根がほぐれないというときは「根かき」と呼ばれるかぎ状のツールを使うと便利です。根が乾かないように、水に浸しながら作業するとよいでしょう。適度に根がほぐれたら、同様に根や茎を整理して植え替えます。直根の植物は、無理に根をほぐさずにそのまま植え替えてください。
株分けできない
叢生や株立ちの植物を取り出したとき、根が絡んで株分けできないことがあります。手やハサミでほぐしながら分けてもよいのですが、フォーク状のガーデニングツールを2本使う方法もおすすめです。フォークを互い違いに組み合わせて株元に挿し、外側に開くと絡んだ根を簡単に分けることができます。
根詰まりを防ごう!植物の管理と日々の手入れ
最後に、根詰まりを防ぐための日々の手入れについてご紹介いたします。鉢植えの植物は、基本的に土の表面が乾いたタイミングで水やりをしましょう。春や秋は午前中に1回、夏は早朝と夕方に2回が目安です。冬越しする多年草や低木の鉢は、日の当たる軒下(のきした)などで管理し、土の様子を見ながら1~数日に1回を目安に水を与えましょう。
室内の観葉植物はレースカーテン越しの日が当たる窓辺などに置き、土の表面が乾いたら水やりをします。受け皿に出た水は、根腐れの原因になるので処分してください。茎や枝が混み合うところをせん定して風を通し、病害虫や生育の様子もチェックしましょう。毎日の観察を心がければ、根詰まりのサインが出たときもすぐに気づいて対応できます。
鉢植えの植物の栽培には、フマキラーの「カダン アミノパワー (草花用)」がおすすめです。14種類の天然アミノ酸を配合した植物用サプリメントで、葉にスプレーするだけで花つきがよくなり、花も鮮やかに発色します。
根詰まりのサインが出たら植え替えを
今回は、根詰まりの概要と症状、植え替えに必要な基礎知識のほか、具体的な対処法などについてご紹介いたしました。根詰まりを起こすと根から栄養分などを吸収できなくなるため、植物の生育に支障をきたします。
基本的に、鉢植えの植物は1~数年ごとにひと回り大きな鉢に植え替えますが、根詰まりのサインが出たときは早めに作業しましょう。