2019年3月12日 | 園芸・ガーデニング
ハーブ栽培は庭やベランダの虫除けにも最適!
私たちの生活にすっかりなじみ、最近ではたくさんの種類が流通するハーブ。庭やベランダなどでハーブ栽培をしている人も多いことでしょう。ハーブはお茶やお料理、アロマテラピーに使用できるほか、虫除けの効果も期待できます。
今回は、虫除けの効果があるハーブの成分とともに、おすすめのハーブ15選、栽培したハーブを利用した虫除けの方法もご紹介します。
ハーブに虫除け効果があるのはなぜ?
ハーブの独特で爽やかな香りはとても心地が良いですが、ハーブの成分には虫が苦手とするものが含まれています。
虫除けに使われたハーブの歴史
紀元前5000年頃の古代エジプトでは、薬草を医療や防腐剤のほか、染物や香料、魔除けなど幅広い用途で使用していました。古代ヨーロッパでは「サシェ」と呼ばれるハーブを詰めた香り袋があり、虫除けや香り付け、睡眠の導入用などにも使われています。
また、ハーブで作る香りの玉「ポマンダー」を虫除けとして使用した記録もあります。古代中国でも薬草を利用した虫除けを行なっており、日本でも正倉院には「小香袋(しょうこうぶくろ)」と呼ばれる虫除けの所蔵品が残っています。
ハーブには害虫が嫌う成分がある
ハーブには、それぞれ「エッセンシャルオイル(精油)」と呼ばれる天然の芳香物質が含まれています。ハーブが精油を分泌するのは、自らを食する虫や鳥を避ける役目、反対に虫や鳥を呼び寄せ受粉や種子の運搬を促す役割、抗菌・殺菌作用などの理由があると考えられています。
虫が嫌う成分としては、ハッカ油に含まれる「メントール」や、古くから「樟脳(しょうのう)」として親しまれている「カンファー」、ユーカリ油の仲間である「シネオール」「シトロネラール」「シトロネロール」、タイムやオレガノなどに含まれる「チモール」、キャットニップ(イヌハッカ)に含まれる「ネペタラクトン」などがあります。
コンパニオンプランツとしてのハーブ
また、ハーブは他の植物の近くで害虫を除けたり、反対に益虫を呼び寄せたりする「コンパニオンプランツ」と呼ばれる役割もあります。
これも精油による効果と考えられ、キャベツとローズマリーなど、トマトとバジルなど、バラとキャットニップなど、といった効果的な組み合わせが各種あります。
ハーブにはどの虫を除ける効果がある?
それでは、ハーブが具体的にどのような虫に効果があるのかご説明します。ただし、あくまでも虫除けが期待できるハーブであり、殺虫の効果はありません。
蚊やハエ・ガ
夏になると繁殖する蚊やハエは、先にご紹介したシネオールやシトロネラールなどを嫌い、ガはメントールやカンファーの香りを避ける傾向があります。
蜂やアブ
人を刺す害虫として怖がられている蜂やアブはメントールの香りを嫌うため、ハッカやミントの仲間であるハーブが有効と考えられます。
ゴキブリ
突然出没して嫌われるゴキブリも、メントールの成分を避けます。また、チモールや香辛料のクローブ、セリ科のキャラウエイなどのスパイシーな香りも苦手です。
アリの群れやカメムシ
「蟻道(ぎどう)」と呼ばれる通り道を作ると駆除しにくいアリや、洗濯物に付いて室内に入って来るカメムシもメントールの香りを嫌う傾向にあります。
室内のダニやノミ
アレルギーの原因やペットに付くダニやノミも、ハーブに含まれるメントールやシネオール、カンファーなどの香りが苦手です。
虫除け効果のあるハーブおすすめ15選
それでは、上記でご紹介した内容を踏まえながら、虫除けの効果が見られるハーブを順にご紹介します。
定番のハーブにも虫除け効果が期待できる
ハーブと聞いて真っ先に思いつく下記の2品種も、虫除けに使用できます。
ラベンダー
ハーブの代表格とも言えるラベンダーは、虫除けの効果がある「リナロール」という成分が主に含まれています。また、スパイクラベンダーという品種は、リナロールの他にカンファーやシネオールなどの成分を含有しています。
ラベンダーは、これらの成分を嫌う蚊やハエ、ガ、ダニ、ノミなどの虫除けに効果が期待できます。ラベンダーは高温や多湿を嫌うため、風通しがよく水はけのよい環境で育てましょう。鉢植えの場合は梅雨時に長く雨が当たらないよう、移動するなどの配慮が必要です。
ローズマリー
爽やかな香りと可憐な花を咲かせることで人気のローズマリーには、シネオールやカンファーなどの成分が含まれます。ラベンダーと同様に、蚊やハエ、ガのほか、ダニやノミなどの虫除け効果が期待できます。
ローズマリーには、上に伸びる「立ち性」や地を這う「ほふく性」などの品種があります。比較的丈夫で手が掛かりませんが、成育が早く幹が木質化して大きくなるため、春から秋の生育期に切り戻し、枝を乾燥させて楽しみましょう。
庭のグラウンドカバーにもなるハーブ
続いて、グラウンドカバーとして庭を彩るハーブをご紹介します。
ミントの仲間
スッキリとした香りが心地よいミントはシソ科ハッカ属のハーブで、種類がとても多い点が特徴です。ミントの成分はメントールのほか、リナロールを含む品種もあります。メントールを多く含むのはウォーターミントやヒメハッカなどで、蜂やアブ、ゴキブリ、アリ、カメムシなどの虫除けが期待できます。
ノミが嫌うミントとして知られるペニーロイヤルミントには、「プレゴン」という成分が多く含まれます。また、先にご紹介したキャットニップに含まれるネペタラクトンは、アメリカの研究者によって蚊の虫除け効果があることが証明されています。
ミントの仲間も手が掛かりませんが、成育旺盛で繁殖しすぎるため地植えでは時々切り戻して整えます。なお、キャットニップは虫除けのほか、猫が好むハーブであることも覚えておきましょう。
タイム
強い殺菌能力と防腐作用を持ち、魚料理と相性の良いタイムには、チモールやリナロールなどの成分が含まれています。チモールを嫌うゴキブリのほか、蚊やハエ、ダニの虫除けのほか、ムカデやナメクジにも効果が期待できます。
タイムには300以上の品種があり、コモンタイムのような立ち性と、クリーピングタイムなどのほふく性があるため好みに合わせて選びましょう。タイムは風通しが良くやや乾燥した環境で育ち、手が掛かりません。虫除けとして庭に植えるのにおすすめのハーブと言えます。
ベランダの寄せ植えにしたいハーブ
次に、ベランダなどで寄せ植えとして楽しめるハーブをご紹介します。
サントリナ
サントリナは別名「コットンラベンダー」と呼ばれますが、キク科ワタスギギク属(サントリナ属)でラベンダーとは異なる品種です。「アルテミシアケトン」などのケトン類を含み、古くから蚊や衣類に付く虫除けとして使用されています。
サントリナは、銀色の葉に黄色い小花を付け、背丈が低いことから寄せ植えに向いているハーブです。寒さに大変強く丈夫な品種なため、耐寒性のある植物と寄せ植えにすれば屋外での越冬も可能です。
フィーバーフュー
カモミールに似た愛らしい白の小花を付けるフィーバーフューは、「マトリカリア」や和名の「ナツシロギク」でも流通しています。フィーバーフューにはカンファーなどの成分が含まれているため、ガやダニ、ノミなどの虫除けに向いています。
15センチほどの小さな品種「サンタナ・イエロー」は、かわいい寄せ植えとしても楽しめます。フィーバーフューは寒さに弱いハーブのため、冬は屋内に取り込みましょう。葉を乾燥させれば、タンスなどの虫除けに使用できます。
のびのび育つ姿を楽しめるハーブ
次は、虫除けの成分を持ち、屋外でぐんぐん育つハーブをご紹介します。
シトロネラグラス
レモンのような強い香りを持つシトロネラグラスの中でも、ジャワタイプにはシトロネラールの成分が多く含まれます。蚊やハエ、ノミなどの虫除けに使用され、乾燥させるとシトロネラールの含量が増えるため、衣類の防虫にもおすすめです。
スリランカ原産のシトロネラグラスは暑さに強い性質で、地植えにすると1m以上に伸びることもあります。仲間のレモングラスより耐寒性があるので、育てやすい品種と言えます。
ニーム
ニームは「ミラクルニーム」や「インドセンダン」とも呼ばれ、インドなどでは古くから虫除けとして使用されていたハーブです。ニームに含まれる成分「アザディラクチン」が蚊やアリ、ゴキブリ、シロアリ、クモなどに効果を発揮します。
近年では、ニームを観葉植物として扱う店も増えました。ニームは熱帯原産のため、冬は室内で最低でも10度を保つ必要があります。スラリとした葉姿を楽しむには生育期に剪定を行い、乾燥させた葉や枝を虫除けとして利用しましょう。
ルー
「ヘンルーダ」や「コモンルー」とも呼ばれるルーは、古くから本の間に挟んで虫除けに利用されていました。「メチルノニルケトン」という成分を含みハエなどの虫除けに向いていますが、アゲハチョウが卵を産み付けることもあります。
猫除けとしても知られるルーは、地植えにすると背丈がどんどん伸びるために剪定が必要です。なお、茎から出る汁にかぶれる人もいるので、作業の際は手袋を使用しましょう。ルーは丈夫な品種で半日陰でも育ち、ほとんど手が掛かりません。
お料理にも使えるハーブ
続いて、良く知られるハーブの中でもお料理に使える品種をご紹介します。
バジル
パスタやピザなどに欠かせないバジルは、リナロールやシネオールなどの成分が含まれるため、蚊やハエの虫除けに効果が期待できます。鉢をキッチンの窓辺など日当たりの良い場所に置けば、お料理と虫除けの両方に活躍する便利なハーブです。
よく聞かれる「スイートバジル」の他にも100を超える品種があり、葉を摘み取ればどんどん新しい芽が出てきます。バジルは熱帯アジアやインド原産の植物なので、耐暑性はありますが寒さにはやや弱い傾向にあります。
レモングラス
レモンの香りが特徴のレモングラスには「シトラール」という成分が含まれており、蚊やダニの虫除けの効果を記した各種の研究もあります。レモングラスは先にご紹介したシトロネラグラスと同じイネ科の仲間で、背丈は1.5mほどまで育ちます。
レモングラスは熱帯地域の原産で寒さに弱いことから、霜が降りる地域は鉢植えにして冬場は室内に取り込みましょう。虫除けのほかにも、アジア風のお料理やハーブティーとしても使用できます。
玄関の虫除けとして置けるハーブ
次は、ハーブの持つ虫除けの効果を玄関で利用する方法をお伝えします。
ゼラニウムの仲間
ヨーロッパの窓辺を彩る花はゼラニウムの仲間が多く、虫除けの効果を利用していると考えられます。ゼラニウムにはシトロネラールやシトラールなどの成分が含まれており、蚊やハエ、ダニなどに効果が期待できます。
よく聞かれる「蚊連草(カレンソウ)」は「ニオイゼラニウム」や「センテッドゼラニウム」「シトロネラゼラニウム」とも呼ばれ、「ローズゼラニウム」の仲間にシトロネラの遺伝子を利用し異種交配させた品種です。
ゼラニウムは日当たりと風通しの良い場所を好み、霜に当てなければ初心者でも育てやすいハーブです。人の出入りが多い玄関に虫除けとして置く際は、時々日の当たる場所に移動して成長を促しましょう。
ユーカリの仲間
世界中で愛されているユーカリはおよそ850種類にも上り、コアラが好む品種と国内で観葉植物として流通する品種は異なります。ユーカリの中でも、「レモンユーカリ」として知られる「ユーカリ・シトリオドラ」にはシトロネラールやシネオール、「ユーカリジオール」といった成分が含まれています。
ユーカリの虫除け効果についてはアメリカ疾病対策センターでも効果が認められており、厚生労働省でもユーカリ油の使用を推奨しています。特にレモンユーカリは、蚊やハエ、ダニなどの虫除けに効果があります。
ユーカリは品種によって若干育て方が異なりますが、基本的には丈夫で大きく育つハーブです。耐寒性はやや弱く、酸性の土を嫌う点をポイントとして押えておきましょう。ユーカリは玄関のウエルカムプランツとして飾れるほか、葉を乾燥させて虫除けにも使用できます。
虫除けに使われる国内のハーブ
最後にご紹介するハーブは、古くから国内で虫除けとして重宝していたものです。
ジョチュウギク(除虫菊)
「シロバナムシヨケギク」とも呼ばれるジョチュウギクは明治時代に日本に持ち込まれ、1940年代までは国産品として輸出産業を支えたハーブです。
ジョチュウギクの花の部分には殺虫成分である「ピレトリン」を多く含むため、かつて蚊取り線香や農業用の殺虫剤として使用されていました。虫除けとして有名な「タンジー」もジョチュウギクの仲間です。
現在、ジョチュウギクはケニアなどの海外で生産され、観賞用として流通しています。ジョチュウギクは日光を好みますが多湿を嫌うため、枝が混み合ってきたら剪定をして風通しを良くしてあげましょう。
ゲットウ(月桃)
沖縄では古くから民家でもゲットウを栽培しており、農作物の虫除けや抗菌、漢方薬として使用していました。ポリフェノールが豊富に含まれていることから、近年では美容に良いとして注目されているハーブです。その他、ゲットウにはシネオールやカンファー、リナロールなどの成分が含まれているので、蚊やハエ、ガ、ダニ、ノミなどの虫除けに利用できます。
ゲットウは沖縄などの暖かい地域が原産のため、冬は室内で管理しましょう。成育旺盛で大きくなり、3年ほどたつと白い花が房になって咲きます。良い香りのする葉は虫除けのほか、アロマとして楽しむこともできます。
育てたハーブを利用して虫除けに
最後に、庭やベランダで栽培したハーブで虫除けを行なう方法をご紹介します。
手作りの虫除けスプレー
それでは、自分で育てたハーブを利用して虫除けスプレーを作ってみましょう。
【用意するもの】
- お好みのハーブ
- 鍋
- スプレー容器
【作り方】
- 鍋に湯を沸かし、お好みのハーブの葉や花をひと掴み入れて弱火で煮出します
- そのままでは濃いため、冷ましてから200~500倍に薄めます
- スプレー容器に詰め、1~2週間に1度虫除けとして散布します
乾燥させてサシェなどに
ハーブの葉や枝、花を十分に乾燥させて小袋に詰めれば虫除け用のサシェになります。お好みで刺しゅうやリボンを施しても良いですね。タンスやクローゼット、バッグの中などに忍ばせて使用しましょう。
お好みのハーブを束ねて虫除けにしたり、インテリアのポイントとして飾ったりするのもすてきです。ただし、小さなお子さんやペットのいるご家庭では誤飲に注意してくださいね。
まとめ
今回は、庭やベランダで栽培できるハーブの虫除け効果についてご説明しました。ハーブには虫が嫌う精油成分が含まれていること、人々は古くから生活に役立てていたことがわかりました。ご紹介した15種類のハーブの中に、気になる品種は見つかったでしょうか。
この機会に、ハーブの持つ素晴らしい天然成分を利用し、虫除けを行なってみてください。なお、ハーブを庭などで栽培して利用するのは問題ありませんが、市販のハーブオイルは成分が濃縮されているため、代用する場合は容量を守って使用しましょう。