シクラメンの育て方。翌年も咲かせる夏の休眠法や注意点などを解説

シクラメンの育て方。翌年も咲かせる夏の休眠法や注意点などを解説

うつむき加減で、上に開く花びらの愛らしさが印象的なシクラメン。毎年のように新しい品種が登場し、お歳暮やクリスマスギフトとしても人気のある植物です。

今回は、シクラメンの基礎知識と育て方のポイント、具体的な育て方と休眠の方法、トラブルと対処法などについてご紹介いたします。

シクラメンの基礎知識

シクラメンの基礎知識

はじめに、寒い季節を彩るシクラメンについて知識を深めましょう。

シクラメンの概要

サクラソウ科シクラメン属の多年草で、「塊茎(かいけい)」と呼ばれる球根の組織をもちます。花は10~3月頃まで観賞でき、ほとんどの品種は室内で管理します。夏の間は、後にご紹介する休眠法または非休眠法で冬の開花に備えます。

シクラメンは、花の見た目を「篝火(かがりび)」にたとえた「カガリビバナ」の和名をもちます。また、別名「ブタノマンジュウ」は、放し飼いの豚が地植えの球根を食べたことに由来する英語「sow bread」(メス豚のパン)を、「豚の饅頭(まんじゅう)」と翻訳したものです。

シクラメンの歴史

シクラメンの原種は15~20種類ほどで、17世紀頃にパレスチナやシリアなどからヨーロッパへ広がったとされます。「アルプスのスミレ」とも呼ばれ、過去には球根を食用にしました。19世紀から品種改良が盛んになり、1870年代に大輪の品種、1906年には代表的な園芸用の品種「ビクトリア」が誕生します。

国内に導入されたのは明治時代で、1920年代に岐阜県で本格的な栽培が始まりました。1970年代には、ほかの農業からシクラメンの栽培に転向する人々が増え、温室技術の発展とともに各地で生産されるようになりました。

シクラメンの分類

シクラメンの品種は非常に多く、サイズで大輪系、中輪系、小輪系とガーデン用に分けたり、系統でパーシカム(ノーマル)系、パステル系、F1シクラメン、ミニシクラメンに区別したりします。簡単に、原種・室内用・ガーデン用で分類する場合もあります。さらに花の形状から、一般的なストレート、花びらにすじが入るシャワー系、ギザギザした花びらのウェーブ系などと分けたり、咲き方によってノーマル咲き、八重咲き、フリンジ(フリル)咲き、ロココ咲き、ベル咲きなどと分類したりします。そして近年では、黄や紫の花、香りを放つタイプや葉が銀色に見えるタイプなど、続々と新品種が登場しています。

ガーデン用のシクラメンは、ほかの草花と寄せ植えにすることも可能です。寄せ植えについては、「【寒さに負けない!】冬の寄せ植えにおすすめの植物12選」の記事もご覧ください。

シクラメンの選び方

全体的に茎や葉がイキイキとして、大小のつぼみがついたものを選びましょう。シクラメンの花の数は、葉の本数に比例します。また、土から球根の頭が見えるものは、病気になりにくい傾向があります。

球根類については、「おすすめの秋植え球根9選」「【春にきれいに咲かせたい!】秋植え球根の植え方を紹介」の記事もご覧ください。

シクラメンの育て方のポイント3つ

シクラメンの育て方のポイント3つ

育て方のポイントには、次の3点が挙げられます。

① 日当たりと温度

冬の室内では、レースカーテン越しの日光が当たる場所に鉢を置きましょう。開花を長く楽しむには20℃以上の環境を避け、なるべく昼夜の温度差を減らしてください。寒さが苦手な品種は、後に述べる方法で保温をします。

② 水やりと花がら摘み

水やりは毎日ではなく、土の表面が乾いたら与えてください。また、咲き終わった花(花がら)や枯れた葉をこまめに摘み取ることも育て方のポイントです。シクラメンの観察を日課として、同時に病害虫のチェックもおこないましょう。

③ 夏越しの方法

原産地のシクラメンは、雨季に開花し乾季に休眠します。日本の夏は乾季に相当するため、休眠させるときは日陰の風通しがよい場所で管理してください。また、非休眠法(後述)として葉を残しながら夏を越す方法もあります。

シクラメンの栽培に必要なもの

シクラメンの栽培に必要なもの

シクラメンを育てるときは、細く長い注ぎ口のジョウロを用意しましょう。肥料は、固形または液体のものを定期的に与えます。植え替えの際は、ひと回り大きな鉢、草花用かシクラメン用の培養土、鉢底用の石とネット、シャベル、園芸用のはさみなども必要です。

シクラメンの育て方と休眠の方法

シクラメンの育て方と休眠の方法

それでは、シクラメンの育て方と休眠の方法についてご紹介いたします。

日当たりと置き場所

開花中は、日当たりのよい場所で管理しましょう。

室内用のシクラメン

耐寒温度が5~10℃くらいのシクラメンは室内で管理し、日中はレースカーテン越しの日光を当てましょう。ただし20℃以上の環境では、1ヵ月程度しか花を楽しむことができません。昼間は暖房のない部屋を選ぶなど、なるべく昼夜の温度差が少ない環境で管理してください。

夜間に10℃を下回る場合は、不織布(ふしょくふ)などで鉢の周りをおおって保温します。また、室内ではエアコンやストーブの風が当たらない場所に置きましょう。

屋外用のシクラメン

0℃まで耐えるシクラメンは、日の当たる屋外でも管理できます。雨の日は鉢を軒下(のきした)などに移動し、雪の日や霜が降りる日は玄関などに取り込んでください。地植えにする場合は、樹木の根元など直射日光の当たらない場所を選び、冬は敷きわらなどで保温しましょう。

水やりのポイント

一般的な鉢植えは、土の表面を観察して乾いていたらたっぷりと水やりをします。ジョウロの注ぎ口を土に近づけて静かに与え、球根や茎の根元に水をかけないようにしましょう。午前中の暖かい時間帯に行い、暖かい室内では霧吹きで葉にも水を与えます。水やりの後は受け皿に出た水を処分し、加湿を防いでください

下から水を吸わせる底面給水(ていめんきゅうすい)のタイプは、貯水部分が空になったら深さの3分の2程度まで水を追加します。地植えのシクラメンは、ほとんど水やりの必要がありません。

日々の管理と葉組み(はぐみ)

咲き終わった花や黄色くなった葉は、手で軽くねじって根元から引き抜きます。はさみを使うと切り口から雑菌が入る心配があるので、手で作業してください。茎が途中で折れたときは、根元から抜き取って病気を予防しましょう。

月に1回のペースで、花の茎を中心に寄せて葉を外側へ移動する「葉組み」をします。さらに、中心まで日光が届くように葉を放射線状に広げ、葉のとがった部分を下に向けて見栄えをよくしましょう。

肥料の与え方

一般的な鉢植えには、生育期に液体肥料を7~10日に1回、または固形肥料を2ヵ月に1回のペースで与えます。固形肥料は球根に触れないよう、鉢の縁に置いてください。底面給水の鉢では、同様のタイミングで液体肥料を貯水部分に入れて与えます。

夏越しの方法~休眠法と非休眠法

夏越しの方法~休眠法と非休眠法

夏越しの方法は次の通りです。休眠法はドライ法、非休眠法はウェット法とも呼ばれます。

休眠法で夏越し

休眠法は、葉をなくして球根だけで夏を越す方法です。花期が終わる4月頃から肥料を中止して、徐々に水やりの回数を減らしてください。新しい葉が出なくなったら、水やりも中止します。5月以降は屋外管理とし、日陰で風通しがよく雨の当たらない場所に置きます。

球根を触って硬ければ、順調に休眠しています。柔らかい場合は腐敗しているので、残念ですが処分しましょう。8月の終盤から水やりを再開し、下記の方法で植え替えます。休眠法で夏を越した株は、年が明けた頃に開花します。

非休眠法で夏越し

非休眠法は葉を残したまま夏を越す方法で、水やりは通常と同じタイミングで続けます。底面給水の鉢やガーデン用のシクラメンは、非休眠法で育てましょう。花期が終わったら肥料を中止し、数時間だけ日光の当たる半日陰で管理します。

地植えのシクラメンは、梅雨の前に掘り上げて鉢に植え替え、非休眠法で夏を越します。秋になったら、元の場所に植えましょう。非休眠法で夏を越した株は、休眠法よりも1ヵ月ほど早く開花することが一般的です。

植え替えの方法

シクラメンは生育が速いので、毎年9月頃に植え替えをしてください。ひと回り大きな鉢を用意して、ネットに入れた鉢底石を置きます。休眠法で夏を越した株は、鉢から取り出して土を落とし、根を半分ほど切りそろえてから植えつけます。非休眠法の株は、根の土を軽く落としてから植えつけましょう。

鉢に土を入れてシクラメンを置き、球根の頭が見えるように浅く植えつけてください。たっぷりと水を与えて、数日間は日陰で管理します。最高気温が30℃を下回ったら、肥料も再開して冬に備えましょう。

シクラメンの増やし方

原種やガーデン用のシクラメンはタネで増やせますが、発芽率はやや低めです。タネを採る場合は、異なる株の中で形のよい花を残し、人工的に授粉します。実がついて茶色く熟したら、切り取ってタネを出しましょう。

すぐにまくときは、洗ってからタネまき用の土にまき、軽く土でおおいます。乾燥させないように管理すると1週間ほどで発根し、1ヵ月ほどで発芽します。保管するときは、採り出したタネを乾燥させて紙の袋などに入れ、秋にまきます。

シクラメンのトラブルと対処法

シクラメンのトラブルと対処法

最後に、シクラメンのトラブルと対処法についてご紹介いたします。

しおれたときの対処

底面給水の鉢は、水の不足に気づきにくいので注意しましょう。葉がしおれるほど乾燥したときは、応急処置として土の表面から水を与え、受け皿に出た水を処分してください。全体的に回復したら、通常の水やりに戻します。

一般的な鉢植えがしおれたときは、鉢を新聞紙で包んで葉や茎を上に向かせます。水を張ったバケツなどに鉢の底を浸して、20~30分吸水させてください。

かかりやすい病気

咲き終わった花や傷んだ茎などに、灰色かび病が発症することがあります。灰色かび病は、気温が低く湿度が高い状況で被害が広がる病気です。咲き終わった花をこまめに摘み取り、病気が疑われる部分はすぐに取り除いてまん延を防ぎましょう。

灰色かび病については、「【被害が広がる前に対処しよう!】灰色かび病の症状と対策について」の記事で詳しくご紹介しています。

被害に遭いやすい害虫

5~9月頃のシクラメンには、アブラムシやハダニなどの害虫がつくことがあります。特に非休眠法で葉を残した場合は、葉の表と裏を毎日チェックしてください。また、冬でも暖かい部屋の中では、害虫が生き残るおそれがあるため、早期発見に努めましょう。

病害虫の被害には、フマキラーの「カダンセーフ」をおすすめします。カダンセーフは食品成分由来の膜が病害虫を包んで退治。害虫は呼吸ができずに窒息死し、病原菌も栄養を得られず死滅します。屋内での使用や、お子様・ペットのいるご家庭でも安心してご使用いただけます。また活力成分の天然アミノ酸とAO(アルギン酸オリゴ糖)を配合していますので、病害虫対策だけでなく植物の生育もサポートする優れものです。

上手な休眠で翌年も咲かせるシクラメンを育てましょう!

上手な休眠で翌年も咲かせるシクラメンを育てましょう!

今回は、シクラメンの具体的な育て方と休眠の方法、トラブルと対処法などについてご紹介いたしました。キュートでイキイキとしたシクラメンを育てるポイントは、日当たりと温度、水やりと花がら摘み、休眠法・非休眠法による夏越しです。日本の夏は湿度が高いので、風通しのよい場所に鉢を置いて上手に乗り切り、冬の開花に備えましょう。

愛らしい姿を楽しみながら、思いがけぬトラブルにも対処できるように観察を続けて、毎年美しいシクラメンを咲かせてください。

「For your LIFE」で紹介する記事は、フマキラー株式会社または執筆業務委託先が信頼に足ると判断した情報源に基づき作成しておりますが、完全性、正確性、または適時性等を保証するものではありません。

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