2021年8月16日 | 園芸・ガーデニング
連作障害とは?連作障害を防いで野菜を育てる方法や予防策を紹介
ガーデニングを楽しむうえで、「連作障害(れんさくしょうがい)」の知識は欠かせません。同じ植物や同じ科の植物を続けて栽培するときは、植える場所や土の環境に注意しましょう。
今回は、連作障害の症状や原因、連作障害を防ぐポイントと具体的な方法などについてご紹介いたします。
連作障害の基礎知識
はじめに、連作障害の概要と症状をご覧ください。
連作障害とは
「連作」とは同じ科の植物を同じ場所で続けて栽培することで、連作が原因で起きる病気や生育不良などを「連作障害」といいます。「忌地・厭地(いやち)」とも呼ばれ、古くから生育が悪くなる現象として知られていました。野菜で連作障害のリスクが高いのは、トマトやナスなどのナス科、キュウリやゴーヤなどのウリ科、インゲンやエダマメなどのマメ科、キャベツやブロッコリーなどのアブラナ科などです。
連作障害はすべての植物に出るわけではなく、ネギやニンニク、トウモロコシ、コマツナ、シュンギク、サツマイモなどはトラブルが少なめです。現在は技術の進歩により、連作障害の原因が解明されつつあります。栽培する野菜の性質や育て方を調べ、連作障害の出やすいものは環境を整えてから植えつけましょう。
主な野菜の育て方は、「家庭菜園でのトマトの育て方やコツをご紹介【初心者でも安心】」「家庭菜園でのナスの育て方やコツをご紹介【初心者でも安心】」「家庭菜園でのきゅうりの育て方やコツをご紹介【初心者でも安心】」「【スイカの育て方】種まきから肥料や水やり・収穫まで栽培方法を解説」で詳しくご紹介しています。
連作障害の症状
連作障害が起きると、次のような症状が出ます。
主な病気
連作障害による主な病気と初期の症状をご覧ください。
【ナス科】
- 青枯(あおがれ)病・・・葉が青いまま枯れる
- 萎凋(いちょう)病・・・部分的に葉がしおれる
- 半身萎凋病・・・株の片側の葉がしおれる
【ウリ科】
- つる割(つるわれ)病・・・つるが部分的にしおれる
【マメ科】
- 立枯(たちがれ)病・・・根や根元の茎がしおれる
【アブラナ科】
- 根こぶ病・・・根に大小のこぶができる
植物の病気については、「植物に発生するさまざまな病気。予防法と対処法とは?」の記事をご覧ください。
主な害虫
トマトやナス、ピーマン、キュウリ、カボチャ、インゲン、ホウレンソウ、ジャガイモなどを連作したときは、根に寄生する「ネコブセンチュウ」や「ネグサレセンチュウ」などの被害に遭いやすいので注意してください。センチュウ(線虫)は非常に小さいため、肉眼による発見は困難です。
野菜の害虫については、「知っておきたい野菜に発生する害虫とそれぞれの対処法」の記事を参考にしてください。
生育の障害
主にナス科やウリ科、マメ科、アブラナ科などの野菜を連作した場合は、全体的に生育が悪くなる傾向があります。葉ばかり茂る、新芽が出ない、結実せず収穫量が減る、病気を併発するなどのトラブルが発生し、最終的に枯れるケースも見られます。
連作障害が起きる原因
似た性質をもつ植物を続けて栽培すると、土壌内では同じ栄養が吸収され、同じ微生物が増える傾向を示します。具体的には、次のような状況が重なって連作障害が起こるといえるでしょう。
土壌内の化学的な問題
植物を栽培した後は、土壌内の「塩基(えんき)」と呼ばれる石灰や苦土(くど)、カリウム、ナトリウムなどのバランスが崩れ、土壌の酸性度が偏るなどの変化が起きます。また、微生物が作り出した「腐植(ふしょく)」と呼ばれる有機物や、作物の生育に必要なマンガンや鉄、亜鉛、モリブデンといった「微量要素」が不足する場合もあります。
土壌内の生物的な問題
1gの土壌内には、「バクテリア(細菌類)」「糸状(しじょう)菌類」「放線(ほうせん)菌類」「藻(そう)類」など、およそ100万~1000万もの数の微生物が生育します。植物を栽培した後の土壌内は、微生物の種類が偏ったり一部が多く繁殖したりして、本来のバランスが崩れてしまいます。
土壌内の物理的な問題
土壌は、2mm以下の粒子が集まった小さな塊による「団粒構造(だんりゅうこうぞう)」で構成されています。団粒構造の適度な隙間は通気性や水分の透過性に優れ、栄養分の保持や根張り(ねはり)のよさなどの効果をもたらします。栽培後の土は団粒構造が崩れて硬くなるため、植物の根が十分に活動できません。
アレロパシーと自家中毒
近隣の植物の生育を抑制または促進させるために、植物の根から化学物質を出す作用を「アレロパシー(allelopathy)」や「他感(たかん)作用」と呼びます。まれに、自ら出した成分が自身に影響を及ぼす「自家中毒(じかちゅうどく)」と呼ばれる現象が起き、生育が衰えて連作障害につながるケースもあります。
連作障害を防ぐ【3つのポイント】
連作障害を防ぐためのポイントは、次の3点です。
① 植物の科や特徴を知る
植物を栽培するときは、育て方だけでなく植物の属する科や好む環境、かかりやすい病気について調べましょう。相性がよい植物を知れば、近くに植えたり続けて栽培したりするときに役立ちます。
② 輪作(りんさく)と輪作年限(ねんげん)
「輪作」とは、同じ場所で科が異なる野菜を一定のサイクルで栽培することで、1700年代にイギリスで開発された農法とされます。「輪作年限」とは同じ場所で同じ植物を栽培する際に空ける期間を指し、連作障害を避ける輪作のプランの目安にします。主な野菜の輪作年限は、次のとおりです。
科 | 野菜 | 年限 |
---|---|---|
ナス科 | トマト | 3~5 |
ナス | 5~7 | |
ピーマン | 3~5 | |
ジャガイモ | 2 | |
ウリ科 | キュウリ | 2~3 |
ニガウリ | 1 | |
マメ科 | インゲン | 2~3 |
エンドウ | 5~7 | |
エダマメ | 2~3 | |
ソラマメ | 3~4 | |
アブラナ科 | キャベツ | 1~2 |
ハクサイ | 2~3 | |
ブロッコリー | 1 | |
コマツナ | 1 | |
カブ | 1 | |
ヒガンバナ科 | ニラ | 2~3 |
ネギ類 | ほぼなし | |
イネ科 | トウモロコシ | 1~2 |
セリ科 | ニンジン | 2~3 |
ヒルガオ科 | サツマイモ | ほぼなし |
ヒユ科 | ホウレンソウ | 1~2 |
③ 土壌の下準備や休耕
先述のとおり、栽培後の土は栄養や微生物のバランスが乱れるほか、団粒構造が崩れて硬く変化しています。次の植物を植えるときは土を深く掘ってよく耕し、石灰をまいたりたい肥や腐葉土(ふようど)を加えたりして準備しましょう。また、一部の畑や花だんをいったん休ませ、微生物の活動を促す「休耕(きゅうこう)」も有効です。
土づくりについては、「土作りのポイント – 土の種類と特徴【ガーデニングの基本】」の記事をご覧ください。
連作障害を防ぐ方法~家庭菜園におすすめ
それでは、家庭菜園における連作障害の防止策をご紹介いたします。上記のポイントをふまえ、栽培する環境を整えたうえで複数の方法を導入しましょう。
後作(あとさく)の相性
「後作」とは、野菜などの植物を収穫した後に別の植物を栽培することです。後作に相性のよいものを選べばトラブルが少なくて済みますが、相性の悪い植物を植えると、異なる科でも連作障害に似た症状が出る場合もあります。一例として、後作の野菜の組み合わせを下記に挙げました。
科 | 野菜 | 〇 後作によい | × 後作に悪い |
---|---|---|---|
ナス科 | トマト | キャベツ | ナス科 |
ブロッコリー | キュウリ | ||
ネギ類 | |||
ナス | カボチャ | ナス科 | |
エダマメ | ダイコン | ||
キャベツ | サツマイモ | ||
ブロッコリー | ゴボウ | ||
トウモロコシ | |||
ウリ科 | キュウリ | トウモロコシ | ウリ科 |
ネギ類 | ダイコン | ||
ホウレンソウ | ニンジン | ||
マメ科 | エダマメ | タマネギ | マメ科 |
ホウレンソウ | ニンジン | ||
アブラナ科 | ダイコン | エダマメ | アブラナ科 |
エンドウ | ピーマン | ||
ネギ類 | キュウリ | ||
ニンジン | |||
ゴボウ | |||
キャベツ | アブラナ科 | ||
ジャガイモ | |||
サツマイモ | |||
ヒガンバナ科 | タマネギ | トマト | ネギ類 |
キャベツ | |||
ダイコン | |||
イネ科 | トウモロコシ | トマト | イネ科 |
ハクサイ | ニンジン | ||
ブロッコリー | |||
エンドウ | |||
インゲン | |||
セリ科 | ニンジン | キャベツ | セリ科 |
ハクサイ | トマト | ||
タマネギ | キュウリ | ||
ヒルガオ科 | サツマイモ | イモ類 | |
カブ | |||
ヒユ科 | ホウレンソウ | サツマイモ | ヒユ科 |
ジャガイモ |
輪作の導入複数の野菜を続けて育てるときは、後作の組み合わせや輪作年限を参考にしながら輪作を導入しましょう。一例として、4つの区画に異なる科の野菜をローテーションしながら栽培する方法をご紹介いたします。
春から夏に野菜を栽培する場合、それぞれの区画にナス科・ヒルガオ科・マメ科・ウリ科を植えます。毎年ローテーションしながら栽培し、5年目は1年目の植え方に戻ります。
春から夏、秋から冬のそれぞれに野菜を栽培するときは、Aの区画に春:ナス科・秋:ヒユ科、Bの区画に春:マメ科・秋:アブラナ科、Cの区画に春~秋:ヒルガオ科またはヒガンバナ科、Dの区画に春:ウリ科・秋:セリ科を植えつけて、同様にローテーションします。
病害虫に強い苗
連作障害を防ぐには、基本的な環境を整えたうえで病害虫に強い苗を植えるとよいでしょう。土台の植物に別の植物をつなぎ合わせる「接ぎ木(つぎき)」の方法は、病害虫の耐性や開花・結実の促進などが期待できるとして、古くから用いられています。
また、近年では品種改良によって病害虫に強い苗が続々と開発されているので、店頭などで探してみてください。
有機物の投入
小麦の表皮「ふすま」や米ぬかなどの有機物を土に加えると、微生物の種類が増え活動も促進されます。また、ピートモスやバークたい肥、有効な成分がブレンドされた市販の土壌改良材などを投入する方法もあります。
ピートモスについては、「ピートモスとは?特徴や使い方を知り酸性の土をつくろう」の記事で詳しくご紹介しています。
コンパニオンプランツ
コンパニオンプランツとは、近くで栽培すると互いによい影響を与え合う植物のことで、連作障害によるセンチュウを防ぐにはキク科のマリーゴールド、萎凋病やつる割れ病にはネギ類の組み合わせが有効とされています。ただし、コンパニオンプランツを植えてもトラブルが発生する場合があるので、基本的な準備や管理を怠らないようにしましょう。
コンパニオンプランツについては、「コンパニオンプランツを活用し野菜を栽培しよう!植え方や組み合わせ一覧」の記事をご覧ください。
土壌の消毒
重い連作障害が出たときは、最終手段として消毒する方法があります。真夏の時期に土を十分に湿らせてからビニールをかぶせ、太陽の熱で内部を60℃以上に上げて菌を死滅させます。土を深く掘ってふすまや米ぬかなどを投入し、水をたっぷり入れて太陽光に当てる方法もありますが、臭いが発生するので環境に合わせて実践しましょう。
手に負えないようなトラブルが発生したときは、適切な薬剤を散布します。薬剤をまくときは防護用のツールを準備し、近隣への配慮を忘れずに正しい量を散布してください。
連作障害・トラブルを防ぐ日々の手入れ
一般的に植物を栽培する際、大切なポイントをご紹介いたします。野菜に限らず、植物を栽培するときは土を下準備してから植えつけましょう。日々の観察を心がけ、伸び過ぎた茎や混み合った部分の茎や葉をカットして、風通しをよくしてください。
病害虫を発見したときは、すぐに取り除いてまん延を防ぎましょう。カビやウイルスによる病気は、病原が土の中などに残って後々まで影響しやすいので早期発見が大切です。また、アブラムシはウイルスを媒介する心配があるため、早めに駆除してください。
家庭菜園や花だんの管理には、フマキラーの「カダンセーフ」がおすすめです。うどんこ病や灰色かび病のほか、アブラムシやハダニにも効果を発揮します。食品成分由来の膜が病害虫を包んで退治。害虫は呼吸ができずに窒息死し、病原菌も栄養を得られず死滅します。屋内での使用や、お子様・ペットのいるご家庭でも安心してご使用いただけます。また活力成分の天然アミノ酸とAO(アルギン酸オリゴ糖)を配合していますので、病害虫対策だけでなく植物の生育もサポートする優れものです。
ポイントを押さえて連作障害を防ごう
今回は、連作障害の症状や原因、連作障害を防ぐポイントと具体的な方法などについて解説いたしました。連作障害を防ぐには、同じ科の植物を続けて同じ場所に植えないことがポイントです。そのためにも、複数の植物を続けて育てるときには輪作の導入をおすすめします。
連作障害の知識を身につけ、健康な植物の栽培をお楽しみください。