2020年2月7日 | 虫
【特定外来生物】セアカゴケグモの生態・被害・対策について
1995年に大阪府で初めて発見されて以来、生息域は全国各地に広がり、2014年9月には都内で初めて生息が確認されたセアカゴケグモ。2019年に入ってからも3月に千葉県船橋市のテニスコートで発見。6月から7月にかけては香川県丸亀市周辺で発見が相次ぎ、8月には長野県の飯田市内で、9月には新東名高速道路上り線「遠州森町パーキングエリア」周辺で、10月にはサッカーJ2岐阜の本拠地である岐阜メモリアルセンターで発見されたことがJ2岐阜の公式サイトで報告されています。
これまで45都道府県で生息が確認され、普段の生活圏に生息する毒グモの存在は、まさに住民たちの脅威。そこで今回は、セアカゴケグモの被害にあわないように、セアカゴケグモに関する知識や対策について解説していきます。
セアカゴケグモの画像をご覧になりたい方はこちらから ⇒ セアカゴケグモ|Wikipedia
セアカゴケグモとは?
セアカゴケグモはもともとオーストラリアに生息する毒グモで、海外からのコンテナなどにまぎれて日本に移入してきたと考えられています。強力な毒を持ち、外来生物法の「特定外来種」にも指定されています。
特定外来種とは…
もともと日本にいなかった外来生物の登場によって、地域の生態系や人々の健康、農林水産業などに被害を及ぼす、あるいは及ぼす恐れのある外来生物を「特定外来生物」として指定し、その飼育、栽培、保管、運搬、輸入などについて取り扱いを規制しています。
【参考】環境省 特定外来生物等一覧
名前の由来
セアカゴケグモを漢字にすると「背赤後家蜘蛛」。背赤はセアカゴケグモの見た目の特徴でもある背中の赤い帯状の模様から。後家は「このクモに咬まれて毒で男性が死亡して後家(未亡人)が増える」という意味からその名がついたとされています。海外でも「Red-back widow spider=背中が赤い未亡人」と呼ばれていますが、これは実際に起こるセアカゴケグモの恐ろしい行動によるもので、「交尾をしたあと雌が雄を食べ自ら後家(未亡人)となる」ことから名づけられたと言われています。
生態
外来種のセアカゴケグモですが、分類学上、節足動物門クモ網クモ目(真正クモ目)ヒメグモ科に分類される有毒の小型のクモの一種で、学名はLatrodectus hasselti。同じく外来種のハイイロゴケグモや、八重山諸島に生息するヤエヤマゴケグモと同じゴケグモ属に属します。
性質はおとなしく、自分から襲ってくることはありませんが、セアカゴケグモの存在に気づかず近づいてしまった場合、身を守るために攻撃してくることがあります。人々の生活圏に生息し、エサはワラジムシやアリなどの小さな虫を捕食。雌は25~30日ごとに産卵(1回の産卵で8~12個産卵)して、約3,000~5,000個程度の卵を産みます。寿命は雌が2~3年、雄が6~7ヵ月。交尾のあとに雌が雄を食べてしまうことからも、雌のほうが雄に比べて長生きします。
特徴・形態
セアカゴケグモの体長(頭部から腹部の先まで、足の長さは含まず)は、雌で約7~10mm、雄で約4~5mm。全体的に黒色で、背赤にはセアカゴケグモの特徴である赤い帯状の模様がありますが、この赤い模様があるのは雌だけ。雄は全体的に茶色をしています。
毒は雌だけが持っているもので雄は無害です。雌が持つこの毒はとても強力で、マウスのLD50値(半数致死量)で0.9mg/kg、キングコブラ(1.7mg/kg)より強いと言われています。ただし、セアカゴケグモは小さく一度に注入できる毒量が少ないため、人が咬まれても重篤な症状に至ることはほとんどありません。雌と雄の見分け方は、体長(雌のほうが大きい)と、体色(雌は黒、雄は茶色)、背中の赤い模様(雌にはある、雄にはない)で見分けることができます。
生息場所
生息域は広く、冒頭のテニスコートやサッカー場で発見されるなど、住宅街や公園などいたるところに生息しています。日当たりが良い場所や暖かい場所にある物陰や隙間を好むため、家のまわりは「エアコンの室外機」や「プランターのふちの裏」「外においてあるサンダルの中」、自宅周辺以外では「公園のベンチの下」「ブロックの隙間」「自動販売機の下」などを生息地としています。
また、セアカゴケグモの巣はいわゆるクモの巣とは違い、丸い壺のような立体的な形をしていて、その中で卵を産み孵化させます。比較的地面に近く、日当たりが良いところを好んで営巣します。
活動時期・温度帯
活動時期は主に6~10月。この時期に人を咬むことが多くなるなど、25℃前後の温度帯を好んで活動しています。寒くなると活動は弱まりますが、室外機の裏など温かい場所に隠れて越冬することもあるので、冬だからといって油断しないようにしましょう。
セアカゴケグモによる健康被害
セアカゴケグモの毒はα-ラトロトキシンというタンパク質が主成分の神経毒で、咬まれると、チクリと針で刺されたような痛みを感じます。その後、だんだんと咬まれた部分が腫れて赤くなり、痛みも全身に広がっていきます。
主な症状は、嘔吐、発熱、発汗、頭痛、発疹、下痢、関節痛など。重症化すると筋肉麻痺の症状が出たり、呼吸困難を発症する場合もありますが、咬まれて重症化するケースは稀で、数日から1週間で回復するケースがほとんど。医療機関には抗血清が準備されていますし、これまで日本においてセアカゴケグモの毒による死亡報告はありません。しかし、原産地のオーストラリアでは乳児や高齢者の方がセアカゴケグモの被害で命を落とした例(※)があり、十分な注意が必要です。
※オーストラリアでは1959年に抗毒剤が導入されてからは1人も死亡者は出ていません
咬まれてしまったときの対処法
万が一、セアカゴケグモに咬まれてしまったら、傷口をお湯や水で洗い落とします。出血している場合、止血せずそのまま出血させて毒を体外に出すようにします。その後、できるだけ早く病院(皮膚科または総合病院)で治療を受けるようにしましょう。
セアカゴケグモの天敵
セアカゴケグモの天敵には、同じく外来種のクロガケジグモやユウレイグモ、カゲロウなどが挙げられます。ヒメバチ科の昆虫は、セアカゴケグモに卵を産みつけて寄生し、セアカゴケグモを食い殺す捕食寄生者です。また、外来種でクモバチの一種のマエアカクモバチも天敵となる存在。実際、マエアカクモバチがセアカゴケグモを捕食している様子が国内で確認されていて、セアカゴケグモの天敵として注目されています。
セアカゴケグモへの対策
セアカゴケグモの被害にあわないためにも近づかないのが一番ですが、セアカゴケグモは公園などから家のまわりまで広範囲に生息するやっかいな存在です。ここでは、生息していそうな場所をおさらいしながら、セアカゴケグモへの対策を紹介します。
生息しそうな場所には十分注意する
セアカゴケグモが生息していそうな場所に近づくときは十分にしましょう。家のまわりにも生息している可能性があるため、庭で作業するときには手袋や長靴などを着用して肌の露出を控えること、またクモの巣を見つけたら棒などで払って未然に被害を防ぎましょう。
<生息場所:家のまわり>
- エアコンの室外機
- プランターの持ち手の裏
- プランターと壁の隙間
- 外においてあるサンダルの中
- 置いてあるタイヤの中
など
<生息場所:外出時>
- 公園のベンチの下
- ブロックの隙間
- 自動販売機の下
- 側溝のフタの裏側
- 駐車場のカラーコーンの中
など
セアカゴケグモがいそうな場所で作業する際の注意点
- 手袋や長靴などを着用して肌の露出を控える。
- 上着の裾やズボンの裾から入り込まないように注意する。
- 帽子、長靴、バッグなど身につけるものや持ち物を長時間置きっぱなしにしない。知らないうちにセアカゴケグモが入り込んでしまう恐れがあります。
セアカゴケグモの駆除
家のまわりでセアカゴケグモを見つけたら、靴で踏みつぶしたり、熱湯をかけたりして駆除する方法があります。その際、まだ周囲に潜んでいたり、卵がある可能性があるのでよく確認するようにしてください。また決して素手では触らないようにしてください。クモは外的の刺激を受けると擬死行為(死んだふり)を行う習性があります。死んだフリに騙されず、確実に仕留めるようにしましょう。
殺虫剤で駆除する
セアカゴケグモの駆除に有効な殺虫剤について紹介します。
クモフマキラー
クモフマキラーは、速効殺虫成分「イミプロトリン」配合で、嫌なクモを素早く退治。また、クモが巣を張りそうな場所に噴射しておけば、持続成分「トラロメトリン」が優れた予防効果を発揮します。逆さ噴射が可能なので、物陰に潜む習性があるセアカゴケグモの駆除に好適で、プランターの下やエアコンの室外機まわりなどの処理もラクラク。セアカゴケグモの卵にも効きます。
その他のセアカゴケグモに効く殺虫剤はこちらから⇒ フマキラー【殺虫剤】セアカゴケグモ
専門業者に連絡する
虫を見るのも嫌!という人は専門業者に相談するのもひとつの手と言えます。
まとめ
1995年に大阪府で初めて発見されて以来、いまではすっかり日本に定着してしまったセアカゴケグモ。おとなしい性質で、自分から攻撃を仕掛けてくることはありませんが、うっかり近づいてしまったときには、身を守るために攻撃をしてくる恐れがあります。
とても小さな存在ですがその雌は体内にコブラよりも強い毒を持っていることを忘れないでください。セアカゴケグモに関する詳しい情報は、各都道府県のホームページからも確認することができます。正しい知識のもと、セアカゴケグモの対策を行ってください。