あの嫌な蚊の鳴き声の正体は?羽音にも役割がある!

あの嫌な蚊の鳴き声の正体は?羽音にも役割がある!

「蚊の鳴くような声」というように蚊の鳴き声は細々と小さいものを指します。体長数ミリの蚊の仲間はそれだけ私たち人間にとって存在感も薄いのです。しかし、そんな影の薄い存在なのに、夜中に寝付いたころ耳元に聞こえてくるとなんとも鬱陶しく、イライラします。

そして、いつの間にか血を吸われ、激しいかゆみに襲われることになります。時にそこから感染症を発症したり、蚊はその存在感以上に私たちの生活に大きな影を落としているのではないでしょうか。

そこで、あの嫌な蚊の鳴き声の正体は何なのかについて解説していきたいと思います。

蚊の鳴き声は羽音

蚊の鳴き声は羽音

鳥類以外の脊椎動物は発声に呼吸器の一部にある声帯を用います。鳥類は気管の分岐点にある鳴管と呼ばれる器官をふるわせることで鳴き声を発します。しかし、昆虫にはこのような器官は存在しません。昆虫の鳴き声といわれるものは多くの場合、鳴いているのではなく音を発しているだけです。

セミはお腹の中に共鳴室(きょうめいしつ)という空気がはいるところを持っています。そこで鼓膜という筋肉を振動させることで音を発します。鈴虫やコオロギは羽を激しくこすり合わせて音を出します。羽と足をこすり合わせて鳴くキリギリスなどもいます。

鳥類をはじめ昆虫たちも多くの場合オスだけが鳴きます。これはオスがメスを求めるいわゆるラブコールだからです。

しかし、蚊の「鳴く」といわれる現象はそれらとは少し違います。蚊の鳴き声の元は羽音なのです。

蚊の飛び方

蚊は、ハエ目(双翅目)糸角亜目カ科に属する昆虫です。ナガハシカ属、イエカ属、ヤブカ属、ハマダラカ属など37属、3266種が存在します。そのうち私たちが日常目にすることの多いイエカは800種、ヤブカは1000種ほどといわれています。

双翅目とは羽が2枚しかない昆虫のことです。一般に昆虫類は頭部と胸部、腹部と6本の脚を持ち、胸部に4枚の羽根を持つのが一般的です。しかし、双翅目はその名の通り、一対の羽根が退化して2枚の羽根で飛ぶ種類の昆虫です。

双翅目は蚊ばかりではなく、ハチやハエなどが含まれます。羽の数が少ないためでしょうか、多くは激しく羽を羽ばたかせるのが特徴です。昆虫が飛ぶときに1秒間に何回羽を羽ばたかせるかを「羽音周波数」といいます。羽音周波数はそのまま(Hz)ヘルツで表せます。

蝶の仲間は8回から10回。バッタは18から20回。トンボが20から30回なのに対して、ミツバチやハエの双翅目は190回から200回と激しく羽を打ち振ります。しかし、これらに比べても蚊の仲間の羽音周波数は350回から600回と桁外れに多いのです。

実はこの羽ばたく周波数が蚊の鳴き声の正体なのです。

蚊の鳴き声はなぜ煩わしいのか

蚊の鳴き声はなぜ煩わしいのか

人間の可聴周波数は通常20から20000ヘルツといわれます。このため、蝶類の羽音などは周波数が低すぎて聞こえないのです。蚊の周波数350から600ヘルツはちょうどよく聞こる範囲なのです。ではどれくらいの音なのでしょう。

皆さんにおなじみの時報「ポッポッポッピーン」は特徴的な高音で、弱い音ですがよく聞き取れます。この「ポッポッポッ」の音が440ヘルツです。「ピーン」の特に高い部分は1オクターブ上がって、880ヘルツ。

この500ヘルツくらいの高音は耳に突き刺さるような感じで飛び込んできます。人間にとってのピンクノイズなのです。この音域の音は、音の強弱に関係なく神経を刺激するような不快な感覚で聞き取られることになります。

テレビやラジオをつけたまま寝てしまうことはあっても、夜中にまさに蚊の鳴くような声の蚊の羽音に思わず目が覚めてしまい、気になって寝付けなくなってしまうことがあります。それほど人間は蚊の羽音を毛嫌いしているのではないでしょうか。

蚊たちは人間が生まれるはるか以前から動物たちの血液を吸っていました。その時に感染症を媒介したり、動物たちにとってはとても迷惑な生き物です。だから人間は本能的に蚊の羽音を嫌悪するように刷り込まれているのではないでしょうか。

蚊の羽音の周波数は人間にとってはとても耳に引っかかる音で、ほんの小さなものでもとても不快に感じます。また、高周波の音は遠くから聞こえていても近くに感じてしまいます。

真っ暗な夜中に、蚊が耳元に近づいているように感じ、鬱陶しくて追い払っても、追い払ってもいなくならない。打ち落としても、打ち落としても、近寄ってくると感じてしまう。そんなことは多くの人が経験あるのではないでしょうか。

実は、蚊の羽音は音程が高いので距離があってもすぐ耳元に迫ってきているように感じてしまいます。ほんの耳元近くに感じる蚊の羽音も、実は15センチ以上離れていることが多いのです。だから余計、「しつこく執念深い吸血鬼」、そんな印象を持たれるのではないでしょうか。
 

蚊の羽音の役割

蚊の羽音の役割

蚊の羽音は人間にとってはとても不快な音域なのです。では蚊の羽音は蚊にとってはどのような役割を果たしているのでしょうか。

蚊の羽音は蚊の種類によって違います。例えば日本全土に分布するコガタアカイエカは512ヘルツ、養鶏場などにいることが多いシナハマダラカは340ヘルツ、藪などに多いヒトスジシマカは510ヘルツ、といわれています。

この羽音のサイクルは蚊の種類によって決まっています。蚊は羽音のサイクルを聞き分けメスがオスを引き寄せます。そして蚊の羽音にひかれてオスとメスは交尾をするのです。オスは触覚や全身の毛によってメスの羽音を聞き分け同じ種類のメスと結びつくといわれています。

昆虫や動物たちはオスのほうがメスをひきつけるために派手な装いになったり、身体を大きくしたりしますが、蚊の場合はオスのほうがメスの羽音にひきつけられてペアになっていくのです。そんな蚊たちの可聴域は300から500ヘルツだといわれています。

メスの蚊は交尾をした後、産卵のため血液を求めて動物に近づきます。一回の交尾で数回の産卵をするといわれています。人間にとってはとても嫌な音である蚊の鳴き声は重要な恋愛行動の一部なのです。

蚊の飛び方

蚊は体長数ミリのごく小さな昆虫です。その小さな体で一対の小さな羽を1秒間に数百回、打ち羽ばたかせて懸命に飛びます。いくら小さな体といっても、それほどの回数を動かさないといけないかと思うと、不思議に感じます。

蚊はそれだけの回数、懸命に羽を打ち振るって、飛ぶ速度は時速約2.4キロメートルです。人間の歩く速度の半分くらい、風速でいうと約0.67メートル(2400÷3600)。風車が回る程度の微風でも蚊にとっては大嵐です。扇風機の風などでも吹き飛ばされてしまう速度なのです。

蚊は人間にとっては鬱陶しい存在でしかありません。しかし、身体が小さく飛行能力も低いので、風が吹いているときは飛行することができず、風の強い時や嵐の時などは大きな木や岩、建物にしがみついて収まるのを待っています。

蚊は飛行距離が長いわけでもありません。種類にもよりますが、私たちの身近で生息する蚊の多くは数10メートルほどの飛行がせいぜいといわれています。長く飛行するだけの体力も能力もないのです。

人間の血液を自分の体重以上に吸い(といっても数ミリグラムですが)やっとの思いで飛び立って、フラフラな状態で部屋の壁や天井で休んでいるということもよくあることです。なんだか間が抜けているように見えますが、体長数ミリ、体重も数ミリグラムの蚊たちにとってはそれでも大変なことなのです。

蚊は動物たちの血液を吸う生き物とみられるのでとても毒々しい印象を持たれがちです。しかし、実際の生き物としての存在は、とてもか弱いのです。

蚊の生態

蚊の生態

蚊は暖かな気候を好む傾向があり、全体の4分の3が熱帯地方に生息しています。このうち血液を吸う種類は4分の3ほどです。温帯域の日本は蚊には決して快適な環境とは言えません。しかし、蚊は生息に水が不可欠なので湿潤な環境の日本は生息しにくいとは言えないのです。日本全国にはおよそ100種の蚊が生息し、そのうち血液を吸うのは10種ほどです。

蚊の一生は季節により変わりますが、卵で2から3日、幼虫(ボウフラ)で7日から10日、蛹(オニボウフラ)で3日、成虫で1から2ヶ月過ごします。冬は成虫で過ごしたり、卵のまま過ごしたり種類やタイミングによって、それぞれ違いが出てきます。いずれにしても、暖かいと成長のサイクルは早まり、気温が下がってくると成長のサイクルが落ちてきます。そして一年のうちに数世代を重ねます。

蚊の中で血液を吸うのはメスだけで、メスはオスと交尾をした後、産卵に必要な血液を求めて人やその他の動物の血液を吸うのです。メスは交尾すると、4から5日後300個ほどの卵を産みます。蚊は産卵のたびに吸血するのです。これを成虫のうちに数回繰り返します。

蚊は小さくて弱い生き物ですが、生命力に溢れています。卵は乾燥に強く。雨上がりに乾いてしまいそうな小さな水たまりでも生き延びます。乾燥して水分がなくても蚊の卵は死にません。しばらくして雨が降り、水たまりになれば乾燥した蚊の卵は孵化してボウフラになります。

ボウフラは微生物や生物の死骸を食べて成長するので、生命力は強いです。そして10日もあれば幼虫から蛹になり成虫へと成長します。だから、蚊は竹の切り株や小さな水たまり、空き缶など水のたまるところならどんなところでも発生することができるのです。

蚊は人間にとっては血液を吸う嫌な昆虫ですが、天敵もたくさんいます。幼虫のボウフラの時はメダカやフナなどの魚類、ヤゴやゲンゴロウ、タガメなどの昆虫です。成長して蚊になっても天敵は多いです。トンボ、カマキリ、ゴキブリ、アブ、コオロギ、ムカデなどの肉食系の昆虫にとって蚊は格好の獲物です。また、カエルやトカゲなどの動物たち、ツバメなどの鳥類も蚊をよく食べます。自然界には蚊を食べることで生きている動物は実に多いのです。

最後に

蚊は本来、自然界では食物連鎖の下層に位置する弱い立場の生き物です。ほかの動物たちの捕食対象で、自然界の貴重な蛋白の供給者でもあるのです。
蚊は多くの捕食者にさらされながら、たくましい生命力で生き、懸命に命をつなぐために栄養豊富な動物の血液を求めて飛び回っているのです。

しかしながら、人間にとっては鬱陶しい生き物です。ここで蚊の生態などを理解し、鳴き声の正体が羽音と分かりましたが、あの嫌な音が不快な気持ちは変わりそうにないですね。

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