2019年5月28日 | 園芸・ガーデニング
家庭菜園でのトマトの育て方やコツをご紹介【初心者でも安心】
「夏野菜」と言えば、真っ先にトマトを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。トマトは初心者の方でも簡単に育つ上に栄養価が高いため、とても人気のある野菜の1つです。
今回は、トマトの豆知識や育て方のポイント、栽培で必要なもののほか、土作りや水やりなどの具体的な育て方と注意点についてご紹介します。「この夏はトマトを育てよう!」と思っている方はぜひ参考にしてください。
育て方は簡単!トマトは家庭菜園で人気
世代や性別を超え、世界中で愛されるトマトについての知識を深めましょう。
トマトの分類と歴史
ナス科トマト属に分類されるトマトの学名は「Lycopersicon esculentum」で、南米のアンデス山脈に8~9種類の野生種が自生していることから、ペルーなどが原産と考えられています。その後ヨーロッパ各地に伝わったトマトは食用として改良され、日本へ伝来したのは17世紀半ば頃の江戸時代です。
当時はまだトマトを食べる習慣がなく、観賞用として「唐なすび」や「唐ガキ」と呼び一部で楽しまれる程度でした。明治の後半にトマトソースが開発されて国内にトマトの味が浸透しましたが、栽培が普及したのは昭和に入ってからです。現在は、10種類の原種から8000以上もの品種が改良され流通しています。
トマトに含まれる栄養
トマトはビタミンCやEが豊富で、カリウムや食物繊維も多く含まれています。そのほか、色素成分「カロテノイド」の仲間の「リコピン」や「β-カロテン」も含有し、生活習慣病や老化などを防止する抗酸化作用がある野菜として注目されています。
大玉トマトの100gあたりのカロリーは19kcalと低く、プチトマトは29kcalですがその分栄養価が高くなります。
トマトの主な種類
大玉トマトは「桃太郎」や「ファースト」など、ミニトマトは「アイコ」「千果」「ペペ」などが有名です。大玉トマトとミニトマトの間の中玉トマトは「ミディトマト」とも呼ばれ、「フルティカ」「ルイ60」などが流通しています。
現在では甘くフルーティーなものや皮が薄いもの、病害虫に強いもの、カラフルで珍しい品種などがあり、タネもたくさん販売されています。初心者の方には、育て方が簡単なミニトマトの苗をおすすめします。
トマトの育て方のポイント4つ
続いて、トマトを栽培する前に育て方のポイントを4つ押さえておきましょう。
① 育てる時期
関東では、4月の終わりからゴールデンウィーク頃に苗を植え付けるのが一般的で、元気な株は7~10月頭まで収穫できます。あまり早い時期に植え付けると、「遅霜(おそじも)」に遭って苗が傷むことがあるので注意しましょう。
② 日当たりと水やり
南米の高山が原産のトマトは、強い日光の下で昼夜の気温差があり、やや乾燥した環境を好む植物です。トマトは日当たりのよい場所を選んで育てましょう。なお、地植えのトマトは基本的に水やりをしませんが、プランターの土は早く乾くので毎日水を与えてください。
③ わき芽や下葉の除去
生育旺盛なトマトは、茎と葉の間からどんどん「わき芽」が出てきます。メインの茎に栄養が行き渡るよう、定期的に手でわき芽を摘み取りましょう。また、収穫した段より下の葉は、泥はねなどが病害虫の原因になるため随時取り除きます。
④ 1段目の結実
1段目の最初の花に結実させると、多くの実を付けるトマトに育ちます。受粉は自然に行いますが、1段目のほかの花が咲いたら支柱を軽く揺らすか、花を指先で軽くはじいておくと安心です。
初心者必見!トマト栽培に必要なもの
次に、トマト栽培に必要なものを挙げますので参考にしてください。そのほか、作業には手袋や帽子、シャベル、じょうろなども用意しましょう。
ベランダ栽培ではプランターを
ベランダで栽培するときには、植木鉢ではなくプランターを使用します。トマトは根を大きく張るので、1株あたりの直径・深さが共に30センチほど取れるタイプが安心です。
清潔で栄養が豊かな土
畑の土はそのまま使用せず、害虫やゴミを取り除き栄養が豊かな土を準備しておきます。初心者の方は、市販されている野菜用の土を使用しても構いません。
お好みの苗またはタネ
トマトの苗は園芸店で選び、葉の色が濃く生き生きとしていて、ポットの下から根が少し見えるものを購入します。タネも園芸店で選び、袋に記載されている植え付けの時期や有効期限をよく確認してください。購入後は冷暗所に置き、開封後は早めにまいて育てましょう。ただし、タネの育て方は少々難しいので、初心者の方は市販の苗から育ててみましょう。
コンパニオンプランツの活用
トマトを栽培するときには、お互いの生育を助け合う「コンパニオンプランツ」をおすすめします。ニラやニンニク、ネギは病気を抑制し、マリーゴールドは虫除け、セージやパセリは風味の増加、バジルやナスタチウムは虫除けと風味の増加の効果が期待できます。
ただし、コンパニオンプランツを植えても、病気や害虫を見つけた場合は早急に対処してください。
苗を支える支柱や雨よけ
トマトの栽培には、長めの支柱と園芸用のビニタイやひもを用意しましょう。初心者の方は、1株の周りに3本の支柱を立て、上部で1つに固定する方法がおすすめです。大玉トマトや甘いトマトを作るときには、余分な雨に当てないようビニール製の雨よけがセットになったタイプを用意します。
肥料でおいしさアップ!
トマトなどの実を食べる植物には「有機質肥料」をおすすめします。有機質肥料には、油分を絞った大豆などから精製する「油かす」や、草木を焼いて作った「草木灰(そうもくばい)」、魚を使用した「魚(ぎょ)かす」、家畜類の「鶏糞(けいふん)」や「牛糞(ぎゅうふん)」、必要な成分が配合された有機配合肥料などがあります。においが気になるときには、油かすや草木灰がおすすめです。
【保存版】家庭菜園のトマトの育て方
それでは、いよいよトマトの栽培に取り掛かりましょう。基本的には大玉トマトもミニトマトも育て方は同じですが、気を付ける点は別途記載しています。
元気な苗を育てる土づくり
畑の場合は、土を下から掘り起こす「天地返し」を行い、2週間ほど寒気もしくは直射日光にさらして害虫を駆除しましょう。ゴミや古い根などを取り除き、植え付けの2週間ほど前に腐葉土やたい肥を加え、全体に石灰をまいて中和させます。1週間が過ぎたら「元肥(もとごえ)」として上記の肥料を混ぜ、栄養が豊かな土を用意しておきます。
プランターの土は、ゴミなどを除去してから腐葉土やたい肥、石灰または土壌改良剤を混ぜ、大きめのビニール袋に入れます。平らにならして10日ほど直射日光に当て、消毒してから肥料を加えて使用します。
タネまきと苗の植え付け
タネから育てる場合は、気温が上がる3月中旬にポットに数粒まいて発芽させ、生育の良い芽を1本残します。本葉が7~8枚ほど出て、つぼみが付いた頃に土に植え付けます。苗の植え付けは、直射日光を避けた曇りの日や夕方に行います。
トマトは大きく育つため、隣の株とは30センチほど間隔を空けましょう。土と苗の間にすき間がないように土を入れて軽く押さえ、たっぷりと水を与えます。コンパニオンプランツも同様に植え付けましょう。
水やりのタイミング
先述したように、畑では特に水やりは必要ありませんが、極端な猛暑などで地面が乾燥したときには早朝に水を与えてください。水は苗の頭からかけるのではなく、株の根元に静かに与えます。また、暑さで苗がしおれて、夕方も回復しないときには葉水を行って様子を見ます。プランターで育てているときには、毎朝の早い時間帯に水やりをしましょう。
誘引とわき芽の除去
植え付けた苗が伸びてきたら支柱を立て、葉が込み合わないように誘引しながら茎をビニタイなどで緩めに止めます。はさみを使うと茎に傷が付くので、わき芽や下葉は手で優しく取りましょう。特に、大玉トマトの育て方は誘引とわき芽の除去がポイントです。
結実したら肥料を
1段目の花が結実したら、「追肥(ついひ・おいごえ)」として肥料を与えてください。肥料は株元ではなく、葉が広がった先の真下にすきこみます。大玉トマトでは、実の大きさがピンポン玉くらいのときに肥料を与えましょう。与えるタイミングは、1段目の次に3段目、5段目の結実が目安です。
摘芯(てきしん)と摘果(てきか)のポイント
生育旺盛ですくすく伸びるトマトは、苗の先端をカットして全体に栄養を行き渡らせる「摘芯(てきしん)」を行います。花房が3~6段くらいで支柱より高く伸びた頃、先端に数枚の葉を残して清潔なはさみで切ります。
大玉トマトは、実を大きくするために1房あたりの実の数を4~5個に抑える「摘果(てきか)」という作業を行います。
収穫は朝がおすすめ
収穫は、開花後およそ55~60日が経ち、ガクが反り返った頃に行います。実の成る植物は日中の光合成で栄養分を作り、夜間は果実に栄養を蓄えるので、早朝の収穫をおすすめします。なお、ミニトマトはどんどん結実するため、収穫が遅れると実が割れたり落下したりすることがあります。
トマト栽培のトラブルと注意点
ここまで、トマトの育て方についてご紹介しました。最後に、トマトの栽培時に起こりやすいトラブルと注意点をご説明します。
余分な枝を育てない
トマトは生長が早いため、わき芽がどんどん育ちメインの茎と見分けが付かなくなることがあります。余分な枝が増えると栄養が分散され、おいしい実が育たなくなるのでこまめにわき芽を摘み取りましょう。
上手に結実しない理由
1番花の結実のほか、日光不足や低温が続くと結実しにくくなります。また、元肥が多すぎると葉や茎ばかりが生長する「ツルぼけ」になることもあります。実が割れる場合は土の水分量の急激な変化が原因なので、雨よけやマルチングを施して加湿を防ぎましょう。
なお、大玉トマトに多い「尻腐病(しりくされびょう)」は、実の下部が褐色になる病気で、カルシウムや水分不足、肥料過多が原因で起こります。また、実の中に空洞ができる「空洞果(くうどうか)」は、天候不良やホルモン剤の過多が原因です。すじ状に着色しない「すじ腐れ果(すじぐされか)」は、日照不足や窒素過多、カリウム不足が原因と考えられます。
うどんこ病と灰色かび病
トマトに多い「うどんこ病」は、葉や茎に小さな白い点が付き、次第に株全体が白く病変する病気です。葉が込み合ったり、肥料の窒素分が多かったりすると発症しやすく、雨が少ない冷夏などの気候も原因です。
「灰色かび病」は一見うどんこ病と似ていますが、病原菌が葉や花などの枯れた部分や傷口などから侵入し、徐々に灰色のかびが繁殖する点が特徴です。灰色かび病は加湿を好み、込み合った部分や泥がはねた下葉から発症しやすくなります。どちらも早急に病変した部分を除去し、適切な薬剤を散布してまん延を防ぎましょう。
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連作障害を避けよう
「連作」とは毎年同じ場所に同じ作物を育てることで、土の中の栄養が偏って病害虫の被害が増える状況を指します。トマトを植えた場所は、数年から5年の間隔で違う科の作物を育てるようにしてください。
また、育て方のポイントとして、同様の理由から同じナス科の植物を近くに植えないことも覚えておきましょう。
トマトの育て方をマスターしておいしくいただこう
今回は、夏野菜の代表であるトマトの育て方を中心にご紹介しました。特にミニトマトは育て方が簡単なので、初心者の方でも5つのポイントをしっかり押さえておけばさほど難しくありません。
ちなみに、ヨーロッパにはトマトを称賛して「愛のリンゴ」や「黄金のリンゴ」と表現する国もあり、価値のある野菜として大切にしています。
今回ご紹介した育て方を参考に、ぜひこの夏は栄養たっぷりのおいしいトマトを家庭菜園で栽培してみてください。