アブラムシが発生する原因とは?アブラムシの退治方法と予防方法
プランターで育てている野菜をよく見たら、茎のところに小さな虫が無数についていた、ということはありませんか。それはアブラムシの可能性が高いです。
アブラムシは多くの野菜に寄生する、体長はおよそ1~4mmほどの害虫です。アブラムシ自体が行う吸汁活動で野菜が萎(しお)れたり枯れたりすることはありませんが、さまざまなウイルスを媒介します。
この記事では野菜の生育にとってやっかいなアブラムシが発生する原因や予防・駆除の方法を紹介します。
なぜアブラムシって呼ばれているの?
アブラムシを漢字で書くと油虫。その語源は、江戸時代に萩に寄生する虫(アブラムシ)を手ですりつぶして髪に塗ってテカテカに光らせるといった子どもの遊びがあったことに由来するそうです。
また、かつてはそのギラギラ・テカテカと黒光りする見た目からゴキブリのことをアブラムシと呼んでいたそうで、昭和30年代の国語辞典でアブラムシを引くとゴキブリのことと記されています。関西地方では今でもアブラムシをゴキブリととらえている人がいるようです。
アブラムシの生態について
アブラムシは、カメムシ目のアブラムシ上科に属する昆虫の総称。植物の上ではほとんど移動せず集団で維管束(水や養分を運搬する役割をもつ、根、茎、葉っぱまで通った管のこと)に口針を突き刺して、光合成でつくられた養分を吸って生活しています。
ご自宅でガーデニングをされている人にとってはおなじみとも言える、やっかい者のアブラムシについて詳しくみていきましょう。
特徴・形態
アブラムシは体長およそ1~4mmの小さな虫で、紡錘形や球形などさまざまな体のかたちをはじめ、翅(はね)のある有翅型(ゆうしがた)や無翅型(むしがた)、さらに色彩にも個体変異が大きく、世界的には3000種類以上、日本でも約700種類いると言われています。
体は表面が柔らかく、ほとんどのアブラムシは体の後方付近に角状管(かくじょうかん)と呼ばれる突起を持ち、危険が迫るとここから「警戒フェロモン」を分泌して仲間に知らせます。
日本に生息するアブラムシの中でも「モモアカアブラムシ」と「ワタアブラムシ」は、いろんな作物から吸汁する園芸害虫として有名です。
活動時期
アブラムシは極端な寒さや暑さに弱いため、活発に活動する時期は3~10月。4~6月、9~10月の穏やかな気候の時期は特に繁殖します。
アブラムシは有性生殖(交尾)を行う時期と、雌の単為生殖による卵胎生(卵がお腹の中で孵って成長し、幼虫の小さなアブラムシを直接産む)の時期が決まっていて、そのほとんどが春先に卵が孵化し雌が成長します(雄はいません)。この雌が植物上で卵胎性生殖を行い、爆発的に増えます。そして、植物が枯れたり、季節が秋になると、翅のある生殖虫(雄と雌)をつくって他の場所に移動。そこで卵を産んで冬を越します。
驚異の繁殖力
アブラムシの特徴のひとつに、短期間で一気に増殖する繁殖力の強さが挙げられます。一度に卵を産む数はおよそ30個と決して多くはありませんが、卵胎生により生まれてわずか10日で成虫になるなど成長速度を速めることで、驚異の繁殖力を実現しています。
モモアカアブラムシを例にとると、卵胎生の雌の寿命は30〜40日で、生涯の幼虫生産数は約30匹。つまり毎日1匹程度の幼虫を約1ヵ月間産み続けます。しかも、幼虫で生まれるため生存率が高いうえ、すぐに子どもを産める状態となるため、1ヵ月で初期の700〜800倍まで個体数が増えると言います。
時期によって雌・雄を産み分け
その生態はとてもユニークで、その状況に応じて変化させることで種の存続を維持しています。種類により地域は異なるものの日本各地に生息するアブラムシ。
比較的暖かい環境を好み、春から秋にかけては雌だけの集団で暮らしていますが、寒い地方では卵の状態で越冬しようとするため、秋になると雄を産むようになります。
世代交代の中で生まれる翅のある有翅型
また、アブラムシは群がる性質があり体の翅が邪魔になることから、翅のない個体が多いのですが、繁殖しすぎるとギュウギュウ状態となり寄生する作物の養分が足りなくなってしまうため、おおよそ3世代目以降の子は、違う作物に移動できるように「翅のある有翅型」の子を産むようになります。
アブラムシを媒介とするウイルスによる被害にご注意を
アブラムシは1年を通して野菜や果樹などの植物に寄生していますが、アブラムシ自体が行う吸汁活動で野菜が萎(しお)れたり枯れたりすることはありません。
しかし、野菜などに寄生したアブラムシを放っておくと、その数はどんどん増えていき、植物の蜜や葉の汁を吸いアブラムシがお尻から出す甘露(かんろ)と呼ばれる排泄物で野菜はベトベトに。この甘露は、アリを呼び寄せるため、てんとう虫など、アブラムシを駆除してくれる益虫を遠ざけてしまう上、「すす病」の発生原因になってしまいます。
何よりアブラムシが引き起こすいちばんの問題は、他の野菜にかかったウイルス病を次々と媒介してしまうことにあります。
別名「アリマキ」の由来
甘露をアリに与えてあげることでアリと共生する種類が多いアブラムシは、アリがたくさん集まる「アリの牧場」を意味することから別名「アリマキ」と呼ばれています。
有翅型がウイルスを伝搬
有翅型のアブラムシが伝搬するウイルスには「キュウリモザイクウイルス」「カブモザイクウイルス」「ジャガイモYウイルス」などがあります。
キュウリモザイクウイルス
ナス科、ウリ科などを1000種類以上の植物にモザイク病を引き起こします。モザイク病は発病すると葉などが濃淡のあるまだら模様となりモザイク状に見えるほか、葉が縮んだり黄化したり、そばかす状の斑点が多数できたりと食物全体にさまざまな症状があらわれ、感染した作物のほとんどは枯れてしまいます。
カブモザイクウイルス
アブラナ科の植物や、キク科、ナス科など200種類以上の植物に感染してモザイク病を引き起こします。
ジャガイモYウイルス
ジャガイモ、トマト、ピーマンなどで被害が大きく、感染すると葉脈に壊疽(えそ)を生じて、葉を枯らせてしまいます。
モザイク病は、細菌感染症の病気とは異なり、一度感染すると治療できない怖い病気です。モザイク病など感染した作物で育ったアブラムシは、ウイルスを保毒した有翅型が別の作物に移動した際、その作物が自分の好みか味見するために口吻(こうふん)を突き刺しただけで感染するなど移動する先々でウイルスが拡大してしまう恐れがあります。
アブラムシが発生する原因
驚異の繁殖力でさまざまな植物にびっしり生息するアブラムシですが、もともとどうやって植物に寄生するようになったのでしょうか。その原因のひとつに「窒素分の多い肥料を与えすぎる」というケースが挙げられます。
窒素分の多い肥料を与えすぎると葉で合成されるアミノ酸が多くなりすぎてしまい、アミノ酸を好物とするアブラムシが寄ってきてしまいます。
「植物の株間が狭く風通しが悪い」といった場合にも、アブラムシが湧きやすいと言います。アブラムシの発生を防ぐには植物の風通しをよくし、まんべんなく日が当たるようにすることがポイントです。また、翅がある有翅型のアブラムシが発生すると、別の植物へと移動を繰り返すため、一気に発生してしまうことになります。
できるだけ作物に影響を与えない、アブラムシの退治方法
植物にびっしりと寄生するアブラムシを退治するには、どんな方法が効果的でしょうか。ここでは、シンプルな方法からアブラムシの天敵による撃退法など、さまざまな方法を紹介します。
手で丁寧にとる
直接手やピンセットでとったり、粘着力の弱いテープに貼り付けてとります。
歯ブラシでこすり落とす
使用済みの歯ブラシでアブラムシをこすり落とす方法です。落としたアブラムシを入れる容器なども用意しておきましょう。こする際は歯ブラシで作物を傷めないようする必要があります。新芽などの柔らかい部分は避けたほうが無難です。
スプレーする
身近なものでアブラムシを退治する方法がいくつかあります。それぞれ見ていきましょう。
木酢液
木酢液は、木炭をつくるときに出る水蒸気を液体にしたもので、アブラムシなどの害虫を駆除するだけでなく、土壌の消毒や有用微生物を増やし、植物の生育にも良いとされています。害虫予防や生育のために日頃から木酢液を作物にスプレーしてあげることをおすすめします。
牛乳
アブラムシに牛乳を吹きつけ、牛乳の膜で窒息させて駆除する方法です。牛乳をそのまま、もしくは水で薄めてスプレー。その後、しっかりと洗い流します。洗い流しを怠ると、悪臭や腐敗、雑菌の繁殖などにつながります。
石鹸水
石鹸を水に溶かしたものをアブラムシにスプレーします。牛乳同様、石鹸の膜でアブラムシを窒息させて駆除します。植物への影響を考えて、石鹸は無香料・無着色の添加物が入っていないものがおすすめです。
天敵に捕食させる
アブラムシをエサとする虫を放ち、撃退させる方法です。
テントウムシ
アブラムシの天敵として有名なのは「テントウムシ」。成虫も幼虫もアブラムシが大好物です。テントウムシには「肉食性」「菌食性」「草食性」の3種類がいて、アブラムシを食べる肉食性のテントウムシにはさまざまな種類がいます。
<アブラムシを食べるテントウムシの種類>
- ナナホシテントウ
- ナミテントウ
- ダンダラテントウ
- ヒメカメノコテントウ
- ジュウサンホシテントウ
- ウンモンテントウ
- オオテントウ
など
寄生バチ
ハチの中には、アブラムシの体に卵を産みつける寄生バチがいます。その幼虫はアブラムシの体内で養分を吸って成長し、アブラムシを死滅させます。
<アブラムシに卵を産みつける寄生バチの種類>
- コレマンアブラバチ
- ギフアブラバチ
- チャバラアブラコバチ
- ナケルクロアブラバチ
など
強めのシャワーで流す
アブラムシは茎や葉に強力にくっついているわけではないため、強めのシャワーをかけることで、アブラムシを取り除くことができます。
殺虫剤を使う
殺虫剤などの薬剤は一度にたくさんのアブラムシを駆除するのに効率的で、アブラムシが大量発生したときなどに有効とされていますが、薬剤を長期間使用しているとアブラムシに耐性ができて効きにくくなってしまいます。そのため、2~3種類の薬剤を順番に使用すると耐性もできにくく効果的です。野菜や果樹などに使える安全性の高いものがおすすめです。
フマキラーでは、アブラムシに効果のある園芸用殺虫・殺菌剤を多数取り揃えております。「カダンセーフ」は、食品成分由来の膜が病害虫を包んで退治。害虫は呼吸ができずに窒息死し、病原菌も栄養を得られず死滅します。屋内での使用や、お子様・ペットのいるご家庭にもおすすめです。また活力成分の天然アミノ酸とAO(アルギン酸オリゴ糖)を配合していますので、殺虫・殺菌のみなず植物ケアもできる優れものです。
アブラムシの習性を知って、効果的に予防しましょう!
爆発的な繁殖力を持つアブラムシは、できるだけ植物や作物に寄せつけたくはありません。そこで、アブラムシの習性を活かした効果的な予防法を紹介します。
窒素肥料のやりすぎに注意する
アブラムシが発生する原因のひとつとされているのが窒素肥料のやりすぎです。植物の生育に窒素は重要ですが、窒素分の多い肥料を与えすぎるとアブラムシが大好きなアミノ酸が多くなりすぎるため注意が必要です。
植物を密集させない
植物の株間が狭く風通しが悪いとアブラムシが湧いてくる原因となります。アブラムシの発生を防ぐためには植物の風通しをよくし、まんべんなく日が当たるようにすることが大切です。
アルミホイルを敷く
アブラムシは強い光を嫌うため、植物の葉などに寄生する際も裏側に密集します。そこで、植物の茎の根元にアルミホイルを敷き詰めます。こうすることで太陽の光を反射させて葉の裏側まで照らすことができ、アブラムシを遠ざけます。
黄色のモノに集める
アブラムシは黄色いものに集まるといった性質があります。その性質を活かした予防策として、植物の近くに水を張った黄色い容器を置いておく方法があります。こうしておくだけで、有翅型のアブラムシが飛んできて容器の中で溺れてしまいます。
一緒にハーブを植える
ハーブには薬効成分があり、害虫が苦手とする香りを出すものが多数あります。その一部として代表的なハーブや役割の面白いハーブを紹介します。
セージ
さわやかなセージの香りはアブラムシをはじめ、多くの虫たちは嫌います。
カモミール
直接アブラムシを忌避するものではありませんが、天敵となるテントウムシを引きつける効果があります。
マリーゴールド
葉自体に防虫効果があるためアブラムシを含めた多くの虫たちを忌避する効果があります。
チャイブ
アブラムシが好むハーブです。このチャイブを離れた場所に植えておくことで、チャイブをおとりにして植物を守ります。
まとめ
こうしてみてみるとアブラムシは小さいながらもとてもユニークな特性を持った虫であることが分かります。
とはいえ、植物に寄生されるととにかく厄介な存在ですから、まずはアブラムシを発生させない・寄せつけないための対策をしっかり行い、植物を元気に育ててください。