2019年4月20日 | 虫
ヒトスジシマカが発生する原因とは?ヒトスジシマカの習性を知って対策しよう!
春の訪れは待ち遠しいものです。ぽかぽかと暖かな陽気は、気持ちまで軽やかにしてくれます。そんな開放的かつ活動的なシーズンを心待ちにしているのは、実は人間だけではありません。
暖かくなるのはうれしいけれど、虫たちも活発に活動しはじめるこれからのシーズン、やっかいなのが「蚊」の存在です。
そこで今回は、蚊の中でもよく目にする「ヒトスジシマカ」について、その習性などを紹介していきます。
そもそも蚊はなんで血を吸うの?
蚊が嫌われる理由は、なんと言っても血を吸い、吸われた箇所に生じるあのかゆみのせいではないでしょうか。でも、なぜ蚊は血を吸うのでしょう?
実は蚊が血を吸うのは、産卵のために必要な栄養素(たんぱく質や必須アミノ酸など)を必要とするため。つまり血を吸う蚊はすべて交尾後のメスだけで、それ以外はオス・メスを問わず糖分をエネルギー源としているため、普段は花の蜜や果物の汁などを吸っています。
昼型?夜型?種類によって血を吸う時間帯が違う
そうしたメスの蚊の中でも、昼に血を吸う蚊と、夜に血を吸う蚊がいることをご存知でしょうか。今回ご紹介する「ヒトスジシマカ」は昼に吸血するタイプの蚊。一方、夜に吸血するのは「アカイエカ」という種類の蚊です。
ちなみに、日本には100種類以上の蚊が生息していると言われますが、そのうち血を吸うのは約半分、その中でも人間の血を吸うのは限られた種類の蚊であるとされています。その代表的な種類が「ヒトスジシマカ」と「アカイエカ」、そしてアカイエカによく似た「チカイエカ」がいます。
ヒトスジシマカの生態について
蚊の体の色について思い出してみると、体の色が茶色い蚊と、黒くて白いシマが入った蚊がいることに気づかれるかと思います。ヒトスジシマカは後者の、草むらなどでよく見かけるあの黒いシマシマの蚊のことで、通称「ヤブ蚊」とも言われています。
特徴や形態
ヒトスジシマカは体長約4.5~5mm、体が黒色で、胸背の中央に白い1本の正中線があり、脚は黒地に白帯が縞状についているのが特徴の、最も代表的なヤブ蚊です。国内で一番吸血被害をもたらす種類とされ、2014年に大流行したデング熱の媒介者として注目されました。
蚊の中では比較的寒さに弱く、家の中など室内でよく見かけるアカイエカが25℃前後で活発に活動するのに対して、ヒトスジシマカが活発に活動するのは30℃前後。主に暖かい季節の日中、公園や草むらなどでよく見かける、特に人間の血を好む種類の蚊です。
分布
もともとは東南アジアを起源に熱帯から温帯まで広くアジアに分布していましたが、長い年月をかけ世界中に分布域を拡大し、現在ではオセアニア、ヨーロッパ、北米、中南米、インド洋諸国などに分布が認められています。
ヒトスジシマカは寒さに弱いことから国内においては、南は沖縄から北は岩手県までで生息が確認されてきましたが、温暖化の影響などによりその生息地も少しずつ北上してきていて、秋田県や青森県でもコロニーが発見されています。
生息場所
直射日光が当たらない湿度が高く水場が近い場所を好み、公園や草むら、雑木林、竹やぶなどに生息しています。また、産卵場所は、植木鉢の受け皿や墓石のくぼみ、古タイヤの中などの水たまり。寒くなると卵の状態で越冬します。
もともとヒトスジシマカは森や山間部に多く生息していましたが、近年は家屋のまわりに水場で繁殖することが増え、逆に森や山間部など人気の少ない場所には生息しなくなってきています。そのため、家屋のまわりで繁殖したヒトスジシマカが、人間の血を求めて家の中に入ってくるといったケースも増えてきているようです。
活動時期
ヒトスジシマカが成虫として活動する時期は5月~11月頃。この期間に、交尾→産卵→孵化→幼虫→蛹→羽化→成虫といったサイクルを繰り返します。
交尾を済ませた成虫は水辺に80個前後の卵を産みつけます。卵は1~2日ほどで幼虫のボウフラに孵化。水中で微生物などをエサにしながら約10日間ボウフラの時期を過ごしたのち蛹となり、3~5日の蛹の期間を経て成虫に。およそ1ヵ月程度を成虫として過ごしたのち、一生を終えます。
※産卵については暖かい季節での話で、ヒトスジシマカは寒くなると卵のまま越冬するため、数ヵ月間を卵の状態で過ごします。
ヒトスジシマカとアカイエカの違い
ヒトスジシマカ | アカイエカ | |
---|---|---|
見た目 | 黒くて白い縞模様がある | 茶色 |
体長 | 約4.5~5mm | 約5.5mm |
生息場所 | 公園や草むら、雑木林、竹やぶなど | 家の中など |
活発に活動する温度 | 30℃前後 | 25℃前後 |
吸血の時間帯 | 昼 | 夜 |
活動開始時期 | 5月 | 4月 |
産卵場所 | 水面より少し上の壁面 | 水面 |
アカイエカは水面に卵を産み、その卵はすぐに孵化して成長します。これに対してヒトスジシマカは水面より少し上の壁面に卵を産みます。そして、卵は雨などで水かさが増して水没すると孵化して成長し、雨が降らないと卵は孵化しません。これは、すぐに干上がる小さな水源を利用するためです。
また、アカイエカは成虫で冬を越します。卵がすぐに孵化するため、凍結の可能性のある水の中では冬は越せません。ヒトスジシマカは卵に乾燥耐性があるため卵の状態で冬を越します。
活動時期にも違いが見られ、アカイエカは成虫で越冬するため、気温が高くなると活動(吸血)を開始します。一方、ヒトスジシマカは卵で越冬するため、暖かくなるとまず卵から幼虫が孵化し、成長してから活動(吸血)します。そのため、だいたいアカイエカの方が1ヵ月ほど早く活動を開始します。
ヒトスジシマカの被害
蚊に刺されると嫌なかゆみが襲ってきますが、蚊の中で刺されて最もかゆいのがこのヒトスジシマカと言われています。刺されたあとが大きく腫れあがることもあります。また、人の血を吸う種類の蚊として、ウイルスなどを媒介する恐れがあるため、注意が必要です。
アレルギー反応によるかゆみ
そもそもかゆみの原因について解説すると、人間の血液は空気に触れると固まる性質があります。血が固まってしまうと、蚊は上手にたんぱく質を吸収できなくなってしまうため、血液を吸うと同時に人間の体内へ唾液を流し込みます。
蚊の唾液には血液を凝固させない成分や、刺されたときの痛みを和らげる成分が含まれていて、その唾液に皮膚がアレルギー反応を起こすことでかゆみを感じるようになります。
そのため、蚊が吸血しているときに上から叩き潰すと、蚊の体内に吸い込まれた蚊の唾液をもう一度体の中に戻すことになってしまうため、蚊に刺されていることに気づいたら叩かず指で弾き飛ばすのが効果的。また、かゆみの度合いについては、蚊の種類や、刺された人の体質や体調によってもかゆみは微妙に異なると言われています。
かゆみ以上の被害、命にかかわる危険も
サソリや毒グモ、サメや猛獣など、地球上には危険生物と呼ばれる生き物が多数生息していますが、実は最も人を殺しているのが「蚊」で、年間約72万5000人もの命が奪われているというデータがあります。蚊自体に毒はありませんが、人の血を吸うことで、デング熱やマラリア、日本脳炎、ウエストナイル脳炎などの感染症を媒介します。
2014年、日本で70年ぶりに大流行したデング熱。その媒介となったのがヒトスジシマカでした。東京都内の公園でウイルスに感染した蚊が大量発生。ウイルスに感染した人を刺した蚊が、他の人を刺すことで被害が拡大していき、この夏、東京を中心に162人の感染者が出ました。
デング熱の症状
2~14日の潜伏期間ののち突然高熱が出て約1週間続きます。
初期症状は発熱の他に、頭痛、目の奥の痛み、顔面紅潮、全身の筋肉痛、関節痛、全身倦怠感など。発症後3~4日で胸などに発疹が現われ、だんだんと手、足、顔に広がります(1週間程度で回復)。治療薬はなく、発症した場合、水分補給や解熱剤の投与などの対症療法が中心となります。
ヒトスジシマカに刺されないためには
ヒトスジシマカに刺されないためには、まずは相手の生息ポイントに近づかないのが一番です。ヒトスジシマカは植木鉢の受け皿や墓石のくぼみ、古タイヤの中など水たまりに卵を産みつけ、公園や草むら、雑木林、竹やぶなどに生息しています。
ヒトスジシマカは「待ち伏せ型」の蚊とも言われているため、このような場所には極力近づかないのが得策と言えますが、とはいえ思いっきり屋外でレジャーを楽しみたい季節、外出時はできる限りの対策をして出かけるようにしましょう。
肌を露出させない
当たり前のことですが、蚊に刺されないためにはできる限り肌の露出をおさえることがポイント。万全を期すなら長袖長ズボンはマストアイテム。また、肌にぴったりと密着した服だと服の上からでも刺されてしまうので、ゆったりとしたシルエットの服がおすすめです。
濃い色の服を着用しない
一般的に蚊は黒色など彩度の濃い色を好む傾向にあるようで、ある実験によると、白い服を着ている人よりも黒い服を着ている人の方に約10倍もの蚊が集まったというデータが報告されています。蚊は濃い色に惹かれる習性があるようです。
虫よけスプレーを利用する
ヒトスジシマカの対策には、虫よけスプレーがおすすめです。外出前に肌が露出している箇所にスプレーしてお出かけください。
小さなお子さんや肌の弱い方向けに、オーガニックアロマで作られた虫よけスプレーもあります。
汗をこまめに拭く
蚊は人の体温や息を吐くときに出る二酸化炭素、汗に含まれる乳酸などの成分を感知して近づいてきます。こうした習性から体温が高く汗をかきやすい人は、蚊に刺されやすい傾向にあります。そこで、汗をかいたらタオルでこまめに拭き取るようにしましょう。
屋外用扇風機を使う
蚊は飛ぶ力があまり強くありません。ヒトスジシマカも例外ではないため、扇風機などの風で追い払うことができます。
刺されたときの対処法は
蚊に刺されると刺された箇所がかゆくなります。特にヒトスジシマカに刺されると強いかゆみに襲われますが、たまらずかいてしまうと皮膚の炎症がひどくなり、ますますかゆくなってしまいます。もし刺されてしまった場合、その部分を氷や水などで冷やします。冷やすことで血管が収縮してかゆみがおさまります。
特に小さなお子さんは我慢できずにかいてしまうので、外出の際には、かゆみ止めの塗り薬やパッチなどを用意しておくことをおすすめします。
ヒトスジシマカの発生を防ぐには
家のまわりにおいてヒトスジシマカの発生を防ぐためには、卵を産みつける水たまりをなくすことが有効と言えます。
<産卵場所を作らない>
- 植木鉢の受け皿などにたまった水を捨てる・拭き取る
- 水が入ったバケツやジョウロなどをそのまま放置しない
- ペットの水飲み容器などはこまめに洗う
- 散水用の汲み置き水は定期的に入れ替える
ヒトスジシマカが家のまわりに現れる場合、草むらが生い茂っている可能性が高いので、定期的に草を刈り取り風通しをよくするといいでしょう。
刺されないための対策と、刺されたときの対処で、レジャーを満喫!
これからの季節、キャンプや音楽フェスなどさまざまなアウトドアレジャーを楽しまれることと思いますが、ヒトスジシマカがいそうな場所にお出かけの際は、十分な対策をしてからお出かけください。
また、近年は人々の生活圏で見かけることも増えてきているため、この機会にぜひ、蚊に関する知識を深めていただき、夏を大いに楽しんでいただきたいと思います。