2020年3月10日 | 虫
【不快害虫】ワラジムシが発生する原因とは?ワラジムシの予防と駆除について
「あれ、このダンゴムシは丸まらないなぁ」と、子どもの頃ワラジムシに触れて、そう思った人もいるのではないでしょうか。体を丸めてコロコロ転がる、子どもたちに人気のダンゴムシと、見た目は似ているのに、あまり歓迎されないワラジムシ。実は、名前に「ムシ」がついているものの虫ではなく、ワラジムシはダンゴムシと同様にカニやエビの仲間なのです。その見た目から、不快害虫とされるいっぽう、落ち葉などを食べてくれる益虫としての側面も持ち合わせています。
そこで今回は、まだまだ知られていないワラジムシについて、その生態や特徴、発生する原因、対処法を紹介していきます。
ワラジムシの画像をご覧になりたい方はこちらから ⇒ ワラジムシ|Wikipedia
ワラジムシの生態
ワラジムシはもともとヨーロッパ原産の生き物です。そこから世界各地に広がり、世界でおよそ1,500種いるとも言われ、日本では100種ほどが確認されています。
分類・仲間
ワラジムシは、等脚目(ワラジムシ目)のワラジムシ亜目に属する生き物で、大きな括りで言うとカニやエビなどの仲間です。最近ニュースなどでも取り上げられる人気の深海生物、オオグソクムシもワラジムシの仲間であることが伝えられています。
特徴・形態
ワラジムシの体長は約12㎜で、体幅は約6mm。ダンゴムシ同様に楕円形のような形をしていますが、ダンゴムシに比べると、体幅はやや細く、背中の盛り上がりもそれほどありません。この扁平な草鞋(わらじ)のような形をしていることから、この名がついたとされています。
今では草鞋を見かける機会も減ってしまったこともあり、より身近な履物である草履にたとえ、「ゾウリムシ」と呼ばれることもあります。また、昔はトイレ(便所)で見かけることが多かったことから、「便所ムシ」と呼ばれることがあります。
体の色は、灰色がかった褐色や暗褐色をしていて、なかには体に淡黄色の斑点や粒状の模様があるものもいます。
ワラジムシをはじめ、ダンゴムシやフナムシなど陸生の甲殻類のワラジムシ亜目の生物は、炭酸カルシウムを含む硬い外骨格を備えていて、基本的に体節は14(頭部1節、胸部7節、腹部5節、尾部1節)で構成されていて、胸部から腹部にかけて1対ずつ計14本の足を持っています。
発生場所
ワラジムシは北海道から沖縄まで日本全土に分布しますが、なかでも関東以北に多い傾向があります。やや湿った場所を好み、落ち葉などが堆積した場所や、人家周辺の石の下や草の間の地面などわりと身近に見ることができます。昼間はこうした場所でじっと身を潜め、夜になるとエサを求めて活動的に動き回ります。
夜行性の理由は、ダンゴムシ同様、天敵(鳥、トカゲ、カエル、クモ、ムカデなど)から身を守るとともに、日光による水分の蒸発を防ぐためと言われています。
落ち葉や苔などを食べてきれいにしてくれるワラジムシですが、実は枯れ葉以外にもいろいろなものを食べる雑食性の生き物なのです。
活動時期
一年を通して見かけることができるワラジムシですが、活動時期はだいたい2月~11月くらい。特に活発に行動するのは4~6月と9~10月。春と秋の温暖な時期に繁殖活動を行い、一度に40個程度の卵を産みます。
産卵は雌の育房(卵嚢・保育嚢)内で行われ、孵化してから数日後、育房を破って抜け出し、母体の体に付着し母体に守られながら成長します。
生まれたばかりの幼虫は、真っ白く透明で体調は約2mm。サイズこそ小さいものの、すでにほとんど成虫と同じような姿をしています。
脱皮
ダンゴムシやワラジムシなどの甲殻類は、成長過程において脱皮を繰り返して大きくなります。脱皮した抜け殻はカルシウムが豊富なため、脱皮したあと自分で食べてしまいます。ワラジムシに限らず、ダンゴムシやフナムシ、オオグソクムシなどのワラジムシ目のほとんどの生き物は、脱皮を2段階で行います。はじめに下半身の殻を脱ぎ、しばらくしてから上半身の殻を脱ぎますが、上半身の殻を脱ぐまでに数時間から数日かかる場合があります。
ワラジムシとダンゴムシとの違い
ワラジムシもダンゴムシも全国的に生息していますが、ワラジムシは関東以北に多く、ダンゴムシは関東以南に多い傾向にあります。このように、似ているようでいて、微妙に異なるワラジムシとダンゴムシ。続いては、見た目でわかる両者の違いについて見ていきましょう。
<ワラジムシを見分けるポイント>
- ダンゴムシのように丸くならない
- 体にダンゴムシのような光沢がない
- ダンゴムシよりも殻がやわらかい
- ダンゴムシよりも移動速度が速い
- おしりの尾肢(びし)という突起した部分が2本出ている(ダンゴムシはこの尾肢が隠れていて見えにくい)
ワラジムシが発生する原因は?
ワラジムシが大量発生する原因のひとつは、そこがワラジムシにとって快適に過ごしやすい場所であることが言えます。主食とする落ち葉や、湿気を含んだ土、大好物の作物の新芽など、ワラジムシにとって快適な環境が整えば、そこは最高の住処になります。
ワラジムシによる被害
雑食性のワラジムシは、枯れ葉以外にも腐敗した部位をかじることで作物への被害を与えることがあります。しかし、せっせと土を耕し豊かな土壌を作ってくれるといった恩恵をもたらしてくれます。人に咬みついたり、病気を媒介したりすることはありませんが、虫嫌いな人にとっては見た目に不快感を与えるため、不快害虫とされています。
ワラジムシの予防・駆除方法
ワラジムシに害がないことは知っていても、ガーデニングなどをしていて、鉢を動かしたら下からワラジムシが現れたり、ましてや家の中でその姿を見かけたりしたら、ちょっとドキッとしてしまいますね。そこで、ここではワラジムシを近づけなくする方法について紹介していきます。
ワラジムシが好む場所をなくす
先述のとおり、ワラジムシが生息する場所はワラジムシにとって住み心地がいい場所です。つまり、ワラジムシが住みにくい環境とすることこそ、ワラジムシの発生を防ぐもっとも効果的な予防策と言えます。
屋外
まずは家のまわりにある、ワラジムシが好みそうな場所をチェックしてみましょう。
- 落ち葉や枯れ葉を取り除く
大切に育てている花や野菜にいいとされる環境は、ワラジムシにとっても住みやすい環境です。特に落ち葉や枯れ葉はワラジムシの大好物。少しでもワラジムシによる作物の被害をなくすためにも、落ち葉や枯れ葉はこまめに掃除して風通しのいい環境をつくっておくようにしましょう。
- ジメジメした場所をなくす
ワラジムシは湿った土が大好きです。晴れた日が続くと土の表面は乾燥していきますが、少し大きな石をひっくり返すと湿気を含んだ色の違う土が現れます。そして、そこにはかなりの確率でワラジムシの姿が…。こうした石のほかにも野積みにされた瓦の下や、庭先に置きっぱなしのバケツやプランターの下などはとてもジメジメしているので、こまめに移動させることも大切です。
- 土を掘り起こして、表面を乾燥させる
土の表面が乾燥していても少し掘ると湿気を含んだ土が現れます。そこで、ワラジムシが出現する付近の土を掘り返して、下のほうの湿った土を乾燥させます。少し手間のかかる作業ですが、こうすることでワラジムシが好むジメジメした場所を減らすことができます。
屋内
家の中で、ワラジムシが好む“暗くジメジメした場所”と言えば床下。床下はワラジムシにとって最高の環境と言えます。この床下や窓やドアのすき間などさまざまなところから家の中に侵入することがあります。ここでは、ワラジムシを家の中に侵入させないための予防策について紹介します。
- 床下を換気する
湿気が溜まりやすくジメジメしがちな床下には、換気口を設けたり、ファンなどで送風して土を乾燥させる方法があります。もっと手軽な方法として、除湿に効果がある炭を置くという方法もあります。
- 侵入経路を塞ぐ
ワラジムシはわずかな隙間から家の中に侵入してきます。窓のサッシなど家の中に隙間がないかチェックしてみましょう。隙間を見つけたら、テープなどでしっかり塞いでおきましょう。
見つけたら捕まえる/殺虫剤を使用する
見た目で不快に感じる人もいますが、ワラジムシはとてもおとなしく無害な生き物です。ダンゴムシより逃げ足が速いと言っても、他の虫に比べるととてものんびり(本人たちにしてみたら一生懸命に移動している)しているため、充分捕まえることができます。
家の中でみかけた場合、ティッシュなどでつまんで外に逃がしましょう。ティッシュごしとはいえ、ワラジムシに触れるのはちょっと、という人は殺虫剤を使用しましょう。
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まとめ
ワラジムシはダンゴムシと同様に、屋外であれば比較的どこでも見かけることのできる身近な存在です。そのため、一時的に駆除したとしても、またすぐに姿を現す可能性があります。ワラジムシを近づけさせないためには、つねに“ワラジムシが住みにくい環境”を整えておくことが予防の第一歩です。
見た目以外に特別害がないおとなしい生き物ですし、土壌を豊かにしてくれる益虫としての一面も持ち合わせているワラジムシ。生態系のバランスを考えた上でも、ワラジムシと上手に付き合っていくのも大切なことと言えます。