「変温動物」と「恒温動物」の違いを解説
「変温動物」という言葉をご存じでしょうか。たとえば昆虫は、外気温によって体温が変わる変温動物で、低温の環境下では生きていられません。
今回は、変温動物とはどのような動物なのか、また変温動物と恒温動物との違いについてわかりやすくご説明いたします。さらに、昆虫の性質を利用して化学殺虫成分を使わずに害虫を退治する駆除剤、「凍殺ジェット」をご紹介いたします。
体温の役割
わたしたちが客観的に体調を把握する目安のひとつ、それが「体温」です。日常生活では、わきの下や舌の下、非接触式体温計の場合は額や手首などで検温します。
人間の体温
健康なときの体温を「平熱」といい、多くのおとなは36~37℃の体温を保っています。一般的に子どもは新陳代謝が盛んなため、おとなよりも体温が高い傾向にあります。おとな、子ども、いずれの場合でも、平熱よりわずかに高いときを「微熱がある」状態、さらに高い場合を「熱がある」状態といいます。
免疫系に影響を与える発熱
細菌やウイルスなどが体内に入った場合などに発熱することがあります。発熱には、免疫細胞の働きがよくなるといったメリットがあると考えられています。
低体温のリスク
一方、体温調節機能の限度を越えた低温環境に身を置いた場合、体の循環機能や神経機能が麻痺(まひ)することがあります。一般に「凍死」といわれますが、必ずしも氷雪にさらされているわけではなく、事故や災害などで冷水に身体が浸かったり、風や湿気などによって体熱が奪われたりして低体温になる場合もあります。
「直腸温35℃で睡気,眩暈(げんうん),全身倦怠(けんたい),思考力減退,筋の硬直と痙攣(けいれん),30℃で意識混濁,心拍不整を示し,26℃以下では救出不能となる。」(「凍死」日本大百科全書(ニッポニカ)(小学館)による)
30℃を下回る体温の低下は、命にかかわります。
人間は恒温動物
人間に一定範囲の「平熱」があるのは、外界の温度や自分自身の動きで体温が変化しない「恒温動物」であるからです。生物学上の分類では哺(ほ)乳類と鳥類が恒温動物にあたり、体温調節ができます。この調節の機能は成長に従って発達し、一定の体温を保つことから「定温動物」、または体に触れると温かいことから「温血動物」という呼び方もあります。
恒温動物の体温
恒温動物の体温は、種によって異なります。人間は、先述のとおり36~37℃前後の体温ですが、一日のうちで多少変動することもあります。また、人間以外の動物の正常な体温には、以下のようなばらつきが見られます。なお、動物の場合は直腸で検温することが多く、人間がわきの下で測る腋窩(えきか)温や、舌の下に体温計を差し入れる口腔温よりもやや高く出るのが普通です。
哺乳類の体温
- ネズミ 37~38℃
- ウサギ 38~40℃
- サル 37~38℃
- イヌ 38~39℃
- ネコ 39℃
- 有袋類 35℃
鳥類の体温
- ニワトリ40~42℃
- フクロウ 41℃
【参考】「恒温動物」日本大百科全書(ニッポニカ) (小学館)
冬眠する動物
ただし、哺乳類のなかでも外気温の影響を受けやすい種があります。クマやコウモリ、シマリス、ハムスターなどは周囲の気温が下がると冬眠に入ります。たとえばコウモリの正常な体温は37℃くらいですが、冬眠しているときには7.5℃まで下がります。一方で、クマやアナグマは体温が下がらず、音などの刺激を受けると冬眠中でも目覚めて活動をはじめることがわかっています。クマなどの冬眠は、「深い眠りに落ちたような状態」と考えられています。
体温調節の仕組み
恒温動物が体温を上げたり下げたりして体温を調節するには、いろいろな方法があります。
体が震える
寒いときや熱を出したときに、意図せずに体が震えることがあります。これも体温を調節しようとする人体の仕組みのひとつで、筋肉を動かすことによって体温を上げる働きがあります。
体毛を立てる
イヌやネコなど毛に覆われた動物は、寒いときには毛を逆立てることによって体熱が奪われるのを防ぎます。人間にはイヌやネコのような体毛はありませんが、寒いときなどに鳥肌が立つことがあります。これは体毛を逆立てるときに使う立毛筋があるからで、体に毛があったときの名残(なごり)と考えられています。
【参考】意外と知らない「ウイルスと人体」のメカニズム(東洋経済オンライン、2020年3月5日)
汗をかく
人間のように汗腺が発達している動物は、汗をかくことで体に取り込んだ熱を放散します。一方、汗腺のないカバやスイギュウなどは、水中にいたり泥の中にいたりすることで体を冷やします。
変温動物とは
それでは、「恒温動物」の対義語にあたる「変温動物」とは、どのような動物を指すのでしょうか。変温動物は、「体温が一定の高さを保っていない動物のこと」(『世界大百科事典』平凡社)です。変温動物の体温は周囲の温度とほぼ等しいため、外気温の変化に合わせて上下します。生物の分類では、以下の種が変温動物にあたります。
変温動物の種類
- 無脊椎動物のすべて
- 魚類
- 両生類
- 爬虫類
昆虫は変温動物
先述のとおり、節足動物である昆虫は無脊椎動物ですので変温動物です。冬などに周囲の温度が下がると生理機能が極度に低下し、なかには冬眠して寒い時期を越す種もあります。
晩秋から冬にかけての寒い時期は、植物や小動物などのエサが少なく、昆虫にとっても厳しい環境です。冬眠は、動かないことでエネルギーを温存して寒さをやり過ごす、生き残りのための環境適応と考えられています。
昆虫が体温を上げる工夫
変温動物の昆虫は、体温の変化をさまざまに利用しています。
チョウの羽
チョウ類は、草木などに止まっているときにははねを広げ、あるいは閉じたままじっとしています。日当たりのよい場所ではねを広げるのは、日光による熱を吸収する効果があるからです。また、チョウが飛ぶときにひらひらとはねを震わせるのは、筋肉を動かして体温を上げるためです。
ミツバチの羽ばたき
コロニーと呼ばれる集団をつくるミツバチは、巣にいる集団ごと越冬することが知られています。暑いときには、働きバチが外から水を運んで温度を下げます。反対に寒くなると、巣の中にいる働きバチがいっせいにはねを震わせて熱を発生させ、巣内の温度を上げることがあります。
また、天敵のスズメバチがエサを求めて巣にやってくると、数百のミツバチが集まってスズメバチを球状に覆い、いっせいにはねを震わせて体熱を上げて撃退します。
「熱殺蜂球に参加するニホンミツバチは、胸の筋肉を振るわせて体温を上げていく。蜂球の内部は47~48度にもなり、致死温度とされる45度を上回る熱にさらされたオオスズメバチは死んでしまう。」
【参考】必殺技は「熱殺蜂球」 ニホンミツバチの生存戦略(『朝日新聞』2020年9月3日)
体温の変化を応用した害虫駆除
変温動物である昆虫は、外気温の変化によって体温が変化し、低温の環境下では活発に動き回らなくなります。こうした昆虫の性質を利用して、フマキラーは化学殺虫成分を使わない「凍殺ジェット」を開発しました。
害虫を見つけたら、人やペットに飛沫がかからないように注意しながら虫をめがけてスプレーしましょう。降下温度-85℃の冷気(条件により異なります)が、虫の動きをすばやく止める効果を発揮。急激に冷気にさらされた虫は凍るため、退治も簡単です。殺虫成分不使用のため、室内での使用も安心、子どもやペットのいるご家庭での害虫駆除に威力を発揮します。「凍殺ジェット」には臭いやべたつきもないので、スプレーがかかった壁や床などを掃除する必要もありません。
【適用害虫】
ムカデ、ケムシ、クモ、カメムシ、アリ、ダンゴムシ、ゲジ、ヤスデなどの地を這(は)う虫、およびガなどの飛ぶ虫
なおゴキブリには、床や壁を除菌する成分も配合されたゴキブリ専用のフマキラー「フマキラーゴキブリ超凍止ジェット」をお使いください。
虫の性質を知って害虫退治
虫は変温動物なので、寒い冬には温かいところに集まるといった習性をもつ虫も多いです。こういった虫の習性を害虫駆除に生かすこともできるでしょう。
今回は、化学的な殺虫成分を含まず、低温に弱い虫の性質を利用して駆除する「凍殺ジェット」をご紹介いたしました。害虫のいる場所が屋外なのか、食べ物や衣類などがある室内なのかによっても退治方法は変わるので、用途や使用場所に応じて、複数の選択肢をもっておくと便利でしょう。
【参考】
「変温動物」日本大百科全書(ニッポニカ)、小学館
「恒温動物」日本大百科全書(ニッポニカ) 、小学館
「体温」『世界大百科事典』(平凡社)