2022年3月17日 | 園芸・ガーデニング
【花梅の育て方】実梅との違いや挿し木などの増やし方を紹介
可憐(かれん)な花が点々と咲き、ほのかな香りが漂う景色に出会うと、春を実感する方が多いのではないでしょうか。
梅の栽培の歴史は古く、春を告げる花として人々に愛されてきました。今回は、梅の中でも花を観賞する目的の「花梅(はなうめ)」を取り上げ、基礎知識と育て方、トラブルと対処法などを初心者の方に向けてご紹介いたします。
花梅の基礎知識
はじめに、花梅の基礎知識を深めましょう。
花梅とは
花梅はバラ科アンズ属またはサクラ属に分類される落葉性の高木(こうぼく)で、大きいものは10mくらいまで育ちます。1~3月には白やピンク、赤などの花とともにほのかな香りが漂い、幹や枝ぶりも楽しめます。基本的に丈夫な植物なので、育て方のポイントを押さえれば初心者の方も栽培できます。
なお、食用や薬用の実を採取する目的で育てる梅を「実梅(みうめ)」と呼びます。多くの実を収穫するには、異なる種類を栽培して人工授粉をおこないましょう。
実が成る木については、「おうちで果樹を育ててみよう!園芸におすすめの果樹と育て方を解説」の記事をご覧ください。
梅の歴史
梅の原産は中国で、およそ2000年前の中国の薬学書にその効用が記されています。日本には3世紀の終わりごろに渡来し、8世紀の書物にはじめて梅の名前が登場しました。奈良時代の歌集「万葉集」には、梅にまつわる和歌が多く残されています。当時は実を生菓子に加工して食したとされ、平安時代に梅干しの原型である塩漬けが誕生しました。
戦国時代には梅干しが兵士の保存食として重宝され、江戸時代に入ると品種改良が進んで庶民の食卓にも登場します。栽培が本格化したのは明治時代の中ごろで、昭和30年代に栽培技術が向上すると、梅の生産は全国に広がりました。
梅の種類
梅の品種は国内でおよそ300種にのぼり、開花期では、早咲きの長期開花型・晩(おそ)咲きの短期開花型・その中間に分けられます。また、性質による分類では、原種に近くやや小型の「野梅(やばい)系」・枝や幹の内部が赤く盆栽などに使われる「緋梅(ひばい)系」・梅とアンズをかけ合わせた「豊後(ぶんご)系」の3つに大別します。
盆栽については、「【初心者でも挑戦できる!】盆栽の育て方や手入れ方法を紹介」の記事で詳しくご紹介しています。
花梅の育て方のポイント2つ
花梅の育て方は、次の2点がポイントです。
① 日当たり
日光を好む植物なので、地植え・鉢植えともに日当たりのよい場所で栽培しましょう。盆栽にした花梅も、屋外の日光がよく当たる場所に置きます。
② せん定
定期的なせん定で美しさを保ちましょう。枝だけでなく、後に花になる「花芽(はなめ、かが)」、葉になる「葉芽(はめ、ようが)」もチェックしながら作業してください。
花梅の栽培に必要なもの
花梅を栽培するときは、次のものを用意してください。
基本のツールなど
基本的なツールとして、シャベルとジョウロ、園芸用のハサミが必要です。育て方のポイントでお伝えしたとおり、花梅の栽培にはせん定が欠かせないので、使いやすいハサミを用意してください。また、地植えにするときは、大きめのシャベルを使用しましょう。
鉢植えで栽培するときは、筒形の土入れや割りばしがあると便利です。苗木が細く倒れそうな場合は、支柱とビニタイで幹を支えながら栽培してください。
庭のスペースまたは鉢など
花梅の栽培には、日当たりと水はけのよい場所が適しています。また、梅の生育には年平均で12~15℃ くらいの温度が必要です。寒冷地では、遅咲きまたは耐寒性のある品種を選んで栽培しましょう。
鉢やプランターは、苗木の根鉢(ねばち:根と土が巻かれた部分)の直径よりひと回り大きいサイズを選び、ネットに入れた鉢底石(はちぞこいし)も用意してください。
花梅の苗木
花梅は、ほかの品種に枝を接いだ「接ぎ木(つぎき)苗」が育てやすくおすすめです。サイズや花の色、開花の時期、実の有無なども確認してください。先述のとおり、寒冷地では遅咲きまたは耐寒性のある品種を選びましょう。暖地では、早咲きの品種も栽培できます。
土と肥料など
地植えにするときは、石灰やたい肥、腐葉土(ふようど)を用意し、肥料は有機質肥料または化成肥料を使用します。鉢植えで栽培するときは、市販の果樹用の培養土と化成肥料を用意してください。
【初心者向け】花梅の育て方
それでは、花梅の育て方を順にご紹介いたします。盆栽の花梅の育て方については、最後の項目をご覧ください。
土の下準備
地植えにするときは、植えつける場所の土を深く掘り返し、石や古い根、ゴミなどを取り除きます。しばらく日光に当てて消毒した後、石灰を混ぜて酸性の土を中和してください。植えつける2週間くらい前にたい肥と腐葉土を加えて混ぜ、1週間くらい前に有機質肥料または化成肥料をすき込みます。
鉢やプランターの土を再利用する場合も、同様に下準備してから植えつけてください。
植えつけの方法
花梅の植えつけは落葉している11~3月の間が適期ですが、厳寒期の作業は避けましょう。地植えにするときは、根鉢よりもひと回り大きな穴を掘ります。苗木を仮に置いて、根鉢の土の表面と地面が同じ高さになるように深さを調節してください。深さが決まったら苗木を置き、隙間ができないように土を入れて水をたっぷりと与えます。
鉢植えで栽培するときも同様に深さを調節し、割りばしなどを軽く挿しながら隙間に土を入れて植えつけましょう。植えた後の数日は日陰に置き、様子を見ながら徐々に日光に慣らしてください。
日々の管理
地植えの花梅は、根がしっかりと張る2年目までは土の表面が乾いたら水を与えます。2年目以降は雨水だけで構いませんが、猛暑で土が極端に乾くときは早朝に水やりをしましょう。鉢植えの花梅は咲き終わった花(花がら)をこまめに摘み取り、荒天時や冬の北風が当たるときは軒下(のきした)などに移動してください。
なお、花梅は基本的に多くの肥料を必要としません。地植えは寒肥(かんごえ)として12~1月の間に与え、鉢植えは開花後にお礼肥(おれいごえ)を与えます。
せん定と芽摘み
育て方のポイントでお伝えしたように、花梅はせん定が大切です。株の外側に向いている芽を先端に残して切ると、新しい枝が外側に広がって伸びます。4月以降に勢いよく伸びる枝を放置すると樹形が乱れるため、切り落としてください。新芽を5cmくらいの段階で摘み取っておけば、伸びすぎる心配がありません。
6~7月は、長すぎる枝や交差した枝、内側に伸びた枝、上向きに伸びる枝などをせん定しましょう。丸くふくらむ花芽は7~8月に形成され、横向きに伸びる枝につく傾向があります。11月から開花までは全体を整えるせん定をおこない、花芽がついたメインの枝を2~4本だけ残して開花に備えます。
鉢植えの花梅を大きくしたくないときは、開花後に葉芽を2~3つ残して切り戻すか、不要な葉芽を摘み取ってください。
植え替えの方法
鉢植えの花梅は、1~2年ごとに大きな鉢に植え替えましょう。植え替えの作業は落葉している11~3月におこないますが、植えつけと同様に厳寒期を避けてください。また、開花がはじまった株は開花が終わってから植え替えます。
植え替えるときは株を鉢から取り出し、全体の3分の2くらいの土を落としましょう。傷んだ根や太い根を切り落とし、細めの根を残します。植えつけと同様の方法で植え替え、安定しないときは針金を根元から鉢の底に通して固定してください。
なお、2~3年ほど栽培している株は、枝を横に広げて仕立てることも可能です。枝に結んだひもと鉢の周囲に巻いたひもをつなぎ、高さを調節して枝を誘導しながら栽培します。
花梅の増やし方
花梅を増やす方法は次のとおりですが、初心者の方は難しいかもしれません。
挿し木(さしき)
挿し木で増やすときは、野梅系の品種から選びましょう。一般的な方法は、5~7月ごろに出た新しい枝の先端を切り取り、湿らせた挿し芽用の土に挿します。ビニールをかけて数時間ほど日が当たる半日陰(はんひかげ)に置き、乾燥しないように管理してください。
2月ごろに作業するときは、前年に伸びた枝の先端を使用します。湿らせた水ゴケに切り取った枝を包み、ビニールに入れて密封します。冷蔵庫で保管し、3月の中旬に同様の手順で挿し木にします。
タネまき
実がつくタイプの花梅は、タネから増やすことも可能です。7~8月ごろに完熟して自然に落ちた実を収穫し、タネをとり出します。よく洗って果肉を取り除き、ビニール袋で密閉して冷蔵庫で保管します。11月ごろに深めの育苗箱(いくびょうばこ)または鉢にタネまき用の土を入れ、タネを洗ってから10~15cmくらいの深さに植えます。
土をかぶせて半日陰に置き、発芽するまでは湿度を保ちましょう。発芽後は日当たりのよい場所に移動し、苗木と同様に栽培して大きくなったら定位置に植えます。ただし、採取したタネから発芽した株には交配に使用した品種の花が咲くケースが多いため、購入時の花と異なります。
なお、発芽して2年ほど生長した株は、接ぎ木用の台木(だいぎ)として使えます。
接ぎ木
梅の増やし方で一般的な方法は、接ぎ木です。3~4月ごろに前年の枝の先端を5cmほど切り取り、台木の切り口と合わせて接ぎ木します。接いだ部分は、ビニールテープを巻いて固定してください。鉢ごと大きなビニール袋に入れて半日陰で管理し、土の表面が乾いたら水を与えます。生長してきたらビニール袋を外して栽培しましょう。
盆栽の手入れ
盆栽の花梅の管理も、基本的には鉢植えと同じです。通常は屋外の日当たりがよい場所に置き、こまめに観察して土の表面が乾いたら水やりをしてください。室内の観賞は、春から秋は数日、冬は1週間を限度にして屋外に戻しましょう。
年に3回ほど有機質の肥料を与え、開花後に葉芽を1~2つ残してせん定します。植え替えは数年に1度、2~3月の開花後を目安に作業しましょう。
花梅のトラブルと対処法
最後に、花梅に起こりやすいトラブルと対処法についてご紹介いたします。
花梅の病気
春や秋など、気温が低く湿度の高い時期には、葉などに白い粉状のはん点がつくうどんこ病にかかることがあります。病気と思われる部分をすぐに取り除き、被害の拡大を防いでください。枝が混み合っている場所をせん定して、風通しをよくすると予防ができます。
うどんこ病については、「【園芸の大敵!】うどんこ病とは?うどんこ病が発生する原因と対策について」の記事をご覧ください。
花梅の害虫
開花後の新芽が出るころにアブラムシ、5月ごろにカイガラムシがつくことがあります。どちらも見つけ次第すぐに駆除して、まん延を防ぎましょう。カイガラムシは卵や幼虫のうちに手で取り除くか、成虫をブラシでこすり落とすなどして早めに駆除してください。
花梅についたカイガラムシには、フマキラーの「カダンK」がおすすめです。ダブルノズルの採用により、薬剤の舞い散りが減って植物への付着率がよくなったため、効果が2倍にアップしました。※当社従来品比(さざんか:カイガラムシ、噴霧距離70cm)
マシン油とアレスリンの有効成分により、1年を通してカイガラムシの幼虫や成虫をしっかり駆除できます。
花梅の育て方は日当たりとせん定がポイント
今回は、梅の中でも花を観賞する花梅をご紹介し、概要と具体的な育て方、トラブルと対処法などについて解説いたしました。
花梅は丈夫で育てやすく、育て方のポイントである日当たりと適切なせん定を心がければ初心者の方も栽培できます。早春には、開花した花梅と野鳥のツーショットに出会えるかもしれません。この機会に栽培にチャレンジしてみませんか。