2021年12月14日 | 園芸・ガーデニング
【もみの木の育て方】水やりや植え替え・剪定方法を解説
クリスマスツリーとして、世界中の人々に愛されるもみの木。今年のクリスマスは、本物のもみの木に飾りつけをしてみませんか。育て方のポイントを押さえれば、初心者の方も栽培できます。
今回は、もみの木の概要と育て方のポイント、初心者の方に向けた育て方やトラブルと対処法などについてご紹介いたします。
もみの木の基礎知識
はじめに、もみの木の基礎知識を身につけましょう。
もみの木の概要
マツ科モミ属に分類される高木の常緑針葉樹で、大きいものでは直径1.5m以上、高さ30m以上に生長します。モミ属の木は、北半球に23種類が生息。国内では5種類が、本州の中南部から南の地域でマツ科のツガなどとともに林を形成しています。
もみの木は雌花(おばな)と雌花(めばな)が同じ個体に生じる「雌雄同株(しゆうどうしゅ)」で、初夏に開花した後は俗に「松ぼっくり」と呼ばれる球果(きゅうか)をつけます。建材として使われることもあり、樹木から発散される「フィトンチッド」と呼ばれる物質の、消臭・抗菌・防虫・リフレッシュなどの効果が注目されています。
名前の由来には、神聖な木を表す「臣の木(おみのき)」や葉が風にもまれる様子、英名の「Momi Fir」など、さまざまな説があります。
【参考】
農林水産省「フィトンチッドについておしえてください。」
もみの木とクリスマスツリー
国内でクリスマスツリーとして販売されるもみの木の多くは、葉の裏に白い2本のスジが入る「ウラジロモミ」です。ドイツでは主に「ヨーロッパモミ(別名シロモミ、オウシュウモミなど)」、イギリスや北欧などではトウヒ属の「ドイツトウヒ(別名ヨーロッパトウヒ、オウシュウトウヒなど)」をクリスマスツリーに使用します。
クリスマスツリーを飾る歴史や由来は諸説あり、欧米では19世紀ごろに定着しました。古くから木は生命の象徴といわれ、常緑の針葉樹は力強さと神秘性をもつこと、三角形のもみの木はキリスト教における父(神)と子、聖霊の三位一体(さんみいったい)につながることなどから、クリスマスツリーに起用したとされます。
国内で最初のクリスマスツリーは、明治13年(1860年)にプロイセンの公館で使節が飾ったものという記録があります。
もみの木の育て方のポイント2つ
もみの木の育て方のポイントは、次の2点です。
① 屋外で管理する
もみの木は、もともと林や森で生育する樹木です。クリスマスツリーとして鉢植えを購入したときも、屋外の日当たりと風通しのよい場所で管理し、パーティーの日だけ室内に置くようにしましょう。
② 夏越しのポイント
もみの木は夏の暑さが苦手なため、植えつける場所や置き場所を選んでください。日差しが強すぎるときは、遮光ネットなどで保護しましょう。鉢植えは毎日のチェックを欠かさずにおこない、水分が不足しないようにしてください。
もみの木の栽培に必要なもの
もみの木を栽培するときは、次のものを用意しましょう。
基本のツール
基本のツールは、シャベルとジョウロ、園芸用のはさみです。もみの木を地植えにするときは、大きめのシャベルで穴を掘ると簡単です。また、とがった葉から手を保護するゴム手袋や軍手なども用意しましょう。
もみの木の苗
苗は、8~12号くらいの鉢植えか、掘り上げて根を布などで巻いた「根巻き」の状態で販売されています。もみの木の苗は、やや大きめで枝ぶりと葉の色がよく、イキイキとしているものを選びましょう。根巻きの苗は、根が大きめでしっかりとしたものを購入してください。高さと比較して根が小さいものは、生育に支障の出る場合があります。
庭のスペースまたは鉢など
種類によっては10m以上に生長するため、地植えにするときは広いスペースを用意してください。日当たりと風通しのよい場所が適していますが、西日の当たる場所は避けましょう。鉢植えにするときは、苗の直径よりもやや大きめのサイズを用意します。鉢底石(はちぞこいし)は、ネットに入れて使用すると便利です。
土と肥料など
もみの木を地植えにするときは、石灰やたい肥、腐葉土(ふようど)を用意しましょう。鉢植えは、市販の草花用の培養土で構いません。肥料は粒状の化成肥料を使用します。育て方のポイントでお伝えしたように、夏の日差しから守る遮光ネットもあると安心です。
クリスマスツリーにしよう!もみの木の育て方
それでは、初心者の方に向けたもみの木の育て方をご紹介いたします。
土の下準備
地植えにするときは、植えつける場所の土を深く掘り返し、石や古い根、枝などを取り除いておきます。石灰を加えて酸性の土壌を中和させ、たい肥とやや多めの腐葉土を加えて保湿性をもたせます。植えつける1週間ほど前に、肥料を加えてなじませましょう。鉢植えの土は、病気の予防として新しいものを用意することをおすすめします。
植えつけのポイント
地植えにするときは、根が収まるサイズと深さの穴を掘ります。根巻きの苗は外側のビニールをはがし、布を巻いた状態で植えつけます。葉の全体にひもなどが巻かれているときは、植えつけた後にはずしましょう。穴に苗を置き、巻いた部分が地面より少し出るか同じくらいの深さになるよう、土の量を調節してください。
苗の周囲に隙間なく土を入れてから、水をたっぷりと与えます。土が沈むときは、新たに土を追加しましょう。鉢植えにするときは、鉢底石を敷いて土を入れ、苗を置いて同様に深さを調節します。棒などを挿しながら隙間に土を入れ、水を与えてください。
日々の手入れ
地植えのもみの木は、基本的に水やりの必要がありません。ただし、猛暑が続くなどで土が乾いたときは早朝に水やりをしてください。鉢植えは日当たりと風通しのよい屋外に置き、土の表面が乾いたら午前中に水を与えます。夏の間は土の乾燥が早いため、早朝と夕方に与えることもあります。
先述のとおり、日差しが強すぎるときは遮光ネットなどで日陰を作ってください。台風や強風などの荒天時は、倒れないように軒下(のきした)などに移動しましょう。冬の間も鉢植えは日の当たる場所に置き、やや水やりの間隔を空けて管理します。もみの木は耐寒性があるので、保温などの対策は必要ないでしょう。
寒さに強い植物については、「寒さに強い観葉植物を紹介。冬でも元気に育てるポイントをまとめて解説」の記事も参考にしてください。
クリスマス前後の対応
クリスマスツリーとして室内に取り込む期間は、数日が目安です。室内では暖房器具の風が当たらない場所に置き、土や葉が乾燥しすぎないように注意してください。日中は、窓辺など日当たりのよい場所に移動するとよいでしょう。クリスマスが過ぎたら飾りをはずし、屋外に戻して同様に管理してください。
剪定と肥料
生育期を過ぎた10~3月ごろに、枯れた枝や伸びすぎた枝などを根元から切り取ります。内側の混み合った部分の枝も切り落として、風を通しましょう。全体に外側を刈り込むのではなく、必要のない枝だけを根元から切って整理します。
もみの木はあまり肥料を必要としないので、冬に寒肥(かんごえ)を与えるか、芽が出る春に与える程度で十分です。
植え替えのタイミング
何年も同じ鉢に植えたままにしていると、根詰まり(ねづまり)を起こして生育に支障をきたします。鉢植えのもみの木は、数年に1度のタイミングで春または秋に植え替えをしましょう。現在の鉢よりもひと回り大きいサイズを用意し、根を崩さないようにして新しい土とともに植え替えます。
サイズを大きくしたくないときは、株を取り出して古い根や伸びすぎた根を整理し、地上部の余分な枝も切り落として同じ鉢に植え直してください。植え替えた後の数日は日陰に置き、徐々に日に当てる時間を長くして慣らしましょう。
根詰まりについては、「根詰まりとは?根詰まりサインや失敗しない植え替え方法を解説」の記事で詳しくご紹介しています。
もみの木のトラブルと対処法
最後に、もみの木に起きやすいトラブルと対処法についてご紹介いたします。
葉が落ちる
もみの木の葉が落ちる原因には、水切れや夏の暑さ、根詰まり、環境の変化などが考えられます。水分が足りないときはすぐに水を与え、その後は土の状態に合わせて水やりをしてください。夏の日差しが強いときは、先述した方法で日よけをします。
鉢の底から根が見えるときは根詰まりを起こしているので、上記の方法で植え替えてください。植え替えの後はすぐに日光に当てず、数日は日陰に置きましょう。
クリスマスに向けての屋外から室内への移動は、もみの木にストレスを与えます。室内では適切な場所に置き、クリスマスが過ぎたら早めに屋外に戻してください。
もみの木の病害虫
病害虫の被害がほとんど出ない丈夫な植物ですが、まれに夏場の水切れや乾燥によってハダニがつくことがあります。夏の間は朝晩の土の観察を欠かさず、乾いていたら水を与えてください。霧吹きで葉に水を与える葉水(はみず)は、日が落ちてから作業しましょう。
もみの木の栽培には、フマキラーの「カダン シャワー液 1000ml」をおすすめします。高温・低温や日光不足、乾燥などのストレスを軽減するアルギン酸オリゴ糖と、葉の色を鮮やかにするアミノ酸ほかの栄養分を配合。薄めずそのまま土にかけるだけで、植物がイキイキと美しく育ちます。
もみの木の育て方を参考にして立派なツリーに
今回は、もみの木の概要と具体的な育て方、トラブルと対処法などについてご紹介いたしました。もみの木は基本的に丈夫な植物なので、屋外での管理と夏越しの2点を押さえれば育て方は難しくありません。
この冬は自分で育てたもみの木を飾りつけて、すてきなクリスマスをお過ごしください。