2022年2月24日 | 園芸・ガーデニング
屋上緑化とは?メリット・デメリットや注意点・費用を解説
近年、屋上に植物を植える商業施設やビルなどが増えました。「屋上緑化」と聞くと大規模な施工をイメージしますが、条件が整えば一般家庭でも取り組むことが可能です。
今回は、屋上緑化の概要とメリット・デメリット、家庭で屋上緑化を導入する際のポイントやおすすめの植物、管理の方法についてご紹介いたします。
そもそも屋上緑化とは
「屋上緑化」とは建築物の屋上で植物を栽培する状況を指し、「屋上庭園」と呼ぶこともあります。近年では、環境に関わる問題の改善やおしゃれな空間の演出などを目的として、屋上緑化を導入する建物が増加しています。
一般家庭における屋上緑化も注目されており、プランターを並べる小規模なものからデザイン性の高い大規模なものまで、さまざまな施工がおこなわれています。家庭で屋上緑化に取り組むには、建築時にあらかじめプランを立てる方法と、すでにある屋上をリフォームする方法、屋上を増築する方法などがあります。
家庭で屋上緑化をするメリット
家庭で屋上緑化に取り組むメリットは、次のとおりです。
エコ・省エネ
人間活動によって都市部の気温が上がる「ヒートアイランド現象」や、地球温暖化の原因となる「二酸化炭素の増加」。屋上緑化は、これらを改善へとつなげる働きをもつといわれます。また、屋上緑化で植物を植えると屋上だけでなく建物内の温度も下がるため、省エネルギーの効果も見逃せません。
さらに、屋上緑化で野菜などを育てれば経済的にもうれしいというメリットが。お子さんと暮らす家庭では、環境問題だけでなく植物の種類や栽培に関する学習にも気軽に取り組めることでしょう。
【参考】
国土交通省「熱環境の改善効果」
建物の保護・価値
屋上緑化によって、紫外線や酸性雨などによる建物の劣化や、温度変化による資材の収縮や膨張を軽減する効果も期待できます。その結果、建物の耐久性が増して長く住めるだけでなく、修理やメンテナンスの費用が抑えられるメリットもあります。仮に住宅を売却する場合にも劣化が少ない建物の評価は高めであり、査定額を下げずに済む可能性も考えられます。
遊び場・パーティー
お子さんやペットと暮らす家庭では、屋上緑化によって遊び場ができます。芝生などのグラウンドカバーを植えれば、裸足で遊ぶことも可能です。また、屋上緑化を取り入れた空間で、友人や親せきなどを招いたパーティーやオープンガーデン、星空の観測会なども開催できます。屋上は景色がよく開放感もあるので、地上の庭とは異なる趣向で楽しめます。
景観のよさ・癒やし
何もない殺風景な屋上よりも、植物が育つ空間の方が美しいことはいうまでもありません。葉の緑や花には癒やしの効果があり、屋上緑化はリラックスや疲労回復が期待できる場としても役立ちます。目隠しを施せば人目も気にならず、地上の庭よりも安心して過ごせるうえ、植物や備品の盗難を防げるというメリットもあります。
【参考】
農林水産省「花のチカラ緑のチカラ」
家庭で屋上緑化をするデメリット
次に、家庭で屋上緑化に取り組む際のデメリットも確認しておきましょう。
積載荷重(せきさいかじゅう)
自動車の積載量(せきさいりょう)と同様に、建物にも載せる重さの上限が決められています。建築基準法の第八十五条では、屋上広場またはバルコニーの積載荷重は1㎡あたり60kgまでと定められています。したがって、すでに屋上がある家や増築を考えている家は、専門家に相談しながら取り組む必要があります。
【参考】
建築基準法施行令第八十五条
コストと予算
屋上緑化は工事の費用だけでなく、植物や土、プランター、目隠しなどの備品にかかるまとまった金額が必要です。また、紫外線や酸性雨などによる劣化に対して、定期的なメンテナンスの費用も考慮しなければなりません。屋上緑化を導入する際は入念な下調べをおこなって予算を立て、複数業者の見積りを比較してから決定しましょう。
排水と雨漏り
屋上緑化を導入したときは、常に排水の状況に気を配らなければなりません。また、排水口に落ち葉などが詰まって多くの水がたまったり、大雨の後で大量の水を土に含んだりしたときには、雨漏りが起きる心配もあります。防水工事をおこなう場合は、保証の年数についても確認してください。
天候のトラブル
屋上は直射日光をさえぎるものが少なく、風雨にさらされる時間も長いことを心得ておきましょう。また、晴れていても風が強いため、植物が倒れたり落下したりするだけでなく、葉が乾燥しやすい、砂や土が飛来しやすいなどのデメリットもあります。台風などの悪天候や雪が降る日は、鉢植えの植物を移動できる場所があると安心です。
屋上緑化をする際のポイントと注意点
メリット・デメリットを踏まえたうえで、屋上緑化に取り組む際のポイントと注意点をご覧ください。
専門店に相談
先述のとおり、屋上緑化を導入する際はハウスメーカーや施工業者に相談しましょう。新築する際には、早い時期に屋上緑化を取り入れる旨を伝えます。すでに屋上のある家や増築する家は、実際に現場を見てもらいながらアドバイスを受けてください。
後から屋上緑化を導入するときは、複数の業者に防水や排水設備の工事などの見積りを依頼します。一部をDIYでおこなうときも、指示に従って作業を進めてください。
必要な費用と助成金
屋上緑化にする際の費用は、1坪(およそ3.3㎡)あたり8~10万円くらいです。このほかに、水回りの設備、植物や土、鉢やプランター、シート類、目隠しやパーゴラ、ウッドデッキなどの備品の費用や水道代も必要です。
一部の自治体では、屋上緑化に対する助成金制度を導入しています。助成金の交付には条件や限度額がありますので、利用する際は早めに見積りを依頼して必ず施工前に申請してください。
維持管理の知識
屋上緑化は、こまめな管理とメンテナンスが欠かせません。排水溝や排水口にたまった葉や花びら、土などを取り除き、常に屋上の水がスムーズに流れるようにしておきましょう。紫外線や酸性雨で劣化した部分は、補修の作業も必要です。
植物には定期的に水やりをして、枯れた花(花がら)や葉を取り除く作業、伸びた茎や枝を切るせん定の作業もおこなってください。
植物や備品の選定
屋上緑化の植物には、大きく育つものや根を張るもの、枯れた花や葉が大量に散るものは適しません。次の項目を参考にして、デザインや好みに合わせて植物を選んでください。天然の芝生を敷くことが難しい場合は、人工芝を利用しても構いません。
プランター類は軽い素材を選び、レンガや石、土は軽量化タイプを購入しましょう。なお、椅子(いす)やテーブルを置く際は、雨に強く風に飛ばされないものをおすすめします。
近隣への配慮
屋上は開放感がありますが、周囲から見られる、近隣の家の中が見えるなどの心配があります。落下の防止も兼ねて、屋上には目隠しを設置するとよいでしょう。
また、住宅密集地では水滴や飛来物、騒音が問題になるケースもあります。屋上で水やりをする際は注意を払い、落下物や落ち葉、話し声、風のある日に物がぶつかる音などに配慮しながら過ごしてください。
屋上緑化におすすめの植物と植え方
それでは、屋上緑化におすすめの植物を種類別にご紹介いたします。
セダム類
セダムとはベンケイソウ科マンネングサ属(セダム属)の植物の総称で、葉に水分をためる組織をもつ多肉植物です。屋上緑化には、日当たりを好み耐暑性や耐寒性があるメキシコマンネングサやツルマンネングサ、コーラルカーペット、キリンソウ属の常緑キリンソウなどが適しています。
多肉植物については、「多肉植物の種類や上手な育て方についてご紹介」の記事をご覧ください。
ハーブ類
丈夫で育てやすいハーブも、屋上緑化に向いています。なかでもローズマリー、タイム、ミント、セージ、バジルなどがおすすめです。ローズマリーとタイム、ミントには、地をはって生長する「ほふく性」のタイプもあります。日差しが強すぎるときは、遮光ネットなどを風で飛ばないように施して栽培してください。
ハーブについては、「ハーブ栽培は庭やベランダの虫除けにも最適!」の記事で詳しくご紹介しています。
野菜類
屋上緑化で野菜類を育てるときは、大きく育たないもの、つるが伸びすぎないものを選びましょう。たとえばミニトマトやナス、ピーマン、リーフレタスなどが適しています。屋上は地上よりも害虫が少なめですが、気になる場合は防虫ネットを風で飛ばないようにかぶせて栽培しましょう。
野菜の栽培については、「家庭菜園でのトマトの育て方やコツをご紹介【初心者でも安心】」「家庭菜園でのナスの育て方やコツをご紹介【初心者でも安心】」「家庭菜園でのピーマンの育て方やコツをご紹介【初心者でも安心】」の記事を参考にしてください。
低木類
屋上緑化には、落葉しない常緑の低木がおすすめです。花が楽しめる品種にはサツキやツツジ、ジンチョウゲ、アベリアなど、葉を観賞する品種にはアオキやハイビャクシンなどがあります。生垣にも利用されるイヌツゲは高木ですが、生長が遅いので屋上緑化に取り入れてもよいでしょう。
生垣については、「【生垣の作り方】生垣におすすめの庭木や手入れ方法を解説」の記事を参考にしてください。
グラウンドカバーにおすすめ
屋上緑化には、地面をおおう「グラウンドカバー」の植物もおすすめです。グラウンドカバーに適している植物は、芝やタマリュウ、マツバギク、シバザクラ、ヒメイワダレソウ、アイビーなどです。苔(こけ)を植えるときは、日当たりを好むスナゴケやハイゴケなどの品種を選んでください。
苔については、「自宅でできる苔(コケ)栽培。コケの育て方、増やし方について」の記事で詳しくご紹介しています。
屋上緑化の植物の植え方
屋上緑化で植物を栽培するときは、鉢やプランターに植える方法と、木や軽量のレンガなどで枠を作って耐根(たいこん)シートを敷き、土を入れて植える方法があります。本格的に造成するときは、耐根シートの上に保水マットや排水マット、透水(とうすい)シートを敷いてから土を入れます。
土の深さは、野菜や草花の栽培には15~30cmくらい、低木には30~45cmくらいが目安です。
屋上緑化の管理のポイント
最後に、屋上緑化の管理のポイントをご紹介いたします。
掃除とメンテナンス
先述のとおり、屋上緑化に取り組む際はこまめな掃除とメンテナンスが欠かせません。排水口にはネットを設置し、排水溝のゴミや落ち葉などを定期的に取り除きましょう。野鳥が来る場所では、フンや羽などの始末も必須です。
屋上の表面やウッドデッキなど備品の劣化に気づいたら、早めにメンテナンスをしましょう。自分で対応できない場合は、専門の業者に依頼してください。
植物の手入れ
屋上は日照時間が長いため、やや水やりの頻度が増えます。特に鉢植えは乾燥しやすいので、最低でも1日1回は土の状態を観察しましょう。水やりの作業は午前中におこない、真夏は早朝と夕方に与えることもあります。水やりの基本は、春と秋は1~2日に1回、夏は1日に2回、冬は2~3日に1回くらいで、土の表面が乾いたら与えてください。
屋上緑化の規模が大きいときは、潅水(かんすい)の装置やタイマーを利用してもよいでしょう。また、茎や枝が混み合ってきたら不要な部分を切り、風を通して蒸れを防いでください。地上より雑草の繁殖は少ないものの、見つけたときに抜き取る作業も必要です。
春から秋の生育期には、粒状の化成肥料や液体肥料、または有機質肥料を与えます。大雨や強風、雪の日などは、鉢植えの植物や備品を安全な場所に移動すると安心です。枠を作って植えつけたときは、周囲が崩れないように修復してください。
屋上緑化の植物におすすめ
屋上緑化の植物のお手入れには、フマキラーの「カダンセーフ」がおすすめです。植物に発症したうどんこ病や灰色かび病のほか、アブラムシやハダニにも効果があります。食品成分由来の膜が病害虫を包んで退治するため、害虫は呼吸ができずに窒息死し、病原菌も栄養を得られず死滅します。
食品成分を使用しているので、お子様やペットが遊ぶ屋上でも安心してご使用いただけます。また、活力成分の天然アミノ酸とAO(アルギン酸オリゴ糖)は、病害虫対策だけでなく植物の生育もサポートします。
家庭で屋上緑化に挑戦しよう
今回は、屋上緑化のメリット・デメリット、導入する際のポイントやおすすめの植物、管理の方法などについてご紹介いたしました。一般家庭の屋上緑化は、積載荷重や防水、排水などについて専門店に相談してから取り組んでください。
こまめな管理とメンテナンスを心がけて、植物とともに快適な生活を送りましょう。