2021年10月25日 | 虫
ハサミムシの駆除方法を解説。家への侵入経路と侵入させない対策は?
家の中で見かけるさまざまな虫。なかでも、見た目がとくに気持ち悪いという人もいるのがハサミムシです。今回は、ハサミムシの種類や生態、人家への侵入経路、侵入させないようにする工夫、さらにハサミムシの駆除方法についてご説明いたします。
ハサミムシとはどんな虫か
ハサミムシは、ハサミムシ目の昆虫です。
ハサミムシの仲間
ハサミムシの仲間は、全世界に約1900種生息しています。日本では北海道から沖縄まで全域に分布しており、20種類が存在します。
ハサミムシ科
- ヒゲジロハサミムシ
- ハサミムシ(ハマベハサミムシ)
- コバネハサミムシ(キアシハサミムシ)
オオハサミムシ科
- オオハサミムシ
クギヌキハサミムシ科
- エゾハサミムシ
- コブハサミムシ
- キバネハサミムシ
外見の特徴
ハサミムシは体長15~30㎜ぐらいの大きさで、細長い体つきです。体色は光沢のある黒で、脚は黄土色をしています。
ハサミムシの尾の「はさみ」
名前に“ハサミ”が含まれるとおり、ハサミムシの尾には、尾鋏(びきょう)と呼ばれるはさみがあります。ハサミムシの別名である「尻挟」(しりはさみ)は、この外見をよく表しています。一見、クワガタのはさみ(正しくは大顎)のような尾鋏は、工具のニッパーやプライヤーの持ち手のような曲線形です。敵に出会ったときに相手を威嚇し、捕まえて攻撃するのにこのはさみを用います。
はさみの形はオスとメスで異なるため、外見で区別できます。オスのはさみは太く、左右が対称ではなく、左が半円状なのに対して右は強いカーブを描いています。一方、メスのはさみは左右相称で、内側に曲がってはいるものの直線的で、先はとがっています。
折り畳まれた翅(はね)の仕組み
翅(はね)が退化して飛べない種類もありますが、クギヌキハサミムシ科のエゾハサミムシ、キバネハサミムシなどは飛ぶことができます。ハサミムシには前翅と後翅があり、半円状の後翅は展開したときのおよそ15分の1程度に小さく畳まれ、前翅の下に格納されています。場所をとらず、瞬時に収納・展開できる翅の仕組みは工学的に注目されていて、人工衛星のソーラーパネルや、ドローン用の展開翼のほか、傘や扇子などへの応用が研究されています。
【参考】昆虫界で最もコンパクト:ハサミムシの扇子の展開図設計法が明らかに
ハサミムシの生態と習性
尾にはさみをもつハサミムシは、どのようなところに生息しているのでしょうか。
暖かい時期に活動する
主に、熱帯や亜熱帯地方に生息します。温帯にもいるものの、もともと暑いところを好むため、活動するのは4月から10月ごろの暖かい時期です。
ちなみに「鋏虫」(はさみむし)、または別名の「尻挟」は、夏の季語でもあります。
エサは小さな虫
雑食性ですが肉食を好み、ダンゴムシや、ガの幼虫のような小さな虫などをエサにします。
農業における益虫
ハサミムシが食べる虫には、コナガやヨトウムシなど、野菜に付く害虫がいます。農作物を害虫から守ったり、家のまわりの虫を食べたりするハサミムシには、益虫の側面があります。こうした性質から、路地野菜の害虫や、ゴルフ場の芝生に繁殖する害虫の駆除に、天敵のハサミムシを利用する研究も進んでいます。
湿気の多い場所を好む
ハサミムシは夜行性で、枯れ木や石の下などの薄暗くて湿った場所を好みます。したがって駆除するためには、暗く湿気の多い場所を減らし、住みつきにくくするのがポイントです。
卵・幼虫・成虫の生活史
ハサミムシは不完全変態の昆虫で、さなぎの時期がありません。成虫は、30~50個ほどの卵を産みます。卵はおよそ2ヵ月で孵化し、40~90日の間幼虫として過ごしたのち、脱皮を繰り返しながら成虫になります。成虫の寿命はおよそ半年から9ヵ月で、メスはこの間に産卵します。
「子育て」をする習性
ハサミムシは成虫の状態で冬を越し、冬の終わりごろから春のはじめにかけて卵を産みます。
昆虫の仲間としては珍しいことに、産卵後のメスが孵化するまで卵を守る習性があります。親は自分ではエサを摂らず、卵にカビが付かないように巣の掃除をしたり、風通しをよくするために卵の位置を動かしたりして、40日以上も卵を見守ります。しかし卵が孵化すると、親は生まれてきたばかりの幼虫に食べられるという観察が報告されています。
【参考】ハサミムシの母の最期はあまりにも壮絶で尊い(東洋経済オンライン)
ハサミムシによる害
ハサミムシは益虫といわれますが、家の中や周りにいることによる害はないのでしょうか。
基本的には無害な益虫
ハサミムシはおおむね無害な昆虫です。しかし、黒光りする外見や、尾にはさみをもつことから、見た目が気持ち悪い「不快害虫」といわれることがあります。
はさみに毒はない
尾のはさみには、毒はありません。ただし、はさむ力が強いため痛みはあり、はさまれて出血することもあります。注意が必要なのは、傷口から雑菌が入って炎症を起こす場合があることです。もしハサミムシにはさまれてしまった場合には、流水で傷口をよく洗い、清潔に保ちましょう。
こうした被害を防ぐためには、ハサミムシを家の中に入らせない、さらには家の周りに寄りつきにくくする工夫が必要です。
野菜や果樹など農作物の食害
ハサミムシは、一般的には害虫と考えられていません。しかし、白菜などアブラナ科の野菜やクリなどの農作物、稚蚕(一齢から三齢までのカイコ)に害を与える種もあります。とくに外国産では、ヨーロッパハサミムシが農業害虫として知られます。近年、外国からの荷物や農産物に紛れ込んだヨーロッパハサミムシが、日本でも発見されています。
ハサミムシの予防と対策
ハサミムシはどのような場所から人家に入り込むのでしょうか。ここでは、ハサミムシの侵入・発生を防ぐ対策をご紹介いたします。
ハサミムシの侵入経路
ハサミムシは、床下や網戸の隙間などから人家に侵入します。夜間、部屋の明かりに引き寄せられることもあるため、床の穴や扉の隙間をふさいでおくことも対策のひとつです。また、カーテンやブラインドなどで屋内の明かりが外にもれないようにすると、ハサミムシが誘い込まれにくくなります。
隠れやすい場所をつくらない
ハサミムシは夜行性で、薄暗い場所を好みます。庭の落ち葉や朽ちた木を片付け、石・雑草など潜みやすい場所をなくすことで、家の周りでの繁殖を抑えることができます。
水気の多い場所は換気をよくして乾燥させる
水を使う浴室やトイレ、洗濯機の周りなどは、窓を開ける・換気扇を回すなどして、室内に湿気がこもらないようにしましょう。家の周りでは、水道の蛇口や排水管の水もれがないか確かめ、水たまりをなくし、排水溝を掃除して水はけをよくすることで、ジメジメと湿った場所を減らすことができます。このように、ハサミムシにとって居心地のよい場所をなくす工夫が必要です。
また、家の周囲や侵入経路になりやすい場所に薬剤をスプレーしておくと、室内への侵入を予防する効果が期待できます。
ハサミムシに効く駆除剤は?
200種以上の害虫に効果を発揮する、フマキラー「カダン お庭の虫キラーダブルジェット」。コバネハサミムシやヒゲジロハサミムシを見つけたら、スプレーを噴射して素早く退治できます。ハサミムシの活動期は、4月から10月ごろまで。産卵期に駆除すれば、効果的に繁殖数を減らすことが可能です。また、あらかじめ虫の好みそうな場所にスプレーすれば、寄りつきを約1か月間予防。スプレーした場所に雨がかかった場合は、もう一度スプレーをかけ足すことで虫除け効果が続きます。
ハサミムシのほか、ガ、ユスリカ、カメムシといった飛ぶ虫にも、またクモやアリ、ムカデ、ダンゴムシ、ケムシなどの地をはう虫の退治にも効果が期待できます。庭木や植物にかかっても枯れにくいので、花壇の近くでも安心して使うことができます。
ハサミムシ対策は家の周りの掃除と殺虫剤で
毒をもたないとはいえ、尾のはさみではさまれると痛いハサミムシ。ダンゴムシや、ガの幼虫などを食べてくれる益虫ではありますが、家の中に入り込ませないほうがよいでしょう。
そのためにも家の周りを点検し、ハサミムシが侵入しそうな床の穴や網戸の隙間をふさぎ、庭の落ち葉は片付け、排水溝を掃除しましょう。ハサミムシが好む湿気の多い隠れ場所を減らす工夫をすることで、家の中に侵入する機会を減らすことができます。また、対応する殺虫剤を用意しておくことも、ハサミムシの退治に効果的といえるでしょう。