2021年9月27日 | 園芸・ガーデニング
【生垣の作り方】生垣におすすめの庭木や手入れ方法を解説
仕切りや目隠しなどの目的で庭木を植える「生垣(いけがき)」。西洋では「hedge(ヘッジ)」または「hedgerow(ヘッジロウ)」と呼ばれ、イギリスでも13世紀ころからナチュラルでおしゃれな生垣が盛んに作られたといわれます。
生垣と聞くと、なんとなく和風の庭をイメージしますが、庭木の種類や植え方を選べば洋風の家にもしっくりとなじみます。そこで今回は、生垣の基礎知識とおすすめの庭木を目的別にご紹介し、生垣の作り方と手入れの方法を解説いたします。
生垣の基礎知識
はじめに、生垣の基礎知識を身につけましょう。
生垣とは
生垣とは、庭木を植えて作る垣根(かきね)を指します。奈良時代にはウツギ(アジサイ科ウツギ属の落葉低木)を使用した生垣が作られ、平安や鎌倉時代には主に竹や下部の枝を切り落とした庭木などを用いました。そして江戸時代の中ごろになると、現代でもよく見かける四角に刈り込んだ生垣が広まります。
現在、国内には生垣の設置にかかった費用の一部を補助する「緑化助成金制度」が導入されています。ただし、制度の利用は一部の地域に限られ、設置する面積などの条件を満たす必要があるため、詳細は各自治体にお問い合わせください。
生垣の目的
生垣は、主に道路と私有地の境界や、敷地内の区分けとして作られます。庭木の種類によっては目隠しや防犯、日よけや防風、防音や防火などの目的もあります。花が咲く品種を選んだり植え方を工夫したりすれば、美しい景観を作ることも可能です。また、植物が二酸化炭素を吸収して酸素を排出する効果や、葉から水分を蒸発させて周辺の温度を下げる効果などは、環境保全にもつながります。
ただし、庭木を密にしすぎると風通しの悪さから病害虫が発生しやすいうえ、不審者の侵入にも気づきにくくなるため、適度な間隔を空けて植えつけましょう。
生垣に向く庭木
生垣として植える庭木は、手入れがしやすくせん定してもよく芽が出るもの、病害虫の少ないものをおすすめします。また、冬も緑が楽しめる常緑の庭木を選べば、落ち葉の掃除がほとんど必要ありません。さらに、樹形や葉が美しいもの、花が咲くもの、実のつくものなどを植えれば、よりおしゃれな景観を楽しめます。
【目的別】生垣におすすめの庭木
続いて、生垣におすすめの庭木を目的別にご紹介いたします。
手入れが簡単
初心者の方が育てやすい品種は、次の3つです。
マサキ
- ニシキギ科ニシキギ属
- 常緑高木(6m)
生垣の代表的な品種。半日陰でも育ち、暑さや寒さ、潮風などに強く、せん定してもよく芽を出します。葉は黄金色や斑入り(ふいり)のタイプがあり、秋には赤い実がつきます。
アオキ
- アオキ科(ミズキ科) アオキ属
- 常緑低木(1~3m)
半日陰でも育ち、暑さや寒さ、排ガスなどに強く、斑入りのタイプもあります。赤い実を観賞するには、雄株(おかぶ)と雌株(めかぶ)を近くに植えてください。
イヌツゲ
- モチノキ科モチノキ属
- 常緑高木(10m)
古くから生垣に使われる品種で、暑さや寒さ、潮風などに強い品種です。本来の「ツゲ」はツゲ科に属するので、同じ仲間ではありません。葉を刈り込めば自由に形を作れます。
花が咲くもの
花を楽しめる庭木は次のとおりです。
キンモクセイ
- モクセイ科モクセイ属
- 常緑高木(5~6m)
9~10月ごろに、黄金色の花と独特の香りが楽しめます。半日陰でも育ちますが、基本的には日なたがおすすめです。開花期は、夜間になると香りが一層強く漂います。
キンモクセイについては、「黄色い花を咲かせよう!黄色い花の種類を春・夏・秋・冬の季節ごとに紹介」の記事でもご紹介しています。
ツツジ
- ツツジ科ツツジ属
- 常緑低木(5~2m、一部は落葉性)
暑さや寒さに強く丈夫なため、公園や道路などの生垣にも使われます。ツツジの仲間であるサツキは、やや開花期が遅めです。開花した後、花の芽が出る前にせん定しましょう。
アベリア
- スイカズラ科ツクバネウツギ属
- 常緑低木(1~5m)
暑さや寒さ、排ガスなどに強く、病害虫が少ないので、公園や道路沿いなどの生垣に使われます。初夏から初秋までの長い期間、白く可憐(かれん)な花を咲かせます。
洋風の生垣
洋風の生垣には、次の庭木がおすすめです。
コニファー類
- ヒノキ科イトスギ属、ヒノキ属など
- 常緑低木~高木(5~20m)
針葉樹の中でも、主に園芸や観賞用に利用されるものの総称です。ある程度伸びたら、頂点を摘み取って高さを抑えます。内側をせん定して、蒸れや病気を防ぎましょう。
レッドロビン
- バラ科カナメモチ属
- 常緑中高木(3~10m)
「セイヨウカナメ」とも呼ばれ、赤い葉が美しいことから洋風の生垣に多く用いられます。暑さに強く丈夫ですが、生育が旺盛なため年に数回のせん定で形を整えましょう。
セイヨウヒイラギ
- モチノキ科モチノキ属
- 常緑高木(6~8m)
葉の縁がギザギザとしているので、防犯用におすすめです。「クリスマスホーリー」などと呼ばれ、秋に赤い実をつけます。モクセイ科の「ヒイラギ」とは品種が異なります。
背が高い生垣
高い生垣を作るときは、次の品種がおすすめです。
シラカシ
- ブナ科コナラ属(マテバシイ属)
- 常緑高木(10~20m)
丈夫で寒さに強く、古くから防風や防火の目的で植えられます。秋になると、ドングリの実が観賞できます。ある程度の高さで頂点を切り、年に2回せん定しましょう。
サンゴジュ
- スイカズラ科ガマズミ属
- 常緑高木(8m)
半日陰でも育ち、潮風や排ガスに強い品種で、古くから防火の目的で植えられます。名前は晩夏につく赤い実に由来します。年に2回せん定して、形を整えてください。
イヌマキ
- マキ科マキ属
- 常緑高木(20m)
半日陰でも育ち、暑さや寒さ、潮風などに強く、刈り込めば樹形を変えられます。タネをつけるには、雄株と雌株を植えましょう。タネの下部の「花托(かたく)」は食用にできます。
【初心者向け】生垣の作り方
それでは、初心者の方に向けた生垣の作り方を順にご紹介いたします。竹を組んで支える作り方もありますが、ここでは市販の垣根などを使用します。
用意するもの
- メジャー、水糸(みずいと)、木の棒など
- 市販の垣根、トレリス、支柱など
- ひもまたはビニタイ
- 庭木の苗
- シャベル、ジョウロなどのツール
- たい肥、肥料など
生垣の作り方
生垣の具体的な作り方は、次のとおりです。
① 場所の決定
生垣の目的に合わせて、庭木を植える場所を決めましょう。半日陰で育つ庭木もありますが、基本的には日当たりのよい場所を選んでください。なお、通り道になる場所や建物のすぐ脇、軒下などは庭木の生育に支障をきたすことがあるので注意しましょう。ほかの植物とのバランスも考慮し、全体をデザインしながら決めてもよいでしょう。
庭のデザインについては、「ガーデニングデザインで自宅のお庭をおしゃれな空間に!」の記事を参考にしてください。
② 品種の決定
庭木の品種は、生長した姿を予測しながら選びましょう。大きく育つものや葉や花が散るものは、近隣への配慮も必要です。生垣の場所と庭木の品種を決めたら、植えつける間隔を調べてください。低~中木は30~50cmくらい、大きく育つ品種は80cmくらいの間隔が目安です。生垣にする場所の幅と植えつけの間隔から計算し、必要な本数を購入します。
③ 垣根などの設置
きれいな直線を引くには、2本の木の棒に水糸を張ったものを使います。設置する場所を決めたら土を30cmくらい掘り、市販の垣根やトレリスなどを倒れないように立ててください。大きく育つ品種は、支柱で1本ずつ支えるとよいでしょう。すでに設置してあるフェンスを利用しても構いませんが、隣家と共用の場合は声をかけてから植えると安心です。
④ 土の下準備
庭木を植える場所の土を深めに掘り返し、石やゴミ、古い根などを取り除きます。基本的にはたい肥を混ぜるだけで構いませんが、水はけの悪い土には川砂や軽石などを加えましょう。庭木の品種によっては、酸性度を測って石灰をまいたり、ピートモスなどを足したりすることもあります。
ピートモスについては、「ピートモスとは?特徴や使い方を知り酸性の土をつくろう」の記事をご覧ください。
⑤ 苗の仮置き
続いて、庭木を植える位置を決めます。垣根に沿って苗を仮置きし、最終的な間隔やデザインなどを確かめましょう。仮置きするときもメジャーや水糸を使えば、全体がきれいに仕上がります。植える場所が決まったら、石などを置いて印をつけます。
⑥ 苗の植えつけ
印を基準にしながら、庭木の種類に合わせて穴を掘ります。穴の中に粒状の化成肥料をまいて、少量の土をかぶせます。穴に苗を置き、隙間ができないように周囲に土を入れながら植えましょう。品種によっては、水を与えながら植えつけます。ひもやビニタイで苗を垣根などに固定し、水をたっぷりと与えたら完成です。
二段生垣・混ぜ垣
高さが異なる2種類の庭木を用いて、「二段生垣」を作ることも可能です。図のように、背の高い品種を建物側に、低い品種を外側に植えます。シンプルなものと花が咲くものを組み合わせてもよいでしょう。
また、種類が異なる複数の庭木を交互に植える「混ぜ垣(まぜがき)」という方法もあります。開花期の異なるものや、同じ品種で花の色が異なるものなどを選んでも楽しめます。それぞれの庭木の魅力を生かしながら、生垣を作ってみてください。
生垣の手入れのポイント
最後に、生垣の手入れについてご紹介いたします。
植えた直後
植えつけから数日が過ぎると、元気のない株が出ることがあります。1週間くらい過ぎても回復しない場合は、掘り上げて新しいものに植え替えるとよいでしょう。根づくまでは強風などに気をつけ、倒れそうなものは直しながら管理してください。しばらくして固定したひもなどがきつくなったときは、緩めたり取り除いたりして調整します。
水やりは必要?
植えつけてから根が張るまでの半年くらいは、水やりが必要です。毎日土の表面を観察して、乾いているときは午前中に水やりをしましょう。ジョウロで与えるのではなく、少量の水を出したホースの先を根元に置いてゆっくりと浸透させます。折を見て、夕方以降に木の全体に水をかける作業も必要です。
根づいた後は基本的に水やりをしませんが、猛暑が続いて極端に土が乾いたときなどは早朝か夕方に水を与えます。ただし、レンガやコンクリートなどで仕切った場所に植えた庭木は、土の量が少ないので定期的に水やりしてください。
レンガについては、「【レンガの敷き方】ガーデニング初心者向けのポイントや材料を紹介」の記事でご紹介しています。
せん定のポイント
一般的に、常緑樹のせん定は6月と10月ごろにおこないます。1回目は古い枝や太い枝などを切ったり、全体に刈り込んだりする作業がメインですが、花が咲くものは開花後にせん定します。2回目は、夏の間に伸びた枝を切って全体を整えます。
生長が速いものは年に3回せん定することもあるので、品種に合わせて手入れをしてください。数年に1度は、奥が透けて見えるくらいまで内側の不要な枝をせん定し、病害虫を防ぎましょう。
病害虫のチェック
生垣の美しさを保つには、日々のチェックが欠かせません。庭木の表面だけでなく、枝の間や根元なども観察してください。病害虫のトラブルが疑われる部分は、すぐに取り除いてまん延を防ぎましょう。
生垣のお手入れでよくある悩みの一つがケムシが付くことです。大切な葉を食べられてしまう前にしっかりと対策しておきたいですね。そんなケムシ対策には、フマキラーの「カダン ケムシジェット」がおすすめです。ケムシに直接スプレーすればすばやく退治できますし、予めスプレーしておくことで4カ月(※)の予防効果を発揮し、生垣をきれいな状態に保つことができます。
※:樹高3mまでが最適(さくら、アメリカシロヒトリの場合)
生垣の作り方を参考にして快適な住まいを
今回は、生垣の基礎知識とおすすめの庭木を目的別にご紹介し、生垣の作り方や手入れについて解説いたしました。生垣の作り方のポイントは、手入れがしやすく病害虫の少ない庭木を選び、倒れないようにしっかりと支えることです。庭木を植えつけた後も定期的なメンテナンスをおこなって、美しい景観を保ちましょう。