2021年7月26日 | 虫
マイマイガの駆除は必要?マイマイガの幼虫や卵・成虫の駆除方法について解説
春になると、公園や庭先などで毛虫を見かけることがあります。毛虫は蝶や蛾(が)の幼虫ですが、体をおおう針のような毛や分泌液に毒をもっているものもあるので、うっかりさわらないよう注意が必要です。
今回は、口から糸を吐いて枝からぶら下がる「ブランコ毛虫」としても知られるマイマイガについて、その生態や具体的な害、駆除の方法などをご紹介いたします。
マイマイガの大発生
各地で報告された大発生
2021年春、長野県松本市や神奈川県津久井郡などで、マイマイガの幼虫(毛虫)が大量に発生し、注意を呼びかける報道がありました。
【参考】マイマイガ大発生の兆し 注意呼び掛け(市民タイムス)
ここ数年でも、2020年には新潟県佐渡市、2019年には山梨県山梨市や甲州市などで同様の報告がなされています。2013年には全国的に大発生し、各地で山林や果樹の食害に悩まされました。
周期的に起きる大発生
マイマイガの大発生は数年ごとに起きています。およそ10年の間隔で大発生することが多いようですが、数年連続することもあります。また、前回から数年しかたたないうちに次の大発生が起きることもあり、周期は一定しないようです。
公園の植木や果樹、街路樹などに成虫がたくさん卵を産み付けると、孵化(ふか)した幼虫が大発生し、成虫になって活発に卵を産むというサイクルに入ります。このようにしてマイマイガが一度増えると収束には2~3年かかり、この間に樹木の食害や建物の汚損などの被害が出ます。
マイマイガとは、どのような生態の虫なのでしょうか。
マイマイガとはどのような虫か
マイマイガは蛾の仲間で、鱗翅(りんし)目ドクガ科に属す昆虫です。
名前はオスの飛ぶ様子から
漢字表記は「舞々蛾」。成虫のオスがメスを探して日中にひらひらと飛ぶ様子が、名前の由来といわれます。
【参考】マイマイガ(林野庁 東北森林局)
オスとメスで外見が違う
成虫は、オスとメスで大きさや色が違います。体はメスのほうが大ぶりで、オスの開帳(広げた羽の端から端まで)が40~60ミリなのに対し、メスは60~80ミリあります。オスの羽は黒みを帯びた褐色で丸みがありますが、メスはもっと大きく白っぽい羽をもっています。
【参考】ガのおもな種類(日本産)(6)〔標本写真〕 日本大百科全書(ニッポニカ)
卵→幼虫→さなぎ→成虫という生態
蛾は完全変態をする昆虫で、マイマイガも卵から幼虫になり、さなぎを経て成虫へと育ちます。
成虫は卵塊(塊状の卵)を木に産みつけます。ひとつの塊には100~300の卵が含まれており、この卵が春に孵化(ふか)すると幼虫の毛虫になります。幼虫には、糸を吐いて枝からぶら下がる習性があるところからブランコケムシと呼ばれ、風にのって移動することがあります。
毛虫はやがてさなぎになり、夏に羽化して成虫になります。
生息する範囲
マイマイガは、日本では北海道から沖縄本島まで生息しています。世界的にはアジア、ヨーロッパ、アフリカに広く分布していますが、北米にはヨーロッパから持ち込まれたといわれます。
国際的な自然保護ネットワークである「国際自然保護連合」(IUCN)の「世界の外来侵入種ワースト100」リストにも、Lymantria dispar(マイマイガの学名)として登録されています。
【参考】100 of the World’s Worst Invasive Alien Species 国際自然保護連合(IUCN)
光に集まる習性
夜、街灯や玄関の照明に蛾が集まるのを見かけることがあります。これは、捕食者となる鳥に見つかりにくくするために、体色に近い白い壁を好むためです。
マイマイガの害
マイマイガが大発生すると、どのような問題があるのでしょうか。具体的な害について解説いたします。
森林に害をなす「森林病害虫」
マイマイガは、マツカレハやツガカレハ、マツマダラメイガなどとともに、森林害虫とされています。日本では「森林病害虫等防除法」で定める森林病害虫に指定されています。
【参考】その他病害虫による森林被害(林野庁)
果樹や庭園の木を食い荒らす
マイマイガが害をなすのは、森林だけではありません。幼虫は、コナラ、クヌギ、ハンノキ、カエデ、サクラ、クリ、カラマツといった樹木の葉を食べるため、農作物にも被害が出ることがあります。
2021年、神奈川県立津久井湖城山公園では例年よりも多く幼虫が見かけられ、園内には毛虫に注意を呼びかけるポスターが張り出されました。
【参考】毛虫大発生(神奈川県立津久井湖城山公園)
都市の不快害虫
人や動物を刺したり、血を吸ったりするわけではありません。しかし、増えすぎると迷惑な存在といえるでしょう。先述のとおり、マイマイガは光に集まる性質をもつため、街灯や建物の外壁などに塊になった卵を産み付けて汚すことがあります。
マイマイガの駆除方法
マイマイガの駆除方法は、卵、幼虫、成虫の成長段階によって異なります。どのような方法が効果的なのか、具体的にご紹介いたします。
卵の駆除方法
成虫の寿命は1週間から10日ほどです。その間に、庭木や建物の外壁などに卵塊を産み付けます。毛でおおわれた茶色の卵は塊のまま冬を越し、翌年の春以降に孵化(ふか)して幼虫になるので、その前に駆除することが大切といえるでしょう。
卵を除去する作業の際、卵をおおう細かい毛や鱗粉(りんぷん)にかぶれることもあります。ゴーグルやマスクをして目や鼻を守り、手袋をして皮膚に触れないように気をつけましょう。取り除いた卵は燃えるごみに出しましょう。
卵塊をへらなどで削り落とす方法もありますが、角型のペットボトルを半分に切り、そのへりで卵塊を削り落とすように作業するのがおすすめです。ペットボトルの中に卵塊が落ちるので、取り除くのに便利です。マイマイガが大発生した長野市でも、500㎖入りの角型ペットボトルを使った除去方法を紹介しています。
【参考】ペットボトルを利用したマイマイガ卵塊の掻き取り用具について(長野市環境保全温暖化対策課)
幼虫の駆除方法
幼虫(毛虫)の毛には毒があります。直接さわらないようにするのはもちろんのこと、抜け落ちた毒針毛が刺さらないよう注意が必要です。肌の弱い方は、風で飛ばされてきた毛にかぶれることもあるので、風の強い日には洗濯物を外に干さないなど工夫しましょう。
幼虫を駆除するときも、卵の除去と同様、マスクやゴーグル、手袋をして肌を守りましょう。作業の際は、ウインドブレーカーやレインコートなど、つるつるした素材を着るとよいでしょう。毛が付着しにくく、作業後にふき取ったり洗い流したりするのにも便利です。
毛虫の駆除には、スプレー式の殺虫剤が効果的です。スプレーを使う際は、毛虫の毒針毛が付着しないように、またスプレーの勢いで毛虫が飛んで来ないよう、風上から毛虫に向かって噴射して駆除します。毛虫の死骸は割り箸やトングなどで集め、袋にまとめます。毒針毛が飛ばないよう、捨てるときにも袋の口をしっかり縛っておきましょう。
成虫の駆除方法
成虫として飛ぶようになると、毛虫のときよりも動きも早く、退治が困難になります。また、成虫は卵を産み付けて次の世代を増やすので、できれば卵や幼虫の段階で駆除しておくと安心でしょう。
成虫も、スプレー式の殺虫剤などで駆除することができます。
マイマイガの駆除におすすめなのはスプレー式薬剤
成虫が増えてしまうとやっかいなマイマイガ。駆除におすすめなのは、手を汚すことなく手軽に使えるスプレー式薬剤です。
このような虫に効果あり
フマキラー「カダン フマキラープレミアム」は、不快害虫の駆除に役立つスプレー式薬剤です。マイマイガの幼虫を含むケムシなど、以下のような害虫に効果を発揮します。
適用害虫:ブユ、アブ、ユスリカ、ムカデ、ケムシ、クモ、セアカゴケグモ、カメムシ、アリ、ヒアリ、アルゼンチンアリ、シロアリ、タカラダニ、ハチ、ガ
庭での作業前に藪や地面に直接吹きかけて使うと、危険な虫を素早く退治することが可能です。1本550㎖入りなので、たっぷり使えてお得です。
寄りつきにくくする予防法
駆除するほかにも、マイマイガを寄りつきにくくする工夫もおすすめです。
- 蛾を呼ぶ屋外の照明(玄関灯など)を消す、または減らす
- 屋外の照明を、マイマイガの好む水銀灯からLED灯などに代える
- 家の周りで幼虫が隠れやすい雑草を取り除き、庭木の枝を剪定(せんてい)する
- 前の年に卵塊が産み付けられた場所には忌避剤を使う
カダン フマキラープレミアムは、バリアを作って長時間虫を寄せつけない予防効果も有します。雨がかからない条件の元では最大1か月予防が持続しますので、ぜひお試しください。
駆除は早めの発見と対策が鍵
今回は、マイマイガの卵と幼虫、そして成虫になってからの駆除の方法をご紹介いたしました。
建物の外壁などに産み付けられたマイマイガの卵は、見た目がよくないだけでなく、孵化(ふか)して幼虫になれば庭木や果樹に害を与えます。また、毛虫の毒針毛がアレルギーの原因にもなるので、そのまま放置すると危険なことがあります。
家の周りで増えすぎないよう、マイマイガが集まりにくくなる工夫をするなど、早めに有効な対策を考えましょう。