スズメバチの生態と食性。ミツバチとは何が違うのか?

スズメバチの生態と食性。ミツバチとは何が違うのか?

たびたび危険生物としてニュースにも取り上げられ、狂暴なイメージのあるスズメバチと、お花畑や蜂蜜などかわいらしいものを連想させるミツバチ。同じハチでも随分イメージの異なる両者ですが、「スズメバチも蜜を集めるの?」「スズメバチにも働き蜂はいるの?」など、疑問に思ったことのある方もいるのではないでしょうか。

見た目や食性は異なるものの、スズメバチとミツバチには同じハチとして似通った部分もあります。そこで今回は、スズメバチとミツバチの食性や生態などについてご紹介いたします。

昆虫の食性とは?

昆虫の食性とは?

スズメバチとミツバチの違いは、まず「食性」に現れます。ミツバチが花の蜜や花粉などをエサとするのに対し、スズメバチは生きている昆虫を捕獲します。しかも自らはそれを食べず、強力な顎で細かく噛み砕き肉団子にして幼虫に与え、自分たちは幼虫が分泌する液をエサとしています。

同じハチでも食性が異なるように、昆虫にはそれぞれの食性があり、その違いによって自然界のバランスが保たれています。ここでは、さまざまな昆虫の食性についてご紹介いたします。

捕食者:スズメバチ、カマキリ、トンボなど

生きた動物を捕らえて食べるものを「捕食者」といいます。カマキリは、幼虫の頃からハエなどを捕まえてエサにします。

植食者:ミツバチ、バッタ、チョウ、アブラムシなど

生きている植物の葉や実、花蜜、花粉、樹液などを食べるものを「植食者」といいます。

雑食者:ゴキブリ、コオロギ、アリ、ゴミムシなど

動物質と植物質の両方を食べるものを「雑食者」といいます。

腐食者:ミミズ、ワラジムシなど

生きた動植物ではなく、死骸や排泄物、枯木、朽木、落ち葉などを食べるものを「腐食者」といいます。

菌食者:ハエ、チョウなど

キノコ(菌類)を食べるものを「菌食者」といいます。

寄生者:ノミ、シラミ、トコジラミなど

動物の血液を吸うものを「寄生者」といいます。寄生者は寄主(栄養分をとる対象)を殺すことなく、生かしたまま栄養分をとり続けます。

捕食寄生者:寄生バチ、寄生バエなど

寄生者が寄主を殺さずに栄養分をとり続けるのに対して、奇主を最終的に殺してしまうものを「捕食寄生者」といいます。

ハチの生態

ハチの生態

食性の異なるスズメバチとミツバチは、それぞれが集団で行動する点においては共通しています。ハチは高度な社会性を有し、集団で生活を営む社会性昆虫です。それぞれに役割が与えられ、1匹の女王蜂とたくさんの働き蜂、少数の雄蜂で群れを構成し、社会性のある生活を送ります。ここでは、ミツバチとスズメバチ、それぞれの生態について解説いたします。

ミツバチ

蜂蜜をつくるハチとしておなじみのミツバチ。日本には「ニホンミツバチ」と「セイヨウミツバチ」がおり、在来種のニホンミツバチは野生のハチとして広範囲に生息しています。ヨーロッパからの外来種であるセイヨウミツバチは、飼育しやすく蜂蜜づくりに適していることから、多くの養蜂場で飼育されています。

ミツバチの群れは、1匹の女王蜂と多数の働き蜂、繁殖期には全体の1割ほどの雄蜂で構成されます。

ひとつの巣に1匹しかいない女王蜂は産卵の役目をもち、1日に1000~2000、寿命である2~4年の間にのべ何百万もの卵を産み落とします。働き蜂はすべて雌で、短い寿命(30~40日)のなか、巣の掃除や子育て、巣づくり・門番、蜜・花粉採集など、多くの仕事をこなします。寿命の短い雄蜂は繁殖のためだけに生まれ、お尻に針をもっていません。新しい女王蜂が誕生して巣から飛び立つと、雄蜂も追いかけて飛び立ち、交尾の後死んでしまいます。

ミツバチは蜂蜜以外にもローヤルゼリーを生成したり、野菜や果実の受粉に役立ったりと、養蜂家や農家の人たちに恩恵をもたらします。働き蜂はお尻に針をもっていますが、刺すと針がそのまま抜かれて自身は死んでしまいます。このため滅多なことでは刺してきませんが、巣を守るために集団で攻撃することもあります。

<ミツバチの概要>

  • 体長:10~15mm
  • 営巣場所:屋根裏、壁の間、木の空洞など
  • 活動時期:1年中
  • 攻撃性が高くなる時期:10~11月、2~3月
  • 巣の特徴:六角形の巣穴がむき出しで平行に重なっている
  • 主な種類:ニホンミツバチ、セイヨウミツバチ

スズメバチ

ミツバチよりも大きく、襲われた場合危険度の高いスズメバチですが、種によって性質はさまざまです。日本では16種のスズメバチが確認されています。

ハチのなかで最も警戒心の強いスズメバチは、攻撃性と毒性を有します。世界最大のハチといわれるオオスズメバチ(個体で40mmを超えるものも)や、やや小柄なキイロスズメバチ(働き蜂で18~24mm)は、なかでも強い攻撃性をもっています。

ハチの針は産卵管が変化したものなので、お尻に針をもっているのは、ミツバチと同様に雌のみです。雄は、針の代わりに交尾器をもちます。

<スズメバチの概要>

  • 体長:15~30mm
  • 営巣場所:軒下、屋根裏、木の根元など
  • 活動時期:5~11月
  • 攻撃性が高くなる時期:7~10月
  • 巣の特徴:円盤状の巣板を積み重ねて、バルブの外皮で覆ったものが多い(キイロスズメバチ、コダカスズメバチなど)
  • 主な種類:オオスズメバチ、キイロスズメバチ、クロスズメバチ、ヒメスズメバチ、コガタスズメバチなど

ハチの食性

ハチの食性

ミツバチとスズメバチの食性は異なりますが、エサを巣に持ち帰って幼虫に与える行為や、幼虫と成虫とで食べるものが変わる点は共通しています。ミツバチやスズメバチなどの社会では、共同で育児をおこなうという特徴があり、エサをとってきて幼虫に与えるのは働き蜂の役目となっています。ここでは、ミツバチとスズメバチそれぞれの食性について解説いたします。

ミツバチ

ミツバチのエサは、ほとんどが蜂蜜と花粉です。糖を主成分とする蜂蜜は「ごはん」に、たんぱく質・ビタミン・ミネラルなどを含む花粉は「おかず」に例えられます。女王蜂と女王蜂候補の幼虫には、栄養価の高い特別な食事としてローヤルゼリーが与えられます。これは、花粉を食べた働き蜂の唾液腺からつくり出されます。

成虫

ミツバチの成虫は花の蜜を吸ったり、巣に蓄えられている蜂蜜や花粉などを食べたりします。働き蜂が花から集めてくるものは、花蜜といいます。持ち帰った花蜜は巣の中で熟成・濃縮され、蜂蜜がつくられます。また、花に潜り込んだ際に体に付着した花粉や花蜜は、後ろ脚を使ってまるめて花粉団子にして巣に持ち帰ります。団子は別の働き蜂によって噛み砕かれ、巣房の奥へと押し込まれて保存食として蓄えられます。

幼虫

女王蜂を育てるための特別な部屋(王台と呼ばれる)で生まれたミツバチには、幼虫として過ごす5~6日の間、働き蜂からローヤルゼリーが与えられます。働き蜂の幼虫にも、最初はほぼ同じ食事が与えられますが、3日目頃には花粉や蜜の混ざった食事が与えられるようになります。

スズメバチ

スズメバチの成虫はウエスト部がくびれた体型のため、砕いた昆虫をそのまま食べることができません。そこで、成虫は昆虫を細かく砕き、唾液と混ぜてつくった肉団子を幼虫に与えます。その代わりに、幼虫の体から出る分泌液を成虫がエサとするのです。まさに、ギブ・アンド・テイクの関係性といえるでしょう。このように、幼虫と成虫の間でエサを与えあうことを「栄養交換」と呼びます。

成虫

幼虫の体から出る栄養価の高い分泌液は、成虫の重要な栄養源となっています。ほかにも成虫は、樹液を吸ったり花の蜜を吸ったりしますが、ミツバチのように花の蜜を巣に持ち帰ることはありません。

幼虫

幼虫は、成虫から与えられる昆虫の肉団子を食べて育ちます。ミツバチとは違い、スズメバチの働き蜂はローヤルゼリーをつくることができません。

スズメバチはミツバチを襲う?

スズメバチはミツバチを襲う?

キイロスズメバチやオオスズメバチは、ミツバチを襲うことがあります。スズメバチがミツバチを襲うのは、ミツバチを捕食して肉団子にしたり、巣にいる幼虫や蛹・蓄えている蜂蜜を奪ったりして、女王蜂や幼虫たちのエサにするためです。

スズメバチが巣に近づくと、ミツバチは集団でお尻を振って威嚇します。このためスズメバチは、群れから離れたミツバチを狙います。これに対抗するミツバチは、集団でスズメバチに群がり熱で死滅させる熱殺蜂球(ねっさつほうきゅう)を繰り出します。これはスズメバチよりも高温に耐えられるミツバチの特性を活かしたものです。

ただし大型のオオスズメバチの場合、巣そのものを襲撃することもあります。オオスズメバチは高い社会性をもつ賢い種で、偵察に出かけた1匹がミツバチの巣を見つけると、フェロモンを使って仲間を呼び、集団となって襲撃します。こうなるとミツバチに打つ手はなく、巣はオオスズメバチに占領されてしまうのです。

スズメバチの食性を利用した【フマキラー】の『人工樹液』 トラップ

自ら攻撃を仕掛けることのないスズメバチも、巣を守るため人に危害を加えることがあり、庭木や家の軒下などに巣をつくられてしまうと大変危険です。家のまわりでスズメバチを見つけたら、近くに営巣しているおそれがあるといえます。そのような場合は、スズメバチの食性を利用したフマキラーの人工樹液トラップがおすすめです。

ハチ超激取れ

フマキラーの「ハチ超激取れ」は、ハチが好む樹液を徹底的に研究・開発した独自の誘引液を使用。庭木などに吊るしておくだけで、スズメバチを容器へと誘い込みます。仕掛けられた透明な板に衝突して落下したハチを、溺れさせて捕獲。誘引・衝突・落下・捕獲の4段階トラップで、危険なハチを駆除します。

カダン スズメバチ巣ごとキラー

駆除餌タイプのフマキラー「カダン スズメバチ巣ごとキラー」もおすすめです。特殊誘引エサを食べたスズメバチが、マットに塗布された薬剤を体につけて帰巣、エサを与える際に幼虫にも薬剤が付着。成虫はエサに含まれる薬剤でやがて死に、薬剤が付着した幼虫も死に至ります。さらに、エサ場の情報が共有されることで仲間のスズメバチも集まり、連鎖的に駆除することができます。

スズメバチと生態系の関係

危険生物として恐れられるスズメバチには、ハエやアブなどの衛生害虫や、農業害虫であるコガネムシやアオムシ、ウンカ、ヨコバイなど、害虫を大量に捕食するという側面もあります。つまりスズメバチは、多くの虫たちの天敵として農作物に恩恵を与えたり、自然界のバランスを保ったりする重要な役目を果たしているのです。こうした視点をもつことは、生態系について考えるうえで大切といえるかもしれません。

まとめ

スズメバチやミツバチには、巣で共存する仲間のためにエサを集めるという大切な役割があり、その食性にはハチの高度な社会性が大きく関係しているといえるでしょう。

むやみに人を襲うことはないとはいえ、うっかり巣に近づいてしまった場合、刺される危険性があるのでくれぐれも注意しましょう。

「For your LIFE」で紹介する記事は、フマキラー株式会社または執筆業務委託先が信頼に足ると判断した情報源に基づき作成しておりますが、完全性、正確性、または適時性等を保証するものではありません。

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