2020年12月29日 | 虫
【ヌカカとはどんな虫?】スケベ虫とも呼ばれるヌカカの生態・被害・対策方法を解説
人を刺す(吸血する)虫といえば、ほとんどの人が真っ先に蚊を思い浮かべることでしょう。しかし、蚊以外にも人を刺し、刺された箇所が猛烈にかゆくなるやっかいな虫がいるのをご存知でしょうか。
その虫の名は、「ヌカカ」です。糠粒のように小さいことから「糠蚊(ヌカカ)」と名付けられた、蚊と同じハエ目に属する昆虫です。体長1~2mmと網戸を通り抜けるほど小さく、気づかないうちに衣服の中に入り込んでくることから、「スケベ虫」「エッチ虫」などとも呼ばれています。刺されると患部が赤くなり、かゆみや腫れが1週間以上続くこともあります。
存在自体は小さいものの、刺されたときの被害が大きくやっかいなヌカカについて、その生態や特徴、発生しやすい場所や対策などについてご紹介いたします。
注意!ハエの仲間である「ヌカカ」は人を刺す
刺されると、かゆくなる。このような思いをさせられるのは蚊だけでたくさんと思う方も多いことでしょう。ハエの仲間でありながら人を刺す習性をもつヌカカについて、生態や特徴を解説いたします。
ヌカカとは
ヌカカは、ハエ目ヌカカ科に属する体長1~2mm程度の昆虫の総称です。前述したように糖粒と同じように小さいものであることから「糖蚊」と呼ばれる、小さい蚊の仲間です。国内に広く分布し、海や川、沼や田んぼ、森林の渓流など水辺に生息しているため、釣り人やキャンパーなどが被害にあうケースが多くみられます。
生態
種によって発生時期は異なりますが、春から秋にかけて水辺に現われ、家畜や人を吸血します。蚊と同様に、吸血するのは雌だけです。集団でいることが多いため、一度に何ヵ所も刺されることもよくあります。活動時間は朝方と夕方で、特に朝方は活発化します。飛行能力が低いことから、風が強いときは被害にあうリスクも低くなります。
種
国内で確定しているヌカカは現時点で224種類です。山間部から海沿いまで、さまざまな環境に生息する代表的なヌカカは次の通りです。
<種別 生息地>
- 山間部:ヌノメモグリヌカカ、ミヤマヌカカ
- 水田地帯:ホシヌカカ
- 平地(田んぼなどの近く):ブユモドキ
- 海沿い:イソヌカカ、トクナガクロヌカカ
活動時期
種によって若干異なりますが、全体的には春から秋まで活動し、6月の梅雨時期から9月頃にかけてもっとも活動的となります。
<種別 活動時期>
- ホシヌカカ:6月中旬~10月下旬
- ニワトリヌカカ:4~9月
- ミヤマヌカカ:6~10月
生息地
全国各地に分布し、種によって山間部や水田地帯、海沿いなどさまざまな水辺に生息しています。2020年は、特に鳥取県や鹿児島県などで被害が多くみられました。
<種別の生息地>
- ヌノメモグリヌカカ:本州に生息
- ミヤマヌカカ:全国に生息
- ニワトリヌカカ:全国に生息
- トクナガクロヌカカ:本州各地の海岸に生息
ヌカカの発生
成虫は、渓流や海岸、池や田んぼなどさまざまな水辺の石や草などに卵塊を産みつけます。孵化した幼虫はそのまま水辺の泥土中で成長するため、水辺やその付近で発生します。
ヌカカに刺されたときの症状
ヌカカは小さな虫ですが、刺されたときのかゆみや痛みは、蚊とは比べものにならないほど強烈です。刺された箇所が赤く腫れ、水ぶくれになってしまうこともあります。ヌカカに刺されるとどのような症状が起こるのか、症状や被害の特徴についてご説明いたします。
遅れてかゆみ・痛みが発生(遅延反応型)
刺された場合、かゆみや痛みはかなり時間が経ってから現れます。刺されたときに注入されるヌカカの唾液成分が体内の抗体と反応し、ヒスタミンというかゆみ物質が分泌されることで、はじめて症状が現れます。こうした特徴から、刺されたことに気づかず、突然やってくるかゆみや痛み、体に無数についた赤い斑点を見て驚く人もいるようです。
かゆみや痛みが長期間続く
かゆみや痛みは、蚊とは比べものにならないくらい長く続きます。特にかゆみに耐えられずに、つい患部を掻きむしって悪化させてしまうケースも多く、1週間程度から1ヵ月近く症状が続くこともあります。
一度に複数個所を刺す
集団で活動することの多いヌカカは、刺すときも集団で襲う場合があります。このため、一度に何十カ所も刺されてしまうこともあります。
ヌカカに刺されたときの対処法
ヌカカが吸血する際は、血液が固まらないようにする成分を唾液と一緒に注入します。これがかゆみや痛みの原因です。刺されたときは、患部をつねってできるだけこの成分を外に出すと、のちに襲ってくるかゆみや痛みを和らげることができます。ポイズンリムーバーがあると、より効果的でしょう。
ヌカカに刺されたときの対処法についてご紹介いたします。
なるべく掻かない
刺されたところがかゆくなるのは、注入されるヌカカの唾液成分が体内の抗体と反応し、ヒスタミンというかゆみ物質が分泌されるためです。掻いてしまうことでヒスタミンが多く分泌され、かゆみはさらに強くなります。症状が悪化し、治りが遅くなってしまうので、かゆくてもなるべく掻かないようにしましょう。
きれいな水で洗い流す
刺されたら、患部にきれいな水をかけて消毒するとともに、皮膚についたヌカカの唾液成分を洗い流します。こうすることで若干かゆみを和らげることができます。
患部を冷やす
刺されてから時間が経ってすでに腫れが出ている場合は、保冷剤をタオルなどに包んで患部を冷やします。冷やすことでかゆみを和らげ、症状の悪化を抑えることができます。
外用薬を塗る
皮膚についた唾液成分を洗い流し、患部を冷やしたら、外用薬を塗ってしばらく様子をみます。外用薬を塗ったあとも決して掻きむしらないよう、虫刺されパッチなどを貼っておくのもおすすめです。
症状がひどい場合は皮膚科へ
蚊に刺された症状に比べて、かゆみや痛みがひくまでに時間はかかります。1~2ヵ所刺されたくらいであれば要観察となりますが、たくさんの箇所を刺されてかゆみが我慢できないときや、1週間程度経っても症状がよくならない場合は、皮膚科で治療を受けることをおすすめします。
ヌカカの予防対策について
刺されると強烈なかゆみや痛みをともない、その症状がしばらく続くなど、ヌカカは蚊以上にやっかいな存在です。刺されることのないよう、予防対策についてご紹介いたします。
屋外での予防対策
ヌカカが生息しそうな水辺に近づかないことがいちばんですが、山や海などでアウトドアを楽しむ場合は、次の点に注意しましょう。
なるべく肌の露出を抑える
ヌカカから身を守るには、肌の露出を抑えるのが効果的です。できるだけ長袖と長ズボンで過ごすようにしましょう。ヌカカはそれでも、ちょっとした隙間から服の内側に入ってきます。首元にタオルを巻くなどして、できるだけ隙間をつくらないようにしましょう。
水辺では十分注意する
海水浴やキャンプでの川遊びなど、水辺で過ごすときは要注意です。水着になる場合は、特に気を付けて過ごしましょう。ヌカカは池や田んぼなど、さまざまな水辺に生息しています。たとえ住宅地であっても、近くに水辺のある場所ではヌカカの被害にあうおそれがあるため、注意を怠らないようにしましょう。
屋内での予防対策
「家の中なら大丈夫」と安心してはいけません。ヌカカはわずかな隙間から侵入してくるため、油断は禁物です。
網戸からの侵入を防ぐ
網戸にして過ごすことが多くなる暑い時期、ヌカカは網戸の小さな穴をすり抜けて、家の中に侵入してきます。フマキラーの「虫よけバリアスプレー アミ戸窓ガラス 450ml」を、前もってスプレーしておきましょう。速効殺虫成分(フタルスリン)と持続殺虫成分(シフルトリン)の働きで、ヌカカの侵入を防ぎます。
まとめ
全国的に生息しているにもかかわらず、これまでヌカカの存在を知らなかったという方も多いのではないでしょうか。
ヌカカは体こそ小さいものの、かゆみや痛みの被害が大きく、集団で襲ってくることさえある、とてもやっかいな存在です。春から秋のシーズン、特に水辺にお出かけの際は、ヌカカの予防対策を万全にしてお出かけください。