2019年11月25日 | 園芸・ガーデニング
多肉植物の種類や上手な育て方についてご紹介
ぷっくりとしたみずみずしい葉が魅力の多肉植物。その愛らしい姿に魅了される人が増え、近年ではちょっとしたブームを巻き起こしています。
今回は、多肉植物の基礎知識と初心者におすすめの種類を紹介し、一般的な育て方や起こりやすいトラブルについてわかりやすく解説します。この機会に多肉植物の種類や育て方を覚えて、お気に入りの多肉植物と生活してみませんか?
多肉植物の基礎知識
はじめに、多肉植物の原産や特徴などの基礎知識をご紹介します。
そもそも多肉植物とは
多肉植物とは、葉や茎などに水分を蓄える組織を持った植物の総称です。主に南アフリカやケニア、マダガスカル、メキシコ、ペルーなどの乾燥した高原や岩場、海岸などに生息しますが、日本が原産の多肉植物もあります。
多肉植物は原産の気候に合った生育期があり、春から秋の間に生長する「夏型」、秋から冬の間に生長する「冬型」、春および秋に生長する「春秋型」に分けられます。多肉植物の育て方は、原産や型を調べて生育しやすい環境を整えることがポイントです。
多肉植物は乾燥に強いことが大きな特長で、環境が整えばきれいな花も咲かせます。多肉植物の中には、宝石のように透き通ったものや、株の根元が大きくふくらんだもの、小石やウニの殻のような形をしたものなど、珍しいタイプもあります。
サボテンの分類
多肉植物と聞くと、多くの方がサボテンをイメージするかもしれません。サボテンも貯水する組織があるため、広い意味では多肉植物に含まれます。しかし、主な原産は南・北アメリカの乾燥した地域で、トゲがある形状や種類の多さから「多肉植物とサボテン」などと区別されます。
初心者におすすめ!多肉植物の種類
それでは、初心者の方が比較的育てやすい多肉植物の種類を順にご紹介します。
セダム属
ベンケイソウ科のセダムは、暑さや寒さに強く丈夫なため、初心者の方が育てやすい多肉植物です。セダムは和名の「マンネングサ」や「ベンケイソウ」と呼ばれることもあり、主に春秋型に属します。セダムは群生するものや上に伸びるもの、垂れ下がるものなど400を超える種類があり、国産の品種もあります。
カランコエ属
ベンケイソウ科のカランコエは夏型と春秋型があり、約140種類が確認されています。茎に対して2枚の葉が対(つい)に付くことが一般的で、葉にフワフワとした毛が生えているものや粉をふいているもの、カラフルなものや背が高く育つものなど、さまざまな種類が流通しています。カランコエの中には、鉢植え用の花として販売される品種もあります。
エケベリア属
ベンケイソウ科のエケベリアは主に春秋型に属し、花のように重なり合った「ロゼット状」の葉が印象的な多肉植物です。エケベリアはメキシコを中心に180ほどの原種が存在し、園芸用に交配された品種も多く流通しています。エケベリア属の中でも、暑さに弱いものや強いものがあるので育て方を確認しましょう。
アロエ属
ツルボラン科(ユリ科・ススキノキ科に分類されることもある)のアロエも丈夫で育てやすい多肉植物で、夏型に属します。アロエは古くから観賞用として知られ、種類によっては食用にしたり薬効成分を使用したりします。サイズはさまざまでロゼット状の葉を持ち、グリーン一色のものや白い模様が入ったものなど、500ほどの原種があります。
ハオルチア属
ツルボラン科に属するハオルチアは春秋型の多肉植物で、シャープなイメージの硬い葉の種類と、繊細な透明感を楽しむ柔らかい葉の種類に分かれます。どちらも15~20cmくらいの小型でロゼット状に葉が開き、明るい日陰を好みます。「ハオルシア」と呼ばれることもあり、分類は複雑で現在も継続しています。
セネシオ属(キオン属)
キク科のセネシオ属には、ネックレスのようにつるが垂れ下がるものや葉の形がユニークなもの、株元がふくらんだものなど、さまざまな種類があります。セネシオは「セネキオ」と呼ばれることもあり、種類によって生育期が異なります。ほかの多肉植物よりやや水分を好むので、育て方は説明書に従って管理してください。
サボテン
サボテンの種類は非常に多く、よく見かける柱状や球形のほか、うちわに似たものや細長く伸びるものなどがあり、サイズも大小さまざまです。サボテンの特徴であるトゲは葉が進化したもので、本体に付いた露を地面に落として根に吸収させるなどの役割があります。サボテンの生育期は春と秋で、夜に光合成を行う性質から、ほかの植物に比べて成長はゆっくりです。
多肉植物の基本の育て方
それでは、多肉植物の一般的な育て方についてご紹介します。詳しい育て方と管理は、それぞれの多肉植物の説明書に従ってください。
日光が当たる場所で
ほとんどの多肉植物は日光を好むため、屋外では日当たりと風通しがよい場所に置きますが、雨が当たらないように気を付けましょう。室内では日が当たる窓辺に置き、加湿にならないように管理してください。時々鉢の向きを変えて日光に当てると、苗が曲がらず均等に育ちます。
ただし、真夏の直射日光は強すぎるので、屋外では遮光(しゃこう)ネットをかぶせるか明るい日陰に移動し、室内ではレースカーテン越しの場所に置いて対処します。なお、ハオルチアなどの一部の多肉植物は、1年を通して直射日光を避け、明るい日陰に置いてください。
また、多肉植物は寒さが苦手な種類が多いため、地域にもよりますが屋外の鉢は11月頃に室内に取り込みましょう。冬の間も、晴れの日は窓辺に置いて日光浴をさせます。それぞれの多肉植物の耐寒温度を調べ、室内でも最低温度が下回るときは鉢に不織布(ふしょくふ)や新聞紙などを巻いて保護してください。
水やりのポイント
多肉植物は貯水の組織があるため、ほかの植物よりも水やりの頻度が少なめです。それぞれの多肉植物の型を調べ、生育期には土が完全に乾いたタイミングで水を与えてください。竹串(たけぐし)などを鉢の底まで挿し、取り出して土が付かなければ全体が乾いた状態です。休眠する季節は生育を休むので、さらに水やりの間隔を空けましょう。
水は鉢の底穴から出る量を与え、受け皿にたまった水は処分してください。水は葉の上からかけるのではなく、葉の下からゆっくりと与えます。水が葉の根元に残ると雑菌が繁殖して株が傷みやすい上、水分がレンズになって光を集めてしまい、葉がやけどのようになる「葉焼け」を起こすことがあります。水やりは日中に行いますが、夏は朝か夕方にずらしましょう。
肥料は控えめに
多肉植物は砂漠や岩場などの栄養が少ない地域に生息しているので、ほとんど肥料を必要としません。早く大きくしたいときには、生育期に液体肥料または置くタイプの固形肥料を規定量の半分くらいにして与えるか、多肉植物用の肥料を用意して与えてください。
弱った株や休眠期の株に肥料を与えると「肥料やけ」を起こし、根が腐敗して枯れることがあるので注意しましょう。
植え替えのタイミング
多肉植物が生長して鉢の底から根が出てきたり、下の葉が枯れたりしたときには植え替えのサインです。また、茎から「気根(きこん)」と呼ばれる根が出たときも植え替えを行いましょう。一般的には、数年に1回のタイミングでひと回り大きな鉢に植え替えます。
植え替えの時期は生育期の初めか直前がよいため、春秋型は3~5月と9~10月、夏型が4~5月、冬型が9~11月を目安に作業しましょう。一般的な植え替えの手順は、下記を参考にしてください。
- 多肉植物を鉢から丁寧に抜く
- 根に付いた土を軽くほぐす
- 傷んだ根や長すぎる根をカットする
- 種類によっては、根を1~2日ほど乾かす
- 新しい鉢の底にネットを敷き、多肉植物用の土を1cmほど入れる
- 鉢に苗を置いて周りに土を入れ、鉢を軽くたたきながら土をなじませる
- 土に細い棒などを挿し、根に触れないように上下に動かして土のすき間をなくす
- 最終的には、鉢の縁から1~2cmほど下まで土を入れる
- 数日~1週間ほど置いてから水やりをする
仲間の増やし方
多肉植物が生育期に入ったら、次の方法で増やせます。種類によって増やし方が異なるため、説明書などで確認してください。
挿し木(さしき)
「挿し芽(さしめ)」とも呼ばれる方法で、セダムなどの多肉植物に向いています。伸びすぎたり混み合ったりした部分の茎をカットして行います。切り取られた側の部分も、やがて新しい芽が生えてきます。
- 苗の頭を軽く持って、茎をカットする
- 下部の葉を数枚取り除く
- 小さなビンなどに挿し、日陰の風通しがある場所で乾燥させる
- 根が生えてきたら、新しい鉢に植え付ける
- 数日~1週間ほど置いてから水やりをする
葉挿し(はざし)
「挿し穂(さしほ)」とも呼ばれる方法で、エケベリアなどの多肉植物に向いています。取れてしまった葉を使うこともできます。
- 乾燥させた苗から葉を丁寧に取る
- 乾燥した土を平らにして用意する
- 葉が湾曲しているときは、上に反るようにして土に並べる
- 水は与えずに日陰に置く
- 根が生えたら水を与える
- 新しい葉が出て大きくなったら、元の枯れた葉を取って植え付ける
- 数日~1週間ほど置いてから水やりをする
株分け(かぶわけ)
子株ができて密になった多肉植物を分けて植え付ける方法で、ハオルチアなどに向いています。
- 多肉植物を鉢から丁寧に取り出す
- 手で株を分け、傷んだ根や長すぎる根をカットする
- 以下は植え替えの方法と同じ
寄せ植えを楽しもう
多肉植物は、さまざまな種類を寄せ植えにしても楽しめます。初心者の方は寄せ植えの鉢を購入して育て、管理に慣れたら自分で寄せ植えを作ってみましょう。多肉植物を寄せ植えにする際は、生育期が同じ型のもの、日光の好みが同じものを選んでください。なお、サボテンはサボテン同士で植えることをおすすめします。
寄せ植えは、全体のレイアウトを決めて大きなものから順に植え付けます。慣れてきたら多肉植物の種類を増やし、挿し木や植え替えのタイミングで寄せ植えを作りましょう。アレンジは、高さが違う種類を植えて高低差を出したり、垂れる種類を添えて動きを出したりするほか、ガラスの容器を使用したテラリウムなども楽しめます。
寄せ植えについては、「寄せ植えの基本とは?作り方のポイントを紹介!」の記事も参考にしてください。
トラブルの対処法
最後に、多肉植物に起こりやすいトラブルと対処法をご紹介します。
枯れる原因は?
多肉植物が枯れる原因は、ほとんどが水のやりすぎと考えられます。屋外では、梅雨などで長く湿ったり蒸れたりすると枯れる可能性が高まります。反対に、水分がまったくない状態が続いても枯れてしまいます。水分が不足すると葉にシワが出てくるので、気付いたらすぐにたっぷりと水を与えてください。
また、日光が不足したときも株が弱るため、室内では定期的に日が当たる場所に移動させましょう。冬は温度の管理も行い、耐寒気温を下回らない環境で育ててください。
かかりやすい病気
多肉植物は、主に次のような症状が出ることがあります。
- 根腐れ
加湿が原因で根が腐る病気で、株の元気がなくなったり、多肉植物の場合は葉がブヨブヨになったりします。苗を鉢から出して腐った根を取り除き、新しい土に植え付けて乾燥気味に育てましょう。
- うどんこ病
うどんこ病は、葉や茎に白い粉のようなものが付いて全体に広がる病気です。見つけたときはすぐに患部を取り除き、まん延を防いでください。症状がひどい場所は取り除いて薬剤を散布しますが、回復しないときは残念ですが処分をします。
うどんこ病については、「【園芸の大敵!】うどんこ病とは?うどんこ病が発生する原因と対策について」の記事も参考にしてください。
- 黒い点が出る
多肉植物は、加湿や天気が悪い日が続いたときに黒い点が発症することがあります。黒い点が大きくなったり、色が変わったりするときは「黒点病(こくてんびょう)」と呼ばれる「黒星病(くろぼしびょう)」や、「黒斑病(こくはんびょう)」、「すす病」などの疑いがあります。症状に変化が出たときには薬剤を散布し、病状が広がるときには患部を取り除きましょう。
害虫が付いたら
多肉植物にはあまり虫が付きませんが、まれにハダニやアブラムシ、カイガラムシなどの被害に遭うことがあります。葉の裏もよく観察し、ブラシなどで丁寧に取り除いてください。改善しないときには、薬剤を使用して駆除しましょう。
フマキラーの「カダンセーフ」は、食品成分由来の膜が病害虫を包んで退治。害虫は呼吸ができずに窒息死し、病原菌も栄養を得られず死滅します。屋内での使用や、お子様・ペットのいるご家庭でも安心してご使用いただけます。また活力成分の天然アミノ酸とAO(アルギン酸オリゴ糖)を配合していますので、病害虫対策だけでなく植物の生育もサポートする優れものです。
種類が豊富な多肉植物の育て方を覚えよう
今回は、多肉植物の基礎知識と育てやすい種類を紹介し、一般的な育て方とトラブルの対処法についてご紹介しました。多肉植物の育て方は、生育期を把握し、日当たりや風通し、水をやりすぎないことがポイントです。管理に慣れたら仲間を増やし、植え替えや寄せ植えなども挑戦してみてください。
愛らしく静かな存在感が魅力の多肉植物は、日々の生活に新たな楽しみを与えてくれることでしょう。