【堆肥作りにチャレンジ!】自宅でできる堆肥の作り方

【堆肥作りにチャレンジ!】自宅でできる堆肥の作り方

近年では、地球温暖化防止につながるとして、自宅での堆肥作りが注目されています。しかし、手間や置き場所、予算などを考えると、どの作り方がよいか迷うかもしれません。

今回は、堆肥の基礎知識と作り方のポイント、具体的な堆肥の作り方を置き場所別に紹介し、それぞれのメリットやデメリットのほか、トラブルと対処法についても解説します。自分の生活スタイルに合わせて、堆肥作りにチャレンジしてみませんか?

堆肥について

堆肥について

はじめに、ガーデニングに欠かせない堆肥についての知識を深めましょう。

そもそも堆肥とは

「堆肥」とは、植物がよく育つように土を改良して環境を整えるもので、大きく分けると落ち葉や雑草、野菜くずなどを使った植物性と、牛糞(ぎゅうふん)や鶏糞(けいふん)を使った動物性があります。

堆肥は、落ち葉などに含まれる窒素や炭素を微生物が吸収し、熱を発しながら分解して作ります。これが「発酵(はっこう)」と呼ばれる過程で、よい環境で発酵が始まると「糸状菌(しじょうきん)」による白いカビが見えます。コンポストで堆肥を作る方法は時間がかかるので、じっくり取り組むことが大切です。

英語では堆肥を「コンポスト(compost)」、堆肥を作る容器を「コンポスター(composter)」と言いますが、日本では容器をコンポストと呼ぶ傾向にあります。なお、堆肥と肥料は似ていますが、堆肥は土壌を良くするため、肥料は植物をよく育てるために栄養を与えるもので、それぞれ使用目的は違います。

堆肥の使い方

手作りの堆肥は、すべて分解して熟成させてからガーデニングに使用しましょう。未分解の堆肥を使用すると、発酵の際に発生するガスなどの影響で植物に害が出ることがあります。完成した堆肥は土とおよそ3:7の割合で混ぜ、堆肥の仲間である「腐葉土(ふようど)」や肥料を加えて1週間ほど置くと、栄養が豊かな土が仕上がります。

なお、すぐに堆肥を使わないときには、土のう袋や麻の袋に入れて口を閉じ、新聞紙などをかぶせて乾燥を防ぎましょう。保管する場合も、2週間に1回くらいで中をかき混ぜて空気を入れ替えます。1年以上過ぎた堆肥は栄養分が減るので、通常の土として使用してください。

土作りについては、「土作りのポイント – 土の種類と特徴【ガーデニングの基本】」の記事も参考にしてください。

助成金が出る自治体もある

堆肥を作るコンポストやごみ処理機などの購入に対して、助成金が出る自治体もあります。金額は自治体によって異なるので、ホームページなどを確認しましょう。購入時のレシートを保管しておき、必要な書類を用意して申請してください。

【例:東京都練馬区】
家庭用生ごみ処理機・コンポスト化容器の購入費助成(最大2万円)

失敗しない!堆肥の作り方のポイント4つ

失敗しない!堆肥の作り方のポイント4つ

ここでは、植物性の堆肥の作り方のポイントを4点ご紹介します。

① 混ぜる作業と水分量

堆肥を作るときは、定期的に中を混ぜる「撹拌(かくはん)」を行い、新鮮な酸素を入れて微生物の活動を助けましょう。ただし、撹拌をしない作り方もあるので、後の項目を参考に選んでください。

また、発酵には適度な水分も必要なため、中が乾燥したときには少量の水を与えましょう。反対に、湿度が高いときは撹拌して空気を入れ替え、乾いた土を加えて調節します。

② 一度に入れる量と大きさ

微生物の量に対して、投入するものが多すぎたり大きすぎたりすると、うまく発酵が進みません。使用するコンポストの説明に従って、野菜くずなどを切ったり、入れる回数を分けたりして調節しましょう。

③ 発酵を促進させるもの

コンポストで堆肥を作るときは、発酵を助ける「促進剤」を使用します。玄米を精米するときに出る「米ぬか」や、大豆などを絞った残りの「油かす」、もみ殻を炭化させた「もみ殻くん炭(もみがらくんたん)」や、小麦の皮の「ふすま」、ミズゴケなどが蓄積した「ピートモス」などが促進剤に使われます。

また、「カンナくず」や「おがくず」を入れるタイプもあります。そのほか、酸素を必要としない「嫌気性(けんきせい)微生物」や、ミミズの働きを利用するコンポストもあります。

④ 投入できないもの

コンポストには、微生物が分解しにくいものや分解できないものは投入しないようにしましょう。一般的に下記のものは投入できませんが、コンポストの種類によって異なります。

  • 肉や魚の骨
  • 卵の殻
  • カニやエビなどの殻
  • 貝殻
  • タマネギやトウモロコシなどの硬い皮
  • 辛い食品や漬物など
  • 植物や果物のタネ(発芽することがある)
  • つまようじ、紙類、ビニール、プラスチック、アルミホイルなど

堆肥の作り方~キッチンなどの室内

堆肥の作り方~キッチンなどの室内

それでは、初心者の方が気軽に取り組めて、失敗が少ない作り方からご紹介します。

電動の生ごみ処理機

短時間で堆肥が完成し、臭いが少なく撹拌をしない点がメリットです。キッチンのシンクに設置する「ディスポーザー」も、処理後に堆肥として使えるタイプがあります。

用意するもの

  • 電動の生ごみ処理機
  • 野菜くずなどの生ごみ

作り方

  1. 生ごみの水分を切って処理機に入れ、操作する
  2. 容器がいっぱいになるまで1を繰り返す
  3. 取り出して堆肥として使用する

注意点

設備の費用や電気料金がかかる上、音や振動が出る点がデメリットです。なお、処理が乾燥のみで堆肥にならないタイプもあるので、購入時に確認してください。バイオ式の大型の処理機は、屋根がある屋外で使用しましょう。

密閉式のコンポスト

場所を取らない点がメリットで、カラフルなデザインも販売されています。

用意するもの

  • 密閉式コンポスト
  • 野菜くずなどの生ごみ
  • 嫌気性微生物の促進剤
  • 撹拌用のスコップなど

作り方

  1. コンポストの底に促進剤を入れる
  2. 生ごみを入れ、促進剤をふりかける
  3. スコップなどで全体を混ぜる
  4. 中ぶたがあるタイプは載せ、コンポストのふたをしっかり閉める
  5. 定期的にコックを開いて発酵液を抜き、液体肥料などとして使う
  6. 容器の8分目になるまで2~5を繰り返す
  7. 1次発酵として15日ほど置く
  8. 取り出して土と混ぜ合わせ、新聞紙などをかぶせて2次発酵を行う

注意点

1次発酵の間はふたを開けられないので、コンポストを2つ用意して交互に使う方法がおすすめです。2次発酵の期間は、季節にもよりますが10日~1カ月ほどです。チャック付きのビニール袋で代用するときは、野菜くずなどをこまかく刻んで嫌気性の促進剤とともに入れ、空気を抜いて密閉したら1週間を目安に取り出してください。その後は同様に土と混ぜて、2次発酵を行います。

堆肥の作り方~庭やベランダなど

堆肥の作り方~庭やベランダなど

続いて、庭などの一角でできる堆肥の作り方をご紹介します。

段ボールコンポスト

コストがかからない作り方として人気が高く、手軽なキットも販売されています。堆肥作りの基になる「基材」の組み合わせは多彩なので、各自治体のホームページなどで紹介されている配合を参考にしてください。

用意するもの

  • 段ボール2箱
  • ガムテープ
  • すのこや網などの台
  • 野菜くずなどの生ごみ
  • 基材になる促進剤
  • スコップなど
  • 虫除けのカバー(ネットや布など)

作り方

  1. 2つの段ボールを組み立ててガムテープで底を留め、二重にする
  2. 雨が当たらない場所で、すのこなどの台の上に設置する
  3. 基材と少量の水を入れて混ぜる
  4. 生ごみを入れるたびに、基材と混ぜ合わせる
  5. ふたをして虫除けのカバーをかぶせる
  6. いっぱいになるまで4~5を繰り返す
  7. 1~2カ月ほど熟成させ、その間は2週間に1回くらいのペースでかき混ぜる

注意点

こまめな撹拌が必要で、虫や臭いが発生しやすい点がデメリットです。段ボールは耐久性がないので丁寧に扱い、すき間や破れはガムテープでふさぎましょう。容器はプラスチック製のカゴなどで代用できますが、通気性がよい不織布(ふしょくふ)や麻袋などを中に敷くか、外側をおおってから基材を入れ、虫の侵入を防いでください。

不織布のコンポスト

通気性がよい不織布のコンポストは、毎日の撹拌をしない点がメリットで、少量であれば雑草や落ち葉も投入できます。

用意するもの

  • 不織布のコンポスト(袋とカバー)
  • 専用の促進剤
  • 野菜くずなどの生ごみ

作り方

  1. 不織布の袋の底に1cmほどの土を入れ、決められた量の促進剤を加える
  2. ごみなどを入れ、促進剤をふりかける
  3. 袋の口を閉じ、カバーのファスナーもしっかりと閉める
  4. 容量が8割くらいになるまで、2~3を繰り返す
  5. 中身が隠れる量の促進剤と、土を1cmほど入れる
  6. カバーから袋を出して少量の水を加え、口をしっかりと閉じて熟成させる
  7. 期間が過ぎたら中身を出し、土と混ぜて10日ほど置いてから使う

注意点

管理の状態によっては虫が入りやすく、臭いが出ることもあります。不織布の袋は破れやすいので、取り扱いに気を付けてください。熟成の期間は、夏場は2週間ほど、冬場は20日ほどです。

土に置くコンポスト

たくさんの堆肥を作れる点がメリットで、近年ではおしゃれな陶器製も販売されています。

用意するもの

  • 土に置くコンポスト
  • 小石やレンガなど
  • 虫除けのネット
  • 腐葉土や土
  • 発酵用の促進剤
  • 落ち葉や雑草、野菜くずなどの生ごみ
  • スコップなど

作り方

  1. コンポストの底の直径に合わせ、10~20cmほどの深さで土を掘る
  2. 小石やレンガを置き、虫除けのネットを設置する
  3. コンポストを置き、上から腐葉土や土を入れる
  4. 落ち葉や生ごみなどを入れる度に撹拌する
  5. ときどき促進剤や土などを加えて混ぜる
  6. 8分目くらいになるまで4~5を繰り返す
  7. 夏場は1カ月ほど、冬場は数カ月ほど置いて熟成させる

注意点

投入の度に撹拌が必要で、虫やネズミなどが入りやすい点がデメリットです。コンポストの中で熟成させる場合は、2つの容器を交互に使うと効率的です。土に混ぜて熟成させるときは、早ければ1カ月、長いときは半年ほどかかります。

回転式のコンポスト

容器ごと回転させ、中を撹拌するタイプのコンポストもあります。

用意するもの

  • 回転式のコンポスト
  • ドライバーなどの工具
  • 専用の促進剤
  • 野菜くずなどの生ごみ

作り方

  1. コンポストを組み立てる
  2. 説明書に従い、促進剤と生ごみなどを投入して回転させる
  3. 指定された重さになったら中身を取り出し、土と混ぜる
  4. 3カ月~半年ほど熟成させる

注意点

組み立て式でサイズが大きい上に、容量が増えたときは回転時に力が必要です。また、雨が入ると腐敗しやすいため、置き場所を選びましょう。固定した容器に付いたハンドルを回し、中だけを撹拌するタイプもあります。

ミミズコンポスト

「シマミミズ」が生ごみを食べて分解するシステムで、容器とミミズがセットで販売されています。ミミズコンポストは、紙類や掃除機のホコリ、髪の毛ごみなども処理できます。

用意するもの

  • ミミズコンポストのセット(ケースやココナッツ繊維など)
  • 新聞紙
  • 野菜くずなどの生ごみ
  • 石灰

一般的な作り方

  1. コンポストの1段目に新聞紙を敷き、ミミズと土を入れる
  2. 2段目にココナッツ繊維をセットして軽く水をかける
  3. 2段目に生ごみなどを入れ、かき混ぜる
  4. 「水をかける」「下段のコックから液体肥料を抽出する」「石灰で中和する」の作業を週に1回程度行う
  5. 3~4を繰り返す
  6. 2段目がいっぱいになったら、3段目にココナッツ繊維と生ごみを入れて同様に管理する
  7. 1段目を外し、堆肥を取り出して使用する
  8. 外した1段目は、次回の3段目として使う

注意点

気温が30度以上のときは毎日水をかけ、冬は段ボールなどで保温してください。生ごみを入れ過ぎると、虫が発生することがあります。1日500gの生ごみを入れた場合、半年ほどで堆肥ができます。

堆肥の作り方~畑などの広い場所

堆肥の作り方~畑などの広い場所

自然の力を利用した作り方で、広い畑や庭などで行います。

穴に埋める方法

手軽で簡単な作り方ですが、ある程度の広い場所が必要です。撹拌するときに、促進剤をふりかけても構いません。

用意するもの

  • スコップやシャベル
  • 落葉や雑草、野菜くずなどの生ごみ
  • 雨除けのシート

作り方

  1. 地面に投入用の穴を掘る
  2. 落ち葉や雑草、生ごみを入れて土と混ぜ、さらに土をかぶせる
  3. 雨除けのシートをかぶせて端を石などで押さえる
  4. 1~2カ月に1回撹拌する
  5. 4を半年~1年くらい繰り返す

注意点

新たに落ち葉や生ごみが出たときは、別に穴を掘ってください。穴に埋める方法は、虫や臭いが発生することがあるため、近隣に迷惑がかからないようにしましょう。落ち葉や雑草の割合が多いときは、生ごみと分けて埋めてください。プランターで代用するときは、数日に1回のタイミングで中身を出し、撹拌してプランターに戻す作業を繰り返します。

山積みにする方法

大量の落ち葉を使う作り方で、一般的には11月頃にスタートします。落ち葉の種類によってはうまく発酵しないことがあるので、初めて作るときは経験者の方にアドバイスを受けながら作業すると良いでしょう。

用意するもの

  • 大量の落ち葉(油分が少ないケヤキやクヌギ、ナラなど)
  • 堆肥用の木枠
  • 米ぬかや油かすなどの促進剤
  • 雨除けのシート
  • クワやレーキなど

作り方

  1. 風通しがよく、日が当たる場所に木枠を設置する
  2. 落ち葉を入れて水をかけ、踏み固める
  3. 促進剤をふりかけ、土を敷きつめる
  4. 2~3を繰り返して5段くらいにする
  5. 最後に水をかけ、雨除けのシートをかぶせて端を石などで押さえる
  6. およそ60日後に全体をクワなどでかき混ぜ、乾燥時は水をかけ、加湿時は乾いた土を加える
  7. その後は20日~1カ月に1回混ぜる
  8. およそ200日後に、全体がボロボロになっていたら完成

注意点

いったん落ち葉を入れたら、熟成するまで追加をしません。定期的に集まる落ち葉で作るときは、新たに木枠を用意しましょう。葉の形が残ったときは、腐葉土として使用できます。木枠を作らずに作るときは、月に1回のペースで撹拌してください。

堆肥の作り方~トラブル対処法

堆肥の作り方~トラブル対処法

最後に、堆肥を作る際のトラブルと対処法について説明します。

虫が発生したら

中に虫が繁殖したときは、石灰や土をふりかけると活動が弱まります。予防策として、虫除けのネットなどを使用し、投入や撹拌後はすぐに閉めることを心がけてください。また、投入前の生ごみも、ふた付きの容器に入れたりカバーをかけたりして保管し、虫の発生を防ぎましょう。

カビの対処方法

白いカビは発酵によるものですが、黒や青のカビは中の状態が悪いときに発生します。黒や青のカビが少量の場合は、石灰や土などをかけて撹拌すると収まることもあります。悪臭がするときはカビの部分を土に埋めるか、ゴミに出して処分してください。

臭いが気になるとき

コンポストの臭いの対策は、茶殻やコーヒーのかす、もみ殻くん炭、重曹などを投入してください。市販の消臭剤は、コンポストの説明書を確認してから使用しましょう。生肉などの腐敗しやすいものを入れないことも大切です。

熟成の確認と未分解のもの

全体に色が黒くなり、こまかく分解されていれば熟成しています。また、水を入れた容器に少量の堆肥を落とし、沈めば熟成した状態です。なお、未分解の部分はコンポストに戻すか、使っていない花だんやプランターの土などに混ぜて分解させましょう。

堆肥の作り方を覚えてエコ活動を始めよう

堆肥の作り方を覚えてエコ活動を始めよう

今回は、堆肥の基礎知識と作る際のポイント、具体的な作り方とトラブルの対処法をご紹介しました。堆肥作りは住む環境に合わせた方法を選び、ゆっくり見守りながら取り組んでください。特にガーデニングをする方は、自分で育てた野菜や花などを堆肥として使うサイクルに、喜びと感動を覚えることでしょう。

この機会に、自然の力を借りるエコ活動をスタートしてみませんか?

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