ケムシが発生する原因とは?ケムシの予防と駆除について
ガーデニングや家庭菜園などをしていると、いろんな虫の被害にあいますが、ケムシもそのひとつ。人に襲い掛かってくる恐れなどはないため、存在がわかっていればそれほど脅威ではありませんが、裏返した葉っぱについていたり突然目にするとちょっと驚きますよね。
植物への被害もさることながら、うっかりケムシに触れてしまうと痛みやかゆみを引き起こすことがあるので十分な注意が必要です。
また、ケムシに似た虫にアオムシやイモムシなどがいますが、それぞれの違いや、そのケムシの成長した姿について、知らない人も多いのではないでしょうか。そこで今回はケムシについていろいろと解説していきます。
ケムシの生態と特徴
そもそもケムシは「毛虫」という字のごとく、体に毛やトゲが生えている虫の俗称で、ほとんどが蛾(が)の幼虫です。蛾や蝶の幼虫で毛やトゲが生えていない虫は「イモムシ」と呼ばれ、そのなかでも体の色が緑や黄緑色をしているものが「アオムシ」と呼ばれています。続いて、ケムシの生態や特徴について見ていきましょう。
ケムシの種類
北海道から九州・沖縄まで実にさまざまな姿をしたケムシがいます。ちなみに国内で確認されている蝶や蛾の蝶目昆虫は日本で約5,000種。ここでは、ケムシの代表的な種類を紹介します。
毒のあるケムシ
ケムシには毒を持っているものと、持っていないものがいます。毒のあるケムシの代表格といえば、「ドクガ」や「チャドクガ」などがおなじみです。毒針毛(どくしんもう)という毒のある毛に触れると、強烈なかゆみを伴うため、十分な注意が必要です。
ドクガ
見た目 | 黒と鮮やかなオレンジの配色。長い毛と短い毛が生えている。 |
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体長 | 約40mm |
成虫 | ドクガ(蛾) |
分布 | 北海道、本州、四国、九州 |
発生時期 | 幼虫:4~6月 成虫:6〜8月 |
発生場所 | サクラ、ウメ、モモ、バラ、ツツジ、フジなど |
毒 | 長い毛ではなく、毒針毛(どくしんもう)という微細な毛に毒を持つ。 |
毒による症状 | 毒針毛が皮膚に触れると、赤く腫れあがりかぶれて、ピリピリしたかゆみを伴う皮膚炎を引き起こす。強烈なかゆみが2~3週間続く。 |
チャドクガ
見た目 | 淡いオレンジに黒い模様。毛は全体的に白く、長い毛と短い毛が生えている。 |
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体長 | 約25mm |
成虫 | チャドクガ(蛾) |
分布 | 本州、四国、九州 |
発生時期 | 幼虫:4~6月、8~9月頃/成虫:6〜7月、9〜10月頃 |
発生場所 | チャノキ、ツバキ、サザンカなど |
毒 | 長い毛ではなく、毒針毛(どくしんもう)という微細な毛に毒を持つ。 |
毒による症状 | ドクガに比べると毒性は弱いものの、毒針毛が皮膚に触れると、赤く腫れあがり激しい痛みをともなう。一度刺されると体内に抗体ができ、二度目はさらに痛みが増すことに。 |
注意点 | 死骸や脱皮した皮、抜け落ちた毒針毛に触れても皮膚炎を起こす。成虫や蛹に毒針毛は生えていないが成虫は尾毛に、蛹は繭に付着している。衣服に付いた毒針毛に触れただけでも症状が出るので注意が必要。 |
毒のないケムシ
毒を持たないケムシの代表格と言えば、「アメリカシロヒトリ」や、成虫は蝶になる「ツマグロヒョウモン」などが挙げられます。ただし、どちらも植物を食害するやっかいな面も持っています。
アメリカシロヒトリ
見た目 | 全体的に白く長い毛で覆われ、背面に黒い点が2列に並んでいる。 |
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体長 | 約30mm |
分布 | 北アメリカを原産地とする外来種で、本州、四国、九州に分布 |
発生時期 | 幼虫:5~7月、8〜9月/成虫:5〜8月 |
発生場所 | サクラ、ヤナギ、カキ、コナラ、リンゴなど |
毒 | なし |
症状 | 刺された場合、若干アレルギー反応を示す人がいる程度で、人体への影響は極めて少ない。 |
注意点 | 食害によりサクラなどが衰退。糞で樹木周辺が汚くなる。 |
ツマグロヒョウモン
見た目 | 黒い体の中央に一本通った大きく鮮やかなオレンジの線と、毛ではなく鋭いトゲが特徴的。 |
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体長 | 約30mm |
成虫 | ツマグロヒョウモン(蝶) |
分布 | 本州南西部、四国、九州、南西諸島に分布 |
発生時期 | 4〜11月 |
発生場所 | 野生のスミレ類、園芸種のパンジー、ビオラなど |
毒 | なし |
症状 | 刺さない |
注意点 | 上記植物を食害する。 |
ケムシが発生する原因と被害
ケムシが大量発生!こんなニュースをご覧になった人も多いのではないでしょうか。ケムシが大量発生する原因は、ケムシの生態に大きく関係しています。ケムシの天敵は主に鳥やスズメバチ。ケムシは動きが遅いため、見つかってしまうと天敵から逃れるすべはありません。
そこで子孫を残すために、葉の裏側など見つかりにくい場所に、大量の卵を産む習性があります。そのため運よく天敵に見つからなかったり、なんらかの理由で天敵自体があまり発生しない場合、ケムシが大量発生します。
ケムシは種類によってさまざまな植物に発生し、その植物の葉や花などを食害します。大量発生したときは、葉脈を残して葉を食べ尽くしてしまうこともあり、被害は深刻です。
ケムシの予防対策
種類によっても発生時期は若干異なるものの、全体的に見ると4月~11月頃に発生します。蝶や蛾など成虫に比べ、「ケムシは苦手…」という人は多いのではないでしょうか。ここでは、ケムシを発生させない予防策を紹介します。
ケムシになる前に駆除
ケムシが苦手な人は、幼虫になる前、つまり卵の状態で駆除するのが良いです。成虫が産卵し孵化するタイミングは、だいたい4~5月と8~9月の年2回。成虫は葉の裏側に大量に卵を産みつけるので、葉の裏側をこまめにチェックして卵を見つけたら、その葉を取り除いていけばOKです。表面から見て葉にかじられた跡があれば、その付近に卵がある可能性が高いと言えます。
ただし、葉には毒のあるケムシがいることがありますので、卵がついた葉を取り除く際は、軍手などして作業することをおすすめします。
木酢液か竹酢液をスプレー
卵をすべて取り除くのはなかなか根気のいる作業ですし、卵がついているのに見落としているケースもあるでしょう。そこで、殺虫剤を散布する方法もありますが、植物への影響から抵抗を感じる人には、木酢液か竹酢液を薄めて植物にスプレーするのがおすすめです。使用頻度の目安は週1回。ただし、雨が降った後は液が流れてしまっているので、忘れずにもう一度スプレーしましょう。
樹木や植物の枝を剪定
樹木や植物の枝や葉が込み合っていると、天敵の鳥やスズメバチにとっては、ケムシの卵や幼虫を発見しにくい状況と言えます。そこで、枝や葉を適度に剪定し、植物を風通しのよい状態にしてあげることで、卵やケムシを見つけやすくなり、天敵が木や植物の中まで入りやすいというメリットが生まれます。
ケムシの駆除
続いては、卵の段階で対処できずにケムシが発生してしまったときの駆除法を紹介します。孵化して間もない幼齢の幼虫であれば、まだ群れでいることが多いため駆除も比較的簡単に行えます。ここでは、毒針毛を持つドクガ類を駆除する方法を紹介します。
駆除する際の準備
毒針毛を持つドクガ類は、体から抜け落ちた毒針毛に触れただけでも強烈なかゆみを引き起こす恐れがあるので、駆除する際は最新の注意を心掛けましょう。服装は長袖・長ズボン、手袋、帽子、メガネ、マスクなどをして、できるだけ肌を露出をおさえて作業するようにしましょう。
葉っぱごと駆除
孵化して間もない幼齢の幼虫は、まだ葉の裏に群れでいることがあります。こうした葉を見つけたら、振動を与えないように慎重に切り取り、新聞紙などに包んでからビニール袋に入れて処分しましょう。葉を取り除く際、振動を与えてしまうと、毒針毛が飛び散ってしまう恐れがあるため注意しましょう。
一匹ずつ駆除
ケムシを単体で見つけたら、割りばしやピンセットなどで慎重に捕まえます。捕まえたケムシは新聞紙などに包んでからビニール袋に入れて処分しましょう。
殺虫剤を使用する
できるだけケムシに近づきたくないという人には殺虫剤がおすすめです。植物にやさしい水性タイプや、化学殺虫剤不使用の環境にやさしいタイプなど、さまざまな殺虫剤があります。
フマキラー ケムシカダンHS 1000ml(花木用ハンドスプレー)
ケムシカダンHS 1000ml(花木用ハンドスプレー) は、植物にやさしい水性・冷害のないタイプで、庭木のケムシをラクラク駆除。パワフルなジェット噴霧で最大5m(※)の高さまで薬剤が到達するため、高所のケムシも脚立を使わなくてOK。またケムシだけでなく、アブラムシやハダニなどにも効果があります。
※無風時。気象条件によって異なります。
フマキラー カダン ケムシジェット
ケムシ対策の新提案!「食べられる前にスプレー」のカダン ケムシジェットは、持続殺虫成分〈クロラントラニリプロール〉配合で、あらかじめスプレーしておくことで4ヵ月の予防効果を発揮します。もちろん直接噴霧することでケムシを速効殺虫。食毒効果もあるため、葉裏に隠れたケムシもしっかり退治することができます。
駆除する際は慎重に、処分は厳重に
ケムシの毒針毛は、体から抜け落ちた毛に触れただけでかゆみなどの症状が出るため、駆除する際は毛がまき散らないように慎重に作業しましょう。また、死骸になっても毒針毛が残っていると、それに触れただけで被害にあうことがあるため、処分する際は厳重に処分するよう心掛けてください。
まとめ
「チャドクガやドクガに気を付けて!」実際に刺された経験のある人は口をそろえてこう言います。また、毒のないケムシでも、樹木や植物が食害を受けたり、何より大量発生すると見た目にも不快なため、予防と駆除でケムシの被害から身や植物を守りましょう。