考えが伝わる「要約力」を身に付ける方法

考えが伝わる「要約力」を身に付ける方法

大切なプレゼンテーションの場や、上司に仕事の進捗状況を報告する場面で、必要のない情報をダラダラとしゃべってしまう人。友達と話をしていても、「で、何が言いたいの?」とよく言われてしまう人、あなたのまわりにもいるのではないでしょうか。

話すことは嫌いではないし、むしろ自分はおしゃべりだと自覚している人のなかにもこうしたケースは多々目立つので、話が好きな人と、話が上手な人はイコールではないと言えます。

要約とは、「文章や話の要点を短くまとめること」ですが、会社や学校など、人とコミュニケーションをとる上で、このスキルがとても重要視されています。そこで今回は、一見コミュニケーション力とは直接関係がなさそうにも思える要約力について解説していきます。

自分勝手で話が長い、相手の話をとっさに理解できない

自分勝手で話が長い、相手の話をとっさに理解できない

話を伝えるということは、話を伝える相手がいるということです。だから、自分ばかりがどんどん話してしまったり、相手にとって必要のない情報をダラダラ話してしまっては、聞く側としては少々うんざりしてしまいます。

また、聞く立場としても要約力は重要です。打ち合わせで、商品説明や事業提案など相手が話す内容に対し、話の要点をすばやく見抜かないことには、お客様との会話に後れをとってしまいます。

「つまり~」と確認で聞き返すレベルなら問題ないでしょうが、要点がつかめず、何度も聞き返してしまっては、さすがに相手もあきれてしまうことでしょう。プレゼンや打ち合わせ、上司への報告、普段の何気ない会話でさえ、相手がいることを忘れてはいけません。

「それで?」「要するに何なの?」こんな場面で言葉に窮してしまう

お客様との打ち合わせ。手元の資料に沿って順調に説明できた、とホッとしたのもつかの間、お客様から「それで、この商品の最大の特長は?」や「この商品の良さをひとことで言うと?」などの質問に、思わず言葉に窮してしまった…こんな経験をお持ちの人もいるのではないでしょうか。

当然、資料や企画書のなかには商品の良さがズラリと書かれていますが、これは、商品の良さをたくさん書くだけで満足してしまった人の、典型的なダメパターンです。こうしたお客様からの質問にも、さらりと受け答えでき、商品の良さを後押しするひとことが言えれば、商談成立の可能性もグッと高くなります。

ひとことで説明できる人は、物事の本質を理解している人

前述のように何か物事についてひとことで説明できるということは、その物事の本質(前述では商品の良さ)を理解しているということです。先の資料や企画書の場合、お客様から聞かれる前に、事前準備として「要するに?」と自問し、あらかじめ自分が納得した答えを用意しておきましょう。

相手が何を知りたいか、相手を思いやる気持ちが大事

対外的なプレゼンや上司への報告などビジネスの場では、「時間」はとても貴重です。その限られた時間のなかで、相手が必要とする情報をどれだけ端的に正確に伝えることができるか、これはビジネスの場においてとても重要なスキルです。

特にお客様へのプレゼンや打ち合わせは、貴重な時間をいただくわけですから、周到な準備で臨みたいもの。相手が何を知りたいか、こう言ったら相手はどう思うかなど、つねに相手のことを考えることこそコミュニケーションの第一歩です。自分の話が相手に伝わってないなと感じたら、あなたも要約力を身に付けましょう。続いて、要約力が身に付く練習法を紹介いたします。

要約力を身に付けるトレーニングとは?

要約力を身に付けるトレーニングとは?

自分が話そうとする情報や相手が話すいろいろな情報のなかから、要点を抜き出す要約力は、パソコンなどでいうところの「処理速度」のようなもの。要約力のある人は、話を端的にまとめて話せたり、聞いた話をすばやく理解できたりと、端から見るととても知的でスマートな印象を持たれます。上司からの信頼も厚く、同僚からも一目置かれる、そんな存在を目指して、ここでは要約力を身に付けるトレーニング法を紹介します。

要約とは、文章や話の要点を短くまとめること

具体的な練習法の前に、もう一度「要約」についておさらいしておきましょう。要約とは、文章や話の要点を短くまとめることですから、余分な情報を削ぎ落して話をできるだけ簡潔にまとめるスキルが求められます。となるとまずは、必要な情報と要らない情報の見極めや、言葉の優先順位のつけ方が重要なポイントです。

要約力を身に付けるため、まずは「読解力」を養う

数ある情報のなかから必要な情報だけを抜き取るためには、まずは文章を読み解く「読解力」が必要です。読解力を身に付けるには、新聞や書籍など日頃から文章に慣れ親しんでおく、というのがいちばんです。ただ単純に読むだけでは、読んだそばから忘れていってしまうもの。そこで、読んだ箇所をしっかり頭にインプットするために、次のことを意識して読むようにしましょう。

  • 何について話しているか?話の「話題」について考える
  • その話は何をメッセージしたいのか?「結論」について考える

5W1Hを意識して読む

5W1Hを意識して読む

誰かに物事を説明するとき、学生時代に英語の授業で習った5W1Hが役に立ちます。

5W1H は、When(いつ)、Who(誰が)、Where(どこで)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)の頭文字をとったもの。新聞の記事のスタイルがこの5W1Hにのっとって書かれていることが多いため、5W1Hを意識しながら新聞をよく読むことで、要約のポイントを養うことができます。

話の主語と述語を読み取る

ニュース番組や新聞の紙面などには難しい言葉もたくさん出てきますが、どんな情報や文章にも主語(誰が、何が)と述語(どうする、どうした、など)が存在します。たとえば次のような文章の場合の主語と述語を見てみます。

今日、僕は田舎で二人暮らしをする祖父母に、弟と一緒に描いた絵手紙を送った。

この場合、必要な情報を抜き出して行くと、まず主語となる「僕」と、述語の「祖父母に絵手紙を送った」が最低限必要な情報となるため、「僕は祖父母に絵手紙を送った」と要約できます。

このようにして、どんなに長い文章もまずは、「誰が●●した」という、主語と述語の関係をおさえると全体の文章の流れを理解しやすくなります。

日本語と英語の文章構造の違い

日本語と英語の文章構造の違い

主語と述語の関係について、よく例として引用されるのが、日本語と英語の文章構造の違いです。

I bought English text yesterday.

「私は昨日英語のテキストを買った」という意味の文章ですが、英語の文章構造はS+V+O+C、つまり主語(S)+動詞(V)+目的語(O)+補語(C)となります。

前述の「誰が(は)●●した」にあてはめると、「私は買った」という、主語と述語を早い段階で理解できますが、日本語の場合、「私は昨日英語のテキストを~」とこの段階になってもまだ、英語のテキストを(友達に)借りたのか、英語のテキストを紛失したのか、述語が確定していません。

このように、文章を最後まで聞かないと述語(動詞)がわからない言語で育った日本人にとっては、もともと要約する習慣が備わっていないのも無理のないことなのかもしれませんね。

新聞の「社説」を短くまとめる

具体的な練習法としては、新聞の社説を読み、100文字程度にまとめるというのがあります。社説はひとつの題材を取り上げているため、上記の「話題」や「結論」を導くトレーニングに最適です。

また、その他の記事についても、つねに5W1Hを意識しながら読み、端的にまとめることで、情報の全体像を正確に把握できるようになります。

新聞の「リード文」を隠して、本文を要約する

次も新聞の記事を使ったトレーニングです。新聞の記事にはリード文といって、長い記事の内容を要約した文章が書かれているものがあります。こうした記事を使い、リード文を隠したまま、本文を要約します。要約したあとでリード文を見れば、自分が要約した内容との答え合わせにもなるのでとても便利です。

文章に見出しをつけてみる

新聞やネットニュースなどの記事には「見出し」がついています。この見出しによって、本文を読む前からなんとなく話の内容を理解できているのではないでしょうか。また、ネットニュースなどの場合、この見出しによって記事に興味が持てるか判断されていることが多いようです。

広告で言うところのキャッチコピーは、まさに一瞬のうちに「その広告を見たい」と喚起させるもので、相手に「話を聞きたい」と思わせる効果に通じるところがあります。そこで、新聞などの記事(本文)を使って、その情報をひとことで表す見出しを作ってみましょう。

元となる本文にはいろんな情報が入っていると思いますが、その情報を、誰が(何が)何をした(どうした)のレベルまで削ぎ落していき、必要最低限の情報に絞り込むのがポイントです。

主観や形容詞を使わない

上司への報告などでは、まずは基本的に正確に事実を述べることが重要です。その際、「私はこう思った」などの主観や、「すごい」「たくさん」「美しい」などの形容詞は使わないようにします。主観や形容詞は人によって感じ方、解釈の仕方が違うため、誰かに説明する際に用いるには適していません。

特に最近、若者がよく使う「ヤバイ」という表現は、「カッコイイ」や「おいしい」などさまざまな表現を指すため、情報を正確に伝える上では不向きです。上司への報告などの際は、正確な情報として事実を端的に述べたあとで、それに対して「私はこう考える」といった具合に、主観を述べるようにしましょう。

要約力は仕事でもプライベートでも役立つ!

ビジネスに必要なスキルというと、段取りや自己管理、コミュニケーションといった能力が取り上げられがちですが、ここまでの内容からも「要約力」がどれだけ仕事面において、優れた能力であるかお分かりいただけたかと思います。

文中で要約力のさまざまな魅力について紹介してきましたが、要約力が身に付くと、上司への報告やお客様への説明がスムーズになり、上司やお客様からの信頼もアップ。同僚や仲間からも一目置かれる存在になります。要するに、仕事でもプライベートでもいい成果が期待できる。アナタもぜひ要約力を身に付けて、今よりもっと活躍のステージを広げてみてはいかがでしょうか。

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