2018年6月25日 | 園芸・ガーデニング
鉢の選び方のポイントとは?種類や大きさなど【ガーデニングの基本】
ガーデニングにはシャベル、ジョウロ、園芸グローブなどさまざまな道具が必要になってきます。そして植物の順調な成長に欠かすことができないものの一つに鉢(はち)があります。育てたい植物や草花によって適切な鉢というのは異なります。
仮に育てる植物に合っていない鉢を使ってしまった場合には根腐れや根詰まりの原因になることも。そこで今回は植物がイキイキと成長するために欠かすことができない、鉢の選び方に関するお役立ち情報を解説します。
鉢選びのコツ・ポイント①~素材の種類~
ガーデニングで使用する鉢選びは素材や大きさなどさまざまな角度から見るのがコツです。ここでは鉢を選ぶ際に知っておくと便利なポイントをまとめましたので解説します。まずは鉢に使われている主な素材を見てみましょう。
プラスチック鉢
プラスチック鉢は安価で非常に軽いという特徴があることから、市場に最も多く出回っています。また価格の安さだけではなく色、形、デザインも豊富なところがプラスチック鉢のメリットです。
一方、デメリットとしては通気性が悪いという点があります。したがって水を与えすぎると根腐れの原因にもなるので注意が必要です。
プラスチック鉢は熱伝導率が高い(熱しやすく冷めやすい)という特徴も持っていることから夏は土中温度が高温に、冬は土が凍りやすくなります。この影響で根にも大きなダメージを与えてしまうため、プラスチック鉢を使う際は鉢カバーなどのアイテムを用いるとよいでしょう。
テラコッタ鉢・素焼き鉢
テラコッタ鉢と素焼き鉢はよくセットで紹介されることが多い鉢です。この二つの鉢には「高温で土を焼いている」という共通点があります。テラコッタ鉢はイタリア語の「Terra (土) 」「Cotta (焼いた) 」の二つが語源となっています。
素焼き鉢と意味合いは同じですが、ガーデニング業界では海外から輸入したもの、赤い色合いのもの、デザイン性があるものをテラコッタ鉢と呼ぶのが一般的です。素焼き鉢は釉薬(水や液体の浸透を防ぎ、ツヤ、光沢を生み出す薬)を使わずに、700℃~800℃の温度で焼いた粘土を原料としたものです。
テラコッタ鉢、素焼き鉢の特徴は通気性、吸水性、排水性に優れている点です。これは鉢に無数の小さい穴が開いているためです。したがって土の乾燥が早く、根腐れしにくいというメリットがあります。
また鉢の壁面からも水分が蒸発し、熱を奪うことから土の温度の上昇を抑えることもできます。このような理由からテラコッタ鉢や素焼き鉢は、多湿に弱い植物(胡蝶蘭などの洋ラン類や高山植物)の生育には適していると言えるでしょう。
テラコッタ鉢、素焼き鉢の主なデメリットとしてはプラスチック鉢と比べると重いことです。また強度も弱いため、ちょっとした振動や落下などでも割れたりすることがあります。鉢自体に無数の穴が開いているので、菌の侵入を許しやすいのも注意点です。
木製鉢
自然のぬくもり、ナチュラルな質感が人気の木製鉢。その名のとおり、木材を使った鉢となります。木製鉢の特徴としては通気性や排水性に優れている点です。また自然素材で作られているので、環境にも優しいのが魅力的です。
ナチュラルな印象を与えることもできるので、インテリアにも溶け込みやすいのがメリットの一つです。ただし注意点としては木製鉢は植物同様生きている素材を使っているので、腐食や劣化は避けることができないことです。
特に防腐処理なしの木製鉢の取扱いには、十分な配慮が必要となるでしょう。「防腐処理加工済」と表示されている木製鉢も、定期的な手入れが必要となります。具体的な手入れ方法としては、防腐剤を塗る、雨ざらしの場所に置かないなどが挙げられます。
木製鉢は他の鉢と比べるとどうしても目に見える劣化が現れやすいことから、土をそのまま入れるのではなく鉢カバーとして利用するのもおすすめです。
ちなみに一口に木製鉢といっても使われている材質はレッドシダー、チーク材といった耐久性が高いものから、一般的な鉢で使用されることが多い杉材までさまざまです。そのため、木製鉢の劣化をできるだけ遅らせたい場合は、材質にも注目してみるとよいでしょう。
化粧鉢・陶器鉢
素焼き鉢やテラコッタ鉢に釉薬をかけ、高温で焼いたものが化粧鉢、陶器鉢と呼ばれています。化粧鉢や陶器鉢の特徴はデザイン性が高いことです。キレイな色、鮮やかで高級感を感じさせる見た目であり、インテリアにこれらの要素を加えたい方にはおすすめです。
ただし、前述のように化粧鉢や陶器鉢には釉薬が使われています。釉薬は水や液体の浸透を防ぐため、どうしても通気性が悪くなります。このような理由から化粧鉢、陶器鉢は乾燥を好む植物の生育には適していません。
しかし、そのデザイン性の高さから「どうしても化粧鉢、陶器鉢で好きな植物を育てたい」という方はとても多いです。そのような方は水はけに優れた土などを使うといった工夫を施してみましょう。
鉢選びのコツ・ポイント②~形状~
続いては鉢の形状をご紹介します。鉢にもさまざまな形のものがあります。
スタンダード鉢
スタンダード鉢はほとんどの草花に対応しており、扱いやすさではトップクラスと言えます。一般的に鉢の高さが口径の70%~80%ほどの植木鉢のことをスタンダード鉢と呼びます。
「鉢」「植木鉢」などという言葉は特に指定がない限り、このスタンダード鉢のことを指します。ちなみに土の量や大きさもスタンダード鉢をもとにしているため、特にガーデニング初心者の方は一つ所有しておくことを推奨します。
浅鉢
鉢の高さが口径よりも小さいものが浅鉢です。一般的には直径に対しての深さが60%~70%ほどの鉢のことを浅鉢と呼ぶことが多いです。浅鉢は別名「皿鉢」「平鉢」とも呼ばれています。
その名のとおり、鉢の深さは他の形状のものと比べると浅いので生育に適した植物は限られてきます。浅鉢での生育に適しているのは根を浅くはる植物などです。また一つの場所に複数の植物を植える寄せ植えにも向いています。
深鉢
鉢の高さが口径以上のものを深鉢と言います。深鉢は太い根を地面に伸ばす直根性の植物を育てるには適しているといわれています。具体的には草花であればチューリップ、ヒヤシンス、ヒマワリなどが該当します。野菜だとエダマメ、キュウリ、ニンジンなどがありますね。
これらは成長とともに根っこが地中深くに伸びる性質をもっています。このことから深さがある深鉢と直根性の植物は相性が良いとされています。またこの他にも背の高い観葉植物も深鉢との相性は良好です。
ハンギングバスケット
通常の鉢は地面など低い位置に置きますが、ハンギングバスケットはワイヤーなどで植物を入れたバスケットを吊るすのが特徴です。ハンギングバスケットでよく使用される材質は、ヤシの木など軽い繊維を乾燥させたものが中心です。
ハンギングバスケットには主にボウル型の吊るすタイプと、半円形の壁に掛けて植物を楽しむタイプがあります。ボウル型の吊るすタイプは鉄などで枠が組み込まれており、ヤシの木といった植物繊維を乾燥させたものを敷いているのが一般的。
この中に土を入れ、植物を植えていきます。壁掛けタイプもボウル型と同じくヤシなどの植物繊維が使われているものもありますが、中にはプラスチックで作られているもの、スリットが入っているものもあります。
壁掛けタイプは完全な円形ではないため、ボウル型のタイプと比べると扱える植物が限られてくるのがネック。どちらのタイプにも言えることですが、ハンギングバスケットは上からではなく横から見ることを想定して作られています。
したがって背が高くない植物を育てるには、非常に適したタイプと言えるでしょう。ちなみにハンギングバスケットで寄せ植えをする時は、奥に背の高い植物、手前に低い植物を植えることで、高い位置から吊るしても植物全体を見渡すことができるようになります。
基本的に地面から離れた位置に設置するため、病害虫にかかりにくいのがハンギングバスケットの大きなメリットでもあります。その一方でハンギングバスケットは土が乾燥しやすいというデメリットがあるため、水やりの頻度などには十分に注意しておく必要があるでしょう。
セルトレー
苗を一定期間、人工的な環境下で育成することを「育苗(いくびょう)」といいます。セルトレーはこの育苗を目的とした専用の容器です。一般的には小さいポットが連結して並んでいるものを、セルトレーと呼びます。
セルトレーを使うメリットはやはり苗を育てるスペースが少なくて済むことです。また、セルトレー一つで多くの植物の苗を育てることができるので、さまざまな植物の育成を楽しみたいという方にはおすすめです。
ただしセルトレーは小さなスペースであるがゆえに、土が入るスペースにも限りがあります。そのため、水切れや肥料切れを起こしやすいのがデメリットです。この点はこまめな管理でしっかりとカバーするようにしましょう。
鉢選びのコツ③~大きさ・サイズ~
鉢の大きさ、サイズも植物が元気に育つには重要な要素です。基本的に鉢のサイズは「号」という表記を用いることになります。1号は口径(直径)3㎝となり、号数が一つ大きくなると口径も3㎝ずつ大きくなっていきます。
もちろん号数によって鉢に入れることができる土の量も変わってきます。暗算が得意な方は以下の計算法で必要となる土の量を算出することが可能です。
○ 鉢の半径×半径×3.14×高さ=土の量 (L)
または下記の表を参考にしてみてください。
号数 | 鉢の直径 (㎝) | 土の量 (L) |
---|---|---|
1号鉢 | 3 | 0.1 |
2号鉢 | 6 | 0.15 |
3号鉢 | 9 | 0.3 |
4号鉢 | 12 | 0.6 |
5号鉢 | 15 | 1.3 |
6号鉢 | 18 | 2.2 |
7号鉢 | 21 | 3.5 |
8号鉢 | 24 | 5.2 |
9号鉢 | 27 | 7.8 |
10号鉢 | 30 | 8.5 |
11号鉢 | 33 | 10 |
12号鉢 | 36 | 14 |
一般的に販売されている鉢のサイズは3号~12号となります。1号~2号はミニ鉢と呼ばれるサイズで、小さな多肉植物などには向いています。また3号~5号サイズは多肉植物の寄せ植え、草花1株、観葉植物を植えるにはおすすめです。
草花の寄せ植えをしたいという方は、9号サイズ以上の鉢を使うのがよいでしょう。ちなみにこの号数ですが、苗にも振られています。そのため、苗と鉢を同時に購入する時には参考にしてみましょう。
その際のポイントですが、苗の号数より1号~2号大きな鉢を選択することです。これは苗の成長を考慮した基本的な対策法でもあります。苗が成長し、根が伸びると同じ号数の鉢では根詰まりの危険性が高まります。
逆に鉢が大きすぎると土を多く入れることができますが、水が土に溜まりやすくなるため、根腐れを起こしやすくなります。このような理由から植物を育てる時はワンサイズ大きい鉢を選ぶことが推奨されています。
植物が「快適」と思う鉢を選んで充実したガーデニングライフを
今回はガーデニングを行う上では大切な、鉢選びに関する情報を解説しました。一口に鉢といっても使われている素材、形状、大きさなどは異なります。その中で最も大切なのは植物の大きさ、特徴に合わせた鉢を選ぶということです。
植物にとっての鉢は、私たち人間に例えれば心身の疲れを癒すための自宅(空間)です。そのため適切な鉢を用意することで植物もストレスを抱えることなく成長し、イキイキとした姿を見せてくれます。
また植物が順調に成長することで、ガーデニングがさらに楽しく感じるようになります。充実したガーデニングライフを送るためにも、鉢選びには力を入れてみましょう。