梅雨(つゆ)時期の食中毒の原因とは?効果的な予防対策をしよう

梅雨(つゆ)時期の食中毒の原因とは?効果的な予防対策をしよう

湿度も気温も高くなる梅雨(つゆ)時期は食中毒にも注意する必要があります。食中毒を発症すると腹痛、下痢、吐き気、嘔吐などの症状に苦しむことになります。また症状が重くなると命を落とすこともあるのが食中毒の厄介な点です。

万全な対策を施して安心、安全な食生活を送れるようにしましょう。今回は梅雨時期の食中毒の原因や、食中毒を防ぐための予防、対策法を解説します。

梅雨(つゆ)時期の食中毒の原因は高温多湿を好む細菌

梅雨(つゆ)時期の食中毒の原因は高温多湿を好む細菌

湿度、気温ともに上昇傾向を始める梅雨の時期は食中毒が増えてきます。一般的に梅雨時期の食中毒は高温多湿を好む細菌が原因の大半を占めています。ここでは梅雨の時期に食中毒を引き起こす主な細菌の種類を解説します。

腸管出血性大腸菌 (O-157、O-111など)

近年の若者はご存じないかもしれませんが、腸管出血性大腸菌O-157は1996年 (平成8年)に全国的に大きな問題となりました。大腸菌は家畜や人の腸内にも存在し、そのほとんどは下痢の原因になることはありません。

しかし、O-157、O-111などいくつかの種類は下痢などの消化器症状、合併症を引き起こすことがあり、これを病原性大腸菌と言います。この病原性大腸菌の中に含まれるのが、毒素を産生し、出血を伴う腸炎などを引き起こす腸管出血性大腸菌O-157やO-111です。

平成28年には腸管出血性大腸菌による食中毒で死者が10名出るなど、重症化すると命を落としてしまうこともある厄介な細菌です。
【参考サイト】厚生労働省「腸管出血性大腸菌Q&A」

日本国内での腸管出血性大腸菌による食中毒は主に焼肉店などの飲食店にて、業者が提供した食肉を生または加熱不足で食べて感染することが多いです。腸管出血性大腸菌の潜伏期間は約3日~8日とされています。

カンピロバクター

家畜の腸管内に生息し、食肉、臓器、飲料水を汚染するのがカンピロバクターです。カンピロバクターによる食中毒では吐き気、下痢、腹痛、頭痛といった症状が起こります。

カンピロバクターによる食中毒の患者数は毎年約1500人~3000人にものぼります。
【参考サイト】厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について (Q&A)」

死亡例、重篤例はきわめてまれですが、抵抗力の弱い乳幼児や高齢者は重篤化する恐れもありますので、十分な注意が必要になります。

カンピロバクターは乾燥に非常に弱く、かつ加熱調理を行うことで簡単に死滅しますが、上の患者数を見てもわかるように発症例は多いのでしっかりとした対策を行うことが大切です。潜伏期間は約1日~7日とされています。

サルモネラ属菌

豚、牛、鶏といった動物の腸管から河川、下水といった自然界にまで広く分布しているサルモネラ属菌。サルモネラ属菌による食中毒の発症には、大量の菌が必要といわれてきましたが、近年では少量の菌でも食中毒にかかることがわかっています。主に加工品を含む卵、食肉、うなぎ、スッポンなどが原因となってサルモネラ属菌の食中毒を発症させます。

潜伏期間は約6時間~72時間とされており、腹痛、嘔吐、下痢といった症状の他にも38℃~40℃の高熱を引き起こします。また中にはペット動物を介して食品を汚染することもありますので、自宅でペットを飼っている家庭などでは注意が必要です。

黄色ブドウ球菌

黄色ブドウ球菌は顕微鏡で見ると、ぶどうの房のように集まっていることからその名が付けられました。美容などにも気を使っている方はご存じかもしれませんが、この黄色ブドウ球菌は食中毒だけではなく、ニキビなどの原因菌でもあります。

そのため、黄色ブドウ球菌は健康な人の体からも高い確率で検出されます。この菌は食べ物の中で増殖する時にエンテロトキシンと呼ばれる毒素を産生し、これによって食中毒特有の症状を発症します。黄色ブドウ球菌食中毒の主な症状は吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などです。

潜伏時間は平均で約3時間とされています。食中毒を発症させる主な食品は肉、卵、乳製品、菓子類など非常に多岐に渡るため、高温多湿となる夏季は特に注意しなければなりません。ちなみに黄色ブドウ球菌そのものは熱に弱いですが、産生される毒素(エンテロトキシン)は100℃の高温で20分ほど加熱しても分解されないため、非常に厄介な存在です。

その他細菌

梅雨の時期に食中毒を引き起こす細菌はまだまだあります。主に夏季から秋季の食中毒原因菌になっていることが多い腸炎ビブリオは海水中に生息しています。そのため、夏季に水揚げされた魚介類を食すことで食中毒を発症することがあります。

また作り置きの焼き飯やパスタ、食肉や野菜などが主原因となって発症するセレウス菌食中毒も梅雨の時期から秋口にかけて患者が増えます。セレウス菌は芽胞を形成し、熱に強いという特徴を持っているため、中途半端な加熱処理では死滅しないのが厄介な点です。

その他、梅雨の時期だけではなく年間を通して注意しておきたいのがウェルシュ菌です。ウェルシュ菌も芽胞を作り100℃の加熱でも1時間~6時間ほどは死滅しないという耐熱性を持っています。さまざまな煮込み料理などが原因食品となっているので、こちらも十分な注意が必要となります。

食中毒予防の3原則は「付けない」「増やさない」「やっつける」

食中毒予防の3原則は「付けない」「増やさない」「やっつける」

前述のように梅雨の時期には細菌性食中毒が増加します。厚生労働省ではこの細菌性食中毒を防ぐために「付けない」「増やさない」「やっつける」という「食中毒予防の3原則」を掲げています。

まず原則1の「付けない」ですが、これは細菌の付着を防ぎましょうということです。食中毒を引き起こす細菌は私たちが普段口にする身近な食材にも付いていることがあります。この菌が手や調理器具などを介して、他の食品を汚染してしまうことも十分に考えられます。そのため、細菌性食中毒を防ぐには「細菌を付けない」という原則が掲げられています。

原則2の「増やさない」は細菌の増殖を防ぐことです。万が一、食品に細菌が付着しても菌の数が少なければ食中毒を発症することはありません。細菌性食中毒を予防するには、細菌の増殖を防ぐ工夫を施すことが大切です。

原則3の「やっつける」ですが、これは食中毒の原因になる菌を死滅させましょうということです。当たり前のことですが、食中毒の原因となる菌を死滅させれば、食中毒を発症することはありません。例外はありますが、食中毒を発生させる原因菌は加熱に弱いことが多いので、調理時には特に意識しておきたいポイントと言えるでしょう。

家庭でできる梅雨時期の食中毒予防対策を解説

家庭でできる梅雨時期の食中毒予防対策を解説

日本国内での食中毒は飲食店で発生することが飛び抜けて多いですが、次点は家庭となっており、割合としては約1割を占めています(発生場所不明を除く)。
【参考サイト】厚生労働省「4. 食中毒統計資料 平成29年(2017年)食中毒発生状況」

したがって自宅での食中毒予防、対策は非常に重要となります。ここでは自宅でもできる梅雨時期の食中毒予防対策を解説します。

帰宅時、トイレから出た後などは手洗いを徹底する

これはさまざまな病気予防でも基本的な対策として挙げられますが、やはり手洗いは徹底して行うようにしましょう。多くの物に触れる手は細菌やウイルスが付着している可能性が非常に高いです。

食中毒の原因にもなる菌が付着した手で食材、食器に触れると手を介してこれらのものにも菌が付着します。またトイレに行った後も目に見えないだけで排泄物などに含まれる菌が付着していることもあります。

そのため、帰宅時やトイレに行った後などには必ず手洗いを行うことを意識しておきましょう。もちろん調理を行う前も石けんやハンドソープなどを使って手洗いを行うことが大切です。

手拭きタオルは毎日交換する

各家庭ではキッチン用の手拭きタオルを常時備え付けていると思います。この手拭きタオルも高温多湿の季節にはこまめに交換するようにしましょう。過去に行われてきたさまざまな実験では洗濯をしたばかりのタオルにはほとんど菌が付着していないのに対して、2日~3日ほど使用したタオルにはびっしりと菌が付いていることがわかっています。

そのため、どんなに調理前に手洗いをしても、菌が付着したタオルを使用すると手に大量の菌を移してしまうことになります。これではせっかくの手洗い効果も大きく失われてしまい、食中毒の危険性も高まることが予測されます。したがってキッチン用の手拭きタオルは毎日こまめに交換することを意識しておきましょう。

調理済の料理は早めに食べる

一般的に食中毒の原因となる菌は時間の経過とともに増殖していきます。細菌の数が少なければ、食中毒を発症する可能性もグンと下げることができます。そのため、調理済の料理は時間を置かずにできるだけ早めに食べきることを意識しておきましょう。

どうしても時間を空けないと食べられない時は、冷蔵庫など低温で保存しておくことが大切です。一度加熱した調理済の料理を再度食べる時ですが、再加熱を行うのがポイント。このような工夫を施すことで保管しておいた間に増えた菌を死滅させることができます(ただし加熱に強い細菌もあるので注意が必要)。

食材はよく加熱する

食材はよく加熱する

前述のように多くの細菌は熱に弱いという特徴を持っているので、調理時には食材をしっかりと加熱しておきましょう。特に加熱を意識したい食材はやはりお肉です。牛や豚などは解体処理する過程で腸内にいる細菌が肉、内臓に付着することがあります。そのため、鮮度に関係なく生や加熱不足の状態で口にすると思わぬ重い症状を患ってしまう可能性もあります。

大半の細菌は75℃1分以上の加熱で死滅するため、中心部までしっかりと火を通す調理を心がければめったに食中毒にかかることはありません。ただし何度も取り上げているように熱に強い細菌(セレウス菌、ウェルシュ菌など)もありますから、加熱以外の対策もしっかりと行うことが大切です。

まな板や包丁はしっかり洗浄、消毒する

調理に使ったまな板や包丁などにも細菌は付着している可能性は高いです。そのため、使用後にはしっかりと細菌を落とす必要があります。洗い方としては洗剤でよく洗った後に熱湯をかけてあげるとよいでしょう。

熱により調理器具に付着している細菌を死滅させることができます。また台所用殺菌剤を使用するのもおすすめです。見落としがちですが、調理器具を洗ったスポンジやたわしといった洗浄用具も最後に洗剤と流水で洗い、乾かしておきましょう。

食材は常温で放置しない

食材は常温で放置しない

食中毒を引き起こす細菌の多くは室温約20℃で活発に増殖活動をし始めます。ちなみにO-157やO-111などは約7℃~8℃で増殖をし、約35℃~40℃で最も増殖活動が活発になるとされています。

このような理由から常温放置は非常に危険でもあるため、生鮮食品は買い物後すぐに冷蔵庫、冷凍食品は冷凍庫に入れるようにしましょう。惣菜やお弁当などの調理済み食品も室温で2時間以上放置しないようにします。また長時間放置してしまった食品などは「ちょっと怪しいな」と思ったら、口にせずに捨てるようにしましょう。

冷蔵庫内での長期保管もできるだけ避ける

細菌は10℃以下、60℃以上で増殖をしにくくなります。そのため冷蔵庫、冷凍庫を積極的に活用して食品保管を行うことはとても良いことです。しかし冷蔵庫、冷凍庫内であっても油断は禁物です。

細菌の中には低温で増殖をしてしまう種類もあるからです。このような理由からたとえ冷蔵庫、冷凍庫内でも長期の保管は避けるといった対策が必要になります。また開封、開栓した食品は賞味期限や保存方法にかかわらず、早めに食べきることを意識しておきましょう。

万全な食中毒対策で安心・安全な食生活を

今回は梅雨時期の食中毒の原因、予防、対策に関する情報を解説しました。高温多湿となる梅雨の時期は細菌性食中毒が増加します。食中毒を引き起こす細菌は熱に弱いものもあれば、強力な耐熱性を持っているものもいます。このように細菌の特徴はそれぞれ異なるため、一つの対策法だけでは食中毒を予防することはきわめて困難です。

やはり細菌性食中毒の発生を防ぐには、どのような細菌にも効果がある対策を行う必要があります。今回ご紹介した予防、対策法を実践できれば、食中毒を防げる可能性は高まります。梅雨時期の食生活も安心、安全なものにしたいという方はぜひ参考にしてください。

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