2021年5月25日 | 虫
コメツキムシの生態や幼虫の特徴。駆除方法・対策を解説
黒色や茶色の細長い小型の甲虫、「コメツキムシ」をご存じでしょうか。
生きもののなかには、エサを捕まえるため・天敵から逃れるため・繁殖期にパートナーにアピールするためなど、さまざまな目的のために特殊能力を身に付けたものがいます。そしてこのコメツキムシがもっているのは、仰向けにひっくり返っても「パチン!」という音とともに大きく跳ね上がり、元に戻るというユニークな能力です。その様子の面白さに、子どものころコメツキムシを何度もひっくり返したことのある方もいるのではないでしょうか。
どことなくかわいいコメツキムシですが、幼虫は作物を食害する害虫として生産者の方々を悩ませています。そこで今回は、コメツキムシの生態や特徴などについてご紹介いたします。あわせて幼虫の生態や特徴、駆除方法などについても解説いたします。
コメツキムシとは
たとえばカブトムシは、一度ひっくり返るとなかなか起き上がることができません。実際に飼ったことのある方なら、あのあたふたした仕草を思い浮かべることができるのではないでしょうか。カメムシやてんとう虫など甲虫の多くが、ひっくり返った状態から起き上がるのを苦手とするなか、驚異のジャンプで華麗に起き上がる能力を身に付けたコメツキムシ。ここでは、コメツキムシの気になる生態などについてご紹介いたします。
生態
コウチュウ目コメツキムシ科の昆虫です。種によって、樹木や草の上に住むものや、砂地の石の下などに住むもの、樹液などを餌にするものや、小さな虫を捕食するものなどがいます。
代表的なサビキコリを例にとると、北海道・本州・四国・九州などに広く分布し、平地から山地の林や草むら、畑、田んぼ周辺、公園などに生息します。クヌギやコナラ、ヤナギ類など広葉樹の樹液や花の蜜や花粉、小さな虫などを餌とします。主に昼行性ですが、灯火に飛来することもあります。
特徴
天敵が近づくと、足を閉じて「死んだふり」をします。そして、仰向けになった状態からそり返った頭(前胸部)を勢いよくもち上げ、大きくジャンプして起き上がります。このユニークな技には、起き上がる以外にも「パチン!」と音を立てることで、敵を威嚇する効果があるのです。
コメツキムシという名前は、跳ぶときの頭(前胸部)を動かす様子が米をつく動作に似ていたことに由来するといわれます(種によってはこの行動をとらないものも存在します)。色や体型など、個の特徴は種によってさまざまですが、ヒゲコメツキの雄などは、櫛(くし)状の特徴的な触角をもっています。
活動時期
種によって活動時期は若干異なりますが、全般的に春から夏にかけて活発に活動します。コメツキムシは、幼虫から成虫になるまでの3~4年という長い月日を、土の中で過ごします。さらに3年目で成虫になってからも、そのままもう1年土の中で越冬することが多いため、3年目で地上に出てくるのは一部のみです。多くのコメツキムシは、4年目に成虫として地上での活動を開始します。
被害
コメツキムシの餌は種によってさまざまですが、成虫は主に樹液や花の蜜、小さな虫などを餌とするため、作物などへの被害はありません。
種類
コメツキムシは、世界には約10,000種、日本では約1,113種が確認されています。ここでは、比較的よく見かける種をご紹介いたします。
サビキコリ
コメツキムシのなかではやや横幅があり、体長約12~16mmのずんぐりした体型。全体的に茶褐色で、ややまだら模様です。北海道・本州・四国・九州などに分布し、活動時期は5~8月。樹液などに集まり、夜間の灯火に集まることもあります。
ムナビロサビキコリ
その名のとおり、サビキコリよりも胸部が幅広で平たい形です。体長約12~17mm、全体的に茶褐色でややまだら模様です。北海道・本州・四国・九州などに分布。活動時期は5~8月。樹木の上や葉の上などで見かけることができます。
オオハナコメツキ
よく花に集まることからこの名がついたとされるコメツキムシで、体長約11mm。体は黒く、全体に黄褐色から赤褐色の毛が生えており、小楯板はハート型をしているのが特徴です。
北海道・本州・四国・九州に分布し、活動時期は5~8月。砂地に多く、河川敷などでよく見かけるが、里山や山地でも見かけることができます。
ヒゲコメツキ
雄は立派な櫛(くし)状、雌は小さな鋸(のこぎり)状の触覚をもっています。光沢のある赤褐色で、黄白色の細かい紋様がある大型のコメツキムシ(体長約21~27mm)です。北海道・本州・四国・九州などに分布し、活動時期は5~7月。樹木や葉の上などで見かけることができます。
オオクロクシコメツキ
黒褐色で光沢のある、体長約14~17mmのコメツキムシです。黄色く短い毛が全体に生えており、上翅部分には細かく縦線が入っています。本州・四国・九州・沖縄などに分布し、活動時期は5~8月。雑木林や畑などで見かけることができます。
ニホンベニコメツキ
黒や茶色が多いコメツキムシのなかにあって紅色をした種で、上翅部分には細かく縦線が入っています。本州・四国・九州などに分布し、活動時期は4~8月。草木の葉や蜜を餌とします。毒をもつカクムネベニボタルによく似ており、擬態しているといわれています。
ノブオオオアオコメツキ
金属光沢のある青色のコメツキで、沖縄に生息しています。日本で最も綺麗な昆虫の一つと言われています。
コメツキムシの幼虫
コメツキムシは成虫になるまで3~4年かかるため、幼虫として過ごす時間が長いという特徴をもちます。幼虫は表皮が硬く、針金のように細長い形をしていることから、「ハリガネムシ」と呼ばれています(カマキリなどに寄生するハリガネムシとは異なります)。ハリガネムシと呼ばれるのは、主にマルクビクシコメツキ、トビイロムナボソコメツキ、コガネコメツキなどの幼虫です。
生態
幼虫として過ごす3~4年は、1年の大半を食べて過ごします。夏に孵化した幼虫が秋まで食害をし、中齢幼虫として1年目の越冬を行います。翌年も春から秋まで食害を続け、2回目の越冬に入ります。3年目も幼虫のまま食べて過ごし、6~7月頃にようやく蛹化して成虫となり、交尾後に土中に産卵します。
マルクビクシコメツキは全国の火山灰土や沖積土地帯に発生し、トビイロムナボソコメツキ、コガネコメツキは北海道に多く、トビイロムナボソコメツキは泥炭土地帯、コガネコメツキは植土地帯に発生します。
食性
マルクビクシコメツキ、トビイロムナボソコメツキ、コガネコメツキなどの幼虫は、ジャガイモ、トウモロコシ、にんじん、さつまいも、麦類、アブラナ科の野菜、イネ科の牧草などを食害します。
農作物への被害
農作物のなかでも、ジャガイモが食害されるケースが多く見られます。植え付け後の種イモが被害を受けると発芽が阻害され、生育にも悪影響が出てしまいます。食害された箇所には針金が貫通したような痕が残って商品価値が下がるうえ、被害にあったイモは腐敗しやすく、貯蔵できないといった被害にも悩まされます。
「畑(または植物)」のコメツキムシの予防・駆除方法
生産者の方にとって、大切な作物に悪影響を与えるコメツキムシの幼虫を放っておくことはできません。また、作物を食害しないとはいえ、成虫が卵を産みつけることで再び幼虫が現れます。このため、どちらにしても無視できない存在といえるでしょう。ここでは、コメツキムシの予防や駆除方法をご紹介いたします。
薬剤を散布する
ハリガネムシ(幼虫)の被害が多く発生する場合、駆除方法としてクロールピクリンなどの土壌くん蒸剤を散布するといった方法があります。土壌中の病害虫、センチュウ類、一年生雑草などを防除する効果が期待できます。
被害が少ない作物との輪作
同じ場所で同じ作物を続けて栽培すると病気や害虫が発生しやすくなるといった現象が起こります。これは「連作障害」と呼ばれるもので、これを防ぐには連作をしないことが重要です。そこで、同じ土地に性質の異なる数種類の農作物を、何年かに1回のサイクルで作る「輪作」という方法があります。このとき育てる種類に「被害の少ない作物」を選ぶのがとても大切です。被害の少ないおすすめの作物には、ソバ、なたね、豆類、きゅうり、なす、ごぼうなどがあります。
土を耕す際に幼虫を発見したら取り除く
畑を耕す際にコメツキムシの幼虫を見つけたら、一匹ずつ取り除きましょう。地道な作業で幼虫の数を減らしていくことも、効果的な方法のひとつといえます。
「お庭」でのコメツキムシの予防・駆除方法
畑などの植物以外の場面で、コメツキムシの幼虫を見つけたら、殺虫剤で駆除するのが効果的です。フマキラーの「カダン お庭の虫キラーダブルジェット」は、コメツキムシの幼虫をはじめお庭の嫌な虫に効く殺虫剤です。超速効殺虫成分(イミプロトリン)の働きで、嫌な虫を素早く退治。あらかじめスプレーしておけば、虫の住みつきを1ヵ月予防することができます。
※植物に直接スプレーしないようご注意ください
まとめ
ユニークな特徴をもつコメツキムシは、虫好きの方々にとってはとても人気のある昆虫です。そして、作物の生産者を悩ます幼虫とは異なり、成虫が作物を加害することはありません。
比較的身近な場所で目にすることの多い虫ですので、コメツキムシを見かけたらぜひ仰向けにして、ジャンプして起き上がる行動を観察してみてください。