【特定外来生物】ツマアカスズメバチの生態・被害・対策について

【特定外来生物】ツマアカスズメバチの生態・被害・対策について

2013年、長崎県対馬市で初めて営巣が確認され、対馬市で急激に分布を拡大したのち、福岡県、宮崎県、大分県と九州地方で生息域を拡大させているツマアカスズメバチ。2019年の11月、ツマアカスズメバチの巣が山口県防府市で見つかったことを環境省が発表し、本州でも初めて生息が確認されました。

とても狂暴な性質で人に危害を加えたり、またミツバチを捕食するため、特に養蜂業に大きな被害をもたらしたりと、ツマアカスズメバチによる被害が世界規模で増大しています。そこで今回は、このツマアカスズメバチの生態や特徴、駆除方法や対策などについて解説していきます。

ツマアカスズメバチの画像をご覧になりたい方はこちらから ⇒ ツマアカスズメバチ|Wikipedia

ツマアカスズメバチとは?

ツマアカスズメバチはインドネシアのジャワ島原産のスズメバチで、インドネシアの他に、パキスタン、アフガニスタン、インド、ブータン、中国、台湾、ミャンマー、タイ、ラオス、ベトナム、マレーシアなどに分布。その後、韓国、日本、フランス、スペインに移入し、2012年にはポルトガル、ベルギー、ドイツでも生息が確認されています。

とても狂暴な性質で、人や農作物、生態系にさまざまな被害をもたらすことから、2015年に外来生物法の「特定外来種」にも指定されています。

特定外来種とは…

もともと日本にいなかった外来生物の登場によって、地域の生態系や人々の健康、農林水産業などに被害を及ぼす、あるいは及ぼす恐れのある外来生物を「特定外来生物」として指定し、その飼育、栽培、保管、運搬、輸入などについて取り扱いを規制しています。

【参考】環境省 特定外来生物等一覧

生態

ツマアカスズメバチは、ハチ目スズメバチ属に分類されるハチの一種。もともと森林地域や田園地域に生息していましたが、都市部にも適応し生息しています。

食性は、成虫(働きバチ)は樹液や花の蜜を主食とするのに対し(ハチは腹部と胸部をつなぐ部分が極端に細くなっているため流動性の高いものしか食べられません)、幼虫は肉食。成虫は幼虫のために、ハエやミツバチなどの昆虫を捕獲し、それを噛み砕いて肉団子状にしたものを幼虫に与えます。幼虫は肉団状のエサをもらったお返しとして、栄養物を含んだ吐き戻しを行い、それを成虫に与えます。この栄養液こそあのV.A.A.M.なのです。

ツマアカスズメバチの成虫は他のスズメバチ同様、幼虫のエサにするために狩りを行い、巣に近づくと攻撃的になり、いったん獲物や敵と決めた相手に対しては執拗に攻撃を繰り返す習性があります。

また、ツマアカスズメバチは他のスズメバチと比べ、とても強い繁殖力があり、通常のスズメバチの産卵は巣あたり約500~1,000匹に対して、ツマアカスズメバチは約5,000~10,000匹とおよそ10倍にもなります。

特徴・形態

特徴・形態

体長は働きバチが17~25mm、雄バチが20~28mm、女王バチが25~30mmと在来のスズメバチに比べると小型です。また、スズメバチといえば黒と黄(オレンジ)のトレードカラーがおなじみですが、ツマアカスズメバチの体色は黄(オレンジ)の割合が少なく、頭部も触覚も含め全体的に黒っぽい色をしています。お腹の先端が赤み(オレンジ)を帯びた色をしていて、それが名前の由来にもなっています。

生息場所

女王バチは茂みや低木の中、または地中に営巣し、働きバチの増加とともに10mを超す樹木の上部に引っ越しをします。営巣する巣は大きく、大きいものになると高さが1mを越えるサイズになります。これはキイロスズメバチの巣の最大クラスに匹敵する大きさで、ツマアカスズメバチの巣は、この大きさと縦に長い雫のようなカタチが特徴と言えます。

もともと森林地域や田園地域に生息していたツマアカスズメバチですが、都会にも適応できるため高層ビルや高層マンションの壁などに巣をつくることもあります。

活動時期

ツマアカスズメバチの活動時期は4月から12月頃までと考えられています。

生活サイクルは他のスズメバチと同様、春に越冬から目覚めた女王バチが単独で巣づくりを開始します。

初期の巣は地上付近につくられ、働きバチが増えると樹木の高い場所に移動。巣は働きバチの増加とともに成長を続けます。

秋になり雄バチと新女王バチが生まれ、巣を飛び出した雄バチと新女王バチは交尾を行います。

冬が近づき、働きバチと雄バチは役目を終えて死んでいき、翌年の新女王となるハチは朽ち木の中などに隠れて越冬します。

他のスズメバチとの違い

ひと言に「スズメバチ」といっても、その種類は多く、日本だけでも3属(スズメバチ属、クロスズメバチ属、ホオナガスズメバチ属)17種類のスズメバチが生息しています。ここでは、その中でももっとも危険度が高い「スズメバチ属」の仲間(ツマアカスズメバチを含め8種)と、ツマアカスズメバチの違いについて見ていきます。

スズメバチ属の仲間

  • オオスズメバチ(働きバチの体長:24~40mm、女王バチは50mmに達する個体もいる)
  • キイロスズメバチ(働きバチの体長:17~24mm)
  • モンスズメバチ(働きバチの体長:21~28mm)
  • チャイロスズメバチ(働きバチの体長:17~24mm)
  • コガタスズメバチ(働きバチの体長:22~28mm)
  • ヒメスズメバチ(働きバチの体長:24~37mm)
  • ツマグロスズメバチ(働きバチの体長:20~22mm)
  • ツマアカスズメバチ(働きバチの体長:17~25mm)

ツマアカスズメバチは、キイロスズメバチやチャイロスズメバチとほぼ同等の大きさであることがわかります。キイロスズメバチはその名の通り、体に黄色の割合が多く、頭部も黄色をしているので違いは一目瞭然。チャイロスズメバチは全体的に茶色をしているため、全体的に黒っぽいツマアカスズメバチと見た目が似ています。見分け方はお腹で、チャイロスズメバチは黄(オレンジ)色の縞模様がありません。また、チャイロスズメバチは中部地方以北に生息するため、今のところツマアカスズメバチと生息する地域も分かれています。

ツマアカスズメバチによる被害

強い攻撃性を持ち、特定外来種にも指定されているツマアカスズメバチは、どんな恐ろしい被害をもたらすのでしょうか。ここでは、さまざまな被害について見ていきます。

人への被害・症状

ツマアカスズメバチはとても攻撃性の強い性質をしていて、いったん攻撃をはじめると執拗に繰り返し襲ってきます。毒性はオオスズメバチやキイロスズメバチほどではありませんが、海外では刺傷による死者が出たという報告もあります。山間部に限らず都市部にも適応し生息するため、十分な注意が必要です。

生態系への被害

ツマアカスズメバチの脅威は、その圧倒的な繁殖力です。ツマアカスズメバチは幼虫のエサのためにさまざまな昆虫を捕食します。このため、生態系への影響が懸念されています。韓国では2003年に釜山でツマアカスズメバチが確認されて以降、被害は拡大し続け、生息数が在来種のスズメバチを上回ったと言われています。

ツマアカスズメバチの天敵は?

強い攻撃性と圧倒的な繁殖力を持つツマアカスズメバチにも天敵がいます。それは「ハチクマ」という鳥です。10m以上の高いところで営巣するツマアカスズメバチですが、相手は鳥なので問題なく現れ、巣を攻撃し好物の幼虫や蛹を食べ尽くします。その間、ツマアカスズメバチも大勢で攻撃を仕掛けますが、タカの1種であるハチクマは、硬い羽毛をしているためハチの針が刺さりにくいと考えられています。

日本に古くからいるオオスズメバチは、オニヤンマや熊などのエサになるため数が保たれていますが、ツマアカスズメバチは2013年に生息が確認された外来種のため、エサにする生物はこのハチクマのみ。このことも、ツマアカスズメバチが分布を拡大する大きな要因になっていると言えます。

刺されてしまったときの対処法

刺されてしまったときの対処法

ツマアカスズメバチに刺されると、他のスズメバチと同様、体質によってはアナフィラキシーショックを起こす場合があります。命にかかわる恐れがあるため、ツマアカスズメバチに刺されたら、すみやかに医療機関を受診しましょう。

ツマアカスズメバチの対策

ツマアカスズメバチの対策

ツマアカスズメバチは高所に営巣するため、人に対して害を与える可能性は少ないです。(対馬での調査では、ほとんどの巣が地上から5〜10mの高さにありました)

一方で都市部で増えると、高層ビルなどでも営巣するため、こちらは注意が必要です。

ツマアカスズメバチの被害にあわないためには、まずはツマアカスズメバチに近づかない・近づけさせないのがいちばんですが、生息分布を拡大し、本州でも生息が確認されたことからも、ツマアカスズメバチに遭遇する可能性が増えています。そこで、事前に知っておきたい「ツマアカスズメバチの予防や駆除する方法」について紹介していきます。

肌の露出を控える

アウトドアで山間部などに出かける際は、なるべく長袖・長ズボンをおすすめします。また、家の庭やベランダでガーデニングなどの作業をする際にも、肌の露出を控え、手には軍手などをして作業するようにしましょう。

ちなみに刺されやすい部位としては、頭や腕などが挙げられます。スズメバチの目は横に動くものによく反応するようにできているため、人が逃げるときに頭を横に振ったり、腕を振ったりする部位が刺されやすいようです。

なるべく黒い服はさける

肌を露出させないことに加え、身に付けるものの色にもご注意を。

スズメバチの生態についた書かれた本の中でも、実際にいろんな色の旗を振ってスズメバチの行動を観察した実験では、黒がいちばん攻撃され、その次が青で、白や銀はあまり攻撃されなかったことが記されています。

理由として、ハチの天敵である熊の色が黒に近いからという説が挙げられますが、黒は熱を吸収しやすく単に熱源として黒を感知しているのでは、とする説もあり真相は定かではありません。

駆除・退治方法

次にツマアカスズメバチを駆除・退治する方法を紹介します。

殺虫剤を使用する

ツマアカスズメバチの駆除に有効な殺虫剤について紹介します。

ハチ・アブダブルジェット

フマキラー ハチ・アブダブルジェットは、動きを止める新成分配合で、危険なハチの動きを止めて速攻退治!

高濃度に配合した「速効殺虫成分」に、「羽ばたき停止成分」と「行動停止成分」をプラス。ハチの動きをすばやく止めて、しっかり駆除します。最大11m※まで届くダブルジェット噴射で離れた場所からでも処理が可能。「持続殺虫成分」が巣に戻ってきたハチや新たに羽化したハチにも効果を発揮して、巣ごと退治。巣を作りそうな場所にあらかじめスプレーしておけば、ハチを寄せつけません。

※無風時。気象条件により異なります。

その他、ツマアカスズメバチに効果がある殺虫剤はこちら⇒ フマキラー【殺虫剤】ツマアカスズメバチ

まとめ

圧倒的な繁殖力で急速に生息域を拡大していくツマアカスズメバチ。研究者によれば、被害への対策は、「これ以上の侵入を許さないこと」「発見するたびに駆除し、拡大を防ぐこと」の2点に尽きるということからも、ツマアカスズメバチの被害を拡大させないためには、早期発見と早期防除が重要となります。

ツマアカスズメバチと思われるハチを見つけたら、早急に自治体などに連絡をするようにしましょう。

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