2022年2月25日 | 園芸・ガーデニング
【デンドロビウムの育て方】植え替えの時期や増やし方・病害虫を解説
あでやかで上品な花を咲かせるデンドロビウム。育て方が難しそうに見えますが、種類を選べば初心者の方も栽培できます。
今回は、デンドロビウムの育て方を中心に、基礎知識と育て方のポイント、日々の管理や植え替えの方法、注意したい病害虫などについてご紹介いたします。
デンドロビウムの基礎知識
はじめに、デンドロビウムの基礎知識をご覧ください。
デンドロビウムの概要
デンドロビウムはラン科セッコク属(デンドロビウム属)の多年草で、「デンドロビューム」と表記することもあります。原産地は、インドやタイなどの熱帯アジア地域からニューギニアやオーストラリアまでと広く、国内にも「セッコク(Den.moniliforme)」と「キバナセッコク(Den.tosaense)」が自生します。
本来のデンドロビウムは海抜1000mくらいの高地に生息し、樹木に付着しながら育つ「着生(ちゃくせい)」の性質をもちます。そのため、ギリシャ語で樹木を意味する「dendron」と、生命や生活を意味する「bios」をつなげてデンドロビウム(Dendrobium)と名づけられました。
主に2~5月の開花期には、「バルブ」と呼ばれる茎の節(ふし)から花芽(はなめ)を出して、美しい花を咲かせます。品種によって耐寒性が強いもの、落葉するもの、香りを楽しめるものなどがあるので、それぞれの育て方に従って管理しましょう。
春の花については、「春に咲く花10選 ~たくさんの花々に囲まれて思いっきり春を感じよう~」の記事をご覧ください。
デンドロビウムの種類
原種の数は1600以上とされ、園芸用の品種も非常に豊富です。高さはおよそ3cmから2mとさまざまで、花の色も白や黄、ピンク、オレンジ、赤、紫、複色など多岐にわたります。
主な品種は、国内でもっとも流通している「ノビル(Den.nobile)系」のほか、洋ランとして親しまれる「ファレノプシス(Den.phalaenopsis)系またはデンファレ系」、香りを楽しめる「フォーモサム系(Den.formosum)」、「キンギアナム系(Den.kingianum)」などです。
また、冷涼な地域で自生する「クスバートソニー(Den.cuthbertsonii)」などを基に交配された「クールタイプ」のデンドロビウムは、愛好家の間で人気があります。栽培する温度別では、8℃以上が必要な低温性、10℃以上が必要な中温性、15℃以上が必要な高温性に分かれます。
デンドロビウムの歴史
18世紀の後半、イギリス人がヒマラヤ山脈に自生する原種を採取して持ち帰ると、ヨーロッパの貴族の間で栽培がはじまりました。その後もイギリスでは原種のノビルを中心とした交配がおこなわれ、小型や黄色い花などの新しい品種が次々と誕生します。
国内では、自生していたセッコクを江戸時代の半ばに「長生蘭(ちょうせいらん)」と名づけ、薬用や観賞用として栽培しました。明治時代初期に、ノビル系をはじめとするランの仲間がイギリスから輸入され、後にいちごの開発で知られる福羽逸人(ふくばはやと)氏によって国内初の品種が誕生。昭和に入り、各地で本格的な品種改良がはじまりました。
いちごについては、「【プランターでいちご栽培!】初めてでも上手にできる甘くておいしいいちごの育て方」の記事で詳しくご紹介しています。
デンドロビウムの育て方のポイント3つ
デンドロビウムの育て方は、次の3点がポイントです。
日当たり
デンドロビウムは、日の当たる時間が長いほどよく開花します。基本的に春から秋までは屋外に置き、冬は室内の窓辺などで管理しましょう。
花がら摘み
開花期には、咲き終わった花(花がら)を摘み取る作業が必要です。バルブの根元から切るのではなく、花を手で摘むか花がついている短い茎の部分をハサミで切ります。
バルブの管理
開花後のバルブは、葉がなくても切り取らずに残してください。ただし、バルブがしおれたり枯れたりしたときは根元から切り取ります。
デンドロビウムの栽培に必要なもの
デンドロビウムを栽培するときは、以下のものを用意してください。
基本のツール
デンドロビウムの栽培には、注ぎ先が細いジョウロと園芸用のハサミが必要です。培養土で植えるときはシャベルと割りばし、必要であれば筒形の土入れを用意します。水ゴケで植えるときも、割りばしを使用するとよいでしょう。
デンドロビウムの選び方
鉢植えを12~2月に購入するときは、株全体に花がよく咲いているものを選んでください。店頭のスタッフに尋ねて、なるべく入荷して間もない新しいものを選びましょう。購入した後は、室内の温度が5~10℃くらいの日当たりのよい場所に置きます。
3月以降に購入するときは、つぼみが多いものや一部が開花しているものを選んでも構いません。初心者の方には、寒さに強いキンギアナム系をおすすめします。
土と肥料など
デンドロビウムを植えるときは、樹皮を発酵させたバークと軽石などを混ぜた洋ラン用の培養土か、水ゴケを用意してください。肥料は洋ラン用の液体肥料と、油かすを原料にした固形の肥料を施します。
鉢またはプランターなど
基本的に、洋ラン用の培養土を使用するときはプラスチック製、水ゴケを使用するときは通気性のよい素焼きの素材を選びましょう。培養土で植えるときは鉢底石(はちぞこいし)をネットに入れたもの、水ゴケで植えるときは発泡スチロールを使います。
支柱と遮光ネットなど
背が高くなるタイプのデンドロビウムは、支柱を立てて栽培します。ビニタイを使用して、バルブを支柱に緩く留めつけてください。夏の間は日差しが強すぎるため、遮光ネットで日陰を作って栽培しましょう。
【初心者も安心】デンドロビウムの育て方
それでは、デンドロビウムの基本的な育て方を順にご紹介いたします。
鉢の置き場所
春から秋までは屋外で管理し、日当たりと風通しのよい場所に置きましょう。初夏から真夏の間は、遮光ネットの日陰の下で栽培すると安心です。梅雨や長雨、悪天候のときは軒下(のきした)などに移動し、加湿を避けてください。
外の気温が10~15℃くらいになったら室内に取り込み、昼間はガラス越しの日光に当てましょう。先述のとおり、低温性のキンギアナム系などは8℃以上、中温性のノビル系、フォーモサム系などは10℃以上、高温性のファレノプシス(デンファレ)系などは15℃以上を保ちます。
ただし、温度が上がり過ぎると花を長く楽しめないので注意してください。室内では、暖房の風が当たらない場所に置きましょう。夜間に温度が下がりすぎるときは、鉢の周囲に不織布(ふしょくふ)などを巻いて保温します。
水やりと花がら摘み
デンドロビウムの基本的な水やりは、植え込み材の表面が乾いてから与えます。ただし、生育期の初夏から9月くらいまでは植え込み材が乾く前に水やりをします。10月以降は基本の水やりに戻し、春に花芽が出たらやや頻度を増やしましょう。水やりは午前中におこない、真夏は早朝の涼しい時間帯に与えてください。
育て方のポイントでお伝えしたとおり、花がらを見つけたらこまめに摘み取りましょう。しおれた花を摘んで、バルブの半分以上の花がなくなったら花がついていた短い茎を切る方法と、はじめからしおれた花の短い茎を切る方法があります。切り取る際は、バルブを傷つけないように注意してください。
肥料の与え方
基本的に、4~7月くらいの間は油かすの固形肥料を月1回のタイミングで施し、液体肥料を週に1回くらい与えます。ただし、この期間につぼみが出てきたときは肥料を中止してください。8月以降は肥料を与えず、生長を見守りましょう。デンドロビウムは、肥料が多すぎると花の数が減ることがあります。
肥料については、「肥料の種類と適切な使い方とは?【ガーデニングの基本】」の記事をご覧ください。
植え替えの方法
デンドロビウムが根詰まりを起こさないように、2年に1回はひと回り大きな鉢に植え替えましょう。花が咲き終わったころが適期です。植え替える際は株の全体を観察し、枯れたバルブだけを切り取ります。
鉢から株を取り出して日陰に置き、根が白くなるまで乾燥させてから作業してください。根についた水ゴケなどを丁寧に取り除き、黒く傷んだ根や糸状の細い根などを切り取って整理してから植え替えます。
根詰まりについては、「根詰まりとは?根詰まりサインや失敗しない植え替え方法を解説」の記事で詳しくご紹介しています。
培養土で植え替え
培養土を使用するときは、ネットに入れた鉢底石を鉢の中に置き、3分の1くらいの深さまで土を入れてから株を置きます。株の根元が鉢の縁から1~2cmくらい下になるように、深さを調節してください。
割りばしを使いながら、根の隙間にもしっかりと土を入れます。植え替えの後はたっぷりと水を与え、2週間くらいは日陰に置いて様子を見ます。基本の水やりは、10日ほど過ぎてから再開しましょう。
水ゴケで植え替え
水ゴケを水に浸して水分を吸収させ、軽くしぼってから植え付けます。発泡スチロールをくだいて鉢の底に敷き、水ゴケを入れてください。植える深さは、上記同様に調節しましょう。デンドロビウムの根をバランスよく広げ、隙間にも水ゴケを入れながら植え付けます。
水ゴケに植えた直後は水を与えず、やや乾燥気味にして2週間くらい過ぎたら水やりを再開してください。植え替えの直後は日陰に置き、1ヵ月くらいは直射日光に当たる時間を減らして様子を見ましょう。
デンドロビウムの増やし方
デンドロビウムは、バルブの上部に「高芽(たかめ)」と呼ばれる新芽を出すことがあります。高芽がバルブの形状になって根を伸ばしたら、手で丁寧に摘み取ってください。水ゴケと鉢を用意し、同様に植え付けて栽培しましょう。
また、株が大きく生長しすぎたときは株分けも可能です。鉢から取り出し、根を傷めないように注意しながら1株あたりのバルブを4~5本に分けます。同様に新しい鉢に植え替えて栽培してください。
デンドロビウムのトラブルと対処法
最後に、デンドロビウムのトラブルと対処法についてご紹介いたします。
デンドロビウムの病気
花びらに褐色(かっしょく)のはん点が出る灰色かび病や、葉に褐色のはん点が出る褐斑(かっぱん)病、ウイルスが原因で葉に黄色い模様などが出るモザイク病などにかかることがあります。
菌による病気は、早急に患部を取り除いてまん延を防ぎましょう。ウイルスが原因の病気には対処法がないので、株ごと処分しなければなりません。
デンドロビウムの害虫
アブラムシやカイガラムシ、ナメクジなどの害虫の被害に遭う場合があります。特にアブラムシはウイルス性の病気を媒介するおそれがあるため、すぐに駆除してください。カイガラムシの成虫は歯ブラシなどでこすり取り、ナメクジには専用の忌避剤をまきます。
デンドロビウムの栽培には、フマキラーの「カダンセーフ」をおすすめします。食品成分由来の膜が害虫を包んで退治(呼吸ができずに窒息死)します。
カダンセーフは屋内での使用や、お子様・ペットのいるご家庭でも安心してご使用いただけます。また活力成分の天然アミノ酸とAO(アルギン酸オリゴ糖)を配合していますので、病害虫対策だけでなく植物の生育もサポートする優れものです。
デンドロビウムの育て方をマスターしよう
今回は、デンドロビウムの概要と育て方、トラブルと対処法などについてご紹介いたしました。デンドロビウムの育て方のポイントは、日当たりと花がら摘み、バルブの管理です。寒さに強い品種を選べば、育て方はそれほど難しくありません。
この機会に、華やかで美しいデンドロビウムの栽培に挑戦しませんか。