2021年12月9日 | 虫
ハクサイダニは冬野菜の天敵?生態や駆除方法を解説
ハクサイダニという虫の名を聞いたことがありませんか。ハクサイのほか、ホウレンソウやシュンギクなどの冬野菜に寄生する害虫のひとつです。今回はハクサイダニの生態をご紹介し、ハクサイダニによる野菜の被害についてご説明いたします。
また、農作物や家庭菜園の野菜にハクサイダニが付いた場合の駆除方法、付かないようにする防除の方法、そして植物を元気にする活力サプリメントについてもご紹介いたします。
農業害虫としてのハクサイダニ
ハクサイダニは代表的な農業害虫です。どのような種類の農作物に害を与えるのか、またその害についてご説明いたします。
どのような野菜に付くのか
名前からも、この虫がハクサイに付くことは容易に想像ができます。しかし実は、ハクサイにだけ付くわけではなく、アブラナ科の野菜を好むことがわかっています。
ハクサイダニが好むアブラナ科の野菜
ハクサイダニが付きやすいことがわかっているアブラナ科の野菜には、以下のようなものがあります。
- ハクサイ(アブラナ科)
- コマツナ(アブラナ科)
- アブラナ(アブラナ科)
- カブ(アブラナ科)
- キャベツ(アブラナ科)
- ダイコン(アブラナ科)
- ブロッコリー(アブラナ科)
ハクサイダニが好む野菜(アブラナ科以外)
アブラナ科以外にも、ハクサイダニはこのような野菜に寄生して害をなします。
- ホウレンソウ(アカザ科)
- シュンギク(キク科)
- レタス(キク科)
- ネギ(ユリ科)
ハクサイダニによる害
それでは、野菜にハクサイダニが付くと、どのような問題が起きるのでしょうか。ハクサイダニによる害には、以下のようなものがあります。
- 葉の色が抜けて灰色や銀白色になる
- 茎の生長が止まり「芯どまり」になる
- 野菜が枯れて死ぬ
ハクサイダニが付いた野菜の葉は、葉緑素がなくなって灰色・銀白色になり、やがて枯れてしまいます。また、「芯どまり」とは、これから茎になるはずの生長点が育たずに野菜が伸長しなくなる状態を指します。
さらに、ハクサイやレタスのように結球する野菜の場合、ハクサイダニは中心部に入り込んで害を与えます。農産物の商品価値を下げるため、生産者にとって非常に困った害虫なのです。
ハクサイダニとはどのような虫か
ハクサイダニは、どのような特徴をもった虫なのでしょうか。見た目や分類など、ハクサイダニについてご説明いたします。
黒い体に赤い脚が目立つ外見
ハクサイダニは体長0.8ミリ程度です。黒いずんぐりとした体に、4対の細長く赤い脚が生えている、特徴的な外見です。
分類はダニの仲間
ハクサイダニはミドリハシリダニ科で、ダニの仲間です。ダニは非常に種類が多く、世界で約5万種、日本では約2千種が生息していますが、それ以外にも登録されていない種が多数いるといわれています。ハクサイダニも、以前はコムギに寄生するムギダニとして扱われてきましたが、調査が進んでムギダニとは生態が違うことがわかり、1993年に別の種として分類されました。
本州・九州に広く分布
本州から九州にかけて分布しています。北海道・沖縄では見かけないようです。
低温に強く繁殖も可能
ハクサイダニは低温に強く、5℃程度の低温域でも繁殖できます。12月と3月に発生することが多く、5月はじめごろには活動を終えます。
ハクサイダニの生態
ハクサイダニはどのような一生を送る虫なのでしょうか。予防や駆除のヒントになるよう、発生する過程をご説明いたします。
夏は涼しい地中などで過ごす休眠卵
12~4月、葉の上や地中に薄くピンクがかった白い楕円形の卵を産みつけます。卵はすぐに孵化(ふか)して幼虫になるものと、「休眠卵」となって土の中で暑い夏を過ごすものに分かれます。
朝夕に活発に動く幼虫
気温が下がりはじめる10月ごろになると、夏を越した休眠卵からは、ハクサイダニの幼虫がかえりはじめます。気温の高い日中は葉の陰に隠れてやり過ごし、陽ざしの弱いくもりの日や、気温が低い朝や夕方に活発に動きます。幼虫は、若虫の状態を経て成虫に成長します。
繁殖力の強い害虫
ハクサイダニは単為生殖で繁殖します。オスとメスの交尾がなくても子ができるため、繁殖のスピードがとても速い虫です。また、気候によって発生量が変わることがわかっており、暖かい年は幼虫になる時期が早く、数も増える傾向にあります。
ハクサイダニによる害をどう防ぐか
野菜に付くと困るハクサイダニ。ハクサイダニが付かないようにするには、どのような方法があるのでしょうか。
高温に弱い性質を利用する
成虫・卵とも、高温と多湿に弱い性質があります。ハクサイダニの卵は先述のとおり地中などで休眠して暑い夏を過ごすため、この期間に1ヵ月間程度、土壌を太陽熱処理する方法があります。
【参考】ハクサイダニなど低温期の防除法を紹介 東京都(農業協同組合新聞)
実験室環境で、ハクサイダニの休眠卵を飼育容器に入れて35~60℃において観察した結果、40℃では10日間おいても生きている個体があったのに対し、45℃では3日間おいた個体からは孵化が確認できなかったという研究があります。
【参考】 「ムギダニとハクサイダニの発生生態」『植物防疫』第64巻第11号、日本植物防疫協会、2010年。
ハクサイダニが付いた作物の処理
それでは、もしハクサイダニが付いてしまったら、その野菜はどうしたらよいのでしょうか。
ハクサイダニが付いた野菜には、多くの卵が産み付けられています。そのままにしておくと卵が孵化した後に害が広がるので、土から抜き取ることをおすすめします。
食害された野菜は食べられるのか
せっかく栽培した野菜にハクサイダニが付いてしまった場合、その野菜が食べられるかどうか、気になるところです。
虫の付いた部分を取り除けば食べられますが、ハクサイダニが葉の裏などに隠れていることがあるので、洗うときに気をつけて見るとよいでしょう。飲食店などで、虫を見落として調理・提供してしまい、苦情を受けた例もあるようです。
ハクサイダニが発生した畑の処置
ハクサイダニが付いた野菜は抜き取ることをおすすめしましたが、その近くの雑草などにも被害が及んでいることがあります。こちらもできれば抜き取る方がよいでしょう。
ハクサイダニに気がついたときは、周りの植物の葉の裏や土壌にも注意を向けてください。作物の残渣(残りかす)や地中に卵を産み付けられている場合、そこが発生源になることもあります。取り除いて処分する、夏期なら太陽熱処理をするなどの処置が必要です。
葉に付く害虫「アブラムシ」との見分け方
ハクサイダニと同じように植物の葉に付く虫にアブラムシがあり、葉の汁を吸うために葉の色が抜けてしまいます。アブラムシはウイルスを媒介する害虫で、ウイルス病にかかった植物の葉や茎から汁を吸う際、そのウイルスを体に付けます。その固体の口を通じて、他の植物にウイルスが入り込むのです。
ハクサイダニとアブラムシは、見た目も与える害も似ています。しかし、ハクサイダニがやや活発に動くのに対し、アブラムシのほうは群れて葉に取りついたままあまり動かないので、容易に見分けることができます。
家庭菜園を楽しむコツ
家庭菜園の野菜には、種あるいは苗から育ててその生長ぶりを見届ける楽しみがあります。農家のような専門知識がなくても栽培を楽しむことはできますが、病気の予防や害虫防除の仕方、肥料や活力サプリメントの使い方を知っていると、いっそう充実した収穫を期待することができるでしょう。
なお、寒い冬でも家庭菜園を楽しむコツをご紹介する「冬におすすめの家庭菜園7選。気をつけたいポイントと合わせて解説」の記事も、どうぞ参考にしてください。