ヨーロッパ野菜とは?主な種類や日本の栽培地を解説

ヨーロッパ野菜とは?主な種類や日本の栽培地を解説

「ヨーロッパ野菜」という呼び名を聞いたことがあるでしょうか。ヨーロッパ野菜は主に西洋が原産の野菜で、鮮やかな色合いとしっかりとした風味が特徴です。近年では国内でも栽培が可能になったため、手軽に味わえるようになりました。今回はヨーロッパ野菜の魅力に着目して、概要と主な種類、国内の栽培地についてご紹介いたします。

ヨーロッパ野菜の概要

ヨーロッパ野菜の概要

はじめに、ヨーロッパ野菜の概要と歴史をご覧ください。

ヨーロッパ野菜とは?

本来のヨーロッパ野菜は、主にイタリアやフランス、地中海沿岸などが原産の野菜で、日本にもさまざまな種類が輸入されています。ヨーロッパ野菜の多くは色が鮮やかで、強めのクセとしっかりとした味わいに特徴があります。

ヨーロッパ野菜は高温多湿の環境で生育しにくい性質がありますが、地道な研究と品種改良により、現在は日本国内でも栽培が可能になりました。最近ではさまざまな種類が店頭に並び、レストランや給食にも使用されるなど、ヨーロッパ野菜の魅力が全国的に広まりつつあります。

ヨーロッパ野菜の歴史

かつて、ヨーロッパ野菜は「西洋野菜」と呼ばれていました。1859年に横浜港が開港した後、イギリスの駐日領事(ちゅうにちりょうじ)が居留地(きょりゅうち)でキャベツやレタス、パセリなどの栽培をはじめたことを受けて、当時の神奈川奉行(ぶぎょう)が居留地に向けたセロリやラディッシュなどの栽培を命じて西洋野菜が広まりました。

その後、アスパラガスやカリフラワーなども導入され、明治に入るとビートやアーティチョークなどの栽培に取り組みます。第二次世界大戦後は、進駐軍(しんちゅうぐん)の好みに合わせて調布(ちょうふ)や長野などでレタスの栽培がはじまり、1960年代にはレタスの生産量が急増して一般家庭の食卓にも登場するようになりました。

近年では、埼玉県内のシェフが西洋料理に使う新鮮なヨーロッパ野菜を入手したいと農家に相談したことがきっかけで、2013年にヨーロッパ野菜の品種改良や栽培を手掛ける「さいたまヨーロッパ野菜研究会(ヨロ研)」が発足しました。現在もシェフと若手農家、種苗(しゅびょう)会社などが協働し、ヨーロッパ野菜の普及に取り組んでいます。

ヨーロッパ野菜の種類~葉・茎

ヨーロッパ野菜の種類~葉・茎

それでは、ヨーロッパ野菜の主な種類を順にご紹介いたします。葉や茎を使用するヨーロッパ野菜は、次のとおりです。

スイスチャード

  • ヒユ(アカザ)科フダンソウ属
  • 収穫期:通年

ホウレンソウの仲間で、赤やオレンジ、黄といった鮮やかな色の茎が特徴です。色を生かしながら、サラダや炒(いた)め物などに使用します。

ルーコラ・セルバーティカ(ルッコラ・セルバチカ)

  • アブラナ科キバナスズシロ属
  • 収穫期:主に通年

ルッコラの仲間で、やや強めの辛(から)みとゴマのような風味があります。チーズや生ハムなどと相性がよく、サラダなどに使用します。

チーマ・ディ・ラーパ (西洋ナバナ)

  • アブラナ科アブラナ属
  • 収穫期:10~3月末

菜の花の仲間ですが、日本の菜の花よりも強い風味があります。アサリやホタテなどの貝類や、オリーブオイルなどと相性がよい野菜です。

カーボロ・ネロ(黒キャベツ)

  • アブラナ科アブラナ属
  • 収穫期:5~6月、10~3月

キャベツのように丸く結球(けっきゅう)しないタイプで、色が濃く縮(ちぢ)んだ葉を持ちます。肉厚で煮崩(にくず)れしないため、煮込み料理に使用します。

サボイキャベツ(ちりめんキャベツ)

  • アブラナ科アブラナ属
  • 収穫期:5~6月、10~1月

キャベツのように結球するタイプで、こまかく縮んだ硬めの葉を持ちます。黒キャベツと同様に、煮崩れしないので煮込み料理に適しています。

カリーノケール(サラダケール)

  • アブラナ科アブラナ属
  • 収穫期:5~7月、11~2月

ケールの仲間で、一般的なケールよりも苦みが少なくフリルにボリュームがあります。ミネラルや繊維質を豊富に含み、サラダやスムージーなどに使用します。

プンタレッラ(アスパラガスチコリ)

  • キク科キクニガナ属
  • 収穫期:10~12月

チコリの仲間で、花芽(かが・はなめ)がついた茎が伸びて「とう立ち」した部分を食べます。スライスしてサラダや炒め物などに使用します。

カステルフランコ

  • キク科キクニガナ属
  • 収穫期:10~3月

同じくチコリの仲間で、「冬のバラ」の別名をもちます。葉に赤い斑(はん)点が入ったレタスのような野菜で、サラダなどに使用します。

ラディッキオ

  • キク科キクニガナ属
  • 収穫期:種類による

同じくチコリの仲間で、球形や楕円(だえん)形のほか、日陰で栽培して芯を細く伸ばしたタイプがあります。サラダや炒め物、リゾットなどに幅広く使用できます。

ヨーロッパ野菜の種類~花・実

ヨーロッパ野菜の種類~花・実

次に、花や実を使用するヨーロッパ野菜をご紹介いたします。

カリフローレ(スティックカリフラワー)

  • アブラナ科アブラナ属
  • 収穫期:4~6月、10~1月

カリフラワーを細長いスティック状に品種改良した野菜です。加熱すると、茎が明るい緑に変わります。サラダや炒め物などに幅広く使用できます。

ロマネスコ

  • アブラナ科アブラナ属
  • 収穫期:6月、11~12月中旬

カリフラワーの仲間で、幾何学的に並ぶ三角形のつぼみに特徴があります。茎も食べられるので、生または加熱してサラダやパスタなどに使用します。

アーティチョーク

  • キク科チョウセンアザミ属
  • 5~6月

欧米で非常に人気が高い野菜の1です。丸い大きなつぼみをゆでて、はがした「がく」の肉厚の部分を歯でしごいて食べるほか、芯もスライスして食べられます。

トマトベリー

  • ナス科ナス属
  • 収穫期:4~7月、10~12月

イチゴに似た形の愛らしいトマトで、一般的なプチトマトよりも甘みが強めです。形を生かして、サラダやオードブルなどに使用します。

フィレンツェ(イタリアナス)

  • ナス科ナス属
  • 収穫期:6~9月

イタリアで人気が高く、米(べい)ナスよりもひと回り大きめの品種です。ソテーやグラタンなどに使用して、とろける食感とうま味を楽しみます。

白ナス(クララ)

  • ナス科ナス属
  • 収穫期:7~9月

皮が白く、細長いタイプや楕円形のタイプがあります。ソテーやグラタンなどに使用して、とろける食感を味わいます。

モロッコインゲン(平さやインゲン)

  • マメ科インゲンマメ属
  • 収穫期:5~7月

一般的なインゲンよりも大きく鞘(さや)が平たい品種で、サラダや炒め物などに使用します。味つけは洋風・和風のどちらにも合います。

ズッキーニ

  • ウリ科カボチャ属
  • 収穫期:5~8月

見た目はナスに似ていますが、カボチャの仲間の野菜です。色は緑と黄があり、炒め物や煮込み料理などに幅広く使用できます。

花ズッキーニ

  • ウリ科カボチャ属
  • 収穫期:4~7月

ズッキーニの花が咲いた直後に収穫したものです。おしべとめしべを取り除いて中にひき肉やチーズなどを詰め、揚げたり焼いたりしていただきます。

バターナッツかぼちゃ

  • ウリ科カボチャ属
  • 収穫期:8~10月

カボチャの仲間で、ヒョウタンのような形をしています。身は明るいオレンジ色で甘みが強く、ねっとりとした食感があります。スープやグラタン、パイなどに使用します。

アトランティックジャイアント

  • ウリ科カボチャ属
  • 収穫期:8~9月

ハロウィンの「ジャック・オ・ランタン」に使用する巨大なカボチャで、食用には向きません。中の身や種(たね)を取り出してから、顔をくり抜いて仕上げます。

ヨーロッパ野菜の種類~根

ヨーロッパ野菜の種類~根

続いて、主に根を使用するヨーロッパ野菜をご紹介いたします。

フィノッキオ(フェンネル)

  • セリ科ウイキョウ属
  • 収穫期:5~6月、11~12月

ハーブの仲間の野菜で、「鱗茎(りんけい)」と呼ばれる球状の部分を食べます。スライスしてサラダやマリネなどに、加熱してパスタやグラタンなどに使用します。

スティッキオ(スティックフェンネル)

  • セリ科ウイキョウ属
  • 収穫期:主に通年

フェンネルの仲間を細いスティック状に品種改良したものです。白い鱗茎の部分をサラダやマリネなどに、葉をスープやパスタなどの香りづけに使用します。

ビーツ

  • ヒユ(アカザ)科フダンソウ属
  • 収穫期:主に通年

ホウレンソウの仲間で、鮮やかな赤や黄の茎と根が特徴です。根をスライスしてサラダなどに、葉と根をソテーや煮込み料理などに使います。

ゴルゴ(うず巻きビーツ)

  • ヒユ(アカザ)科フダンソウ属
  • 収穫期:主に通年

ホウレンソウの仲間で、根の断面にうず巻き模様が出るタイプです。模様を生かしながら、ビーツと同様にサラダや煮込み料理などに使用します。

トロペア

  • ヒガンバナ科(ユリ科)ネギ属
  • 収穫期:5~6月

イタリア原産のタマネギの仲間で、鮮やかな赤紫の根と甘さに特徴があります。サラダやジャムなどのほか、ソテーや煮込み料理などに使用します。

ヨーロッパ野菜の栽培地

最後に、国内におけるヨーロッパ野菜の栽培地についてご紹介いたします。先述のとおり、現在は埼玉県を中心にしてさまざまなヨーロッパ野菜が栽培されています。そのほかの地域では、北海道や山形、岩手、福岡などが主な生産地で、直売所だけでなく通信販売でも購入できます。

近年では、ヨーロッパ野菜の色合いや風味を生かした料理を提供する店が増えており、埼玉県内では1000軒(けん)を超えるレストランでヨーロッパ野菜を使用しています。さらに、寿司(すし)のネタにヨーロッパ野菜を用いる取り組みもはじまり、和食への展開も期待されています。

ヨーロッパ野菜に親しもう

今回は、ヨーロッパ野菜の概要と主な種類、国内の栽培地についてご紹介いたしました。ヨーロッパ野菜は、鮮やかな色合いと独特の風味に特徴があります。近年では国内でも栽培が可能になり、レストランや通信販売などで気軽にヨーロッパ野菜を味わえるようになりました。

この機会に、ぜひヨーロッパ野菜を用いた新しい食の文化をお楽しみください。

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