2022年11月20日 | 虫
【虫の飼育】カブトムシは冬を越せない?飼育した虫は逃がしても大丈夫?
自身の趣味や子どもの自由研究等でカブトムシを飼育している方は少なくありません。
本記事では、カブトムシが冬を越せないのかどうかや、冬を迎える前に飼育していたカブトムシを自然に逃がしても大丈夫なのかについても解説します。ぜひ最後までご覧ください。
カブトムシの特徴と生態。冬は越せない?
カブトムシの成虫は、寿命がおよそ2~3ヶ月と短いため、冬を越すことができません。ここから、カブトムシの特徴について順番に確認していきましょう。
カブトムシの生態
カブトムシの生態に関する基本情報は以下の通りです。
体長:オスは30〜54mm(角を除く)、メスは30〜52mm |
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生息地:北海道・本州・四国・九州・南西諸島 |
学名:Trypoxylus dichotomus |
和名:カブトムシ(兜虫・甲虫) |
活動時期:6~8月 |
食べ物:成虫はクヌギなどの樹液、幼虫は腐植土 |
カブトムシは基本的に夜の間活発に活動します。昼間に活動しているものも見かけますが、物陰や落ち葉の下に隠れている場合がほとんどです。日が暮れると、カブトムシは樹液の匂いに誘われて飛んできます。
カブトムシの一生
カブトムシは、幼虫からサナギに変化して成虫になる完全変態の甲虫です。カブトムシのメスは、3mmほどの大きさである乳白色・楕円形の卵をバラバラに産卵します。飼育状態なら、産卵がしやすいように置いた発酵マットをひっくり返すと、卵を見つけることができるでしょう。なお、カブトムシが卵の状態である期間は、10日〜2週間です。
ここから、各成長段階について紹介します。
幼虫
カブトムシの幼虫は、腐葉土などを食べて8ヵ月程度かけて育っていきます。エサをたくさん食べ、10cmを超えるサイズにもなる比較的大きな幼虫です。土の中で生活することもあり、目は退化していますが、大顎を鳴らして他の仲間や虫との接触を回避します。
サナギ
カブトムシは約3週間サナギの状態で地中に潜んでいます。中でもオスは、サナギになった状態から立派な角が生えているため、メスとの区別が容易にできるでしょう。
羽化
サナギから羽化したばかりのカブトムシは、まだ黒くなっておらず、羽も白色です。時間をかけて黒く、硬い羽になっていきます。
また、羽化してもすぐに活動を始めることはなく、10日ほど土の中でじっと暮らしています。
クワガタは越冬できる種類もいる
冬を越せないカブトムシに対して、クワガタは気温が15℃を下回ると、越冬準備の段階に入るものがほとんどです。低山性のクワガタは、だいたい18℃前後で活動が鈍くなり、15℃以下になるとエサを食べなくなります。10℃以下になると、クワガタはほとんど動かず、消耗を抑えて越冬状態になります。
ただし、気温によってはエサを食べるために活動することもあるため、飼育下のクワガタにおいては、10〜11月頃までエサを切らさないようにしましょう。
長生きする外国産カブトムシ4種類
続いて、カブトムシの中でも比較的長生きする4種類を以下の流れで紹介します。
- ヘラクレスオオカブト
- コーカサスオオカブト
- ティティウスシロカブト
- ヒルスシロカブト
各種の寿命や特徴について、ここから詳しく確認しましょう。
① ヘラクレスオオカブト
中南米の世界の人気者であるヘラクレスオオカブトは、中南米に生息する大型のカブトムシです。成虫の寿命は1年ほどあります。
② コーカサスオオカブト
コーカサスオオカブトは、成虫の寿命およそ3〜4ヶ月のカブトムシです。闘争心むき出しの性格をしており、アジア地域で最大のサイズを誇ります。3本角と黒光りしたボディがトレードマークのカブトムシです。
③ ティティウスシロカブト
ティティウスシロカブトは、成虫の寿命およそ8〜10ヶ月とカブトムシの中では長生きです。黄土色の体色で体長は70mm前後まで大きくなります。アメリカに生息し、ヒルスシロカブトより角が短い見た目をしています。
④ ヒルスシロカブト
ヒルスシロカブトは、成虫の寿命およそ5〜6ヶ月と半年間の飼育を楽しめます。全体的に黄土色っぽい色をしており、メキシコやグアテマラに生息しています。最大で8㎝を超える大型種です。
【外国産カブトムシは逃がしてもよいのか?】外国産カブトムシが引き起こす3つの影響
外国産カブトムシは野外に逃してもよいのでしょうか?その答えは「NO」です。ではなぜ逃してはいけないでしょうか?外国産カブトムシ引き起こすとされる3つの影響について解説します。
- 住みかを奪う
- 遺伝子の多様性の喪失
- 病原菌の感染
【参考】外来生物法|環境省
住みかを奪う
外国産のカブトムシが野外に放たれることで、その地域の生態系を崩す危険があります。なぜなら、もともとその地域に生息していた生き物のエサを横取りしたり、争ったりするリスクが高まるからです。同じような食物や生息環境を持っている在来のカブトムシと競合すれば、簡単に奪い取って駆逐してしまうでしょう。
生態系は、長い期間をかけて作り上げられた食物連鎖や相互利用の関係などが積み重なって成立しています。 ここに外から生物が侵入してくると、生態系が崩壊してしまい、人間や農林水産業まで幅広く悪影響を及ぼす場合があります。
遺伝子の多様性の喪失
在来のカブトムシと外国産のカブトムシの交雑が起こると、遺伝子流入が起きるため、在来カブトムシの集団にはなかった遺伝子が混ざります(遺伝子汚染)。
外国産の場合、種類が異なりますのでそもそも交雑のリスクは低いですが、遺伝子汚染が絶対に起きない保証はありません。
最も注意すべきは、国内の他地域からのカブトムシの移動です。例えば、関東のカブトムシを広島で放すと、同種のためほぼ確実に交雑して遺伝子汚染が起きます。自然状態では広島と関東地方のカブトムシが交尾することはありえませんので、広島のカブトムシの持つ固有の遺伝子の多様性が失われます。これを国内移入種といい、研究者の間で問題視されています。
病原菌の感染
外国産のカブトムシやクワガタの飼育(卵を取って幼虫から育てる)をすると、病原菌の感染を広めてしまうことがあります。特に、飼育中に使う土や腐葉土などを混ぜたものには、日本にはいないダニやセンチュウなどが入り込んでいる可能性があります。飼育時に劣化したマットを廃棄しますが、熱処理せずに庭先などに捨ててしまうと、ダニやセンチュウをばら撒いてしまうことになり、病原菌を広め、国産のカブトムシやクワガタに影響が出ることも考えられます。
そのため、外国産のカブトムシやクワガタを飼育した場合、使ったものを適切に処理して廃棄する必要があります。
カブトムシを長生きさせる飼育ポイント
最後に、カブトムシを長生きさせるポイントを紹介します。内容としては、以下の4つです。
- 良質なエサを与える
- 飼育マットを見直す
- 湿度・温度管理を徹底する
- 大きめのケースで飼育する
ここから、各ポイントについて詳しく説明します。
良質なエサを与える
カブトムシは水分の多い果物や野菜を好んで食べますが、特におすすめなのはバナナです。 バナナは栄養価が高く、適度に水分を含んでいます。さらに、汁が飛び散る心配もないため、飼育環境内を清潔に保ちながらエサを与えられます。
ただ、バナナがエサに適しているとはいえ、腐っているものを与えないように注意しましょう。なぜなら、カブトムシの体調を崩すからです。カブトムシに与えるエサは、新鮮なものを用意して、こまめに交換することを心がけましょう。
こまめに交換するといったことが難しいと感じる方は、昆虫ゼリーを活用するのも良いでしょう。
飼育マットを見直す
カブトムシを飼うときは、市販の清潔なカブトムシ用のマットを使って飼育しましょう。
カブトムシのケースに敷く土として、庭や山の土を利用するのが一般的かもしれません。
しかし、自然界の土には雑菌やゴミ、虫が入っているため、病気の原因となってしまう可能性があります。衛生管理が行き届いている市販のマットなら、カブトムシが病気になりづらく、過度な体力消耗の心配もありません。
ポイントは、カブトムシが潜って全身を隠せるくらいたっぷりマットを敷いてあげることです。気温が高く明るい昼間は、カブトムシが潜って中で休めるような環境づくりをしてあげましょう。
温度・湿度管理を徹底する
カブトムシの適温は、22〜26℃程度となります。寒すぎも暑すぎも得意ではないことを覚えておきましょう。上述したように、カブトムシは昼間になると樹木の中で休み、比較的涼しい夜間に活動します。
特に暑い日は、空調が整っている室内に避難させたり、凍らせたペットボトルを飼育ケースに添えたりして、温度を調節してあげましょう。
逆に冷え込む日は、ケースをタオルで包んだり、温かい室内に避難させたりなどの工夫をして、温度を下げ過ぎないようにします。
また、湿度が低いと弱ってしまうため、毎日霧吹きを使ってマットを湿らせてあげてください。ただし、湿度を上げるとカビが発生しやすくなるため風通しの良い場所で飼育しましょう。
大きめのケースで飼育する
カブトムシを長生きさせるためにも、なるべく大きめのケースで飼育してあげましょう。狭いスペースで飼育すると、カブトムシにストレスがかかってしまうからです。過剰なストレスは寿命を縮めてしまうため、カブトムシが適度に動き回れるスペースを確保しましょう。
カブトムシは冬を越せない!逃がさず、最後まで飼育する
本記事では、カブトムシの生態や、外国産や国内の他地域のカブトムシが与える影響、長生きさせるコツを紹介しました。短い期間にしか一緒に過ごせないカブトムシは、エサや温湿度管理、ケースの大きさなどで長生きさせられる甲虫です。
外国産のカブトムシの飼育を放棄して、野外に放すことは、生態系に被害を及ぼすため十分注意する必要があります。
今回紹介したカブトムシの生態や飼育方法を踏まえたうえで、責任を持ってカブトムシの世話をしましょう。