2021年1月28日 | 園芸・ガーデニング
サボテンの冬越しは重要!枯らさないための管理方法を解説
日増しに気温が下がってくるこの時期、植物の冬越しが気にかかります。特にサボテンは、乾燥した暑い砂漠に生育するイメージがあるので、冬の寒さに耐えられるか心配する方も多いことでしょう。
今回は、サボテンの基礎知識と冬の管理方法を中心にお伝えし、枯らさないための基本の育て方やトラブルへの対処法などもご紹介いたします。
実は冬に強い?サボテンの基礎知識
正しい管理をするために、まずはサボテンの基礎知識を身につけましょう。
サボテンの概要
サボテンは、ナデシコ目サボテン科に属する常緑の多年草で、南北アメリカ大陸や西インド諸島、ガラパゴス諸島などに自生します。多くは乾燥した地域の岩の間や植物の根元などで育ち、品種によっては標高4,000mを超える高山に分布して積雪に耐えるものもあります。
サボテンのトゲは、葉のつけ根にある「托葉(たくよう)」が変化したもので、その形状は多種多様です。トゲの役割もまたさまざまで、水分の蒸発を防いだり、影を作って温度の上昇を抑えたりします。また、夜露(よつゆ)を地面に落として根に吸収させたり、水分をねらう外敵から身を守ったりする役割もあります。根元に「刺座(しざ)」と呼ばれる部分があるものは、トゲがなくてもサボテンの部類に入ります。
水を貯蔵する組織をもつサボテンは、もともと多肉植物に分類されますが、見た目や種類の多さから、一般的には別に扱われています。環境が整えば、すべての品種で赤やオレンジ、黄、白などの花を咲かせます。
サボテンを含む多肉植物については、「多肉植物の種類や上手な育て方についてご紹介」の記事もご覧ください。
サボテンの歴史
15世紀、コロンブスによってアメリカで発見されたサボテンは、ヨーロッパから世界へと広まりました。日本では、江戸時代の植物の書物「大和本草(やまとほんぞう)」に記録が残っています。
サボテンはポルトガル人から伝えられたとされ、当時の外国船員はウチワサボテンで食器を洗っていました。ポルトガル語で石けんを意味する「Sabão(シャボン)」がついた手=「シャボンテ」が変化したのが『サボテン』の由来といわれます。
愛知県では、大正時代からサボテンの栽培がはじまりました。昭和に入り、多くの果樹園農家がその生産に乗り出しますが、伊勢湾台風の被害以降はサボテン栽培が主体となりました。現在では、タネから育てるサボテンにおいて日本一の生産量を誇ります。
サボテンの種類
サボテンの種類は非常に多く、原種だけでおよそ2,000種、園芸品種を含めると7,000とも3万ともいわれます。ここでは、一般的な3つの分類でサボテンの種類をご紹介いたします。
ウチワサボテン
ウチワのような形が連なるサボテンで、平たい形だけでなく卵型や棒状、筒状、球状などがあります。ウチワサボテンは刺座に針状のトゲと細いトゲがあり、刺さるとなかなか抜けません。
柱(ハシラ)サボテン
最も種類が多いサボテンで、柱状のほかに筒状や球状などがあります。太さや長さのサイズはさまざまで、品種によっては高さが10m以上に伸びます。
木の葉(コノハ)サボテン
細い茎と緑の葉をもつため、一見するとサボテンに見えませんが、葉のつけ根にトゲが生えています。サボテンの原始的な姿といわれるタイプです。
冬のサボテン管理法 5ポイント
それでは、冬の管理のポイントを5点確認しましょう。サボテンは基本的に生命力のある植物なので、ポイントを押さえれば冬の管理は難しくありません。
① 冬のサボテンの状態
サボテンが自生する地域の多くは、短い雨期と長い乾期のサイクルがあり、日本の気候とは全く異なります。雨期はサボテンが水分を吸って生長する期間、乾期は暑さや乾燥から身を守って休眠する期間です。日本では、生育期である雨期を春・秋、休眠期である乾期を夏・冬に当てはめて管理します。したがって、日本の冬はほとんどのサボテンが乾燥に耐えるために休眠する時期といえます。
冬のサボテンは、乾燥によって多少しなびたり元気がなくなったりするケースがあります。下記を参考に、しっかり休ませることが大切です。ただし、品種によって休眠期が異なるので、それぞれの育て方に従いましょう。
② 冬越しの温度
先述のとおり、一部のサボテンはアンデス山脈の高地でも育つほどですから、寒さはそれほど苦手としません。とはいえ、耐寒性のある品種でも、真冬に屋外の日陰に置いたままでは凍ってしまいます。冬越しの温度は、一般的には0℃以上、寒さに弱い品種は5℃以上を保ちましょう。
霜が降りる日や雪の降る日は、屋外のサボテンの鉢を不織布(ふしょくふ)などでおおって保温してください。寒さに弱い品種は、下記を参考に室内で管理します。
③ 冬の置き場所
寒さに強いサボテンを屋外で冬越しさせるときは、軒下(のきした)などの雨が当たらない場所に置き、昼間は十分に日光に当ててください。原産地の乾期は、昼間と夜間の気温に大きな差があります。乾期に相当する冬の間は、なるべく原産地の環境に近づけて休眠させることがポイントです。
寒さの苦手なサボテンは室内で管理しますが、あまり過保護には温めず、冬を体感させましょう。昼間は日当たりのよい窓辺に置き、夜は5℃以下にならない場所に移動させます。室内では、エアコン・ストーブ・加湿器などが吹き出す風の当たらない場所を選んでください。春に最低気温が5℃を上回るようになったら、再び外で管理します。
④ 冬の水やり
先述のように、冬は休眠期に当たるため、水を与えずにしっかり休眠させましょう。ただし、冬に生長するタイプのサボテンには、月に1回くらいのペースで水やりを続けます。冷たい冬の水道水も、ジョウロなどにいったんくみ置き、室温にしてから与えると安心です。水やりは午前中に、鉢底から出るくらいの量を与えてください。
⑤ 植え替えと肥料はNG
植え替えの作業は、植物の根や茎に負担がかかります。そのため、サボテンに限らず植物の植え替えは、生育期に作業するのが一般的です。休眠期に植え替えが原因で根や茎を傷めると、新しい組織の生長は促しにくいといえるでしょう。冬はサボテンの休眠期に当たるので、負担のかかる植え替えは避けてください。
また、休眠中で生長しないサボテンには肥料も与えません。必要以上に栄養分を与えてしまうと、根が傷んだり腐ったりして枯れるおそれがあります。
植物の冬の管理については、「冬のガーデニングで気をつけるポイント」の記事でご紹介しています。
安心して冬を越すために!サボテンの基本の管理
冬を元気に過ごすには、適切な管理で健康なサボテンを育てることが大切です。
水やりと置き場所
生育期に相当する春と秋は、土の全体が乾いたらたっぷりと水やりをします。夏は多くのサボテンが休眠するので、土が乾いたときに少量を与える程度にしましょう。基本的に、日当たりと風通しのよい屋外で管理し、夏は遮光ネットなどをかぶせてください。
室内で育てるときは、日当たりのよい窓辺に置き、生育期と休眠期のメリハリをつけて水やりをします。
肥料の与え方
ほかの草花よりも生長が遅めのサボテンは、あまり肥料を必要としません。ただし、株の生長を促したり花を咲かせたりしたいときは、生育期に液体肥料を月に2~3回、化成肥料を月1回くらいのペースで与えます。
サボテンの肥料は、フマキラー「カダン バランス液肥AO あらゆる植物用」をおすすめします。根からの養分の吸収を助け、根腐れを起こしにくくするアルギン酸オリゴ糖を配合。基本の栄養素であるチッソ・リン酸・カリに加え、マグネシウムやマンガン、ビタミンなども含有します。また植物の生長に不要な色素や香料を使用しておらず、濃度障害が起こりにくい配合となっています。しかもニオイがなく清潔な肥料です。
植え替えのポイント
基本的には、1年に1回のペースでひと回り大きな鉢に植え替えます。植え替え前は、水やりをせずに土を乾かしておきます。
皮の手袋などを着用して株を取り出し、土を落として弱った根をカットしてください。新しい鉢にサボテン用の土を半分くらい入れ、根を広げたサボテンを置きます。サボテンを軽く持ち上げながら土を足し、倒れない程度に浅く植えます。植え替えた後は水やりをせずに日陰に置き、数日してから水を与えて日なたに置いてください。
仲間の増やし方
生長して小さな茎が伸びたら、清潔な刃物で切り取って挿し木にしましょう。切り取った部分を日陰で数週間ほど乾燥させ、新しい土の上に置いて水を与えずに様子をみます。はじめは日陰で管理し、徐々に日光に当てる時間を増やしましょう。根が出たら、通常のタイミングで水やりをします。
サボテンのトラブル
トラブルのなかで多いのは、多湿による腐敗や、水不足・寒さによる枯れです。腐敗した部分を取り除き、元気な茎を挿し木にすると再生する場合もあります。また、黒い輪のような模様が出る黒斑(こくはん)病や、すすのような黒い粉がつくすす病などの場合も、病気の部分を取り除いて再生する方法をお試しください。
カイガラムシやワタムシなどの害虫がついたときは、ピンセットで丁寧に駆除しましょう。ダニは水で洗い流すか、サボテン専用の薬剤を散布します。
すす病については、「すす病とは?すす病が発生する原因と対策について」の記事で詳しくご紹介しています。
サボテンの性質に合わせた冬越しを
今回は、サボテンの基礎知識と冬の管理、基本の育て方とトラブルについてご紹介いたしました。品種にもよりますが、サボテンが休眠する冬は水やりを控え、日光に当てて管理しましょう。
静岡の寺では、樹齢300年以上とされる「大仙人掌(だいさぼてん)」が、天然記念物として大切にされています。このように長く大切に観賞するためには、サボテンの性質を知って好みの環境に近づけることが重要です。
冬越しの環境を整えて、ご自宅のサボテンとともに暖かな春の訪れを待ちましょう。