2018年2月15日 | 虫
蚊は冬どこにいるの?越冬する方法や場所を解説
梅雨時から夏場にかけて「痒い!」を引き起こす原因にもなる蚊ですが、気温が低くなるにつれてその存在感は薄れてきますよね。夏場にあれだけ厄介な存在であった蚊は冬になるとどうしているのだろう?
このような疑問をふとした時に感じる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は蚊の冬場の過ごし方に関連した情報を徹底解説します。蚊の生態や習性、日本で代表的な種類の蚊などに興味がある方も必見です。
蚊の基本的な生態や習性を知っておこう!
まずは蚊の冬の過ごし方を知る前にその生態や習性を知っておきましょう。蚊は種類、成虫、幼虫によって普段住む場所が異なりますが、ここでは成虫と幼虫に分けて基本的な生態や習性をご紹介します。
幼虫
蚊の成虫が卵を産み付けてから約2日~5日ほどで幼虫が生まれます。この幼虫は一般的にボウフラと呼ばれています。卵から孵化したボウフラは普段水面で生活していることがほとんどです。
これは蚊の成虫が池、下水溝、浄化槽、水田、沼、ため池など「水がある場所」に卵を産み付けるためです。種類によっては水が綺麗な場所に卵を産み付けるのが好きな蚊もいれば、汚い水を好む蚊もいます。
蚊が水辺に卵を産む理由は水の中にボウフラが成長するのに必要な落ち葉や小さな生物などの栄養源が豊富にあるためです。これらを餌にしたボウフラは4回の脱皮を繰り返しながら、約7日~10日でオニボウフラと呼ばれるサナギに成長します。
さらに約2日~3日でオニボウフラから成虫へとなります。このように蚊の幼虫は孵化してから成虫になるまでは基本的に水の中で生活しており、さらに成虫になるまでの期間も非常に短いのが特徴です。
成虫
羽化した成虫は人の血のみを栄養源としているイメージがありますが、普段は草花や樹木から分泌される甘い汁が主食となっています。また、既に多くの方がご存じだと思いますが人や動物の血を吸うのは雌の蚊のみです。
雌の蚊のみが吸血をする理由は産卵に備えて高タンパクな栄養源が必要となるためです。人間の女性も妊娠中には赤身の肉、魚、鶏肉などタンパク質が豊富に含まれている食事を摂取することを推奨されていますが、これもタンパク質が胎児の成長に必要なアミノ酸の補給源になっているためです。
そして蚊も人と同様であり、新しい命(卵)を産むには高タンパクな栄養素が必要となります。人や動物の血には蚊にとって貴重な栄養源となるタンパク質が含まれているため、雌の蚊は吸血という行動をとっているのです。
ちなみに種類によっては雌でありながら吸血を必要としない蚊もいます。また、主に哺乳類を吸血する蚊、主に鳥類を吸血する蚊など好みの動物種もそれぞれ異なっているのが大きな特徴です。蚊の成虫の寿命は種類や時期にもよりますが、一般的に約1ヶ月~6ヶ月といわれています。
【参考】ウエストナイルウイルス媒介蚊の調査および防除マニュアル|厚生労働省
日本で代表的な3種類の蚊について
蚊の一般的な生態や習性をご紹介しましたが、ここからは種類別に見た蚊の特徴などを解説します。ご紹介するのは現在日本で代表的とされている3種類の蚊です。
アカイエカ
アカイエカはイエカ属に分類される蚊であり、日本でよく見かける蚊の一種です。体長約5.5ミリ、赤褐色のアカイエカの生息地は北海道から九州までほぼ国内全域に渡ります。イエカ(家蚊)という名称どおり家に侵入するのが非常に上手な蚊であり、蚊対策で窓をしっかり閉めたつもりでも隙間を突いて侵入してきます。
就寝時に電気を消すと耳元から「プーン」という耳障りな羽音が聞こえてくるという経験された方は非常に多いと思いますが、これもアカイエカが原因の可能性が高いでしょう。日没から明け方にかけて活発的に吸血を行い、その対象は人だけではなく犬やニワトリなどにも及びます。アカイエカは家周辺のドブや下水溝の汚水が溜まった場所を主要発生源としています。
アカイエカについては、「アカイエカが発生する原因とは?アカイエカの習性を知って対策しよう」でも詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
チカイエカ
チカイエカは前述のアカイエカと近縁の種に属する蚊であり、体長は約5.5ミリで見た目もアカイエカと非常に似ています。チカイエカの大きな特徴は「1回目は吸血を行わなくても産卵をすることが可能」ということです。
このように吸血を行わずに卵を産むことができることを「無吸血産卵性」と言います。チカイエカは産卵に血を必要としないため、人や動物が少ない場所でも容易に子孫を残すことが可能です。
ただし、無吸血での産卵は前述のように1回目の産卵までであり、2回目以降は他の蚊と同じように吸血を必要とします。チカイエカの主な生息地ですが本州、四国、九州となっています。また、チカイエカが好む場所は地下鉄や商業施設といった建物内になっており、都市部で見かけることが多いのが特徴です。
そのため、会社のオフィス、ショッピングセンターなどで蚊に刺された時はチカイエカの仕業の可能性が高いでしょう。チカイエカの吸血が活発になる時間帯ですが主に夜間が中心となっており、都市部での被害が多いようにビルの排水溝、浄化槽、地下水槽などを主な発生源としています。
チカイエカについては、「チカイエカが発生する原因とは?チカイエカの習性を知って対策しよう」でも詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
ヒトスジシマカ
ヒトスジシマカは体長が約4.5ミリ、黒色の縞模様が大きな特徴の蚊です。あまり聞いたことがないという方も多いと思いますが、日本では通称「ヤブ蚊」と呼ばれている蚊がこのヒトスジシマカとなります。
2014年に70年ぶりとなるデング熱の国内感染が発生しましたが、その原因となったのがこのヒトスジシマカです。ヒトスジシマカの主な生息地は東北の宮城県あたりから九州地方までとなっており、本州では頻繁に見かけることができます。
また、発生場所としてはヤブ蚊と呼ばれているように草が生え茂っている藪、公園などが中心であり、家に侵入してくることもあります。アカイエカ、チカイエカと異なる点は吸血を行う時間帯が昼間から夕方メインということです。
もちろん朝方も注意しておく必要があり、周囲が暗くなる夜間でも灯りが照らされている場所では積極的に吸血を行います。雨水が溜まりやすいエリアや古タイヤを発生源としているのも特徴です。
ヒトスジシマカについては、「ヒトスジシマカが発生する原因とは?ヒトスジシマカの習性を知って対策しよう!」でも詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。
蚊が冬を過ごす方法や場所は種類によって異なる
国内で代表的な3種類の蚊の特徴や基本情報を解説しましたが、これらの蚊は越冬する方法や場所がそれぞれ異なります。そのため、ここではアカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカと種類別に分けて「蚊がどのようにして冬を過ごすのか?」という疑問に迫ってみます。
雌の成虫のみが越冬するアカイエカ
アカイエカの活動時期は基本的に桜が咲き始める春先から晩秋までの3月~11月となっています。この期間に交尾、産卵を複数回行うことで次の世代に命を繋げているのが特徴です。
また、アカイエカは卵から孵化して成虫になるまでが約2週間、成虫になってからは約1ヶ月で寿命を迎えます。つまり、約50日という短い期間で子孫を残していることになります。
これがアカイエカの基本ライフサイクルとなりますが、晩秋に孵化した雌は少し事情が異なります。冬が間近に迫った中で成虫となった雌は翌年の春まで約6ヶ月間越冬に適した場所を見つけ、そこで休眠状態に入ります。
アカイエカが越冬場所に選ぶことで有名なのは山や丘にある薄暗い洞窟などです。また、少し驚くかもしれませんが実はアカイエカは私たちの身近なところで越冬をしていることもあります。
代表的なところでは床下、物置小屋の隅などが該当します。また、アカイエカは家の中に侵入するのを好む性質でもあるため、押入れ、クローゼット、下駄箱の中で冬を越す個体もいます。
どこで冬を越すにしても共通しているのは「寒さをしのげる薄暗い場所」ということです。無事に冬を越した雌のアカイエカは春に一度だけ産卵して次の世代へバトンタッチします。また、雄のアカイエカは雌と違って越冬はできずに死に絶えてしまいます。
冬でも活発的な活動をするチカイエカ
アカイエカの亜種でもあるチカイエカですが、大きな特徴は「年間を通して活発に活動する」ということです。アカイエカは主な活動時期が3月~11月でしたが、チカイエカは1年間フルに吸血を行うという性質を持っています。
つまり、動物や昆虫によく見られる「冬眠」がない蚊ということになります。もともとイエカ属は寒さに強く成虫のまま冬を過ごすことができますが、チカイエカは冬眠を必要としないため、この点はアカイエカより優れているといえるでしょう。
もちろん気温が氷点下に近いような真冬並みであれば活動力は低下しますが、地下鉄やオフィスなど寒さが若干緩和される場所では積極的に吸血を行います。冬に蚊に刺されたという経験がある方はチカイエカの可能性が極めて高いといえます。
基本は卵のまま越冬するヒトスジシマカ
ヒトスジシマカはとにかく人の血が大好きな蚊であり、私たち人間には厄介な存在ですが、寒さに弱いのが弱点とされています。そのため、ヒトスジシマカは前述のアカイエカ、チカイエカと異なり、成虫のまま冬を越すことはできません。
ではヒトスジシマカはどうやって冬を越すのか?という疑問ですが卵のまま越冬することになります。ヒトスジシマカが卵を産み付ける場所は適度に溜まった水際の側面などであり、ここで卵のまま冬を過ごします。
また、九州の一部地域では幼虫越冬が行われていることも確認されています。ヒトスジシマカの発育に最適な気温は25度~30度であるため、チカイエカと異なり冬に脅威になることはまずありません。ちなみにヒトスジシマカの卵は乾燥にもよく耐えることができるため、越冬には最適な環境でもあります。
冬だから「蚊に刺される心配はない」という考えは危険
アカイエカ、チカイエカ、ヒトスジシマカの3種類の蚊の冬の過ごし方を解説しました。アカイエカ、ヒトスジシマカに関しては気温が最も低くなる冬場は吸血を行わないため、大きな問題になることはありません。
しかし、前述のようにチカイエカは冬の間も冬眠することなく地下鉄や商業施設などで吸血を行います。そのため「冬だから蚊に刺される心配はない」という考えを安易に持つのは危険でもあります。
特に蚊は感染症のリスクがある生物です。アカイエカはバンクロフト糸状虫、日本脳炎などを媒介し、ヒトスジシマカは先ほども取り上げたようにデング熱を媒介します。冬場でも活発的に活動するチカイエカも国内での感染例はないものの、ウエストナイル熱の媒介が可能な蚊です。
これらの蚊媒介感染症は人から人へ直接感染することもありませんし、全ての蚊がウイルスを持っているわけではないため、過度な心配をする必要はありません。しかし、万が一の事態が起きないように普段からできるだけ蚊に刺されないような体制を整えておくことも大切です。
【参考】蚊媒介感染症|厚生労働省
蚊の冬の過ごし方を知って万全な対策を
今回は蚊の基本的な生態や習性、国内で代表的な3種類の蚊の特徴と冬の過ごし方を解説してきましたがいかがでしたでしょうか?「蚊は夏の生き物」という常識は確かに半分は正解ですが、半分は間違いです。
冬に活発的に活動する蚊が存在することを知らなかったという方は、今年の冬はぜひ「冬の蚊対策」にも力を入れてみてください。また「冬なのに何で蚊に刺されたの?」という疑問をお持ちの方もぜひ参考にしてくださいね。