2020年4月10日 | 虫
【被害急増!】ヤマビルの被害が多発する原因とは?ヤマビルの習性を知って対策しよう
ランニングやウォーキングに並んで、最近は登山の人気が高まっています。また、キャンプやハイキング、BBQなど自然の中で過ごすレジャーは、昔から根強い人気があります。特にこれからの季節は、自然の癒しや涼しさを求めて、山や森に出かけるケースが増えてくると思われます。
山などに出かける際、注意したいのが害虫による被害です。蚊などに刺されないように虫よけスプレーを持参する人は多いと思いますが、他にも山にはやっかいな「ヤマビル」がいて、近年ではその被害が多発しています。
一体ヤマビルとはどんな生き物なのでしょうか?今回はヤマビルの生態から、被害が多発する場所の特徴、人への被害、対策について見ていきます。
ヤマビルの生態
市街地では滅多に目にすることがないため、ヤマビルの姿を見たことがないという人も多いとのではないでしょうか。自然教室で山に出かける際などは、決まって先生からヤマビルに関する注意点が説明されますが、そこでヤマビルの存在を知った児童も多いと思います。ここでは、ヤマビルの姿や生息場所、活動時期などについて見ていきます。
特徴や形態
ヒルの多くは水辺に生息しますが、ヤマビルは陸に棲むヒルで、吸血性のヒル類としては日本で唯一の陸生のヒルです。ミミズの仲間とする環形動物のヒル類顎ヒル目に分類され、山野で大型哺乳類にくっついて吸血します。
体長は約3cmで伸び縮みし、倍近くまで伸びることも。茶色~こげ茶色をした背中には特徴的な3本の黒い縦筋があります。頭部と尾部に吸盤を持っていて、この吸盤で尺取虫のように器用に移動しますが、その動きは意外に速く、約1m/分の速度で移動します。
動物に付着すると、頭部から顎歯(がくし)を出して1時間程度たっぷりと吸血。吸血したヤマビルは丸々太りほとんど動きません。一度満腹になると長時間かけて消化し、6ヵ月以上もの絶食にも耐えられると言います。
※ヤマビルの画像をご覧になりたい方はこちらから ⇒ ヤマビル|Wikipedia
生息場所
ヤマビルは山林の日陰で湿った場所や、吸血対象となる野生動物が通る場所などに生息します。山の中の沢など山奥の水辺に多く生息するので、渓流釣りやキャンプで沢遊びなどをする際は十分注意しましょう。
吸血された野生動物が付着したヤマビルを運搬することで生息域を広げ、国内における生息分布の状況は、北海道と四国を除き、北は秋田県から南は沖縄で生息が確認されています。
活動時期
吸血行動が見られるのは4~10月。特に気温25℃前後、湿度70%程度の6~9月頃に多く活動し、12~2月は落ち葉や石の下などにじっと潜んでいます。
ヤマビルは雌雄同体で、吸血したヤマビルは約1ヵ月後に卵塊を落ち葉や石の隙間などに産みつけます。卵塊の直径は約1cm。ひとつの卵塊には5~10個の卵が入っていて、この卵塊を1~8個つくります。産卵から約1ヵ月後に孵化。体長約5mmの幼虫が産まれ、1~2年で成体になります。
ヒルの分類
「ヒル」と名がつく生き物は、ヤマビルのほかにも、池や沼、川などの淡水に生息する「チスイビル」や、生活圏でも雨上がりの日に姿を現す「コウガイビル」がいます。このうち、チスイビルはヤマビルと同じミミズの仲間ですが、コウガイビルは扁形動物でウズムシ類の仲間。分類学的には環形動物とは違った動物で、吸血もしません。
ヤマビルの被害が多発する原因
ヤマビルは体の表面や前吸盤の近くに感覚器を備えていて、人や動物が近くを通りかかると、体温や呼吸時に発する二酸化炭素などを敏感に感知して接近してきます。
もともとは山奥でひっそりと生息していたヤマビルが、人里まで生息域を広げてきた背景には、森林の手入れが行き届かず暗くじめじめした環境になったことや、ヤマビルを運ぶ野生動物が人里に現れるようになったことなどが要因と考えられています。
ヤマビルによる被害「吸血被害」
ヤマビルに吸血されると、血が止まらない、吸われた跡がかゆい、赤く腫れるなどの症状が出ることがあります。また、まれに傷口から細菌類による感染症を引き起こし、蕁麻疹(じんましん)や発熱を引き起こす恐れがあります。
ヤマビルは吸血しているとき、モルヒネのような物質(麻酔成分)を出しているため、痛みはほとんど感じず、吸われていることに気づかないこともあります。
人以外の血も吸うの?
ヤマビルは、ニホンジカ、カモシカ、イノシシ、タヌキ、ノウサギ、クマ、鳥類などを吸血します。特に体毛が少ない蹄部が吸血されやすく、ニホンジカの蹄に半寄生することもあります。
ヤマビルの被害にあったら
ヤマビルに吸血されていることに気づいたら、まずは体からヤマビルを取り除きます。吸血中でも歯は皮膚に食い込んでいないため、爪で吸盤を剥がすようにすればポロっと落とせるほか、塩や消毒用エタノールなどをかけるという方法があります。
傷口の処置
ヤマビルを取り除いたら、吸われた箇所を指ではさんでヤマビルの唾液成分を絞り出してから、消毒用エタノールや水で洗います。乾いてから絆創膏を貼って出血を止めます。抗ヒスタミン剤などの軟膏を塗っておくと、かゆみが抑えられます。熱やかゆみが治まらない場合は、皮膚科で受診しましょう。
ヤマビルの予防・対策・気をつける点
山道を歩いていたら知らぬ間にヤマビルがついていた、あるいは知らぬ間に吸血され気づいたら血が出ていた、こんな経験をされた人もいるのではないでしょうか。ヤマビルは、晴天時は落ち葉の下などに身を潜めていますが、大型動物が接近してくると表に出てきて、葉っぱや石の上で上体を大きく動かします。
そして、人に触れると、靴や衣服の隙間から入り込んで吸血します。ヤマビルに吸血されないよう、山道を歩くときは十分な対策をしてから出かけるようにしましょう。
服装に注意する
長袖・長ズボン、帽子や手袋などをしてできるだけ肌の露出を控えます。ヤマビルは足元から上がってくることが多く、ちょっとの隙間から皮膚へとたどり着くため、長めで厚手の靴下を履き、ズボンの裾を登山靴の中に入れるようにしましょう。ボタンのついたシャツなどは避け、上着の裾はズボンの中へ。手袋をし、首などには忌避剤をつけた手ぬぐいなどを巻いておくとよいでしょう。
吸血されていないか、定期的に足元を確認する
歩行中は足元に気をつけながら靴にヤマビルがついていないか定期的にチェックします。数人で行動する場合は、定期的に背中や頭部などを確認し合うようにしましょう。
腰を下ろす際は周囲をチェック
休憩などで腰を下ろす際は、周囲にヤマビルがいないか足踏みなどをして入念にチェックします。また休憩時はできるだけ地面に手をつけないよう心がけましょう。
地面に置いた荷物をチェック
地面に置いたリュックなどを再び担ぐときは、ヤマビルが付着していないか確認します。
虫よけ剤を使用する
虫よけスプレーなどの忌避剤もヤマビル対策におすすめです。フマキラーのスキンベープミストは、蚊はもちろんのこと、マダニやヤマビルにも対応したウォーターベースの虫よけ。お肌に直接スプレーできてお子様も安心してお使いいただけます。
【製品の特長】
- 虫よけ成分を10%配合しているので、効果が長時間持続します。
- お肌にやさしい潤水成分ヒアルロン酸Na配合。
- ウォーターベースで素肌にしっとりなじみ、舞い散りも少なくどなたでも安心してお使いいただけます。
庭や畑など生活圏内では?
ヤマビルの生息域が広がってきていることで、山に近いエリアでは生活圏内でヤマビルの被害にあうケースが増えています。自宅付近や畑などにヤマビルが発生している場合、次のような対策法があります。
湿気を防ぐ
じめじめした環境を好むヤマビルは乾燥した場所が苦手。ヤマビルが生息しにくい環境にするには、陽当たりや風通しを良くするのがいちばんです。そこで、庭や畑の近くにある樹木の伐採や剪定、草刈りや落ち葉かきなどが有効です。刈った草や落ち葉は、その場から取り除いてから乾燥させます。乾燥させにくい場合は、穴に埋めて堆肥化させて処分します。
ヤマビルがいた場合の対処法
ヤマビルは吸血して産卵することでどんどんその数を増えていってしまうため、庭や畑などでヤマビルを見つけたら、その場で駆除しましょう。靴で踏みつぶすだけではなかなか駆除できません。次のような方法でヤマビルを完全に駆除するようにしましょう。
- 塩や消毒用エタノールなどをかける
- ヒル用の虫よけスプレーをかける
- 火で焼く(火傷や火災にご注意ください)
- ハサミなどで切る
まとめ
ヤマビルに吸血されても症状が重くなるケースはありません。また、動物の血液だけを栄養源とするため、作物が被害を受けることもありませんが、ヤマビルの見た目を苦手とする人は多いのではないでしょうか。特に自宅の周辺で発生した場合、放っておくとどんどん数が増えてしまうので、ヤマビルにとって棲みにくい環境づくりをめざし、見つけたらしっかり駆除しましょう。
登山やキャンプにお出かけの際は蚊だけではなく、今回ご紹介したヤマビルも対策を実践して、快適にレジャーをお楽しみください。