2018年5月15日 | お役立ち情報
老後の年金は一体いくらもらえる?気になる年金受給額をシミュレーション
老後になると年金を受給できることはおそらく日本国民全員が知っていることです。しかし、実際に受給できる金額になると「?」という方が多いのではないでしょうか。たしかに将来的に受けることができる年金の金額を算出するのは複雑な一面もあるため難しいです。
安心できる老後の生活を送るには、現役時代からある程度の年金受給額の目安を把握しておくことはとても大切です。そこで今回は老後の年金受給額に関する情報をまとめましたので徹底解説します。
日本には2つの公的年金制度がある
現在の日本には主に2つの公的年金があります。よく「公的年金は2階建ての仕組み」という言葉が使われますが、これはこの2つの公的年金のことを指しています。将来の年金受給額の目安を把握するには、覚えておきたい点ですので、まずはこの2つの公的年金をご紹介します。
国民年金
国民年金は「基礎年金」とも呼ばれており、日本国内に住所を有する20歳以上~60歳未満の人すべてが加入する公的年金制度となります。「公的年金の2階建ての仕組み」において、この国民年金が「1階部分」に該当します。
国民年金には「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」の3種類があります。どの制度に加入するかは、その人の働き方によって変わってきます。3つの加入対象者は以下のとおりです。
- 第1号被保険者・・・自営業・学生・アルバイト、フリーター・無職の方
- 第2号被保険者・・・厚生年金保険の適用を受けている事業所にお勤めの方(一般的なサラリーマン)
- 第3号被保険者・・・第2号被保険者の配偶者で20歳以上60歳未満の方 (ただし年収130万円未満が条件)
以上が国民年金のそれぞれの加入対象者となります。国民年金の加入は国民の義務ですから、20歳以上~60歳未満の方は必ず加入する必要があります。ちなみに国民年金の保険料は年度ごとに見直しが行われていますが、平成30年3月までの保険料と平成30年4月以降の保険料は以下のようになっています。
期間 | 月額保険料 |
---|---|
平成29年度 (平成29年4月~平成30年3月まで) | 1万6,490円 |
平成30年度 (平成30年4月~平成31年3月まで) | 1万6,340円 |
【参考サイト】日本年金機構「国民年金の保険料はいくらですか。」
国民年金の月額保険料は1年ごとに見直しが行われるため、年に1回ほどは日本年金機構の公式ホームページをチェックしておくとよいでしょう。
厚生年金
公的年金制度の「2階部分」に該当するのが、こちらの厚生年金制度となります。厚生年金とは国民年金に上乗せされて給付される年金のことです。先ほども少し取り上げましたが、厚生年金は基本的に企業や会社にお勤めの方が加入する公的年金となります。
時々、厚生年金と国民年金はまったく別の年金制度と思い込んでいる方も見かけます。しかし、ベースとなっているのは20歳以上60歳未満の人すべてが加入する「1階部分」の国民年金であり、その上に厚生年金が上乗せされるという仕組みになっています。
つまりサラリーマンの方は「2階建て部分」に該当する厚生年金があるので、国民年金のみしか加入していない方よりも、将来受け取ることができる年金受給額が多くなります。厚生年金保険料は給料額によって異なりますが、事業主との労使折半で支払うのが特徴です。平成29年9月分 (10月納付分)からの厚生年金保険料額は以下のとおりとなっています。
標準報酬月額 | 折半額 (9.150%) |
---|---|
15万円 | 1万3,725円 |
16万円 | 1万4,640円 |
17万円 | 1万5,555円 |
18万円 | 1万6,470円 |
19万円 | 1万7,385円 |
20万円 | 1万8,300円 |
22万円 | 2万130円 |
24万円 | 2万1,960円 |
26万円 | 2万3,790円 |
28万円 | 2万5,620円 |
30万円 | 2万7,450円 |
国民年金の受給額計算方法
国民年金は20歳以上60歳未満の人すべてが加入し、支払う必要がありますから「将来受け取ることができる年金はいくら?」と多くの人が思っているでしょう。国民年金の受給額計算方法は後述する厚生年金と比較すると非常にシンプルです。国民年金の受給額を把握したい時は「加入期間 (保険料を納付した期間)の長さ」を使うことになります。具体的な計算式は以下のようになります。
○ 77万9,300円×加入期間 (保険料納付期間)/480
まず77万9,300円という数字ですが、これは20歳から60歳になるまでの40年間(480ヶ月)で保険料をしっかり納めた人が受給できる満額となります。つまり20歳から60歳になるまでの期間に一度でも保険料未納期間があると、国民年金(老齢基礎年金)は減額されることになります。例えばですが保険料未納期間が3年ある方の場合は65歳から受け取ることができる年金額は以下のようになります。
○ 77万9,300円×444ヶ月/480ヶ月=72万852円
このように国民年金の場合は単純に保険料を納付した期間のみで支給額を把握することができます。
ただし注意点としては国民年金を受けるには、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上あることが条件です(以前は25年以上)。
【参考サイト】日本年金機構「必要な資格期間が25年から10年に短縮されました」
つまり40年間(480ヶ月)のうち、保険料の未納期間が30年(360ヶ月)以上あると国民年金を受給することができなくなります。そのため、経済的に保険料を支払うのが困難な方は早めに保険料免除制度を利用するなどの対策を施すことを推奨します。
厚生年金の受給額計算方法
厚生年金の受給額の計算方法は非常に複雑となっています。したがってこれから紹介する計算式は完璧に覚えるのではなく「大体こんなもん」程度に把握しておくとよいでしょう。厚生年金の受給額計算式は以下のとおりとなります。
○ 報酬比例年金額+経過的加算+加給年金額=厚生年金受給額
厚生年金受給額を把握する上で難しい言葉がいくつか出てきました。これらを把握しないと受給額の目安を知るのは難しいため、一つずつ解説してみましょう。
報酬比例年金額
報酬比例年金額は厚生年金受給額を算出する上ではメインとなる項目です。報酬比例年金額とは大ざっぱに説明すると「平均給与」と「加入期間」を掛け合わせたものを指しています。
前述の国民年金の受給額は「加入期間 (保険料納付済期間)」のみで算出することができました。しかし厚生年金の受給額目安を把握するには、加入期間に加えて「平均給与」が必要になります。
これが厚生年金の受給額算出を難しくしている最大の要因となります。社会人になってから定年退職までの約40年間の給与額を把握している方は少ないでしょう。また、単純に給与の平均額を求めればよいというわけではなく、現在の価値に置き換える作業も必要になります。
したがって正確な平均給与を求める場合は、年金事務所などで確認するしか方法はありません。その他、報酬比例年金額の算出をさらに複雑にしているのが平成15年4月に行われた「総報酬制の導入」です。
平成15年3月までは「給与のみの平均 (平均標準報酬月額)」でしたが、平成15年4月以降は「給与+賞与の平均 (平均標準月額)」で算出する方法に変更になりました。つまり平成15年4月以前に厚生年金に加入している方は、4月以前と4月以降を分けて計算し、合算させるという作業が必要になります。報酬比例年金額の計算式は以下のようになります。
○ 平均標準報酬月額×7.125×平成15年3月までの被保険者期間の月数
○ 平均標準月額×5.481×平成15年4月以降の被保険者期間の月数
この2つの計算式で算出された金額を合算させたものが「報酬比例年金額」となります。なお、報酬比例年金額の計算式で使用する乗率は生年月日によって変わります。上記の計算式で使用している乗率は昭和21年4月2日以降生まれに適用されるものです。乗率に関する詳細は日本年金機構のホームページで確認することが可能です。
経過的加算
こちらも理解するのに少し時間がかかりそうな項目となります。経過的加算とは簡単に説明すると「厚生年金の加入期間が40年に満たない人が60歳以降もしくは20歳前に厚生年金に加入することで年金受給額を増やすことができる」ことです。
厚生年金に加入している人は当然のことながら厚生年金保険料を支払っていますが、この保険料には国民年金の基礎年金も含まれています。しかし、厚生年金の加入期間で国民年金(基礎年金)に反映される期間は20歳以上60歳未満に限られます。
一例を出してみましょう。19歳から59歳まで厚生年金に加入していたAさんがいます。Aさんは厚生年金加入期間が40年ですから、本来であれば国民年金も満額を受け取ることができます。
しかし前述のように国民年金の加入対象者は20歳以上60歳未満の方に限られるため、19歳の1年間分に関しては国民年金の加入対象外となります。つまり40年間厚生年金に加入していたにもかかわらず、国民年金は39年分しか反映されないということになります。
これではAさんが保険料の払い損になってしまいます。この損になってしまう部分を解消するために設定されているのが「経過的加算」となります。Aさんの例だと19歳の1年間分の国民年金が反映されていませんが、これを経過的加算として厚生年金に加えることで将来受給できる年金額を増やすことができます。
60歳以降の方も同様の考えで構いません。一例を挙げるなら22歳~60歳まで厚生年金に加入していた場合は、加入期間が38年となりますが、60歳から後2年頑張って働くことで経過的加算が加えられるため、将来受給できる年金額を増やすことができます。経過的加算額の計算式は以下のようになります。
○ 1,625円 (定額部分)×乗率×厚生年金加入月数 (上限480ヶ月)
○ 77万9,300円×厚生年金加入月数 (20歳以上60歳未満)÷480ヶ月
上記の2つの計算で算出された金額の差額が最終的な経過的加算額となります。なお経過的加算額の計算式で使用される定額部分の単価の乗率は日本年金機構のホームページにて確認することが可能です。
加給年金額
厚生年金には一定の条件を満たすことで「加給年金」と呼ばれる年金の上乗せ制度があります。加給年金は配偶者や子どもがいる時に支給される、いわゆる「家族手当」のようなものです。
厚生年金保険の加入期間が20年以上あり、被保険者が65歳になった時(もしくは定額部分支給開始年齢到達時)に生計を維持している配偶者または子どもがいる場合に加給年金が加算されます。具体的な加給年金額や年齢制限などは以下のとおりです。
対象者 | 加給年金額 | 年齢制限 |
---|---|---|
配偶者 | 22万4,300円 | 65歳未満(大正15年4月1日以前に生まれた配偶者には年齢制限なし) |
1人目・2人目の子ども | 各22万4,300円 | 18歳到達年度の末日までの間の子どもまたは1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子ども |
3人目以降の子ども | 各7万4,800円 | 18歳到達年度の末日までの間の子どもまたは1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子ども |
【参考サイト】日本年金機構「加給年金額と振替加算」
また配偶者の加給年金には「特別加算額」と呼ばれる上乗せ制度があります。
受給権者の生年月日 | 特別加算額 | 加給年金の合計額 |
---|---|---|
昭和9年4月2日~昭和15年4月1日 | 3万3,100円 | 25万7,400円 |
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日 | 6万6,200円 | 29万500円 |
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日 | 9万9,300円 | 32万3,600円 |
昭和17年4月2日~昭和18年4月1日 | 13万2,300円 | 35万6,600円 |
昭和18年4月2日以後 | 16万5,500円 | 38万9,800円 |
このように配偶者の生年月日によっても特別加算の金額は異なってきます。加給年金における注意点はやはり配偶者や子どもの年齢です。この年金が加算されるのは被保険者が65歳時に配偶者が65歳未満であること、そして子どもは18歳になる年の年度末までという制限があります。
つまり世間一般でいわれる年上の「姉さん女房」を持つ方などは、加給年金を受け取ることができません。逆に扶養配偶者が若ければ若いほど、加給年金が支給される年数も長くなります。
将来受け取ることができる年金額目安をシミュレーションしてみよう
ここからは実際に将来受け取ることができる年金額の目安をシミュレーションしてみましょう。今回は以下のようなモデルケースを基にシミュレーションを行うこととします。
- 19歳~60歳まで厚生年金保険の適用を受けている会社に勤めたサラリーマンBさん
- 平成15年3月までの厚生年金加入期間は27年、給与平均(平均標準報酬月額)は25万円
- 平成15年4月以降の厚生年金加入期間は14年、給与平均(平均標準月額)は28万円
- 年金受給が開始される65歳時に65歳未満の妻と20歳以上の子どもが1人いる
国民年金 (77万9,300円)
Bさんの場合は高校を卒業してすぐに働き始め、20歳以上60歳未満の方が加入する義務がある国民年金保険料も未納期間はゼロです。したがってBさんの国民年金(基礎年金)受給額は満額の77万9,300円(平成29年度価格)となります。
厚生年金 (122万5,451円)
厚生年金受給額の目安を知るには「報酬比例年金額」「経過的加算」「加給年金額」の3つの金額を合算することでしたね。まずは厚生年金受給額の主たる部分となる報酬比例年金額を計算してみましょう。Bさんの平成15年3月までの厚生年金加入期間は27年、平均給与(平均標準報酬月額)は25万円です。計算式は以下のとおりとなります。
○ 25万円 (平均標準報酬月額)×7.125×324 (被保険者期間の月数)=57万7,125円
続いて平成15年4月以降の計算をします。Bさんの場合は以下のようになります。
○ 28万円 (平均標準月額)×5.481×168 (被保険者期間の月数)=25万7,826円
そしてこの2つの計算で算出された金額を合算します。
○ 57万7,125円+25万7,826円=83万4,951円
続いて経過的加算の計算をしてみましょう。
○ 1625円 (定額部分)×1.00×480 (厚生年金加入月数)=78万円
○ 77万9,300万円×480 (20歳から60歳になるまでの間の厚生年金加入月数)÷480=77万9,300円
この2つの計算で算出された金額の差額が経過的加算額となります。Bさんの場合は以下のとおりです。
○ 78万円-77万9,300円=700円
最後に加給年金額を調べます。Bさんの場合は年金の受給が開始される65歳時点で、65歳未満の奥様がいます。したがって加給年金額は以下のようになります。
対象者 | 加給年金額 (特別加算額含む) |
---|---|
65歳未満の奥様 (配偶者) | 38万9,800円 |
Bさんの家庭では子どもも一緒に住んでいますが、Bさんが65歳の時点で20歳になっているので、今回のケースでは加給年金の対象から外れてしまいます。
Bさんの場合は年間で200万4,751円の年金を受給できる
国民年金と厚生年金の受給額を算出したら、この2つの年金受給額を合算します。
○ 77万9,300円 (国民年金)+122万5,451円 (厚生年金)=200万4,751円
ご覧のように今回のBさんのケースでは年間で200万4,751円の年金を受給することができます。月額にすると約17万円となります。Bさんの場合は高校卒業から60歳までの間、一度も休職の時期がなかったことや国民年金の保険料も40年間きっちりと納めていたため、受給できる年金額も多少多くなっています。
また年金受給開始時点で65歳未満の奥様がいるのも、年金額増加につながっている要因です。注意点としてはやはり奥様が65歳以上になると加給年金がなくなるため、受給できる年金額も減少することです。
また今回のシミュレーションで算出した年金受給額はあくまでも目安の数字となります。厚生年金の正確な受給額を調べるには平均給与などの問題もあるため、一個人で算出するのは不可能に近い状態です。
したがって正確な年金額を把握しておきたいという方は年金事務所等に問合せするか、毎年1回、誕生月に届く「ねんきん定期便」に記載されている「老齢年金の見込額」を確認するようにしましょう。
年金受給額の把握は安定した老後の生活のためにも大切
今回は老後のメイン収入源となる、年金の受給額計算方法の解説やシミュレーションを行ってきました。年金の受給額算出ですが国民年金(基礎年金)は比較的簡単です。しかし厚生年金は生涯の平均給与や個人では理解しにくい項目が複数存在するため、自身で正確な受給額を調べるのは極めて困難です。
したがって自身で年金受給額のシミュレーションを行っても、それはあくまでも目安であるということを理解しておきましょう。年金受給額の把握は安心できる老後を過ごすためにも大切なことです。そのため、不明な点や心配な点がある場合は年金事務所等に相談することを推奨します。