2018年3月25日 | お役立ち情報
老後破産しないために今からできること – 原因や実態を把握して回避する
近年はテレビ、雑誌などのメディアでも「老後破産」という言葉をよく目にします。老後破産は高齢化社会と呼ばれる現在の日本にとって真剣に向き合う必要がある課題です。
今は定職に就いており、収入が安定している方も老後はどうなるかわかりません。そこで老後破産をテーマにした情報を解説します。
老後破産とはどのような状態を指すのか?
老後破産とは具体的にどのような状態のことを指すのでしょうか?老後破産とは文字通り「貧困により老後の生活が破産状態に追い込まれている」ことです。もう少し具体的に説明すると「誰かの力を借りなければ生活することができない高齢者」ということになります。
ちなみに社会福祉士でNPO法人代表の藤田孝典氏の著書「下流老人」はそのタイトル名から大きな話題となりましたが、これは藤田氏が作った造語です。下流老人という言葉も近年よく耳にするようになりましたが、藤田氏によると下流老人とは「生活保護基準相当で暮らす、もしくはその恐れがある高齢者」という意味だそうです。
詳細は後述しますが現代社会は上記のような下流老人の状態に陥っている高齢者が増加傾向にあります。老後破産という言葉もNHKなどで特番が組まれたことで、非常に大きな話題となりました。現代の日本は超がつくほどの高齢化社会です。
したがって老後破産や下流老人といった貧困生活を送る高齢者問題にはしっかりと向き合っていく必要があります。また現在は現役バリバリで働いているという方でも将来老後破産する可能性は決して0%ではありません。そのため、老後の生活を若いうちからしっかりと考えておくことも非常に重要なポイントとなります。
老後破産の実態
前述のように現在、老後破産の状態に陥っている高齢者は非常に多いです。それは生活保護受給世帯数のデータにも表れています。厚生労働省の調査によると平成29年2月時点での生活保護受給者数および生活保護受給世帯数は受給者数が約214万人、受給世帯数が約164万世帯となっています。
生活保護受給者数そのものは平成27年3月をピークに減少に転じています。しかし、減少傾向に転じているのは高齢者以外の世帯のみです。つまり高齢者世帯の生活保護受給は増加が続いている状態ということです。
また生活保護受給世帯を世帯類型別に見ると高齢者世帯は51%(平成29年2月時点の数字)となっています。ちなみに20年前の平成9年の高齢者世帯の生活保護受給の割合は44%です。
【参考サイト】厚生労働省「生活保護制度の現状について」
このデータからもわかるように近年は国や自治体の助けを受けなければ生活できない高齢者が増加傾向にあります。また総務省統計局の調査によると高齢者世帯(夫婦二人)の1ヶ月の平均支出は約27万円となっています。
【参考サイト】総務省統計局「家計調査年報 (家計収支編) 平成27年 (2015年)」
一方で平成29年度の厚生年金の標準的な支給額は22万1,277円(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む)です。
【参考サイト】厚生労働省「平成29年度の年金額改定についてお知らせします」
つまり現在は公的年金だけに頼る生活は難しい時代に突入しているということです。将来的に年金の支給額が増えることも現時点では考えづらいです。したがって老後破産のリスクは高齢者だけではなく、今の若者も十分に抱えていることになります。
老後破産の原因
団塊世代が定年を迎えたことで、今後の日本はますます老後破産について真剣に考える必要があります。老後破産はなぜ起きてしまうのでしょうか?ここでは老後破産になってしまう主な原因を取り上げてみましょう。
年金受給額が少ない
厚生労働省の発表によると平成28年度の月額年金受給額の平均は以下のようになっています。
月額年金支給額(平均) | |
---|---|
老齢年金 | 55,373円 |
厚生年金 | 145,638円 |
【参考サイト】厚生労働省「平成28年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
ご覧のように年金受給額の平均は老齢年金が55,373円、厚生年金が145,638円となっています。この二つを合計すると201,011円となります。前述のように夫婦二人で老後の生活を送るには1ヶ月27万前後の生活費が必要になってきます。
もちろん27万円という数字はあくまでも平均額となるため、節約上手の方などはこれよりも少ない生活費で収まることが多々あります。しかし、いずれにせよ年金のみで生活するには非常に厳しい状況となっているため、老後破産に陥る高齢者の方が増えています。
特に現役時代から「貯蓄がない」「貯蓄をしてこなかった」という方ほど老後の生活が破綻しやすい傾向にあるでしょう。年金受給額についてはこれから先の将来も少なくなっていくことが予想されます。したがって老後の生活を年金のみに頼るという考えは極力持たないようにしておくのが無難です。
現役時代からの金銭感覚のまま老後に突入している
現役時代に年に数回は旅行をしたり、週に一回はランクが高いお店で食事をするなどの生活を送ってきた方もいるでしょう。このように定期的に贅沢をしてきた方が陥りやすいのが「現役時代の金銭感覚が変えられない」ということです。
老後は基本的に現役時代よりも収入が少ない中で生活をすることになります。このような状況で現役時代と変わらぬ生活をすると、貯蓄もあっという間に底をつき、老後破産を起こす可能性が高くなります。
特に定年退職後は自由な時間も増えますから、退職金などを利用して旅行や趣味を楽しみたいと考えている方は多いです。しかし後先のことを考えずに今あるお金をすべて使ってしまうような行為は後々の老後破産の原因にもなりやすいので注意が必要です。
危機感がない
老後破産する人の特徴の一つに危機感の欠如があります。「今が楽しかったらそれでよいじゃない」「自分で働いて作ったお金だから、使いたい時に使わないと」。現役時代からこのような考えでいる方は老後の生活資金が不足する可能性は大きいです。
なぜなら現役時代に貯蓄をしてこなかったためです。夫婦二人の高齢者世帯の1ヶ月平均支出額は27万円です。この支出額をもとに計算してみましょう。仮に60歳で定年を迎え、80歳まで生活をするなら6,480万円の資金が必要となります。
定年後は年金の受給がありますから、必ずしもこれだけの貯蓄を作る必要はありません。しかし、何度も取り上げているように現在の日本は年金のみで老後の生活を送るのは非常に難しい状態です。したがって現役時代から老後への危機感を持って生活をすることが大事となります。
退職金の減少・退職金制度がない
厚生労働省のデータによると平成24年の1年間における退職者1人当たりの平均退職給付額は以下のようになっています。
学歴 | 平均退職給付額 |
---|---|
大学卒(管理・事務・技術職) | 2,156万円 |
高校卒(管理・事務・技術職) | 1,965万円 |
高校卒(現業職) | 1,484万円 |
※平均退職給付額は「勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者」が対象
【参考サイト】厚生労働省「平成25年就労条件総合調査結果の概況:結果の概要(5 退職給付(一時金・年金)の支給実態)」
上記のデータを踏まえた上で今度は平成19年の1年間における平均退職給付額を見てみましょう。
学歴 | 平均退職給付額 |
---|---|
大学卒(管理・事務・技術職) | 2,491万円 |
高校卒(管理・事務・技術職) | 2,238万円 |
高校卒(現業職) | 2,021万円 |
※平均退職給付額は「勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者」が対象
ご覧のように公的年金と同様、退職給付額も年々減少していることがわかります。また近年は不景気の影響もあり、退職金制度そのものがない中小の企業も増加傾向にあります。したがってひと昔前のバブル期のように「退職金を老後の生活資金に回そう」という考えを安易に持つのは控えたほうが無難といえるでしょう。
子どもが面倒を見るのが難しい環境
老後の生活は子どもにも少し面倒を見てもらおうと考えている方も多いです。しかし、この場合も100%子どもが面倒を見てくれるとは限りませんので注意が必要です。さまざまな家庭の事情によって子どもと絶縁状態になっている高齢者の方もいます。またこれはNHKの特番でも実例として放送されていましたが、一人息子(娘)が突然亡くなってしまうこともあります。
その他近年の不景気の影響で息子(娘)たちも自分の生活を守るので精一杯という状況も多いです。このように各家庭で事情は異なるにせよ、老後の生活を自分の子どもたちにすべて任せるというのは現状難しい状態です。その結果として老後の生活費が不足しがちになります。
定年後も子どもの教育費などが発生する
近年は女性の社会進出の影響もあり晩婚化、晩産化が進んでいます。厚生労働省では「出生数の年次推移, 母の年齢 (5歳階級) 別」という調査データを公表しています。それによると出産時の母親の年齢は以下のようになっています。
母の年齢 | 昭和60年 | 平成7年 | 平成17年 | 平成23年 | 平成24年 | 平成25年 | 平成26年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
20歳~24歳 | 247,341 | 193,514 | 128,135 | 104,059 | 95,805 | 91,250 | 86,587 |
25歳~29歳 | 682,885 | 492,714 | 339,328 | 300,384 | 292,464 | 282,794 | 267,845 |
30歳~34歳 | 381,446 | 371,773 | 404,700 | 373,490 | 367,715 | 365,404 | 359,323 |
35歳~39歳 | 93,501 | 100,053 | 153,440 | 221,272 | 225,480 | 229,741 | 225,888 |
40歳~44歳 | 8,224 | 12,472 | 19,750 | 37,437 | 42,031 | 46,546 | 49,606 |
【参考サイト】厚生労働省「平成26年 人口動態統計月報年計(概数)の概況 第3表 出生数の年次推移,母の年齢(5歳階級)別」
ご覧のように時代の移り変わりとともに35歳~44歳で出産をする女性が増加しているのがわかります。この高齢出産が与える影響は「両親の老後の生活が圧迫される可能性がある」ことです。
一般的に子どもを幼稚園から大学まで通わせるには1,000万円~2,000万円ほどかかります。そして自身が現役のうちに子どもが学生生活を終えてくれれば、まだ両親の負担は軽くなります。問題は定年退職後でも教育費がかかるケースです。
例えば43歳の時に出産した子どもが大学に入学するのは定年退職後の62歳時点であり、卒業は66歳の時となります(両親が同年齢の場合)。現在の公的年金の受給開始年齢は原則65歳です。
したがって60歳で定年を迎えたとして、年金受給開始までの期間は他の仕事をするなり、貯蓄を切り崩して生活を送る必要があります。現役時代から子どもの将来を考えて貯蓄をしてきた世帯であれば大きな問題にはならないかもしれません。
しかし、貯蓄額が少ない家庭では子どもの教育費によって生活するのが困難になる可能性も考えられます。また定年前に子どもが卒業を迎えたとしても楽観視はできません。例えば定年前の59歳に子どもが卒業したとします。
定年までの残り期間は1年となりますから、この間に老後の生活費を蓄えたいと考えている方もいるでしょう。しかし、1年では残念ながら老後の生活資金を蓄えるには時間が不足しすぎています。このように定年間近、定年後まで子どもの教育費がかかるケースでは将来的な老後破産が起きてしまうことが懸念されています。
定年後も住宅ローンの支払いが続いている
近年60代、70代の方の住宅ローン返済が難しくなってきています。なぜこのような高齢者世帯の住宅ローン返済問題が出てくるかですが、原因の一つとして考えられるのはマイホーム購入のタイミングです。
現在の日本は晩婚化が進んでいるのが特徴です。そしてこの晩婚化によってマイホームを購入するタイミングも遅くなっています。それによって定年退職後も住宅ローンを支払い続ける必要があります。本来であれば年金を老後の生活費に回すのが一般的ですが、定年後も住宅ローンが残っている方は返済に回さざるを得ない状態です。
すると貯蓄がない家庭では必然的に毎日の生活も苦しくなります。これが住宅ローンが原因となる老後破産の実態です。マイホームを購入する時は目先のことだけではなく、老後も考慮したローンを組むなどの対策が必要となってきます。
医療費・治療費が予定よりかさむ
年齢を重ねれば重ねるほど重い病気にかかるリスクは高まります。公益財団法人 生命保険分化センターの調査によると入院時の自己負担費用の平均は約22万円となっています。
【参考サイト】生命保険文化センター「入院した時にかかる費用はどれくらい?」
もちろんこの負担費用はあくまでも平均であり、入院日数によっては5万円~10万円未満に収まることもあります。しかし、高齢になればなるほど完治が難しく、入院日数も要する病気にかかるリスクは高まります。
これにより医療費、治療費が予想以上にかさみ、自身の収入だけでは生活ができなくなる可能性もあります。中には定年時に貯蓄が3,000万円~4,000万円ほどあったにもかかわらず、その後に患った病気の治療で貯蓄の半分以上を使い果たしたという方もいます。
もちろん現在の日本では高額療養費制度と呼ばれるものがあるため、治療や入院時にかかる自己負担額を大きく抑えることも可能です。しかし、決して無料で入院、治療ができるわけではないため、老後の医療費や治療費のことも現役時代からしっかりと考えておく必要があります。
現役時代にずっと自営業を営んできた
自営業の方は一般のサラリーマンが貰うことができる厚生年金の支給対象ではありません。したがって国民年金(老齢基礎年金)の支給のみで老後の生活を送る必要があります。もちろん自営業はサラリーマンと違って定年退職という概念がありませんから、極端にいえば生きている間はずっと事業を営むことができます。
しかし、体力の低下など現実問題として生涯事業を営むのは難しいです。そのため引退後は自身の貯蓄と年金に頼る必要がありますが、国民年金(老齢年金)の平均受給額は5万円~6万円です。
この受給額では老後の基本的な生活費を賄うことは非常に難しいです。近年は自営業、フリーランス、個人事業主として生計を立てている方も増えています。そのため、これらに属する方の老後はサラリーマンの方よりも真剣に考えておく必要があるといえるでしょう。
老後破産を防ぐには現役時代から危機感を持っておくことが大事
超高齢化社会の現在の日本にとって老後破産というテーマは真剣に考えておく必要があります。「なぜ老後破産は起きてしまうのか?」老後破産を防ぐには、まず老後破産が起きる原因を知ることが大切です。原因がわかることで、その後の対策も十分に施すことが可能です。
このように老後破産の原因究明、対策を現役時代から行っておくことで、老後の生活を少しでも楽にすることができます。「今はまだ若いからいいや」という考えではなく、将来の老後のためにできることを今から実践してみましょう。老後の生活が不安だという方はぜひ参考にしてください。