2018年3月15日 | 園芸・ガーデニング
肥料の種類と適切な使い方とは?【ガーデニングの基本】
植物を育てる上で「肥料」は大事な要素の一つとなります。しっかりと水をやっているのに植物に元気がない、葉が枯れてしまったという経験をした方は多いです。このようなケースでは与えている肥料に問題があるかもしれません。
正しい肥料の選び方や使い方を知ることで、植物も元気を取り戻す可能性は十分にあります。そこで今回は植物育成に欠かすことができない肥料の種類や基本的な使い方について解説します。
肥料の役割
冒頭でも解説したように植物の成長には肥料は欠かすことができません。しかし、肥料というのは具体的にどのような役割を果たしているのでしょうか?ここでは肥料中に含まれる成分を取り上げながら、肥料の役割や働きを解説します。
窒素(N)
窒素(N)は植物にとって大量に必要となる要素の一つです。窒素の役割は主に葉や茎の生育促進となっており、植物を大きく育てる上では欠かすことができない要素となります。葉緑素と呼ばれる植物の細胞に含まれる色素の元となる肥料にもなります。ちなみに窒素が不足すると葉が黄色く変色したり、枯れ落ちてしまう弊害を引き起こします。また茎の伸びも悪くなるため、植物のスムーズな生育を妨げる原因にもなります。
リン酸(P)
リン酸(P)には花や実のつき、質を高める働きがあります。したがってリン酸が不足がちになると、全体的に脆弱な植物になってしまいます。窒素と同じく植物の成長には特に欠かすことができない要素と覚えておきましょう。
カリウム(K)
カリウム(K)も植物の成長には特に欠かすことができない要素の一つとなります。ちなみにカリウムと前述の窒素、リン酸はその重要性の高さから「肥料の三要素」と呼ばれていることで有名です。
カリウムの主な役割は根や茎を丈夫にすることです。根や茎が丈夫に育つことで植物に耐寒性や耐病性が身につきます。またカリウムはその働きから「茎肥え」「根肥え」ともいわれています。
その他カリウムを正しく与えてあげることで、花や実、球根などを太くさせる効果も期待できます。万が一カリウムが不足がちになると植物の抵抗力低下を招きやすくなるため、害虫被害などに悩まされることにもなります。
カルシウム(Ca)
カルシウム(Ca)には植物の体内で健康な細胞を作ったり、根の成長を促進させる働きがあります。また土壌のpH調整にも大きく役に立ちます。土壌が酸性やアルカリ性に偏ってしまうと肥料は植物が吸収しにくい物質に変化してしまいます。この影響により、植物のスムーズな成長を阻害することにもなります。
日本の土のほとんどは弱酸性~酸性となっていますが、多くの植物は酸性に偏りすぎた土は好みません。この土の酸度を中和する際に必要となるのがカルシウムとなります。石灰質肥料などを用いてそれぞれの植物が好むpH値に調整することで植物の成長を促進することが可能です。
マグネシウム(Mg)
前述の4つの要素(窒素、リン酸、カリウム、カルシウム)と同じく、植物の成長に特に欠かすことができないマグネシウム(Mg)。「肥料の三要素」にカルシウム、マグネシウムを加えて「肥料の五大要素」を形成しています。
マグネシウムは葉緑素形成に不可欠な物質です。マグネシウムが不足すると葉緑素の生成が低下、光合成が衰えて植物の栄養素となる炭水化物の合成が減ることになります。またマグネシウムはリン酸などとの相乗効果や植物内の重要酵素の活性剤としても大切な役割を果たしています。
その他の要素
植物の体は約60種類の成分(元素)から成り立っており、そのうちの16種類は成長に不可欠な「必須元素」と呼ばれています。16成分のうち水や空気から供給されるのが「炭素(C)」「酸素(O)」「水素(H)」となります。そして残りの13種類の成分は主に根から吸収されることになります。前述の五大要素以外に必須となる成分は以下のとおりです。
- 硫黄(S)
- 鉄(Fe)
- マンガン(Mn)
- ほう素(B)
- 亜鉛(Zn)
- モリブデン(Mo)
- 銅(Cu)
- 塩素(Cl)
これらの成分は「肥料の三要素」と比べると必要量が少なく「中量要素」「微量要素」と呼ばれています(※カルシウム、マグネシウムも中量要素に該当)。ただし必要量が少ないといってもタンパク質の主成分となる硫黄や葉緑素ができる過程で欠かすことができない鉄など、いずれも植物の成長に欠かすことができない成分ばかりです。
肥料は大きく分けて2つの種類がある
肥料は大きく分類すると「有機質肥料」と「無機質肥料」の2種類があります。ここでは有機質肥料および無機質肥料の特徴や効果などをまとめましたのでご覧ください。
有機質肥料
有機質肥料とは植物、動物、魚などの排泄物を原料にして作られた肥料のことを指します。このタイプの肥料の特徴は前述の窒素、リン酸、カリウムの三要素や微量要素などがバランスよく含まれていることです。
ほとんどの有機質肥料は土の中で微生物に分解されてから植物に吸収されていきます。また一口に有機質肥料といっても使用している原料は異なります。一般的な有機質肥料で使用される原料は以下のとおりです。
原料名 | 特徴 |
---|---|
魚かす | 魚を乾燥させて粉砕したものであり、窒素とリン酸を多く含む |
油かす | 植物のタネから油を搾った後に残るカスを利用、窒素肥料として扱われる |
発酵油かす | 油かすに魚かすや米ぬかなどを配合、発酵したものであり、植物に吸収されやすい |
鶏糞 | 三要素や微量要素をバランスよく含んでいる |
骨粉 | 動物の骨を蒸してから粉砕したものであり、リン酸を多く含む |
草木灰 | 草木を焼いた灰を使用したものであり、カリウム成分を多く含む |
ご覧のように同じ有機質肥料でも使用する原料によって含まれる成分などには違いがあります。したがって育てる植物や土壌の種類によって有機質肥料もしっかりと使い分けることが大切です。
無機質肥料
無機質肥料とは化学的に合成された肥料のことを指します。無機質肥料は有機質肥料と比較すると「即効性」や「匂い」などの面で優れています。前述のように有機質肥料は【土中の微生物によって分解→水に溶けた分を吸収】という過程を経ているので、効果が現れるまでには若干の時間を要します。
しかし、無機質肥料の場合は肥料を与えた後、水に溶けるとすぐに効果が現れるため、即効性という点では大きく期待できます。また有機質肥料はその使用されている原料からどうしても悪臭を発しやすいのが難点です。
この点も無機質肥料は自然界に存在する鉱物から生成されているため心配する必要はありません。無機質肥料にもいくつかの種類がありますが、代表的なところでは「硫安・尿素」「過リン酸石灰」「硫酸カリウム」などが挙げられます。
硫安・尿素は窒素のみを含む肥料です。また過リン酸石灰はリン酸を多く含んでおり、硫酸カリウムはその名のとおりカリウムを豊富に含みます。前述のように無機質肥料は水に溶けやすいのがメリットですが、持続性がないのがデメリットです。したがって無機質肥料を使う時は追加で肥料を施すなどの工夫も必要となります。
その他の肥料の種類も把握しておこう
前述のように肥料は主に有機質肥料と無機質肥料に分けることができます。基本的にはこの2種類の肥料の特徴を把握していれば問題はありません。しかし、植物の成長をより効率良く促進したいのであれば、その他の肥料の種類や特徴もしっかりと把握しておくことが好ましいです。ここでは有機質肥料と無機質肥料以外に覚えておきたい肥料の種類を解説します。
複合肥料
窒素、リン酸、カリウムのうち一つの要素しか含まれていない肥料のことを単肥といいます。これとは逆に2種類~3種類以上の成分を含んだものを「複合肥料」と呼びます。複合肥料にも成分の配合量や効き目によっていくつかの種類に分類することができますが、総じていえるのは三要素やその他の成分がバランスよく配合されていることです。
したがって複合肥料を上手に選ぶことで数種類の単肥を揃えるといった手間を省くことも可能となります。ただし前述のように複合肥料にも種類がありますので、購入の際はパッケージ表示をよく確認するようにしましょう。
液肥
液肥とは文字通り液体になった肥料のことを指します。液肥は固形タイプの肥料と比べて吸収時間が短いため、非常に即効性に長けているのが特徴です。また使い方も簡単であり、土に直接まくか、水で薄めて水やりのように与えるだけです。
ただし液肥が濃すぎると植物が枯れる原因にもなってしまうので、初めは規定の量よりも薄めて使用することを推奨します。また葉に直接液肥を与えると水が蒸発して液肥の成分のみが残ることもあります。この状態も葉を枯らす原因になるので、液肥を与える時は株元にかけてあげることを特に意識しておきましょう。
置肥
置肥とはいわゆる「錠剤」「顆粒」といった固形タイプの肥料のことを指します。施肥後に雨や水やりによって栄養分が徐々に溶け出すため、長期間の肥効を植物に与えることが可能です。
ちなみに置肥の効果持続期間は種類にもよりますが、概ね1ヶ月~2ヶ月ほどとなります。置肥は植物に触れないように、できるだけ株元から離した位置に施肥するのが基本です。
また固形タイプのものには「殺虫剤入り」の肥料もあります。ガーデニングをしている方からはよく害虫問題で悩む声が挙がっています。
「カダン殺虫肥料」は、最大3ヵ月の長い効きめで、肥料成分・殺虫成分が溶け出し栄養を与えながら害虫駆除が可能です。植物に必要な栄養素を与え、なおかつ害虫対策も施したいといった方はこのような殺虫剤入りの固形肥料もあることを覚えておいてください。
肥料の使い方・与え方を解説
植物や土壌の種類に適した肥料を揃えても「どうやって使ったらよいのだろう?」と悩む方は多いです。ここでは肥料の一般的な使い方や与え方を解説します。
元肥
元肥とは植え付け時や植え替え時に用土に混ぜ込む肥料となります。元肥は植物の成長の基本にもなる大事なポイントとなりますので、しっかりと行う必要があります。植物の成長、発育を止めないことを目的としているため、持続期間が長い肥料を使用するのが一般的です。
したがって元肥には有機質肥料などを用いるのがおすすめです。また無機質肥料でも緩効性肥料や遅効性肥料であれば問題はありません。過剰に施してしまうと植物の根を傷める原因にもなってしまうので、適量を意識することが大切となります。
追肥
植物の成長に合わせて与える肥料が追肥となります。基本的に元肥だけでは時間の経過とともに肥料不足となるため、適切なタイミングで肥料を追加してあげる必要があります。追肥では一般的にすぐに効果が現れる無機質肥料、液肥などを用いることになります。
これは追肥のタイミングではすでに肥料不足になっている可能性が高いため、とにかく即効性が求められているのが主な理由となります。ただし植物の種類によっては遅効性の長期間効果が持続する肥料を使うこともあります。この点は目的などに応じて即効性のある肥料と緩効性のある肥料を組み合わせるといった工夫を施すのもよいでしょう。
寒肥
12月~2月の冬季に休眠期に入っている植物に施す肥料のことを寒肥といいます。寒肥は植物が休眠期に入っているため、基本的に即効性のある肥料を必要としません。したがって寒肥では有機質肥料に代表されるような遅効性肥料が適しています。
冬の間にゆっくりと時間をかけて分解することで、植物が活動しはじめる春の季節にしっかりと吸収させることが可能です。ちなみに寒肥は元肥の一種であり、植物の成長を止めさせない目的があるので大事な要素となります。
お礼肥
一般的に植物というのは花を咲かせた後はエネルギーを使い切って消耗している状態です。お礼肥はこのような植物に「花を咲かせてくれてありがとう」という感謝の意を込めて与える肥料となります。
植物を速やかに元気にさせてあげる必要があるため、即効性がある肥料を用いるのが基本です。主に無機質肥料や液肥が活躍できるタイミングとなります。
肥料の種類と適切な使い方を把握して充実したガーデニングライフを送ろう!
今回はガーデニングで用いる肥料の種類や使い方に関する情報を解説しました。ホームセンターやネットの通販サイトでは非常に多くの肥料が販売されています。
そのため、ガーデニング初心者の方は「どの肥料を選べばよいのだろう?」と悩みがちです。これではガーデニングを楽しむことは難しいため、今回取り上げた肥料の種類などをぜひ参考にしてください。
植物や土壌の種類によって使う肥料も変わってくるのがガーデニングの奥深いところでもあります。充実したガーデニングライフを満喫するためにも、肥料に関する基本的な知識を学んでおくことを推奨します。