給料の手取り計算方法 – 支給される項目と控除される項目

給料の手取り計算方法 - 支給される項目と控除される項目

毎月旦那さんが持ち帰ってくる給与明細書を確認すると「支給項目」「控除項目」といった普段はあまり目にしない文字が記載されています。一般的なサラリーマンの方の給料は全額が懐に入るわけではなく、額面からさまざまな控除が引かれています。

したがって中には「提示された給料額と違う」という方もいるかもしれません。この毎月の給料から引かれている控除の中身に関しては多くの方が疑問に感じていると思います。

そこで給料の疑問を抱える方のために、給料の手取りを求めることができる計算方法や支給される項目、控除される項目などの情報を解説します。

給料の手取りは額面の75%~80%が目安

まず給料には「額面」と「手取り」という重要な概念があります。一般的に雇用契約書(労働契約書)や求人票に記載されている給与金額は額面であることが多いです。額面とは基本給に残業代、各種手当、交通費などを加えたお金のことです。

そしてこの額面から税金や保険料などが引かれたお金が私たちが実際に受け取ることができる手取りとなります。つまり額面が30万円でも実際に受け取ることができるお金はそれ以下となります。

最終的な手取り金額は給与の総額や家族構成によって変化しますが、一般的なサラリーマンの場合だと額面のおよそ75%~80%が目安です。したがって額面30万円の方だと手取りは24万円前後になることが多いです。

給与の手取りは先ほども取り上げたように基本給、残業代、各種手当など自分に支払われる支給額と天引きされる控除額を引くことで求めることができます。給与明細書の項目名は企業によって異なることもありますが、一般的には「差引支給額」が「手取り金額」を表しています。

給与明細書の支給項目をチェック

給与明細書の支給項目をチェック

給料の手取りを求めるには「支給項目」と「控除項目」の内訳をチェックしておく必要があります。ここからは給料の支給項目および控除項目の内訳を一つずつチェックしていきます。まずは自分に支払われるお金である支給項目の解説です。

基本給

基本給とはその名称どおり、交通費や残業などの各種手当を除いた基本となる賃金のことです。当然のことながら企業や会社によって基本給は異なりますが、一般的には勤続年数、年齢、スキルによって金額が決定されます。ちなみにこの基本給は退職金の計算にも使われる数字ですので、しっかりとチェックしておくことを推奨します。

時間外手当

時間外手当とは企業の所定労働時間を超えた分の勤務に対して支給される手当のことです。日常的によく使用される「残業代」などという言葉はこの時間外手当に該当します。労働基準法では1日8時間、1週40時間を法定労働時間と定めています(例外の職種・業種あり)。

企業が社員などに時間外労働をさせる場合は割増賃金を支払う必要があります。時間外労働に対する割増賃金は時給換算した賃金に25%以上を上乗せしなければいけません。時間外労働手当の計算方法は以下のとおりです。

【1時間あたりの賃金(時給換算)×1.25(最低 25%)×時間数=時間外労働手当】

なお大企業においては1ヶ月における時間外労働が60時間を超える場合は特則として割増率を50%にするという規定があります。

休日手当

労働基準法では企業は労働者に対して週に1回以上の休日(法定休日)を与えなければいけないとされています。そしてこの法定休日に労働する場合にも企業は労働者に対して割増賃金を支払う必要があります。これが休日出勤をした場合に給与明細書に記載される「休日手当」に該当します。休日手当の求め方は以下のとおりとなっています。

【1時間あたりの賃金(時給換算)×1.35×時間数=休日手当】

ご覧のように法定休日に労働する場合は時間外労働手当(残業代)よりも割増率が高くなります。ちなみに一般的な企業では法定休日の他に週にもう1日ほど休日が定められていることが多いです(例:土曜日・日曜日など)。この2日のうちの1日は法定休日と定められますが、もう1日の休日は法定外休日となるため、割増賃金が発生することはありません。

深夜勤務手当

労働基準法では使用者(事業主)が午後10時から午前5時までの間において労働させた場合は通常の25%以上の賃金を支払う必要があります。これが給与明細書でよく見かける「深夜勤務手当」に該当します。深夜勤務手当の計算方法は以下のとおりです。

【1時間あたりの賃金(時給換算)×1.25(最低 25%)×時間数=時間外手当】

役職手当

役職とは一般企業でいう「部長」「課長」「係長」など管理職のことを指しています。つまり役職手当は主任職や管理職に就いている者に対して支給されるお金のことです。主任職や管理職は一般労働者と比べると責任を負わなければいけない範囲が広くなるため、その対価として手当が支払われることになります。

役職手当は法律的にも支給の義務がないため、支給額は各企業により異なります。ちなみに役職手当の相場は会社の規模などにもよりますが、係長から部長クラスだと1万円~7万円が多いです。

通勤手当

通勤手当の他にも「通勤費」「交通費」「通勤交通費」などの呼び名があります。会社に行くための移動、業務上で発生する移動の際にかかったお金が通勤手当として支給されます。通勤手当に関しても法律上は支給する義務はないため、支給額も企業によってまちまちです。

中には交通費全額支給という企業もありますが、一般的には毎月1万円~2万円など一律の額で支給されます。ちなみに通勤手当は一定額(月額10万円)までは非課税対象となっています。

少し古いデータですが厚生労働省が実施した「就労条件総合調査」では、2009年に通勤手当を採用している企業の割合は86.3%と公表されています。
【参考サイト】厚生労働省「通勤手当について」

扶養手当

家族手当とも呼ばれるのがこちらの扶養手当です。扶養手当は配偶者や子どもがいる労働者に対して支給される賃金となります。扶養手当も会社の就業規則に定めて支給されるため、明確に「いくら支払う」という決まりはありません。

また中小企業の場合は扶養手当を支給しないこともあります。ただし、公務員の場合は扶養手当の支給が法律で定められています。ちなみに下記は国家公務員の扶養手当支給条件です。

  • 配偶者(内縁関係含む)
  • 子・孫・弟・妹(満22歳に達する日以降の最初の3月31日まで)
  • 父母・祖父母(満60歳以上)
  • 重度心身障害者

以上が国家公務員が扶養手当を受け取ることができる条件です。公務員の場合は支給額も定められており、国家公務員は配偶者が月額1万3,000円、その他は月額6,500円となっています。国家公務員以外の公務員に関しては所属により多少の違いはありますが、概ね国家公務員と同水準で設定されています。

住宅手当

企業の福利厚生の一環としておなじみなのがこちらの住宅手当です。住宅手当はその名のとおり、企業側が労働者に対して住宅費用を一部補助する手当のことです。住宅ローンの返済補助を目的としたものや労働者の家賃の一部を負担するなど、手当の内容は企業により異なります。

労働者にとっては魅力的な手当てであり、バブル時代の企業は積極的にこの住宅手当を支給していました。しかし、現在は不景気の影響もあり住宅手当を支給する企業は少ないです。

厚生労働省の「平成27年就労条件総合調査」によると住宅手当は月額1万5,000円~2万円ほどが相場となっています。
【参考サイト】厚生労働省「平成27年就労条件総合調査結果の概要 賃金制度」

資格手当

業務において活用できる資格を持っている労働者に対して支給されるのが資格手当です。主に資格取得による労働者の能力向上、多数の資格取得者を獲得する目的で支給される手当であり、多くの企業が導入しています。

資格手当には毎月支給される一般的な資格手当以外にも、資格取得時のみに支給される「合格報奨金」といった種類もあります。毎月の支給額は資格取得の難易度、企業規模などにより大きな開きがありますが、1,000円~5万円ほどが相場となっています。

給与明細書の控除項目をチェック

給与明細書の控除項目をチェック

主な支給項目を把握したら次は額面から天引きされる控除項目をチェックしてみましょう。

健康保険料・介護保険料

私たち国民は原則全員が健康保険に加入し、収入に応じた保険料を納める必要があります。健康保険料は前述のように収入に応じて控除額が決定されます。一般的なサラリーマンは給与やボーナスに一定の保険料率をかけたものを会社と折半して負担します。

健康保険料率は全国健康保険協会または健康保険組合が決定しています。料率は各都道府県によって異なりますが、概ね9%後半~10%前半となっています。また料率は毎年3月に改定されるので1年に1回はチェックしておくことを推奨します。

健康保険料率の詳細は全国健康保険協会の公式HPから確認することが可能ですので参考にしてみましょう。
【参考サイト】全国健康保険協会「都道府県毎の保険料率」

また40歳以上65歳未満の被保険者(任意継続被保険者を含む)は介護保険にかかる介護保険料も徴収されます。介護保険料率も健康保険料率と同様に1年~2年単位で改定されることからこちらも要チェックです。

ちなみに平成30年1月時点での介護保険料率は一般被保険者が1.65%となっています。
【参考サイト】全国健康保険協会「協会けんぽの介護保険料率について」

厚生年金保険料

厚生年金保険とは会社(法人)にお勤めの70歳未満の人が加入する公的年金制度のことです。民間企業に勤めるサラリーマン、公務員などの方は基本的に全員この厚生年金に加入しなければなりません。

ちなみに自営業、従業員5人未満の個人事業にお勤めの方は国民年金に加入することになります。また厚生年金の加入者(被保険者)も厚生年金制度を通じて国民年金に加入しています。

したがって厚生年金保険料を支払っている方は国民年金の基礎年金と厚生年金の両方を受け取ることができます。国民年金の保険料は給料の多い、少ないに関係なく毎月1万6,490円(平成29年度)の定額です。

一方の厚生年金保険料は【給料×保険料率】で負担額が決定されます。現在(平成30年1月時点)の保険料率は18.3%となっていますが、企業が半額負担するため、労働者の負担は9.15%となります。

また厚生年金の保険料は前述のように【給料×保険料率】で決まりますが、給料については金額に応じたランクが設定されています。一例を挙げるなら給料が27万円の方と28万5,000円の方がいたとします。

この場合、普通に計算すると負担する保険料も変わります。しかし、厚生年金の場合は国が定めた独自のランク(等級)があるため、一定の範囲内に収まる給料は同じ保険料となります。ちなみに前述の27万円と28万5,000円の給料を受け取っている方は18等級(標準報酬 月額28万円)となり、負担する保険料は同じです。

厚生年金保険料のランク(等級)は下記の日本年金機構の厚生年金保険料額表で確認することができますので、自身で保険料を計算する際に有効活用してみましょう。

雇用保険料

万が一の失業時に大きく役に立つのが雇用保険です。また雇用保険は失業時のみにしか給付を受けることができないと思われがちですが、育児や介護などの理由で休業する場合も一定の条件を満たすことで給付対象になります。雇用保険料の計算方法は以下のとおりです。

【雇用保険の被保険者である労働者の賃金×雇用保険料率=雇用保険料】

雇用保険料率は失業保険の受給者数や積立金の残高などに応じて変更される年があります。また事業の種類によっても保険料率が異なってきますので、この点は注意しておきましょう。ちなみに平成29年度の雇用保険料率は以下のようになっています。

企業(事業主)負担分 労働者負担分 雇用保険料率
一般の事業 0.6% 0.3% 0.9%
農林水産・清酒製造の事業 0.7% 0.4% 1.1%
建設の事業 0.8% 0.4% 1.2%

年度によって雇用保険料率は変化しますが、概ね労働者が負担するのは給料の0.5%前後となります。また最新の雇用保険料率についても厚生労働省の公式HPで確認することができますので、こちらも1年に1回ほどチェックしておくことを推奨します。
【参考サイト】厚生労働省「雇用保険料率について」

所得税

個人の所得に対して課税される税金が所得税となります。所得税は1月1日~12月31日までの1年間に得た所得に対して課せられる税金です。所得にも収入形態によって不動産所得、事業所得などの種類がありますが、サラリーマンの給与や賞与は給与所得に該当します。給与所得を求める計算方法は以下のようになっています。

【給与収入金額-給与所得控除額=給与所得】

給与所得控除とは給与収入の額に対して一定の金額を差し引く仕組みのことです。控除額は給与収入に応じて次のようになります。

給与等の収入金額(給与所得の源泉徴収票の支払金額) 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%
65万円に満たない場合は65万円
180万円超 360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円超 660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円超 1,000万円以下 収入金額×10%+120万円
1,000万円超 220万円(上限)

※給与所得控除額は税制改正により変更になることもあり(上記は平成29年分の控除額)
【参考サイト】国税庁「No.1410 給与所得控除」

また給与所得控除以外にも以下のようなものも控除の対象になります。

  • 基礎控除(一律38万円)
  • 社会保険料
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 雑損控除
  • 地震保険料控除
  • 障害者控除
  • 勤労学生控除
  • 扶養控除
  • 配偶者控除

以上が所得金額から差し引かれる主な所得控除の種類です。所得控除の種類や詳細は下記の国税庁のHPから確認することができます。
【参考サイト】国税庁「所得金額から差し引かれる金額(所得控除)」

そして最後に把握しておきたいのが所得税の税率です。所得税の税率は所得金額に応じて5%~45%の7段階に分類されています。基本的には低所得者の税負担は軽く、高所得者の税負担は重くなるという特徴があります。課税される所得金額に対する所得税の金額は以下の速算表を使用することで求めることができます。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超 330万円以下 10% 9万7,500円
330万円超 695万円以下 20% 42万7,500円
695万円超 900万円以下 23% 63万6,000円
900万円超 1,800万円以下 33% 153万6,000円
1800万円超 4,000万円以下 40% 279万6,000円
4,000万円超 45% 479万6,000円

※課税される所得金額、税率、控除額は平成27年分以降のもの
【参考サイト】国税庁「No.2260 所得税の税率」

以上が所得税の税率および控除額となります。これで正式な所得税額を求めることができる項目がすべて揃いました。実際に所得税額を導き出したいという方は以下のような計算の流れで算出することができます。

【(給与収入-給与所得控除-所得控除)×税率-税控除額=所得税額】

以上が所得税の算出方法となります。サラリーマンの方は基本的に毎月の給与から源泉徴収という形で天引きされているので、自身で所得税額を求める必要はありません。しかし、給料の支給項目や控除項目に興味がある方は覚えておいて損はないでしょう。

住民税

都道府県が徴収する都道府県民税と市町村が徴収する市町村民税(東京23区は特別区民税)の総称が住民税となります。住民税は地方自治体による教育、福祉、ゴミ処理などの行政サービスを行うための資金確保であり、収入に応じて税負担してもらうという特徴があります。

個人の住民税額は毎年1月1日~12月31日までの収入、所得控除などをもとにして計算され、6月1日を起点に新しい年度がスタートします。住民税額は以下の計算方法で算出することができます。

【均等割額+所得割額=住民税額】

均等割額とは個人住民税における固定金額の部分です。所得の多い、少ないによって金額が変動することはないため、均等割額は「住民税の基本料金」と捉えてもらってもかまいません。

ちなみに所得金額が一定以下の場合は均等割額が課されない(免除)ということもあります。均等割額は市町村民税(特別区民税)部分が一律で標準税率3,000円、都道府県民税が1,000円の計4,000円となっています。

また所得割額は所得金額に比例して課税される住民税額であり、前年の所得を基にして課税標準額を算定します。所得割の標準税率は市町村民税(特別区民税)部分が6%、都道府県民税部分が4%の計10%となります。また所得割の計算方法は以下のとおりです。

【所得金額-所得控除額×税率(10%)-税額控除額=所得割額】

所得割額は市町村民税(特別区民税)と都道府県民税を別々で計算し、それぞれ1,000円未満の端数は切り捨てます。住民税の所得控除の種類についてですが、こちらは保険料控除や配偶者控除など所得税とほぼ同様になっています。ただし、所得税と比べると控除額が若干少ないという特徴があるので、この点は事前に把握しておきましょう。

支給内容、控除内容を把握すると自身でも給料の手取りを算出できる!

今回は給料の手取り計算方法、支給項目、控除項目の基本情報について解説しました。一般的に企業に勤めるサラリーマンの方だと各種税金や保険料の支払いは企業側で行ってくれるため、普段は給与明細書の内容を気にすることはありません。

しかし、毎月の生活費などのことを考えると給料の額面ではなく、手取り金額を把握しておいたほうが万が一の時には好ましいといえるでしょう。給料の手取りを求めるには支給項目や控除項目の内容をしっかりと把握しておく必要があります。自身で手取り金額の確認をしたいという方は今回取り上げた情報をぜひ参考にしてみてください。

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