2018年1月25日 | お役立ち情報
アクティブラーニングで子供を伸ばす!家庭でも実践したい教育
みなさんは学校の授業というとどのようなイメージをお持ちでしょうか?おそらく多くの方が「先生が教科書に書いてあることを読み、それをノートにメモする」といったことを想像すると思います。
しかし、近年児童や生徒が主体となって授業を進めていく「アクティブラーニング」と呼ばれる手法が注目されています。このアクティブラーニングにはどのような特徴や効果があるのでしょうか?今回はアクティブラーニングの基本情報や家庭でも実践できるアクティブラーニングについて取り上げてみます。
アクティブラーニングに学力向上の効果はあるの?
子どもたちが自ら考えたり、議論しながら学習を進めていくアクティブラーニング。近年はアクティブラーニングを取り入れる学校も増加傾向にあります。しかし、このアクティブラーニングは本当に学力向上などの効果が期待できるのでしょうか?
このような疑問を持つ親御さんも少なくないため、まずはアクティブラーニングの学習効果を見てみましょう。文部科学省に置かれている国立教育政策研究所では「平成29年度全国・学力状況調査の結果」を公表しています。
【参考サイト】国立教育政策研究所「平成29年度全国学力・学習状況調査の結果」
この調査ではテストの成績だけではなく、学習に関するさまざまなデータも公表されています。この中の一つに「習得・活用及び探求の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫をしましたか」という、学校側に回答してもらう質問があります。
これははっきりとは書かれていませんが「アクティブラーニングを学校で取り入れていますか?」という質問とほぼ同じと受け取ってもかまわないでしょう。そして注目すべき点はアクティブラーニングの実施状況と学力テストの平均正答率です。
国語Aを見ると指導方法の改善及び工夫を「よく行った」という学校の平均正答率は75.7%となっています。そして「どちらかといえば、行った」という学校の平均正答率は74.5%、「あまり行っていない」「全く行っていない」と回答した学校の平均正答率は72.7%となっています。
ご覧のようにアクティブラーニングを積極的に導入した学校は平均正答率でトップの数字を出しています。またこの傾向はその他の国語B、算数・数学A、算数・数学Bと全てのテストで同じでした。
この調査データからわかることは子どもたちが自ら考えながら学習するアクティブラーニングは学力向上の効果が期待できるということです。またアクティブラーニングは近年非常に大きな注目を集めています。
これは世界トップクラスの大学でもあるハーバード大学、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)などが授業の方法を変えたことで実証されたことも大きく影響しているでしょう。
アクティブラーニングで身につく力とは?
学力向上にも役立つアクティブラーニングですが、実はアクティブラーニングの効果はこれだけではありません。アクティブラーニングは学力以外にも将来生きるために必要な力を身につけることができます。ここではアクティブラーニングで身につけることができる力を紹介します。
思考力
思考力とは簡潔に説明すると「考える力」のことです。吸収した知識や情報から新たな関係性を見つけ、それを新しい情報に変えていくには思考力が必要とされます。先生が話したことや黒板に書いた情報をひたすら吸収するだけの従来の授業では知識を蓄えることはできます。
しかし、そのインプットした知識をどう活用するのかまでは学ぶことはできません。これでは新しい物を生み出す力などが育まれなかったり、問題が起きた時に自分で解決することが難しくなります。アクティブラーニングは子どもが自ら考えながら授業を進めていくため、自然と思考力が身につくようになります。
判断力
判断とは「選ぶ」「決める」といった行為のことを指します。私たち人間は日常生活の小さな出来事に対して常に判断する行為を行っています。具体的には「今日の夕食のメニューは何にしようか」「今週の日曜日は何をしようか」といったことが該当しますね。
判断力が備えられている人であればこのような課題に対して適切な判断を下すことができます。ところが判断力が身についていない人は正しい判断を下すのが苦手です。この結果として時に大きな失敗をしたり、怪我を招くといった弊害が起きるようになります。
判断力も思考力と同様に教科書から多く学べるものではありません。判断力を鍛えるには自分自身で問題や課題を設定させ、それに対して適切な答えを探していく環境を用意する必要があります。そのような意味では「自ら考え、自ら判断する」ことが求められるアクティブラーニングは判断力を養うには適した方法でもあります。
表現力
社会に出ると1人で仕事をしたり、生活することはほとんどありません。必ず複数の人間と日常生活を共にすることになります。この時に大切となってくるのが表現力です。表現力は絵画など芸術の世界だけに必要と思い込みがちですが、そうではありません。仕事で複数の人間とプロジェクトを進めていく中で自分の考えを誰かに伝えるのも表現力が必要です。
「誰かに何かを伝えること」は社会生活では必ず求められる能力です。アクティブラーニングは複数の生徒と共に問題や課題に取り組み、自分の考えを周囲に伝えることもあります。そのため、アクティブラーニングを積極的に実施することで表現力も磨くことが可能です。
主体性
主体性とはさまざまな状況下において自分の意思や判断で行動するということです。つまりまだ何をやるのかも決まっていない真っ白な状況から自ら考え、判断し、行動に移していくということです。
従来の先生が中心の授業では知識や情報は蓄えることができます。しかし、先生が教えてくれた情報をそのままノートにメモするだけなので、自ら考え、行動することはありません。
アクティブラーニングは問題や課題設定から自分達で考えていきます。その結果として「自分でやらなきゃ」「自ら動かなきゃ」という気持ちも芽生え、主体性も育まれていきます。
多様性
多様性とは異なる性質を持つ群が存在することです。簡単に説明すると異なる考え方などを持つグループが2つ以上存在しているということですね。そしてこの考え方が異なる人間同士が一緒に行動を共にしたら、本来であれば意見がぶつかり合って一つにまとまることはありません。
しかし1人、1人が「こんな考え方もあるんだな」というように受け入れることで時に大きな力を発揮することがあります。具体的には同じ問題、課題に直面した時に同じ考え方を持つ者同士で解決するとします。
しかしその考え方では問題が解決できない(不正解、結果が出ない)時もあります。このような時に異なる考えを持つグループに意見を求めることで問題があっさり解決することがあります。
もちろんその逆も然りです。一つ、一つの問題を解決する時は異なる考え方、個性を持つ者同士が集まったほうが良い結果が出ることが多いです。ビジネスの世界でも変化し続ける環境や多様化する顧客ニーズにその都度適切な対応を求められます。
この時に多様性を尊重している企業だと社員1人、1人に意見や考え方を述べてもらい、最良だと思われるアイデアを採用できます。現代社会は少子高齢化やグローバル競争など環境が目まぐるしく激変しています。
そのため、常に多様性がある企業でなければその変化に対応することは難しいです。これは日常生活においても家族や友人と良好な関係を築くには大切なことです。アクティブラーニングは異なる考え方、個性を持った生徒同士が集まって一つの問題を解決していくため、多様性も養われることになります。
協働性
協働とは複数の人間が集まり、一つの目標に向かって共に力を合わせて活動することを指します。社会に出れば自ずと複数の人間と共に仕事をする機会が訪れます。また共同作業で一つのプロジェクトを進めていくこともあるでしょう。
そのため、協働性を養うことは将来のためにも重要な要素となります。アクティブラーニングは集団で一つの問題、課題解決に向けて行動します。その結果として協働性も身につけることができるとされています。
子どもを持つママ・パパ必見!アクティブラーニングを家庭で実践
家庭という場所は子どもにとって長い時間を過ごすことになります。そのため、学校だけではなく家庭でも思考力や主体性を養う教育が必要とされています。そこでここでは家庭でもできるアクティブラーニング実践法をまとめましたので紹介します。
本・アニメ・映画・テレビ番組などの内容を説明してもらう
子どもが見た本、アニメ、映画、テレビ番組の内容をママとパパに説明してもらいましょう。第三者に説明をすることで子どもに「相手に伝える力」が身につきます。相手に伝えることは一見簡単そうに思えますが、内容の把握や整理ができていないと難しいことです。
「どんな物語なの?」「主人公は誰?」「この女の子はどのような人なの?」と大人が質問を振って子どもに回答してもらいましょう。最初は相手に伝える力が身についていないですからママ、パパも「?」と感じる説明になってしまうかもしれません。しかし、これを継続的に行うことで自然と相手も理解できるような説明ができるようになります。
学校でしたことを説明してもらう
前述の本やテレビ番組の内容を説明してもらうとほぼ同じですが、学校でしたことを説明してもらうのもよいでしょう。「今日はどんな授業をしたの?」「給食のメニューは何だったの?」「昼休みは何して遊んだの?」などさまざまな質問を投げかけます。
すると子どもから「国語の勉強をした」「給食はカレーだった」「昼休みは友達と縄跳びをした」などの回答が返ってくるでしょう。ここからさらに内容を深く掘り下げていくのもおすすめです。
具体的には「国語では何を習ったの?」「カレーの味はどうだったの?」「縄跳びは何回飛べたの?」といった質問をします。ここで内容を理解している子どもだと「国語では漢字を習った」「カレーは美味しかった」「縄跳びは20回ぐらい飛べた」といった答えが返ってきます。
単に「何をしたか?」の質問に対しては小さな子どもも相手に伝えることは容易です。しかし、その内容をさらに深く掘り下げていき、説明することは大人でも難しいです。内容を深く掘り下げた質問をした時に子どもが「わからない」と答えることもあります。
このような時は決して叱らずに優しく「ママももっと知りたいから今度調べてきて、もう一度教えてくれる?」と伝えてみましょう。そうすることで子どももより内容を理解する努力をし、相手に伝える能力も身につきます。
子どもがわからない回答を一緒になって考える
子どもが問題に対して答えがわからない場面は数多くあると思います。このような時に子どもから「これはどういうことなの?」と質問されたら、子どもと一緒に調べてあげましょう。
ママとパパと一緒にわからないことを調べることで協働性も養われ、その大切さも気付くことができます。また「わからない」から「わかった!」と変わる瞬間に子どもにも大きな嬉しさや達成感が生まれます。
子どもに自己決定を促す
親が「こうしなさい」「ああしなさい」というだけでは従来の先生が主役の授業と変わりません。そのため、日常生活の中のあらゆる場面で子ども自身に決断させるようにしましょう。
具体的には「今日は何の服を着るの?」「お天気が曇りだけど傘は持っていくの?」といったことを子ども自身に決めさせるということです。この際に子どもが迷っているようであればママ、パパからヒントを出してあげましょう。「今日は寒くなるって言ってたよ」「天気予報で夕方に雨が降るかもしれないって言ってたよ」といったような情報を与えてあげます。
こうすることで子どもも「寒くなるから長袖を着る」「夕方から雨が降るなら傘を持っていく」といった適切な決断をすることができます。一方的に大人の意見を押し付けるのではなく、子どもに自己決定を促すことで判断力などを養うトレーニングにもなります。
実はこの子どもに自己決定を促すという行為は世界でも活躍した元プロテニスプレーヤーの杉山愛さんのお母様も実践していたといいます。自己決定力、判断力を養うことで厳しい場面に立たされても適切な対処が施せるようになるでしょう。
モノが届くまでの過程を追う
身近にあるモノが家に届くまでの過程を子どもに追わせてみるのもおすすめです。一例として挙げるなら多くの子どもが大好きな飲み物の一つに牛乳があります。この牛乳が私たち一般消費者に届くまでは【農酪家で牛1頭、1頭を適切に管理→搾乳→工場への出荷・検査→販売店への出荷】という過程を経ています。
このモノが自宅に届くまでの過程を追わせることでさまざまな疑問や問題点が出てきます。牛乳であれば「牛の健康状態が悪いとどうなるの?」などがありますね。これらの疑問や問題点を子どもに気付かせてあげ、子どもが主体となって調べることで主体性や思考力を養うこともできます。もちろん牛乳の例はあくまでも一例です。
他の食材のことを調べてもよいですし、子どもが水や電気のことについて疑問を抱えているようであればインフラ設備をメインテーマにするのもありです。子どもが自ら考え、判断することを目的としているため、極力子どもが興味を持っていることをテーマに扱うのがおすすめです。
子どもが「学び」に対して積極的になることが大事
今回は文部科学省でも推奨されている「アクティブラーニング」について解説しました。アクティブラーニングは学力向上の効果だけではなく、将来社会で生きるための力も身につけることができます。
また学校だけではなく家庭でもアクティブラーニングを取り入れた学びの場を作ることが可能です。家庭でアクティブラーニングを実践する時のコツは子どもの疑問や質問を親がしっかり受け止め、一緒に問題や疑問解決に向けて行動することです。
どんなに小さな疑問や質問でも親がしっかり受け止めてあげることで、子どもにも「疑問を持つことは悪くないことなんだ」という気持ちが芽生えます。
そして一つ、一つの疑問を解決していくことで「楽しい」と感じることができ、自ら積極的に学ぶようになっていきます。誰かに言われて行動するのではなく、子ども自身が自ら考えて行動していくにはママとパパの力も必要です。家庭でもアクティブラーニングを積極的に取り入れてみましょう。